我の進む道こそ王道なり   作:ごーたろんす

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前日譚
我の進む道こそ王道なり


その瞬間、下界全ての子供、下界に降り立った神々は予感した。

 

下界の王が産まれたのだと。いや、降臨したのだと。

 

 

 

 

 

 

 

精霊と共に生活をしているエルフ族。

その王家、アールヴ家にまた一人子供が産まれた。

綺麗な金髪に深紅の瞳。

なによりも産まれたばかりの赤ん坊のはずなのに思わず平伏したくなるかのような王気(オーラ)が溢れ出ている。

 

「この子の名はギルガメッシュ。ギルガメッシュ・リヨス・アールヴだ。」

 

父の名付けによりギルガメッシュは下界にしかと降臨した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギル。何をしているのだ?」

 

リヴェリア・リヨス・アールヴ。ギルガメッシュの姉にして神々とも並びうると評される美貌の持ち主。

 

「姉上か。本を読んでいる。エルフ族には足りぬものが多すぎる。

いや、エルフ族だけではない。下界の子供全てだな。」

 

椅子に座り長い足を組んで本を読んでいるギルガメッシュ。

つい先日15歳になった可愛い弟だった。

 

パラパラと本のページを捲るギルの隣に座り話を続けろという目線を向ける。

ギルはふぅと一息ついて紅茶を入れて姉に渡す。

 

 

 

「姉上。今は神々がこの下界に降り立ち、新たな時代と移り変わっている。それは理解しているな?」

 

リヴェリアは紅茶のお礼を言いつつギルのその言葉に頷き続きを聞く。

 

 

「そもそもだ。古代から新時代へ移り変わっているが神々などきっかけの1つにすぎん。

時は刻一刻と流れていく。当たり前の話だ。

 

本を読み、他種族のことにも目を向けた。エルフ族の歴史にも目を通した。

神々は幾つもの次元、幾つもの時代を見てきた筈だ。そんな本より過去を知れる神々がこれほど近くに来ているのになぜ下界は進んでいない?」

 

 

「…だがギル。オラリオは進んでいるのだろう?

進んでいないなどということは無いのではないか?」

 

ギルは静かに首を横に振る。

 

自分で考えてみよと言わんばかりに口を閉ざす。

 

 

どういうことだ?私は何を見落としている?ギルがここまで言うのだ。確実に何かある。

 

姉としてギルが産まれて15年ずっと一緒にいた。ギルは無駄な事は絶対に言わず、王としての覇道を自ら突き進んでいる。

だからこそ王として考えて……

 

「そういうことか。…ギル。私にはエルフ族しか想像できんが、この閉鎖的な種族だからこその停滞か?」

 

「ふっ。さすが我が姉上よ。愚物の父とは違う。我はエルフ族の王、いや、下界の王としての自負がある。

だからこそ民草には示さなばならん。このままではエルフ族は他種族に置いていかれる。ある種もう置いていかれている。

 

エルフ族の長所は豊富な魔力と精霊との親和性、そして同胞に対しての絆が強い。

逆に短所は肉体労働に向いておらず他種族を見下し、そして何よりの問題は発展しようとする気概の無さだ。

 

ヒューマン、アマゾネス、獣人族、小人族、様々な種族が織りなってこの下界はある。

 

そこを忘れ我がエルフ族が至高など烏滸がましいにも程がある。

 

我が王でなければこんな種族はとうに見放しているぞ。」

 

ギルの言葉には重みがある。自分の可愛い弟の筈なのに王としてのギルガメッシュを見せつけられ同じ王族なのに頭を下げそうになる。

 

「なるほどな。ギルの言うことは正しいと私も思う。だが今更変えられるものなのか?」

 

「変えれるではなく変える。我は王。王たる務めを果たすだけよ。だが今のままでは何もできぬ。

 

何故なら書物でしか外の世界を知らぬからな。

 

……姉上もアイナと共にもう外に行くのだろう?」

 

 

「……ギルは気づいていたか。」

 

「当たり前だ。我が我でいられたのは姉上。貴女とアイナがいたおかげだ。これを。」

 

ゴソゴソと2つ荷物を渡され、ピアスを2つ手に置かれた。

 

「餞別だ。このピアスは我の王の財宝(ゲートオブバビロン)に入っていたものだ。この財宝を渡すのは姉上とアイナくらいよ。今後配下ができれば考えてやらんこともないがな。」

 

 

「…ギル。ありがとう。大切にする。」

 

可愛い弟の頭をグシグシと撫でると無言でそのまま撫でられるギル。

 

本当に可愛いやつだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姉上が森から出て行ってしばらくはさまざまなエルフ族の集落を見て回り、現状のエルフ族の問題点をメモに書き記した。

エルフ族の中でも色々な性格の者がいる。王と祭り上げられたエルフもいればダークエルフもいた。

 

犯罪をするエルフ(殴って更生済み)や貧しくて食事もできないエルフ(王族なんて関係ないと家から大量の食材を配布)などヒューマンでなくともエルフ族も変わりないことがよくわかった。

 

 

ある程度梃入れはできたのでもうこの森には用はないと外の世界に行くことにする。

 

