ウマ娘世界が地獄でも、住めば都です。   作:ジョンゲスト

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お隣さん登場回ですね~
徐々におっさんの心を忘れ始めた主人公は次はどんなろくでもない目に合うのでしょうか~(白目

お隣さんたちの名前に深い意味はありません~
実在馬にダブらない名前ってことで、馬にリンゴ好き多いそうなのでリンゴのパフェと、ゲムパは某SE〇Aサターンの古のゲームからです~


隣人と遭遇

しばらくヒシアマさんと食休みのお茶を楽しんだ後、明日は編入初日だろ?さっさと風呂入って寝ちまいな、とのお言葉に従って風呂に入るべく、部屋への道を急いだ。

 

部屋の前にたどり着いて、ドアの鍵を開けた時だ。

隣の部屋のドアがガチャッと開いた。

にゅっとドアから頭がのぞいたと思うや否や、あ~!という声とともに頭が引っ込む。

 

ドア越しに、隣の・・・えっ、マジ?とか言っている声が聞こえてくる。

 

バタバタと足音がしたかと思うと、今度はその部屋の住人二人して廊下に顔を出してきた。

最初に出てきたのは、さっき一瞬顔を出した、肩くらいまである癖っ毛の黒髪でちょっと俺より背が高そうな垂れ目のウマ娘。

次に出てきたのは俺と同じくらいの背丈で鹿毛ショートボブの活発そうなウマ娘。

出て来るや否や、矢継ぎ早に話しかけられる。

 

「キミキミ!

 今日引っ越してきたの?

 お隣さんになるんでしょ?

 私中等部3年のアップルサンデー。」

 

「サンちゃん待って!

 ・・・あっ!

 君、この前ダンススタジオで一緒に踊った子じゃん!

 覚えてる?

 隣でサブやってたの私!」

 

「えっ?」

 

そう言えば、スタジオでレッスン受けた時、サブやるからねーってステージで声かけてきた学園生と同じ声のような・・・

 

「覚えてない?」

 

「ごめん、ステージ眩しいし、ちょっとあの時テンパってて、声かけてきてくれた人かな、くらいしか・・・」

 

「それわたし、わたし!

 覚えてるじゃん!

 私、ゲームパラダイス!

 中等部2年だよ!

 よろしくね!」

 

3年のアップルサンデーさんと、2年のゲームパラダイス・・・長いな、心の中ではゲムパちゃんと呼ぼう。

この二人が隣の部屋で同室らしい。

二人は学年違うのにほとんどタメ口で会話している。

 

「ご丁寧にどうも。

 今日から隣に住むことになりました、中等部2年のラベノシルフィーです。

 よろしくお願いします。」

 

それなりに砕けた感じで挨拶したつもりなんだけど、ゲムパちゃんに渋い顔をされた。

 

「硬い、硬いよ~!

 タメだよ!

 もっと柔らかくいこうよ~!」

 

「今頃入ってくるなんて珍しいね~。」

 

サンちゃんと呼ばれていたアップルサンデーさんはなんというか、マイペースだ。

 

「ね、ね、ベノシちゃんって呼んでいい?」

 

・・・ここでも出てくるのか、ベノシ。

 

「なんでみんなベノシって呼びたがるの?」

 

ヒシアマさんにも会ったその日にベノシって呼ばれたしな。

 

「高等部にシルフィールって言う先輩がいるからね~。

 シルフィーだと被っちゃうでしょ?

 かといって、ラベノって冠名っぽいからこっちも被っちゃいそうだし。

 だから、冠名と下の名前ちょっとずつ取ってベノシちゃん!」

 

「冠名?」

 

「え?冠名知らないの?」

 

「ちょっと!サンちゃん!

 ・・・メジロ家とかサトノ家とかサクラ家とかはわかる?

 ラベノって言うのもそういう一族の名前かと思ってさ。」

 

「あ~そういう・・・」

 

ラベノ家のシルフィーさん、で『ベノシ』か。

ノシルだと確かに語呂悪い感じはするけど、なんでみんな一瞬で同じあだ名を思いつくかな・・・

 

「みんな冠名じゃ呼び合わないしね~。」

 

「だよね~。

 ってことで、ベノシってことで。

 よろしくね、ベノシちゃん!」

 

「え~・・・まあいっか。

 こちらこそよろしくね。」

 

なんか俺のあだ名、二人の間ではベノシで定着したらしい。

 

「ね~、微妙に時期外れで入って来たのってやっぱりケガで?」

 

「ケガ?」

 

「うん、彼女、ちょっと前にスタジオで一緒に踊った時も顎にこんなにおっきな絆創膏貼っててさ~。」

 

「え~?マジで?

 あ、ほんとだ、首元にまだおっきいかさぶたあるね。

 痛そー。」

 

無遠慮にアップルサンデーさんが俺の顔の下を覗き込む。

 

顎を上げたり覗き込まれると、顎の下にあるまだ治り切っていない擦り傷のかさぶたが見えてしまう。

 

「今時入ってきた理由か~・・・ケガって言うか・・・う~ん、どう説明したらいいかな・・・」

 

まさかこんなにぐいぐい来る隣人と早々に出くわすなんて思ってなかったから、そういう表向きの理由ってまだ考えてないんだよな~。

三女神絡みの話をしたりすれば面倒なことになるだろうし、かといって、その場しのぎで変な設定を話そうものならドツボにはまりそうだ。

 

「あ、言いにくいことならいいよ?

