本当にありがとうございます。とても励みになりました。
とはいえやる事もまだ増えたので不定期更新となりますがこれからもよろしくお願いします!
ーーー時が巡れば良くも悪くも変化が訪れる。その変化にいち早く気づいて対応できねば置いていかれる。あるいは手遅れになる。
それは冒険者だけでなく生きとし生けるもの全てに当てはまるであろうよ。
「ギル。ここだ。あの花のモンスターの臭いがしやがる。」
ベートに匂いによる追跡をさせ、ロキを守りながら歩くと地下水道に行き当たった。
「嘘やん!うち濡れるん嫌や!ベートおんぶ!」
「っざけんな!くそ!おい!降りやがれ!!」
「仲が良くて何より。神々なんぞ我が民ではないから消え去ろうがどうなろうが知ったことではないが、ロキは別だ。姉上やティオナ達の主神であるからな。
我の民が大切に想っているならば別よ。ベート。我が会敵したら駆除してやるからロキを守れ。」
「ちっ。ギルが言うなら仕方ねぇ。ロキ。そのまま大人しくしてろ。」
ーーーいやベートめっちゃギルの言うこと聞くやん。ウチのファミリアでここまでベートの手綱取れるやつおらんくない?
改めてギルのカリスマを見せつけられてロキは唖然としてしまう。
ベートが案内し、ロキと喋りながら歩くと空洞になっている場所にモンスターが2体程いた。
「ロキ。降りて下がってろ。背負ってると守りにくい。」
頷き、降りようとするとそのままで構わんとギルが口にした。
「ベート。貴様には見せていなかったな。我の基本的戦術を。圧倒的物量で粉々にする。だ。
王の道に雑種はいらん。我の進む道は常に真っ直ぐ。それが王道にして覇道よ。」
パラララッと黄金の波紋があらゆる空間に浮かび上がり、そこからレベル5のベートですら目で追うのがやっとの速度で武器が射出される。
轟音を鳴り響かせ、食人花は消滅していた。
「……。ギルよぉ、詠唱したか?」
「これは無詠唱だ。我にとってこの王の財宝は生まれた時からそこにあったものだからな。言ってしまえば幾らでも詰めれるカバンから物を出してぶん投げているだけの魔法だ。」
「ギル。近接戦闘いるか?」
「戯け。我は下界の王。ベート。貴様やガレスはステゴロのできぬ王について行こうと思えるか?」
「……そういうことかよ。確かにテメェは王様だ。ロキのこと任せていいか?俺は下の方を見てくる。
……王様だけに働かせたなんて言われたくもねぇしババアと音ババアにバレたら殺されちまう。」
ベートが下に降りて行ったのをみてロキは口を開く。
「なぁギル。あんたホンマに王様やな。うちから見てもめっちゃカッコええわ。」
「当然であろう。民無くして王にならず。民の信を得られぬ王などおらぬ方がマシだ。我は民が笑って過ごせる世を作りたい。
子らにはベルの様に健やかに成長してほしい。もちろん光あれば闇もある。だがなロキ。我は光に手を伸ばせる子らの手を掴み、引き上げてやりたいのだ。
そしてその子らが成長した時同じようにしてやってほしい。我が生きている間にならなくとも、未来ではそれが普通なのだと言える世になって欲しいのだ。」
ギルは未来を見据えて行動している。悠久の時を生きるウチらにとってそれはとても眩しく、下界の未知とも言える。
ベル・クラネルやアルフィアを見ていても思う。ヘスティアファミリアは本当にすごいファミリアだと。
ウチらも負けてられへんなぁ。
ベートが戻り、特に何も無かったのを受けて一度黄昏の館に戻ることにした。今後の動きについても話し合うのでロキの部屋で紅茶を飲んで幹部共が来るのを待つことにした。
ーーーそうか。闇派閥が関係しているかはわからないが、ダンジョンからモンスターを地上に運んでいる何者かはいるということだね?
ーーーそやな。フィンの考えの通りや。後は……
ーーーダンジョンの入口が一つでは無い。我はオラリオに来て浅いがあの雑種を運ぶには入口からでは目立ち過ぎる。
ならば別の入口があると考え、備えるべきであろう。策を練るならば常に最悪の状況を予測し、それすら対応できる策を練るべきだ。
今考えられる最悪はザルドやアルフィアのような知られていない最高レベルの冒険者が敵の場合。
闇派閥の生き残りとやらがレベル8クラス、それ以上のモンスター、モンスターに準ずる何かを保持している場合。
情報戦において地上で味方、あるいは味方になりそうな神が諜報員としてこちらに紛れ込んでいる場合だな。
ギルの言葉にウチも、幹部連中も口を閉ざす。あり得ないなんてことは下界においてあり得ない。それは女神であるウチが一番良くわかっとる。
ーーーギル。戦闘において我々ができることは地上の人々を守り、敵を討ち果たす。その為の策はフィンが考える。
その上で姉としてできる弟に質問したい。ギルの目で見て確実に味方だと言える神々は誰だ?
