ウマ娘世界が地獄でも、住めば都です。   作:ジョンゲスト

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しばらく音信不通ですいません~
ちょっと某県まで出張行ってました~

おまけに、この先の話の練り直しでしばらく行き詰ってまして~

ようやく、こうしよう!って割り切れたのでぼちぼち再開します~




買い出しとバイク整備と

カフェ先輩、フクキタル先輩と別れて、昼下がり。

しばらくバイクに乗れない、とわかったからには、長期保管のための対策をしなければいけない。

 

いつものようにてくてくと歩いて府中のショッピングモール街へ向かう。

この道も、もうだいぶ慣れた感じがするな。

 

その中の一角にあるホムセンのフーナンで、安いバイクカバーと、これまた安い工具セットを買う。

今バイクを置かせてもらっている職員駐輪場は、一応屋根があるので雨が吹き込みさえしなければ安いカバーで十分だ。

埃だけ積もらなければいい。

 

工具セットは、しばらくバイクを動かせないのでバッテリーを外すのに必要だ。

動かさないバイクにバッテリーを繋いだままだと、数か月くらいでバッテリーが空になる。

外しておくに越したことはない。

買った工具セットは、安い、出来が悪い、すぐ壊れるの3拍子揃った中華製品、ラチェットレンチとプラスマイナスドライバーにプライヤーまでついて980円。

バイクカバーの方が2000円と高かったりする。

 

 

その足で、地下の食品売り場へ。

先輩のアドバイスに合致した商品はないかと、菓子折を扱っているお店が並んでいるあたりをうろうろ。

 

そんなにお店の数が多いわけじゃないので、これがいいかな、というのはすぐに見つかった。

それなりに数が入っていて、先輩方お勧めのリンゴを使ったお菓子。

 

お値段は・・・まあ結構いいお値段したよ。

でも、相手はシンボリルドルフ会長、シンボリ家なんていう名家の出らしいから、あまりしょぼいものは贈れないよな。

これが見つからなかったら、誰もが納得のどらやの和菓子くらいしか思いつかないし。

 

菓子折を紙袋に入れて貰っていると、デリコーナーからお惣菜のいい匂いが漂ってくる。

けど、この菓子折もそうだけど、ここのところ何かと出費が多い。

昼間も結構お高いスープカレーなんてものを食べたことだし、夜は久しぶりに貧乏飯にするか・・・

 

100円ショップに寄って、電子レンジ調理用のどんぶりや箸、パスタ調理パックを買う。

寮の家事室だと、お湯をかけるかレンジでチンするかしか温かいものを作る方法がないからな。

調味料を入れておくプラの小さなコンテナと、その中に入る一人暮らし用の小ぶりな醤油やサラダ油やスパイスなんかを一式。

貧乏飯、と言いつつも、いろいろ買いそろえるとそこそこの金額は出てしまう。

まあ調味料の類が無くてはさすがにまともな食事にならないので初回の必要経費ってことで。

 

・・・学生時代にこの調味料すらケチって、小麦粉を水で練っただけのものをレンジで温めて糊みたいになってたのを食べ続けた友人がいたけど、彼、最後は栄養失調でぶっ倒れて救急車で運ばれてかえって貧乏になったしなあ・・・

 

質素でも、栄養と満足感のあるご飯であることは大事。

 

同じモール街の中にあるスーパーに寄る。

籠を持って、まず向かうのは調味料のコーナー。

2倍濃縮の麺つゆを籠に入れる。

3倍とか4倍のは、いざ食べてみるとイマイチなのが多いので俺はいつも2倍濃縮のを買う。

麺つゆは、和食洋食問わずいろんなものに応用が利くから、一つあると困ったときは麺つゆで何とかなるくらい万能だ。

 

そして味噌。

出汁入りじゃないのを買う。

出汁入り味噌は、味噌汁以外に使うと合わない料理がある。

特に味噌を濃いめに使うものだと出汁が濃すぎて逆にまずくなるものが。

味噌味のモヤシ炒めとか作る時は、出汁入りだともやしの味噌汁レベルまでお湯を足さないと食べられたもんじゃないものができることがある。

ちなみに味噌の種類は白味噌だ。

 

