我の進む道こそ王道なり   作:ごーたろんす

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ギル様カッコいいよね。

アルフィアとザルドってどういう風に扱うのが正解なんだろ


王とは?

それは急に現れた。恐らくレベル4程の力で投げられた槍や剣が10本程私達のいた所に着弾する。

 

轟音を上げガラガラと甥を隠れて見ていた場所が抉り取られ崩壊する。

 

だがこちらは最強と評されていたヘラ、ゼウスファミリアのレベル7。この身が病に蝕まれていてもあれくらいの攻撃なら避けられる。

 

 

「……オラリオからの追手か。」

 

まさかレベル4以上の追手をあの数だけオラリオから出すとは思わなかった。ザルドも同じようで大剣を構えている。

 

しかしやってきたのは何か色々おかしいエルフだった。

 

極東の服……。甚平とやらだったか?待て。エルフはあの年増もそうだが肌を他者に見せるのは嫌なのでは無かったか??

 

何故半袖短パンなのだ。

 

恐らくこの人生で一番と言っていいほどのマヌケ顔をしているだろう。

 

ザルドも同じようでポカンとして固まっている。

 

スタスタと歩いてくるエルフを普段は閉じている目を開けて見る。エルフとは思えぬ程に鍛えられた身体。そして歩くだけでわかる技術の高さ。目には怒りの炎。

 

ザルドも気づいたのか構えつつ口を開く。

 

「……どこのファミリアの者だ。」

 

そうだ。オラリオでもこのレベルのエルフなど見たことがない。こいつは一体……

 

「黙れ雑種。誰が口を聞いて良いと言った。子は宝。すなわちあの子も我の宝よ。我の宝に手を出す雑種は殺す。

 

が、貴様らはただの雑種とは違うようだ。それは認めよう。よってこの王自ら貴様らを処罰してやる。」

 

……何を言ってるんだこいつは。あの子は私の甥だぞ?私の可愛い妹の子。ああメーテリア。

 

「……待て。王だと?まさかっ!!」

 

ザルドがそう言った瞬間に先程の比にはならん速度の剣や槍が飛んできた。

 

あれはこいつがやったのか!?くっ!あれは魔法か!!

 

黄金の波紋から次々と射出されてくる剣や槍、挙げ句の果てには鍋まで飛んでくる。

 

「おっと。命と買いに行った鍋まで出てしまった。」

 

鍋は着弾する前に粒子となって消えた。つまりこいつはこの速度で射出しているものを知覚、把握しているということ。

 

こいつは強い。

 

ザルドもわかったのか頷き本気になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーほう。この速度なら対応されるか。神々の恩恵とやらか。しかし瞳を見てわかる。雑種……いやこいつらはあの子に特別な思いがあるようだ。いきなり攻撃した非礼は詫びよう。

 

だが我もタケミカヅチのところで教わった技術を試したいと思っていた。近接においての実力差はある。が、格上相手にどこまでやれるか。

 

 

否!!

 

 

 

どこまでだと?我は唯一無二の王!王の中の王だ。我がやらねば民は着いてこん。近接で勝つ。必ずだ。

 

 

 

 

 

 

波紋からの射出が止み、砂埃が落ち着くとエルフはジッとこっちを見ている。先程までとはどこか違う。

 

私もザルドも多少の傷はあるものの大したものではない。

 

「王とやら。1つ良いだろうか。」

 

「……貴様らはどうやらそこいらの雑種とは違うようだ。我の勘違いだったのは認めよう。その詫びとして口を開くのを許す。」

 

 

「感謝する。貴殿はエルフ族の王家。下界の王と噂されているギルガメッシュ・リヨス・アールヴ様でよろしいか。」

 

何?あの年増の家系だと?それにギルガメッシュの名は私でも聞いたことがある。メーテリアが会ってみたいと言っていたやつだ。

 

「いかにも。我が王の中の王。ギルガメッシュ・リヨス・アールヴだ。名乗れ。貴様ら。」

 

「ゼウスファミリア、レベル7の暴喰のザルド。」

 

「……ヘラファミリア、レベル7。静寂。アルフィア」

 

ーーーレベル7か。ふっ。超え甲斐がある相手だ。だが此奴らに見えるモヤの様なものはなんだ。まぁそれは後だ。

 

チャキっと音を鳴らしてタケミカヅチと共に作った刀を出して構える。

 

「我は王。(おれ)は我が王としての責務がある。その為には貴様ら程度に負けてはおれん。エルフが苦手とされる近接にて必ず勝つ。」

 

ザルドは思わず笑ってしまっている。私も笑いはしないが魔法使い(マジックユーザー)が顕著なエルフ、それも莫大な魔力を持つと言われるハイエルフが近接だと?と思う。

 

あの年増も魔法はまあまあだが近接は犬の餌レベルだった。面白い。それにこいつの言葉には覚悟がある。雑音とは違う。

 

