ウマ娘世界が地獄でも、住めば都です。   作:ジョンゲスト

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最近、本格カレーというとインドじゃなくてパキスタンとかミャンマーの方が経営している店が多い気がしますね~

辛いものを身体が受け付けなくなった恨みを前半に込めて見ました~
最近ブームの激辛系なんか食べたら間違いなくお腹壊す今日この頃です~


ジムの面々と

暴力的なスパイスの香り。

まだ店まで数百メートルはあろうかという距離から香ってくる、久しぶりのカレーの香りに、俺の腹は鳴りっぱなしだった。

バイキング形式でいくらでもお替り自由な本格的インドカレーのお店。

5種類も用意されたカレーに、タンドリーチキン、ターメリックライス、ポテトサラダに野菜サラダ。

なぜかつまみたくなる人参スティック。

口直し用のラッシーやジュースは冷やされたケトルから汲み放題。

そして、なくなると次から次へと追加される焼き立てのナン。

 

中東系のどっかの配管工みたいな髭を生やしたおじさんが、ガラス向こうの厨房で小麦粉を練ってずっと焼いている、蜜で照りの出た甘みのあるナンだ。

 

全部のカレーを制覇してやると、ウマ娘の腹の容量一杯に詰め込んだ。

履いていた短パンを、腰履きにしないとならないくらいに。

 

真っ赤に染まったいかにも辛そうな野菜カレーを、辛い、うまい、辛い、うまいと食い過ぎたのがまずかったのか。

 

・・・明け方から俺はトイレのお姫様になっていた。

 

「もう行きますけど、本当に大丈夫ですか?

 何なら病院に連れて行きますよ?」

 

たかだか、辛いものの食べ過ぎで腹を下しただけなのに、たづなさんは仕事を休んでまで俺を病院に連れて行こうとするので、トイレの前の気配が消えるまで大丈夫だから、を繰り返す羽目になった。

 

「ひぃっ!」

 

温水洗浄便座の温水がめちゃくちゃ染みる。

絶対切れてるわこれ。

 

もう何も出るものはないけれど、お腹の中がじんじんと熱い。

お尻も熱い。

 

辛いものは結構平気な性質だったので、以前のつもりで馬鹿食いしたけれど、このウマ娘の身体は辛いものにそんなに強くないらしかった。

朝っぱらからトイレを占領してしまってたづなさんには悪いことしたな。

 

辛いものは食べ過ぎないに注意しよう。

 

 

便座から立ち上がろうとして、かくっと膝が落ちる。

 

・・・またも筋肉痛だ。

 

昨日は、初めてウマ娘の身体で『走る』ということを短時間ながら経験したわけなのだけれど、全力を出したわけでもないのにこの体たらく。

種族的に筋力お化けの類かと思っていたウマ娘も、実は毎日身体を動かしていないと意外とすぐに鈍ってしまうのかもしれない。

 

とは言え、軽くでも道路は走るなとたづなさんから言われているからなあ・・・

 

いつ転ぶかわからない危なっかしい状態で、アスファルトの上を走るなんてとんでもない、と昨日のうちに真っ先に禁止されてしまった。

転ぶ心配がなくなるか、プロテクターを付けて、とは言うんだけれども・・・

あの全身アーマー装備で街まで下りて行きたくないよ。

昼ご飯食べにお店の暖簾でもくぐろうものなら絶対ぎょっとされる。

 

当分の間は、ウマ娘専用レーンはお預けらしい。

 

しばらくしたらここを出て、トレセン学園の寮生活になるわけだから、そうなれば身体を動かす場所には困らなくなるわけだけれど、ここだと道路を走れないとご老人よろしく散歩くらいしかできない。

 

 

・・・いや待てよ?

ここの上の階にはジムがあったじゃないか。

 

平日の昼間は空いているのでいつでも、と以前たづなさんが言っていたので、ルームランナーか何か借りられれば安全に身体を動かせるかもしれない。

 

とりあえず、ジムに出向いてみることにした。

 

 

 

 

「あ~、ルームランナーはヒト専用だねぇ。」

 

受付を済ませて出迎えてくれたインストラクターのリッキーゴウさんに速攻で使えないよ、と言われる。

もともと普通に外を走り回るのが大好きなウマ娘に人気がない上に、たまに使うウマ娘がいたと思えば、ルームランナーの最高速と張り合い始めて壊してしまう事例が続出して、基本ヒト専用なんだそうだ。

 

「でかいジムだと、メリーゴーランドみたいな機械があるんだけれどね。」

 

「メリーゴーランド?」

 

馬がいない世界で馬の模型に乗ってぐるぐる回るあの遊具はあるのだろうか?

 

「真ん中に立ってる軸から放射状に生えた棒を押してぐるぐる回るの。」

 

・・・もしかして、漫画とかで奴隷が動力代わりに棒を押してるあれのことだろうか。

我らが○○様は暗いのがお嫌いじゃ~!心を込めて廻せ~!っていう。

 

「遊園地でも子供用のやつが人気だよ?」

 

あれが・・・ウマ娘世界の・・・メリーゴーランド・・・?

ウマ娘世界のメリーさん、あなたいったい何をしたんですか?