次に買うのは、乾燥みそ汁の具。

わかめに乾燥ネギに乾燥油揚げなんかが入って100円くらい。

味噌汁、ラーメン、うどん、蕎麦あたりに適当に混ぜてのアクセントに。

 

乾麺のコーナーに寄って、海外製の安いのだけが取り柄の乾燥パスタ1kgと蕎麦粉よりも小麦粉の割合の方が多いかもしれない安いだけの乾燥蕎麦1kgを籠に入れる。

これがあれば、カップラーメンとエナジーバーの他にパスタと蕎麦という選択肢が増える。

炭水化物だけだから身体にいいかどうかは別として、だけど。

 

・・・実のところ一人暮らしで本当に金がない時は、乾麺の類は買わないんだ。

寮の家事室の電子レンジが無料で使えるから買うけれど、一人暮らしでカツカツ節約生活の時はなんだかんだ言ってガスや電気を結構消費するから。

 

 

そして、最後に外周の冷蔵ショーケースの並ぶコーナーに。

今日の夕ご飯のメイン、茹でうどん玉。

茹でられたうどん一食分がビニールパッケージされたものだ。

すぐ食べられて量もある。

生モノなので日持ちはしないけど、何がいいかってその値段だ。

 

近県に製麺所があるところから直接仕入れているスーパーなら、1食20円しない。

 

ラッキーなことに、このスーパーでは消費期限間近のが半額以下で売られていた。

1食分で5円。

50円じゃない、5円だ。

チコルチョコでももう10円玉では買えない時代だというのに、それよりも安い。

 

消費期限がまだ先の割引されてないうどんの値段でも15円。

 

消費期限間近のを根こそぎ、とは言っても3つしかなかったけれど、かごに放り込み、追加で2袋。

5食分もあればうどんだけとは言ってもお腹いっぱいにはなるだろう。

 

今日は麺つゆなんかを買ってしまったので普通にどこかでご飯を食べるくらいの金額が飛んでしまったけれど、これでしばらくはスーパーに脚を延ばしさえすればこの茹でうどんにかかる一回の食費は100円以下だ。

ウマ娘の一回の食事代金としては破格じゃないだろうか。

 

まだ道路を走れないからちょっと往復に時間がかかるのが難点だけれど、探せば学園の近くにもスーパーあるんじゃないかな。

あとで探してみよう。

 

 

 

 

買い物袋をぶら下げて寮に帰って、部屋の小さな冷蔵庫にうどんや味噌を押し込むと、買ったばかりのバイクカバーと安物工具を持って職員駐車場へ。

途中の自販機のゴミ箱を漁って、小さなペットボトルの空き瓶を一個確保。

手が油だらけになることも考えて、一応雑巾も持参だ。

 

カフェ先輩のお友達が埃を吹っ飛ばしてくれたので、服を汚すことを気にせずバイクに触れる。

 

駐車場の屋根の下だとちょっと薄暗いので、作業性をよくするためにハンドルロックを外してバイクを屋根の影から出す。

 

日向でサイドスタンドをかけて、少し離れた場所からその赤い車体をまじまじと眺める。

 

あっちの世界で乗っていた姿とはちょっと変わってしまってはいるけれど、十年来の相棒だ、しばらく乗れないんだな、と思うと寂しいものがあるな。

 

しばしの別れの前に、またがるだけでも、と、サイドスタンドをかけたまま脚を上げてシートにまたがろうとしたんだけど・・・

 

シートが高ぇっ!

 

この身体になって身長が縮んでいたのをすっかり忘れていた。

 

身体は柔らかくなって脚は男だった時以上に上がるんだけど、またがろうとすると、つま先で精いっぱい背伸びしても股下よりシートの方がちょっと高い。

そのまままたがってシート中央にお尻をずらすと、サイドスタンドで車体が傾いた状態でさえ、つま先が地面に届くかどうか。

シート幅があるせいでどうしても脚が開いてしまうので、精いっぱい伸ばしたつま先すら地面に届かない。

シートの角までお尻の位置をずらしてようやくつま先がつく。

筋力にあかせて、傾いた車体でも支えることはできるけれど、信号なんかで止まる度にお尻をずらしてぐらっと車体を傾かせてようやく脚をつけるとか、何度も繰り返したら乗るのが嫌になりそうだ。

