ウマ娘世界が地獄でも、住めば都です。   作:ジョンゲスト

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さて、編入一日目が始まりますよ~

最近、大型ベーカリーブームもだいぶ下火になってきましたが、ブームが始まった時は、海外で食べたあのずっしり重いパンが日本でも気軽に買えるようになった!と小躍りしてパン屋に向かったのですが、値段がバカみたいに高くてがっくりしたのを思い出します~
日本ではあの重たいパンは嗜好品レベルの値段なんですよね~


美浦寮での朝食

ウマホのアラームが鳴る前に、目が覚めた。

朝陽を受けて光るカーテンが眩しい。

明るさで目が覚めてしまったようだ。

ウマホをつついて時間を見ると、まだアラームが鳴るまで30分くらいある。

でも、目が冴えてしまった。

このまま寝転がってアラームが鳴るのを待つのもいいけれど、なんとなく起きたい気分だ。

 

布団を跳ね飛ばして身体を起こし、トイレに行って顔を洗う。

・・・寝起きの身体に、素のままの便座は初夏のこの季節でも冷たすぎた。

パジャマを買いに行くときに、便座シートも絶対に買おう。

 

寝ている間に寝相に巻き込んでしまった髪の寝癖をブラシで伸ばす。

何回か梳いて伸ばしておけば、そのうち元のようにまっすぐになる。

最近気づいた便利な俺の髪の特性だ。

 

食堂が開くまでにはまだちょっと時間がある。

 

干したタオルは触ってみた感じ、生乾きでベッド下の引き出しにしまうにはまだ早そうだ。

 

時間があるなら、と、どうせ塗ることになる日焼け止めの乳液を露出している顔や手脚に塗りたくる。

むらができて白く残らないように鏡を見ながらよ~く伸ばさないといけないので結構面倒臭い。

日焼け止めの乳液を一塗りしただけで、独特の甘い香りが身体から漂って、やっぱりこの身体、ウマ娘、女の子なんだよなあ、って実感する。

 

ひくしゅっ!

 

くしゃみが出る。

パジャマがなかったとはいえ、朝冷えする時間帯に半袖短パンはちょっと肌寒かった。

ベッド下の引き出しを漁って、ちょっと袖のあるシャツをひっかける。

 

そうこうしているうちに、食堂が開く時間になったので、部屋を出た。

 

食堂が開いた直後なら、朝早いからそんなに人はいないだろう、と思っていたのだけれど、そんなことはなかった。

すでにジャージ姿になって玄関に向かう寮生やら、パジャマのままで食堂に向かう寮生やら。

廊下はバラバラな服装で行きかう早起きの寮生が結構うろうろしていた。

 

食堂に向かう寮生の流れに乗って廊下を進み、食堂に入る。

食堂内は、席こそ埋まってはいないものの、食事を受け取るための長い列ができていた。

 

しまった、と思ったのは、その行列に並んでいる寮生の服装だ。

 

ジャージやパジャマの寮生はそこかしこにいる。

 

でも、半そで短パンにシャツを突っかけた、なんていうラフな部屋着姿の寮生は一人もいなかった。

声こそかけられないがけれど、ちらっと一瞥される視線がちょくちょく突き刺さる。

 

なかなか、目立たないようにするというのは難しい。

もう十分目立ってしまっていたので、素知らぬ顔で列に並ぶことにした。

 

朝食は、調理の職員が少ないのか、半バイキング形式だ。

トレイに皿を載せたら、おかずだけ盛ってもらい、その先に並んだ業務用の炊飯窯と、バスケットに積まれたパンの山から、食べたいものを食べたいだけ取っていく。

スープの類も、豆腐とわかめ味噌汁と、トマトと玉ねぎのスープから自由に選べる。

 

今日のおかずはスクランブルエッグとほうれん草のバターソテー、焼きウィンナーに数枚のハムとチーズ、パスタと春雨のサラダ。

よくあるビジネスホテルなんかの朝食メニューとあまり変わらない気がするな。

量が半端じゃないけれど。

 

お好みで、ということなのか、すでに刻みネギが混ぜ込んである納豆がでかいボールにおたまと一緒に鎮座していて、ご飯派の寮生がどんぶりの上のご飯に掬ってはかけていた。

パンの方は、キログラム級のでかい瓶入りのイチゴとオレンジのジャムにスプーンが差してあり、マーガリンも業務用パックと思われるものがそのまま転がっている。

小皿にとって、つけて食べろ、ということらしい。

 

今日はなんとなく、パンな気分だったので、パンを取りに行ったんだけど、このパン、俺が知ってるふわふわの日本のパンじゃなかった。

見た目はちょっと焦げ色の強いシンプルな丸パンで、大きさは普通のハンバーガーより二回りくらい大きい。

ただ、表面はカリカリで硬くて、手に持つとずっしり重い。

街のベーカリーなんかで売っている石窯パンなんかが軽く思えるほど、密度が高い、欧米人が『主食』として食べる類のパンだ。

さすがに焼き立て、というわけじゃないみたいだけれど、香ばしい小麦の焼けた匂いがする。

これはちょっと期待できそうだ。

 