 人にはいろいろあるもんね!」

 

どうしたものか、と悩んでいたら、聞いた本人の方が勝手に納得して引き下がってくれた。

 

「ところで、私達これからご飯だけど・・・って、もう食べてきちゃってるよね~。」

 

「みたいね~。」

 

どうやら夕食一緒にどう?と誘ってくれたみたいだけれど、俺のお腹は見るからにポッコリ膨れている。

夕食を食べてきたばかりというのはバレバレだった。

 

「じゃあさ、ご飯の後、一緒にお風呂行こー!

 いいでしょ?

 いろいろ教えてあげる!」

 

「そうしなよ~

 初めてだと結構わからないことあると思うよ~?」

 

この申し出は正直言ってありがたい。

何せ、この寮で頼れるのはヒシアマさん一人だったから、何かある度にヒシアマさんに聞くのはさすがに気が引けるもんな。

そういう意味では、入寮当日に面倒見のいい隣人に出会えたのは幸運なんだろうね。

 

「うん、じゃあお願い。」

「オッケー!じゃご飯食べたら後で部屋に呼びに行くね!」

「じゃぁ、後でね~。」

 

あとで一緒にお風呂に行く約束をして、二人と別れた。

部屋に入ってドアを閉める際に、対面に見えたドアがちょっと気になる。

 

隣人、と言えば、対面の部屋からは物音一つしない。

まだ帰ってきていないのだろうか。

対面の住人はどんな人たちなんだろう。

 

とりあえず、すぐに風呂に行けるようにお風呂セットを取り出して準備しておく。

小さなプラスチックのかごに、洗髪料のボトルと石鹸、髪の毛と尻尾用のブラシ、尻尾の手入れ用にとたづなさんに貰った椿油。

そして、替えの下着にタオルとバスタオル。

忘れちゃいけない耳栓。

身体を洗うスポンジやあかすりタオルは無しだ。

スポンジは一人で身体を洗うには役不足だし、あかすりタオルはたづなさんに使うなと禁止された。

あかすりタオルを使うくらいなら普通のタオルを使いなさいと。

なんか、お肌が荒れるから駄目なんだそうだ。

 

今日一日汗だくになった制服をお風呂上りに着て戻ってくるのもなんだな~と思って、はたと気付いた。

パジャマがない!

たづなさんのマンションではたづなさんの大きめなパジャマをそのまま着ていたからすっかり自分のパジャマを買うのを忘れていた。

とんだ大失敗だ。

今日のところは、部屋着をパジャマ代わりにするしかないか。

明日、夕方出かけられるようだったら、イマムラまで足を延ばして買ってこよう。

 

財布なんかをサイドチェストに放り込み、充電器にウマホをつないで充電する。

 

この寮の部屋には、ビジネスホテルなんかと違ってテレビがない。

物のあんまりない部屋に帰ってきたところで、情報機器がウマホしかない。

そういえばこの寮、Wifiは無いんだろうか。

俺のウマホ、あっちの世界の契約が引き継がれているなら、あまりデータ通信を使うと通信速度がガタッと落ちるんだよな。

動画とか、見逃しTV配信とか見てたらすぐに通信速度が落ちてしまうだろう。

TVか、Wifiか、どっちかを使えるようにしたい。

まあ学生は勉強が本分、そのための寮生活って言われたらそれまでなんだけどさ~。

酒も飲めない、TVも動画も自由に見られない、だとさすがに息が詰まってしまいそうな気がするわけですよ。

 

まだお隣さんは夕ご飯から帰ってきそうにないので、机の中に入っていたビニールカバーの寮則本を眺める。

こんなもの、誰も読まないんだろう、古びているのに、中は折り目もつかずきれいなものだ。

 

基本的に寮則を破ったら、反省文に寮長指定の奉仕活動、か。

『見つからなければ問題ない!』の落書きは、いつの時代の寮生が書いたんだろう?

ラスト数ページのメモ欄には、門限で入り口が閉じられてしまったときの侵入路まで描いてある。

寮長のヒシアマさんはこの辺までチェックしていないのか、それともわかっていてあえて放置しているのか。

1000人分もこんなものチェックできないと思うから前者だとは思うけれど。

 

寮則は、まあ、ごく常識的な内容しか書かれていなかった。

ちょっと他にない規則だな、と思ったのは、匂いの強烈な食品を寮内で扱うな、くらいか。

比較的後ろの方にあったものだから、あとから追加されたんだろう。

変な食品を持ち込んで異臭騒ぎが起きたんだろうな。

くさやでもレンチンしたんだろうか。

 

過去の寮生のやらかしに思いを馳せていると、お隣さんが夕ご飯を終えて帰って来たようだ。

隣の部屋のドアが開いて、ごそごそと動き回る気配がする。

はっきり聞き取れるような声が聞こえてきたりしないところを見ると、この寮結構防音はしっかりしているらしい。

壁ドンでもしない限りお隣さんに迷惑をかけるようなこともないだろう。

 

お隣さんの動き回る気配に、そろそろ来るのかな?と自分で思った以上に心待ちにしてしまっていたらしい。

気が付くと、お風呂セットのかごと着替えの入ったカバンを持って、尻尾までパタパタ振って、ドアがノックされるのを待ち構えている自分に気づいた。

 

役割として、じゃなく、単純な好意で始まったお隣さんとの関係。

そしてこのウマ娘世界で初めての友達候補。

 

恥も外聞もなく、コンコン、という音が聞こえた途端に、はーい!とすぐにドアを開けてしまったよ。

そこには俺と同じようにお風呂セットと着替えを抱えた二人がいた。

 

「「ベノシちゃんお風呂行こ!」」

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