 

そしてもう一つ。

CPZ900Rのシートは二人乗りしやすいように、シートに段がついている。

バイクの後ろに行くにしたがってちょっとシートが高くなっているのだけれど・・・

これが尻尾の付け根に当たってものすごく座り心地が悪い。

特に地面に足を付けようと脚を延ばして身体が立つと、尻尾の付け根が押し付けられて痛みすらある。

横に尻尾を逃がしたら逃がしたで、尻尾の毛の先がタイヤに巻き込まれそうで怖い。

また尻尾バンドで尻尾を背中に括り付けて乗るのか?

なにぶん、まだまともにバイクに乗ったウマ娘を見たことがないので一般的にはどんな風に乗っているのやら。

 

足つきの悪さに尻尾の収まりの悪さ。

三女神がバイクを俺から取り上げなかったとしても、このままじゃまともに乗れるものじゃない。

 

「あんこ抜きに出すかぁ・・・」

 

あんこ抜き。

シートの中のスポンジを削ってシートを低くしたりする加工のことだ。

専門の業者さんがいて、安いところだと1万円もかからずにシートを低く加工してくれる。

 

シートが低くなれば、俺の今の身長でも足つき性はマシになるはずだ。

 

相棒を走らせてやることはできないけれど、走らせることができるようになった時、すぐに乗れるよう準備はしておかないと。

何せ、その時までの時間はたっぷりあるのだから。

 

シートの上で脚をぶらぶらさせながら思案にふけっていると、「あっ!」という聞いたことのある声に続いて、こちらに駆け寄ってくる足音があった。

 

「なんだよ!

 アンタ、タメで編入してきたって聞いたぜ?

 声くらいかけてくれよ!」

 

口をとがらせながら駆け寄ってきたのは、私服姿のウオッカだった。

タイトなハーフパンツとTシャツに、ショートで黒い革ジャンを羽織っている。

袖口とかポケットにキラキラのラインストーンで模様が入っているし、なんかやたらとごついシルバーの指輪つけてたりと、なかなかロックな格好だ。

ノートの入った透明なファイルケースを小脇に抱えて職員駐輪場の方に姿を見せたあたり、チームハウスか、トレーナー寮あたりに向かう途中ってとこだろう。

 

「悪い悪い、いろいろあってさ。

 声かけられる状態じゃなかったんだ。

 今時間あるなら、例の約束、果たしとこうか?」

 

「いいのか?!」

 

「ああ。

 ちょっとしばらくこいつを寝かせなきゃならなくなったからちょうどいいや。

 キャブレターの中のガソリン、無くなるまでエンジン回していってくれ。」

 

以前、ウオッカとここで会って話したときから結構経つ。

バイク好きのウオッカとは、このバイクのエンジンかけた状態でまたがらせてやる約束をしている。

 

その間、キャブレターの中のガソリンは蒸発して煮詰まってきっとろくでもないことになっている。

約束を果たすついでにウオッカにエンジンかけてしばらく回して貰えば、キャブレターの中に残るガソリンを減らせるから抜いて捨てる量も少なくて済む。

 

お尻をずらしてひょいとバイクから降りると、サイドスタンドを外してセンタースタンドにかけ直す。

ヒトだったころは結構踏ん張ってやらないと車体の重さに負けてうまくかからなかったセンタースタンドが、小さくなったこのウマ娘の身体だと有り余る筋力で逆にするっとスタンドをかけられるのだから面白いものだ。

センタースタンドをかければ、とりあえず後輪が浮く。

後輪が浮いていれば万が一でもウオッカがエンジンをかけた瞬間にどっかに吹っ飛んでいくことはないだろう。

 

燃料コックを開けて、キャブレターの中の煮詰まったガソリンを新鮮なガソリンで薄めていく。

キャブレターの中のガソリンがいっぱいになったあたりでまたコックを閉めて、チョークを引き、キーをONにする。

インジケーターは、当然点かない。

 