リヴェリアの言葉に全員顔を上げ、ギルを見る。
ーーーふむ。王として信用足る神々と言えば、我の主神であるヘスティアは間違いない。
それにデメテル。ヘファイストス、ミアハ、ゴブニュ、フレイヤに、タケ。ああ、タケミカヅチのことだ。
それとそこのまな板だな。都市外であれば下半神とヘラ、それにアルテミスは間違いなく白。善神かどうかはおいておけ。
ロキを見ればわかるだろう?
ーーーちょい待てや!!誰がまな板や!!
ウチがギルに飛びかかるとギルはうるさそうに顔を顰めている。痛っ!リヴェリア待って!頭割れるから離してくれぇぇぇぇ!!
「よいよい姉上。そう言えば姉上には王族の技を教えていなかったな。ちょうど良い。今教えよう。」
ーーー
ニヤニヤしながら殴ると姉上を含む全員が吹き出して何人かはお腹を押さえて床に突っ伏した。
アイズは目をキラキラさせて姉上の服をぐいぐい引っ張ってロキを指差す。
「…リヴェリアも!やって!」
固まる姉上と必死で笑いを堪えているほかのメンバー。しかし姉上はアイズにとても弱い。
頬を染めてロキをみる。
「あ、アールヴパーンチ…。」
ゴスッと音が鳴ってロキは倒れ、アイズとティオナ以外も床に倒れた。我が煽ったがこれはヒドイ。
「姉上。アルフィアの
殴り方もアルフィアに教えてもらえ。ベートを殴る時便利になるぞ。」
ーーーむ。ギルが私の話をしている気がする。
そのまま少し話をして、何か分かればまた連絡すると伝えてホームに戻ることにした。アルフィアにロキファミリアと話し合ったことを伝え、今後どう動くかも考える。
「はぁ。これだから神々は。五月蝿い上に面倒だ。」
「その通りだが、奴等は我の民では無い。手を出してくるなら滅ぼすまでよ。ベルはまだ帰ってないのか?」
「いや、ヘスティアが一緒に出かけたのにモンスターのせいで遊べなかったのがショックだったみたいだ。
今は2人で食事に行っている。そのまま今日は教会に戻るそうだ。」
ベルが何やら小人族のサポーターを仲間にして共にダンジョンに潜っているようだ。アルフィアはその小人族が女だと聞いて不貞腐れていたがな。
二人で散歩をしながらロキファミリアに向かう。理由はティオナとアイズが武器の為に多額の借金をしているらしく、ダンジョンに少し籠るとのことなのでアルフィアはついでに鍛えてくると。
我はロキとお茶をするつもりだ。いくら姉上やティオナ達とはいえ、王たる我がわざわざ強くする必要はない。我自身レベルに執着しているわけではないが未だにレベル4。
確かにアビリティは伸びているがランクアップする為の経験値はまだ足りていない。よって己よりレベルが低い相手に成長させてもらったなど、ロキファミリアの連中も言いたくはあるまい。
ゆっくりしていると夜に慌てて帰ってくる姉上達がいた。
「何?リヴィラにモンスター?我が民が殺されただと。」
ーーー五月蝿い。ボールス。何があった。
ーーー姐さん!?ロキファミリアの連中も!?いえ、殺しです。何も動かさず、死体に
ーーー…ガネーシャファミリア。ハシャーナ・ドルリア。レベルは4だな。私は雑音のことはしらん。
ーーーガネーシャんとこのハシャーナっつったら剛拳闘士っすよ!?姐さんからすりゃそりゃ雑音ですけど。
恐らく女がやりました。一緒に宿に入ってたんでさぁ。ハシャーナは何かミッションの帰りって言ってやしたぜ!一応ギル様にもご報告した方が良いと思って遣いをやろうとしてたんすけど…。
ーーー……。おいエセ勇者と行き遅れ。貴様等はオラリオの為と言って何も出来てない。行き遅れと狼小僧はまだマシだが他はザルドの件から何も進めていない。
貴様等で解決しろ。手間取るなら私が魔法を貴様等にくれてやる。
金髪小娘。ティオナの姉。貴様らは行き遅れの指示を見て自分に何ができるか考えて動け。
ティオナ。お前は怪我をしない立ち回りを覚えろ。技術が圧倒的に足らん。
レフィーヤ。お前の覚悟は聞いている。ならば姉としての矜持を見せろ。
私から見て出来ていなかったらお仕置きだ。
ボールスやリヴィラの街の冒険者を含めた全員が顔を真っ青にして頷き、フィンと私を見てくる。
「…それって僕もだよね?」
「当たり前だ。貴様が無様を晒したら狼小僧の様に耐久をひたすら上げてやる。」
口元をひくつかせてフィンは死体と部屋を見ていく。
ーーーこれは…。首を折られてそれから頭を殴るか蹴るで破壊しているのか?ポーチの中身が出ていると言うことは恐らく目当てのものが無く、八つ当たりしたのか?