「幸いにも我はエルフ。時間はあるのだ。世界中を見てまわり、そして下界の民草を導ける王となろう。

 

まぁ王となる前に遊ぶのも一興。そこそこ回ったらオラリオに行って姉上に会いに行くか。あやつらも行くみたいだしな。

 

さて我の瞳に何を写してくれる?外の世界よ。」

 

ニヤリと笑い、フードを被って歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刮目せよ。下界の王が今この時より飛躍を始める。

 

神々ですら見通せぬ王が何を成すのか。

 

新時代の先を行く王が歩み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界中を見て回り、ギルがやったことは神々に恩恵をもらうのではなく民の暮らしを観察し、それがどうすればより良くなるのかを考えることだった。

 

種族が違えば何もかもとまではいかないが常識すら違う部分が多々ある。

 

それを踏まえた上で良くする為、ひいては子供達が健やかに大人になって次代に託せるような生活をできるようにするにはどうするか。

 

それを常に考え、まずはエルフ族に落とし込もうと画策していた。

 

ーーー問題はこの神時代。恩恵を授かりモンスターと戦う。それ自体は構わんが力、それも戦う力がある者が偉く力無いものが喰い物にされるなどあってはならん。

 

力とは1つではないのは雑種、民草もわかっておるだろうが三大クエストとやらのおかげでそのような現状になってしまった…か。

 

理想論だけで語るには今の時代は不可能に近いな。

 

 

 

 

ギルはこう考えつき、結果だけ先に言ってしまえば戦闘力を上げることにした。

 

極東にて技の極地とも言われる武神。タケミカヅチに出会い、貧窮を極める社に王の財宝から大量の食事と自ら稼いだ金を渡して教えを乞うた。

 

 

 

「ううむ。ギルガメッシュ。本当に出て行くのか?」

 

 

社の子供達にまとわりつかれながら優しい目で子供達の頭を撫で、抱っこしているギル。

 

タケミカヅチがこう言ったのは子供達が非常に懐いているのもそうだが、極東でも食事に困らない農業や仕事を教え、皆を笑顔にしたからだ。

 

そして権力のある者に対しては、王の財宝の波紋から剣や槍の先端を出して脅しに脅した。

 

ーーー雑種めが。我は王だ。そして子は宝よ。宝は全て我のもの。我のものに手を出そうなど死に値する。

雑種。貴様ができるのは頭を垂れて我の宝を必死で守ることだけだ。

ああ。安心しろ。雑種にも劣るゴミはこの王自ら間引いてやろう。

 

 

そう言って朝廷の中でも控えめに言ってもクズと思われる者は全て消した。女神アマテラスやツクヨミは困った顔をしていたが納得もしていた。

 

タケミカヅチは子は宝という言葉にまったくもってその通りだと頷く。

 

何よりハイエルフである筈のギルガメッシュが子供とはいえ、ヒューマンのおしめを替えたり肩車をしたりと触れ合えていたのだ。

 

技を教えるにしても喋り方が多少傲慢とはいえ、真摯に取り組んでタケミカヅチも舌を巻く程の成長を見せた。

 

「ああ。神タケミカヅチ。世話になった。我はエルフ故に力もある程度までしかつかんと思っていたが…。そんなこともなかったな。

 

これも我の見聞を広げることになった。この子らは次代の宝よ。神タケミカヅチが孤児を引き取り、父のように抱える。

 

それを見たからにはエルフ族、ひいては下界の王たる我が助力するのは当然。下界に住まう者の代表として礼を言う。」

 

「俺は神だが…。こう、なんだ。下界の王に礼を言われるとやはり嬉しいものだな。孤児を引き取るのは俺の自己満足かとも思っていたが、認められるとやはり嬉しい。

 

何よりハイエルフであるギルガメッシュがヒューマンの子と触れ合えたのが嬉しいことだ。」

 

 

ギルはふっと笑い膝の上に座って抱きついていた命を抱き上げて横に座らせる。

 

「ギルさま??命は抱っこしてほしいです!」

 

「ふふ。命は可愛いな。だがすまない。これからは父、タケミカヅチにしてもらうと良い。

我はもう出る。そうだな…。命。桜花。千草。お前たちはいずれここを出るだろう。他にも一緒に行くものはいるだろうがお前たち3人は決してここに留まるような器ではない。

 

オラリオにこい。我も旅の最後にはオラリオへ行く。そして下界の子供の悲願を達成し、この下界をより良くするぞ。

 

この王と約束だ。」

 

 

子供達は首を傾げながらも約束約束!!と大はしゃぎしている。

 

タケミカヅチはその光景を目に焼き付けた。これが下界の王かと。天界にも王と名乗る神々はいたがまさに王の中の王だと認める。

 

ギルは話そこそこに極東を出てまたオラリオまでの旅路を楽しむことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーなんだ?兎人??いや、ヒューマンの子か。我の瞳にそっくりだな。あれは神?しかも高位な神だな。

 

む?隠れて見ている女と男……

 

あれは強いな。冒険者とやらか。

 

子を狙っているのならば容赦はせん。威嚇程度に撃ち抜いてやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー王の財宝(ゲートオブバビロン)射出。

 




見てくれてありがとうございました。


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