それを6個ばかりと、スープ、オレンジマーマレードとマーガリンを小皿に盛って、席を探す。

 

両隣が開いているところか柱が隣にあるところで周りを気にせず食べたいな、と思ったのだけれど、思うことは皆同じなのかそういう場所はみんな埋まっていた。

トレイを持って席探しでうろうろしていたら、食堂の一番隅っこの席に、何か見覚えのあるウマ娘が目に付いた。

トレードマークともいえる藍色のハットこそ被っていなかったけれど、髪留めに青いバラのコサージュを付けたジャージ姿のウマ娘が、はくっ、はくっと一心不乱にパンを口に詰め込んでいる。

ライスシャワーだ。

彼女も美浦寮の住人だったのか。

 

彼女が朝食を食べている席の周りは、誰もいない。

彼女の隣にも対面にも誰も座らず、ぽっかりと空間が開いていた。

 

見渡すと、ライスと同じように周りに誰も座らない寮生が、ぽつぽつといるようだった。

その中には、ゲームで見憶えはあるけれど運悪くガチャで出会えなかった顔があった。

あれは重賞勝利を何度も重ねた実力者の類で、周りの人間が気後れして誰も近寄らない、という類だろうか。

確かゲームでは、そういった実力者は結構な割合で栗東寮に集中していたはずだ。

対等な仲のいい寮生やクラスメイトなんかと時間が合わないと、美浦寮の実力者はちょっとボッチ気味になってしまうのかもしれない。

 

そうやって見ると、この広い食堂で、せめて両隣を空けて落ち着いて食べられる席は意外と少ないようだった。

 

散々うろうろした挙句、目の前の席で食べ終わってトレイを手に立ち上がった寮生の席をさっと奪う。

ようやく食べられる。

パンにオレンジマーマレードをつけて、口に頬張る。

身の詰まったずっしりもちもちとしたパンを、歯で噛み千切って咀嚼する。

噛み締めるごとに口の中に広がる濃厚な小麦の風味。

これ、完全に日本のパンじゃないや。

欧米人がちゃんと腹を持たせるために食う、主食のパンだ。

安物のマーマレードの味が完全に負けてちょっともったいないくらい。

 

ものすごく、コーヒーが欲しい。

この本場顔負けのパンを、少し砂糖を多めに入れたコーヒーで流し込んだら最高にうまいだろうに。

でも残念ながらこの食堂にコーヒーの用意はなかった。

 

次にマーガリンを付けて齧ってみる。

・・・同じ安物でも、マーガリンの方が合う。

塩気と脂肪分が濃い小麦の風味とマッチして実にうまい。

 

おかずのスクランブルエッグなんかを後追いで口に入れるとこれまたうまい。

 

ふと思いついて、この身の詰まったパンを手でミリミリと割り開いて、スクランブルエッグとほうれん草のバターソテーを挟んでかぶりついてみる。

う~ん、至福。

今朝のおかずは、どれもパンに挟むのにちょうどいいものばかりだ。

 

パンを割ってはスプーンでおかずを掬ってパンにはさみ口に運ぶ。

さすがにサラダはちょっと塩気が足りなかったけれど、どれもいい感じに惣菜パンになってくれた。

パンを選んで大正解だ。

 

大方食べ終わってみると、パンにつけるはずだったマーマレードとマーガリンがお残しにしてはちょっと多いかな、ってくらい残っている。

見れば、他の寮生は食器に何も残すことなく、ジャムやマーガリンはパンで皿を拭きとるようにしてきれいに片づけていた。

腹具合は、まだ入る。

とりあえず、あとパン2個くらいあれば、小皿のマーマレードとマーガリンはやっつけられるだろう。

パンを載せる皿だけをもって、お替りを貰いに行く。

 

マーマレードとマーガリンをきれいに拭き取って食べ、スープを飲み干してお茶を頂く。

朝からこんないいパンが食べられるとは思わなかった。

 

だからこそ、コーヒーが切に欲しい。

 

でも、この食堂のラインナップを見る限り、主食には必要十分なコストをかけるけれど、ジャムとかふりかけとかそういった副副菜的なものは徹底的におざなりな感じがするので、コーヒーが飲み物に加わることはなさそうだ。

お茶もたぶんこれ、インスタント粉茶を機械でお湯に溶いているだけだろうし。

 

自前でコーヒーを用意することを考えるか。

食器を返しながら、調理場にいる料理人にお湯は貰えるのか聞いたところ、給湯器から出てくるお湯なら、ということなので、インスタントコーヒーくらいなら淹れられそうだ。

 

しかし、パンがこのレベルだ、ご飯も実はいいお米を使っているのではないだろうか?

毎朝の朝食が楽しみになってきた。

 

 




相変わらずネームドは出てきても空気です~
ライスの同室、ゼンノロブロイはまだ夢の中ですよ~
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