「乗って、インジケーターがついたら、クラッチ握ってエンジンかけてくれ。

 クラッチはずっと握ったままで。

 迷惑にならない程度だったらちょっと空ぶかししてもいいぞ。」

 

「マジで?!」

 

「ああ。

 万が一があるから、興奮して揺らすなよ?」

 

「ぜってー揺らさねぇ!」

 

ウオッカは小脇に抱えていたファイルケースをぽいと放り出すと、いそいそとバイクにまたがった。

メーター周りを見据えたウオッカが怪訝な声で訊ねてくる。

 

「あれ?キーはONなのにインジケーター何も点灯してないぜ?」

 

「それが悩みの種なんだよ。

 エンジンのかけ方、切り方はわかるよな?」

 

「ああ。」

 

「俺は少し離れるから、何かあったらエンジン止めて降りてくれ。

 キャブの中のガソリンが切れたら勝手にエンストするとは思うけどな。」

 

バイクの方を向いたまま、後ずさる。

 

一歩、二歩。

 

三歩目を踏み出したとき、ウオッカの顔が赤と緑に照らされるのが見えた。

ウオッカは急にバイクが生き返ったことに驚いてはいるものの、これから自分がこのバイクに火をいれることに興奮しているのか、じっとメーターを見つめるだけでこの異様な現象について訊ねてはこなかった。

 

「エンジンかけていいぞ~!」

 

「・・・」

 

俺の掛け声を合図に、ウオッカの左手がクラッチを握って、右手の親指がスタータボタンを押す。

 

キュキュキュキュ・・・ズォウ!

 

セルが回り、呆気なくエンジンが目を覚まして吠えた。

 

これまでもオヤジさんのバイクでエンジンかけるくらいはさせて貰っていただろうに、ウオッカはまるで初めてバイクに触ったかのようなキラキラした瞳でうわー、うわーとつぶやいている。

 

両手でハンドルを中央に据えて、恐る恐るの、アクセルのブリッピング。

ウオッカがアクセルを捻る度に、ズォウ!ズォウ!とエンジンが応じて咆哮を上げる。

エンジンがろくに温まっていない時の扱いは心得ているんだろう、彼女はアクセルを軽く開けるだけで無理に高回転まで回したりはしない。

 

数分経つか経たないか、キャブレターの中のガソリンが限界を迎えたのかボッボボ・・・と妙な脈動を残して、エンジンは止まった。

 

「・・・っく~!

 大排気量の4発のエンジン音、最高だぜ!」

 

ウオッカはバイクにまたがったまま、拳を胸の前で握りしめて感動に打ち震えていた。

 

「堪能できたか?」

 

「ああ!

 サンキューな!

 父ちゃんのバイクは単気筒だからよ~、こういうのとまたエンジンの響きが違うんだよな~

 ドパパン、ドパパン、って感じでさ~」

 

あ、そういえば、ウオッカのオヤジさん、バイク乗りだったっけ。

なんか結構年季の入ったバイクに乗っているような話を以前していたから、ショップとかに詳しいかもしれないな。

 

「なあ、ウオッカ、一つ頼まれてくれないか?」

 

「なんだ?

 オレにできることならいいぜ?」

 

「オヤジさんに、この辺で評判のいいシート加工屋さん無いか聞いてくれないか。

 こっちにバイク持って来たはいいんだけど、シート直すの忘れててな~

 この辺来たばっかりでわからないし。

 バイクまたがってみたら脚はつかないわ、尻尾は痛いわで参ってたんだ。」

 

「?

 これ乗ってたんじゃないのかよ?」

 

「乗ってたが、乗ってた頃と今だと、(身体の)仕様が違うんだ。

 ・・・まあ、いろいろあるんだよ。」

 

ウオッカにはこのウマ娘世界に堕ちてきた当日、うかつにもいろいろ話しちまってるからな~

例の恥ずかしい身の上話に合わせつつ、ごまかすところはごまかして付き合っていくしかないだろう。

幸い、ウオッカはバイクにばかり目が行っているせいか、俺のあの恥ずかしい出まかせの身の上話とかに突っ込んでこないし。

 

「よくわからねーけど・・・

 まぁいいぜ。

 父ちゃんに聞いとく。

 連絡先教えてくれよ。」

 

「頼む。

 じゃあ、ウマホの番号これな。」

 

ウマホでワン切りして貰って互いに連絡先を交換する。

なんか、名の知れたウマ娘の連絡先ばっかり増えていくな。

 

「ところで、何か用事があってこっちに来たんじゃないのか?」

 

「あっ、いけね!

