久しぶりに実家に戻り、自分の部屋の掃除をしていると幼馴染が窓から入ってきました。
相変わらず元気で嬉しい反面もう三十路なんだから落ち着けよと思いました笑
母と妹が落ち込んでるのを気にしてくれていたみたいで感謝しかありません。みんな友達は大切にしようね!
ーーーリリはなぜこんなことになっているのでしょうか??
ベルの後ろを隠れて歩いていると小人族が私のベルのナイフを盗んで苦しそうな顔をしながら走っていく。
これがあの子が言っていた悲しそうな顔か。私は他人の感情の機微に疎い。正直、メーテリア以外の雑音がどうなろうとどう思おうと知ったことでは無かったからだ。
しかしギルに出会ってマリアやアイナ、年増と話し、子供の大切さを学んだ。何より最愛の息子に出会えたのだ。
そして今走っている小人族。リリルカ・アーデの情報を豚から聞いて把握している。
目の前で雑音共に囲まれ、殴られ、搾取される。挙げ句のはてにモンスター共の囮にされる。
「これだから冒険者は。でも、そうですよね。これは、あのお人好しのベル様を騙した報い。だとしたら、諦めも……
悔しいな! 神様。どうして、どうしてリリをこんなリリにしたんですか? 弱くて、ちっぽけで自分が大っ嫌いで。でも何も変われない、リリに」
リリルカの言葉は病に蝕まれていた時の私自身に近いものがあり、よく突き刺さる。
レベルが高いおかげなのか、私自身の言葉だからなのか、良く聞こえてしまう。
「寂しかった。誰かといたかった。必要とされたかった。でも、もう終わる。やっと死ねる。やっと終われる。
何も出来ない自分を、弱い自分を、ちっぽけな自分を、価値のない自分を、寂しい自分を。あ~、リリはやっと、死んでしまうんですか!!」
涙を流しながら小さい身体で、勇気と誇りが、芯がある少女の慟哭がダンジョンの通路に響く。
動こうと思うがどうしても動けない。私みたいなやつが、一度ベルを捨てようとしてしまったこんな女があの生きようとして必死になっていたあの誇り高い少女を救ってしまって良いのか?
私にはこのオラリオで生き抜ける力と才能があった。最愛の妹がすぐそばにいた。かつてのトップファミリアに在籍していた。
たがあの少女は何もなかった。それでも諦めないで生き抜いていた。あの子は15歳。まだ子供だ。
なんなら闇派閥の雑音共がいた7年前もオラリオにいて今尚生きている。それはもう強さだろう?
だが私のような女が肯定してどうなる。
……私ではあの少女の英雄になり得ない。
「リリィィィィィィィ!!!!!」
ベルがいつもの鍛錬の時以上の速度でキラーアントを薙ぎ倒してリリルカを抱き抱える。
「べ?ベル様??な、なんで。」
「女の子が泣いてるんだ。それに僕の大切なサポーターが泣いてるんだから助けるのは当然だよ。
ちょっと待ってね?このモンスターを全部倒して絶対に助けるから!」
ニコッと笑って言うベルにリリルカはポカンとしていた。ふふふ。やはりベルは英雄だ。ギルもこのベルを見たかっただろうな。
足が軽く動く。コツコツと靴を鳴らして歩いて行く。
「お義母さん??」
「ベル。そのままリリルカの怪我を治してやれ。福音。」
福音でキラーアントどころかダンジョンの壁まで粉々にしてやる。ベルは安心したのかリリルカを魔法で癒す。
「…リリ。僕達仲間でしょ。僕は何度だってリリを助けるよ。僕は英雄になる。その為にもリリが必要なんだ。
ほら僕ってモンスターと戦えても戦術とか戦略って苦手だから。
だからリリ…。そっちは任せるからね?」
リリルカは大声を上げて泣き、ベルにしがみついていた。
「リリルカ。お前は私の娘にする。異論反論は認めん。」
「へっ???」
「え???」
私はリリルカを抱き上げてそのまま地上に戻っていく。
「お、お義母さん?リリを娘にするって??どういうこと?」
「そのままの意味だが?あんなクソファミリアに可愛いリリルカを任せることはできん。家に住まわせて愛でる。」
「へ?お、お義母様??ですがリリは別ファミリアで…。」
「お義母さんと呼べ。ギルドの豚とエイナがソーマファミリアを調べている。約束で更地にはできんが、どうとでもなる。」
「し、しかし、リリがいたら狙われてしまい、迷惑がかかってしまいます!!」
「あんな有象無象に何ができる。」
「あー、リリ?お義母さんレベル8だよ??お義父さんはレベル4だけどお義母さんと同じくらい強いし。」
リリルカはポカンとしてプルプル震え始めた。
ーーーレベル8って今都市内で噂になっている元ヘラファミリアの静寂!?ということは下界の王のギルガメッシュ様もおられる!?