「……ザルド。」

 

「わかっている。王よ。俺は近接主体。アルフィアは魔法も使う。まぁ埒外の才能を持っているから近接も強いが……。

 

俺が相手をさせてもらおう。」

 

あのエルフはニヤリと笑いザルドに斬りかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

防がれた瞬間に大剣と刀がぶつかったところを中心に回転してザルドの裏を取る。

 

しかしザルドはすぐ対応して防ぎ大剣で薙ぎ払う。

 

それをギルガメッシュは刀を斜めにして衝撃ごと受け流しまたしても間合いの中に入る。

 

 

ーーーやはり強い。受け流すだけで腕が痺れた。だがこれこそ我の望んだ戦い。もっと速く、もっと鋭く、もっと脱力を。

 

 

急激に技術が伸び、今にもザルドの喉元を喰い千切ろうと襲い掛かる。

ザルドもレベル7にしてあのベヒーモスを倒した漢。幾ら技術が凄かろうと軽い攻撃では倒れない。

 

ザルドは膨大な戦闘で培った経験があり、逆にギルガメッシュはその経験がほぼない。稽古としてタケミカヅチと戦うことはあってもタケミカヅチは神威を封印しているほぼ一般人と同じ身体能力だ。

 

恩恵のあるそれも最高レベルとも言えるレベル7のザルドに対して時間の経過と共に劣勢になっていく。

 

弾き合い、一旦距離を取る。

 

 

ザルドはある違和感を覚えていた。技術は明らかにオラリオのガキ共の遥か上。なんなら自分以上。アルフィアでも真似は出来ても身体に落とし込めるかといえば否だ。

 

それほどにギルガメッシュの技術は才能がある上で長い時間を費やし、しかと自らのものにしていると断言できる。

 

だがおかしい。確かに外の世界だとレベルをあげるのは難しいがレベル2程度の身体能力しかないのだ。

 

あの魔法といいレベル4くらいはあって然るべきなのだが。

 

 

「王よ。この戦いの相手として1つだけ問わせてほしい。」

 

「良い。許す。」

 

 

「王のレベルを教えてほしい。」

 

 

「……??レベルだと?我は恩恵を貰っていない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「……は?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉にザルドとアルフィアは言葉を失った。あれ程の魔法に多少なりとも手加減をしているがレベル7のザルド相手に近接戦闘が成り立ってしまっているエルフがレベル以前に恩恵無し。

 

私以上の才能の権化ではないか。年増なんぞ相手にもならんぞ!?

 

アルフィアの背に冷たい汗が流れる。

 

 

「…くく!くははは!!さすがは王だ!!俺の目も曇ってやがる!これこそ下界の未知?いいや違う!

 

下界の王だからこそここまで出鱈目なんだ!」

 

「出鱈目とは酷い言い草だな。ザルド。貴様でなければ不敬罪で処刑しているぞ。しかし手抜きをされてこの様とは王として恥ずべきことだ。

 

 

ザルド。本気でやれ。我を殺してしまっても罪には問わん。」

 

「わかりました。王。このザルド、全力でやらせてもらおう。」

 

 

ザルドは本気で接近して本気の振り下ろしをする。

 

ーーーは、やい!!マズイ!

 

刀では対応しきれない!!

 

 

全てがスローになっていく。ここで諦める?下界の王が諦める?

 

 

 

 

 

 

 

ふざけるな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーギルガメッシュ。お前の理想とする王はなんなんだ?俺達神にも王ってのはいるけどなどうも下界と天界じゃ違うらしくてなぁ。ギルガメッシュを見てると神である俺すらも着いて行きたくなる。

 

 

ーーー天界の王がどんなのかは知らんが王にも色々ある。賢王、愚王、独裁王、その時代においての王、その国に応じた王がいるだろうよ。

 

だがなタケミカヅチ。我は唯一無二の王の中の王を目指す。だからな我がなるべき王とは………

 

 

 

 

 

 

「う、おおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

刀を捨て、新しく波紋から出した剣を2本重ねて大剣にぶつける。火花が飛び散り両腕の骨にヒビが入るが痛みを無視して耐える。

 

地面が陥没するほどの圧が大剣からかかってくる。

 

 

まさかあのザルドの本気を恩恵無しが耐えるだと!?