 

 

「室内で身体に適当な負荷かけたいんだったら、大浴場のウォーキングバスがいいと思うけど?

 平日の昼間だったら、1時間くらいの貸し切りにすれば中で走り回ることもできるから。

 行ってみる?」

 

回廊状になったお風呂の中を、走り回っていいらしい。

 

お願いすると、リッキーゴウさんはウォーキングバスの貸し切り手続きをしてくれた。

金糸でジムの刺繍の入ったタオルを借りて、ウォーキングバスのある大浴場に行く。

平日の昼間はこのマンションの施設は本当に人がいない。

無駄と言えば無駄なんだろうけど、その無駄をあえて維持し続けるのもステータス、って言うのが金持ちの論理らしいしな。

 

服を脱いで、ざっと全身にシャワーを浴びると、貸し切りの立て看板を抱えてリッキーゴウさんがやってきた。

他にこの大浴場に人がいないせいもあって、彼女は普通にスポーツレオタードの仕事着なのに自分だけ裸にタオル一枚って言うのがなんか恥ずかしいというか心もとないというか、場違い感が否めない。

 

そのまま、大浴場の壁際の、熱帯雨林みたいな植物がわちゃわちゃ植わっている方に向かう。

一段高くなっているブロックで分けられた奥には、幅2mくらいの水路が縦長の回廊を作っていた。

わちゃわちゃ植わっている植物はその真ん中の島部分だ。

 

「この中で、1時間くらい無茶しない程度に走り回っていいよ。

 ただ、あんまり無茶すると足の裏の皮が削れて痛い目見るから程々にね。」

 

手をひらひらさせて、彼女はジムに戻っていった。

 

タオルを取って適当な場所にひっかけ、水路に入る。

角のないロの字型の水路を、時折はしる筋肉痛の鈍痛にぐぁ!とか声を上げながらのしのしと練り歩く。

水の負荷に逆らって歩くと身体の動きが大げさになるのか、普通に走ってるときは下着で押さえられてそれ程感じなかった胸がプルンプルン揺れるのがわかってちょっと面白い。

しばらく回っていると、さすがはウマ娘の馬鹿力、回廊に水流ができてちょっとした流れるプールみたいになった。

その流れをさらに速くするために、水をかき分けるようにして小走りに走ってみたり、わざと流れに逆らうようにして踏ん張って歩いてみたり。

意外といい運動になる。

しかも楽しい。

時間を忘れて、ウォーキングバスを堪能した。

 

 

 

 

「うんうん、楽しそうだねぇ~」

 

1時間の貸し切りの時間が過ぎたのか、リッキーゴウさんが貸し切り看板を回収しに来ていた。

・・・我を忘れてまるっきりプールではしゃぐ小学生してたよ、全裸で。

 

「お楽しみのところ悪いけど、おしまいね~

 上がって上がって。」

 

ちょっと名残惜しさを感じながらもウォーキングバスから出て、ざっとシャワーで流して脱衣所へ。

身体とかは夜にちゃんとお風呂に入って洗うよ。

 

「ありがとうございました。

 結構いい運動になりますねこれ。」

 

ジムに戻ってリッキーゴウさんにお礼を言う。

これが単純にプールだったら、単純に中を歩くだけで飽きて1時間がとてつもなく長く感じただろう。

童心に帰って楽しく身体を動かせたのは僥倖だった。

凝り固まってたような筋肉痛も、心なし軽くなった気がする。

 

「まあ設備遊ばせとくのももったいないしね。

 利用して喜んでもらえるならそれが一番だよ。

 

 ところで、ダンスは上達した?

 たしか、踊りたい曲があったんでしょ?

 よければちょっと踊って見せてよ!」

 

「うわ、ここでですか?」

 

「そう、ここで。

 大丈夫大丈夫、ヤジ飛ばすような変なのはいないから!」

 

う、う~ん、そんな期待のまなざしを向けられると・・・しょうがないにゃあ~

トレセンで一回吹っ切れて、人前で~とかそういう羞恥心をどっかに置き忘れたというか・・・

親の前で楽しそうにダンスする子供の思考というか・・・

 

・・・俺もしかして思考が幼くなってきてないか?とか思いつつも、

 

「・・・おかげさまでふらつかずに踊れるようになりましたからね・・・

 1回だけですよ?」

 

いそいそとウマホのメイクデビューを流す準備する俺。

 

イントロが流れ、ジムのホールの真ん中で、つま先立ちでリズムを取りながら歌いだす。

 

「お~!歌ってくれるんだ!」

 

あ・・・ダンスだけで歌う必要はなかったか。

ジムの他のインストラクターが集まってきちゃったよ。

でも今更やめられない。

そのまま歌って、踊る。

教わったターンを決め、腕を振り、笑顔を振りまく。

途中から、新たな足音が隣に加わった。

 

ちょ、男性ダンスインストラクターの小杉さん、なんで完璧な振り付けで一緒に踊ってるんですか!

黒いスポーツレオタードの男性が踊りながら笑顔で媚び媚びキュート!するという、なかなかシュールな絵面に、リッキーゴウさんが腹を抱えて笑っている。

二人して決めポーズで終えたときは、その場にいたインストラクターみんな涙を流しながら笑っていた。

 

楽しい、時間だった。

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