ーーーつーことはハシャーナの持ち物目当てで誘い出して首折って殺害。そのあとイラついてってことかぁ?
しっかしそこまでやるか?普通。
ーーー普通じゃないんだろうさ。ボールス。女と言ったね?広場に全員集められるかい?
ーーー待て。フィン。この死体おかしい。首の部分に皮が剥がされている跡がある。そう見せる為のカモフラージュの可能性がある。
フィンは口を閉ざして眉を歪め、何かを考えている。アルフィアは目を閉じて壁にもたれて腕を組み、アイズ達はフィンの指示を待つ。
ーーーおい勇者。とりあえず18階層は閉じたから広場で調べねぇか?姐さんとギル様に鍛えられた俺らはそもそも殺しなんかしねぇ。
ギル様の民に手ぇ出すなんてアホか何も知らねぇやつのすることだ。紛れ込んでるやつがいるんだろうよ。
俺様達が調べてやっからその間に考えをまとめとけ。
そこからのボールスの手腕は私の目からしても見事だった。
「てめぇら!!!ギル様が大切にしている民が亡くなった。殺しだ。なら俺らがやることはわかってんだろうな!!」
「「「当たり前だ!!!見つけ出してやらぁ!!」」」
「おう。それでこそここの住民だ。ロキファミリアがちょうど良くいやがるからな。レベル4が殺されてる。無理はすんな。
そういうのはロキファミリアにぶん投げるぞ。
俺等のやることは犯人を見つけて逃さねぇように抑えてロキファミリアにぶん投げることだ。
モルド!!治癒院のポーション全部出せ。マジックポーションは九魔姫に渡して配分してもらえ。おい勇者。ここにあるエリクサーは4本だ。仕入前でちょっとしかねぇが死ぬよりマシだ。
使っていいから必ず犯人を捕まえろ。」
リヴィラがここまで完備されているとは思わなかった。そしてあの金の亡者とも言える男がギルの為に全てを投げ出してでも仇を討とうとする。
姉としてここまで誇らしい弟はいないだろうな。
そこから怪人とも言える女のテイマーが現れ、アイズを狙い、その上に食人花が大量に出てきた。
フィンの指揮とリヴィラの街の冒険者の援護により、なんとか押し返すことができ、アイズはアイズで怪人を技術にて圧倒。
アルフィアの指導がかなり身についていた。
ーーーだって、ベルが、どんどん強くなるから…。私も負けたくないなって…。
アルフィアは目を閉じて、少しだけ微笑んでいた。
「なるほどな。アルフィアも知らんと。時は巡る。ならば変化が訪れるのも摂理であろうよ。
我の民に手を出したのは許さん。それにアルフィア。そのハシャーナとはベルがオラリオに来た時に英雄になると言って応援してくれて食事に誘ってくれたと言っておったやつであろう。」
「……あいつか。ちっ。あの雑音を金髪小娘に任さずズタズタにしてやれば良かった。」
怒気を露わにするアルフィアを見てロキファミリアは身を固くしてしまう。
何かわかれば情報交換すると伝えてアルフィアと共にホームへ帰る。
ーーなんだこの同胞は。おかしい気配をしている。そしてこの男神。気配が反転している?いや、酔っているのか??
確かヘスティアもオリュンポスだったな。天界の時のことを聞いておくか。
ベル君の冒険も、アルフィア視点も、ギル様の冒険も書きたいことが多過ぎるぅぅぅ!!
ゆっくり書いていこうと思います。