 

 

アルフィアは目を閉じることもせずにその光景を凝視する。

 

 

「王よ。見事だ。」

 

 

ザルドは笑い大剣を横薙ぎする。それも2つの剣でガードするが身体は言うことを聞かず吹き飛ばされ山の斜面に突っ込んでいく。

 

 

 

「……おい。ザルド。やりすぎだ。」

 

 

「う……。え、エリクサーあるから……その、だな。」

 

 

「ふん。大方あの雑音共と違う本物を見つけてはしゃいだんだろう。ガキか貴様…!!!」

 

アルフィアは溢れんばかりに目を見開きザルドの後ろを見ていた。ザルドはまさかと思い、バッ!と後ろを見る。

 

綺麗な金髪は血塗れ、片目を閉じて血だらけになり、甚平はボロボロで上半身はほぼ裸。腕はあらぬ方向に曲がっている。

 

しかしおぼつかない足取りだが己の足でこちらに歩いてくる。

 

「……王とは、惑わず。曲げず。頼らず。常に民の先頭に立ち続け、導く者の事だ。貴様らとて我の民。迷子になっておるのならば我が導こう。

だからこそ只では負けん。次は勝つ。」

 

 

そう言ったギルは立ったまま気絶した。あくまでも倒れることを拒否するギルに感服するザルドとアルフィア。

 

 

こんなやつがいたのか。メーテリアが会いたいと言っていたのがよくわかる。ギルガメッシュはとても美しい音を奏でる。

口だけの雑音、上を見上げて立ち止まる雑音とも違う。私が求めていた英雄そのものだ。

 

だがギルガメッシュは英雄なり得ない。何故なら王だから。

 

 

 

「エリクサーを飲ませたから大丈夫だとは思うが。アルフィア。どう思う。」

 

「……ギルガメッシュは英雄の器だが私達の求める英雄にはならん。ギルガメッシュは王だからな。」

 

ザルドもそれはわかるのかゆっくりと頷く。

 

「ふん。英雄の中の王と言うのも悪くない。賢王だのなんだのと色々な王が多い中唯一無二の我は英雄王とでも名乗るのも一興よ。」

 

 

2人はいきなり話し始めたギルにビクッとしてしまう。

 

「もう目覚めたのか。」

 

 

「ああ。口の中に何か入ってきたら起きるのは当然だろう。しかし貴様らは英雄探しでもしているのか。

…まさかあの子ではあるまい?」

 

 

アルフィアはため息を吐いてザルドは笑いながら説明する。

 

そういえば勘違いされたままだった。

 

 

「ほう?アルフィアはヒューマンであろう?見た目通りの年齢だと思うのだが…。妹の子…。ああ。その見た目と若さで叔母さんと言われるのは嫌だろうな。

 

我でも10代で叔父さんと言われるのは嫌だ。」

 

 

「……わかってくれるか。」

 

アルフィアは本当に嫌そうにぽつりと呟いた。

 

ザルドは叔母さんと言って吹き飛ばされないギルガメッシュにこれが王の中の王!英雄王ギルガメッシュ!!と内心で仰いていた。

 

それから色々と話をして夜営をする事にしてテントや食材を出すとザルドは目をキラキラさせて料理させてくれと料理を始めた。

 

ーーー美味い。

 

この一言しか出ないくらいザルドの料理は美味しかった。それからいつもの鍛錬をしているとアルフィアだけが近づいてきた。

 

「……私はどうすれば良いのだろうか。あの子に会ってみたい。だが…。」

 

「何を悩むことがある。あの子はアルフィアの愛おしい妹の子。ならば会えば良い。お義母さんと言わせれば良いだけだろう。」

 

「お、義母さん……」

 

「どの道我はあの子に会いに行く。明日行くから貴様も着いてこい。」

 

それだけ言って鍛錬に戻るとアルフィアはその場に座ってブツブツと何かを呟きながら考えを巡らせていた。

 

ーーーどれだけめんどくさいのだこいつは。妹が大好きなのだからその子も好きになるに決まっているだろう。

 

それにあの子は妹にそっくりなのだろう。まぁこの歳で叔母さんはちと嫌かもしれんがな。

 

あとは知らんと無視し続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………どれだけ往生際が悪いのだ貴様!!いい加減にしろっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝、いざいかんとなってから嫌だ嫌だ!とゴネ始めるアルフィアに呆れる。だけならよかったのだがギルガメッシュも止めろ!あの子はあの子は!とぐちぐちいい始めギルはキレた。

 

 

「ええい!!このたわけめ!!天の鎖!!!」

 

黄金の波紋から出た鎖にぐるぐる巻きにされるアルフィア。天の鎖は対神兵器。神からの恩恵を受けている冒険者にも効く。特にレベルが上がり器を昇華させ、神の器に近くなるやつほどよーーく効く。

 

「な!なんだ!これは!!」

 

「ザルド。この馬鹿を持て。あの子のとこに引きずり出してやる。あの子は生涯一人だと思っているんだぞ!!貴様は歴とした血の繋がりのある者だろう!

 

子は宝だ!!どんな黄金にも勝る!!それを理解してきっちり話し合え!」

 

 

ザルドはビクビクしながらアルフィアを担ぎ、ギルの怒りとその言葉を受けて目を見開きがっくりと項垂れたアルフィア。

 

不思議な3人が田舎にある1つの家に向かって歩き始めた。




読んで頂きありがとうございます。

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