 トレーナー、明日から出張だって言うからよ。

 書類渡しに来たんだった。」

 

「急ぎか?

 急ぎだったら悪いことしたな。」

 

「いや、急ぎって程でもないけど・・・

 7月に合宿あるからそれの同意書渡すだけだし。」

 

「合宿って言うと、海か?」

 

「よくわかったな~

 2か月みっちり海辺で合宿!

 こんなに長く海で特訓とか生まれて初めてだから楽しみで仕方ないぜ!

 アンタは?」

 

「さあ?

 今のところトレーナーから合宿の話なんか微塵も出てないな~」

 

「わりぃ、一人だけはしゃいじまって・・・」

 

「いや、ウオッカが気にすることじゃねえよ。

 それより、海なんて成人したらなかなか行けないから学生のうちに思いっきり楽しんで来いよ。」

 

「なんかオレの親と同じこと言ってんな・・・

 アンタ時々スゲー年上に思えるぜ。」

 

「オッサンくさいとはよく言われるよ。」

 

「じゃ、ちょっくら行ってくる!

 ありがとな~!」

 

「ああ、またな。」

 

パタパタと走っていくウオッカと別れて、本来の作業に戻る。

 

バイクのキーをOFFにして、シートを外す。

シート下に収まっているバッテリーのマイナス端子から順に、配線を外していく。

プラス端子も外して、ストッパーも外し、バッテリーをシート下から引っこ抜く。

しばらくバッテリーなんか見てなかったけれど、バッテリー液が足りないとかはなさそうだな。

 

地面にバッテリーを置くと、背後から声がかかる。

 

「バッテリー、外しちまうんだ?」

 

背後にいつの間にかウオッカがいた。

 

「早いな、もう行ってきたのか。」

 

「書類渡すだけだからな。

 なぁ、作業見ててもいいか?」

 

「見てても多分詰まらないぞ?」

 

ウオッカがそれでもいい、というので、そのまま作業を続ける。

 

ウオッカに消費してもらったキャブレターの中の残りのガソリンを、ドレンを開けて、拾ってきたペットボトルに全部抜く。

とりあえずキャブレターの中のガソリンを抜いておけば、バイクを乗らずに長く放置しても腐って煮詰まったガソリンが悪さをすることだけはない。

これが最近のフューエルインジェクション車両だったら数か月くらい放置してもなんともないんだけどな。

 

このペットボトルのガソリンは、洗剤と混ぜて焼却炉に火が入る日に汚れた雑巾に染みこませて燃やして貰おう。

 

シートを外したままで、また屋根の下までバイクを押していき、センタースタンドをかける。

安物で、ただでかいだけの薄っぺらいバイクシートを被せて風で飛ばないよう紐で縛る。

 

「バッテリーとシートはいいのか?」

 

「このバイク、しばらく寝かせることになりそうだからな。

 バッテリーは寮の部屋に持って帰る。

 シートは、ウオッカから連絡貰ったら加工に出させて貰うよ。」

 

頼むぜ?とちょっとウィンクしてみせると任せとけ、と頼もしい返事が返ってきた。

 

荷物を抱えて、ウオッカとだべりながら歩いて、寮の門のあたりで別れた。

 

じゃーなー!と手を振るウオッカの革ジャンの背中には、ラインストーンで描かれたバイクの姿。

本当に好きなんだな、バイクが。

 

ウオッカと俺が、為すべきことを為して、トレセン学園を卒業して、彼女がバイクに乗り始めて。

一緒にツーリングにでも、なんて誘えるのはまだまだ先か~

 

ウオッカとツーリングに行く為にも、ラベノシルフィーの最後のレースは無事乗り切らないとならない。

何か運命の裏をかく方法を考えないとな。

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