というかベル様はその義息子!?何それ怖い……
大人しくなったリリルカをそのまま家に連れて行くとギルとヘスティアも帰っていたのか台所からいい匂いが漂ってくる。
ベルとリリルカと一緒に手を洗い、椅子に座ってリリルカを膝の上に乗せる。ふむ。小さい頃のベルと同じで可愛い。素晴らしい。
「ってことがあってお義母さんがリリのこと娘にするって。」
ベルの話を聞いて納得する。リリルカはちゃんと反省もして、その上で前を向き、光に手を伸ばし続けていた。
ならば我も王として手を握ってやらねばなるまい。
「アルフィアよ。娘というのは一旦置いとくが我が家に住まわすのはもちろん良い。リリルカも我が家と思って生活するが良い。
教会も補強したとはいえ、ヘスティアとベルでギリギリの小さなホームだからな。」
「……ギル。リリルカは娘にするぞ。」
「ワガママを言うな。リリルカだって急に言われても困るであろう。それに本当の息子、娘ができたらリリルカは一歩引いてしまうタイプだ。」
「は、はい。その、アルフィア様がそう言ってくださるのはとても嬉しいです。リリはそんなこと言ってくれる人はいませんでしたから。
でも、その、ベル様に甘えるだけは嫌です。リリもベル様を支えれるようになりたいです。
それにギルガメッシュ様とアルフィア様の新婚生活の間に入るのはちょっと……!」
「わかるぜ!分かるよサポーター君!!ボクも同じ気持ちさ!でもサポーター君は住むところが無いんだろ?
それに狙われてるならこの家程安全なとこも無いし、ソーマのとこはエイナ君達次第だけどどうにかなるだろうからその後移籍すればいいさ。
それとアルフィア君。娘と言うけどボクのファミリアにサポーター君が入れば家族だから娘みたいなものだろう?それで満足しなよ。」
「……そうか。ならソーマファミリアを潰してしまおう。いや、だがエイナがまた怒ると嫌だからな。仕方ない。一緒に住むだけで我慢しよう。」
はぁ。アルフィアは可愛いもの好きだからな。それにベルの話を聞いた限りリリルカに対して何か近しいもの、もしくは共感できる部分があったのだろうな。
しかしリリルカのベルに対する発言。ふふ。我が息子はやはり英雄の器。異性からの好感度も高いようだな。
リリルカの荷物が異常に少ないのでアルフィアはリリルカを連れて服とか色々買ってくると言って出て行った。
あれは完全に娘とのお出かけがしたいだけの母親だな。
アルフィアがベルとリリルカの鍛錬の相手を毎朝するようになった。リリルカのサポート能力と咄嗟の判断能力、そして戦術は目を見張るものがあるな。
横で見ているとヘディンとヘグニがやってきた。
「よく来たな。む?姉上も来たな。」
何故か朝からレベル7のエルフが勢揃いした。
「王。これをフレイヤ様が御子息にと。」
「ほう。魔導書か。確かにベルは我等と違い、攻撃魔法が無かったからな。ありがたく頂こう。」
「う、む。あの女神フレイヤがベル君に?大丈夫なのか?」
姉上の言葉に首を傾げてしまう。
「高貴なるお方。確かに今までのフレイヤ様の行動からすればそう思われるのは無理のない事。」
「で、でも、フレイヤ様、ベル君大好きで、その、えと、そう!ファン?ってやつです。」
「ヘグニ……。高貴なるお方。つまりフレイヤ様は英雄足る御子息に強くなってほしいのと共に、何か協力したいということです。」
「ああ。なるほどな。お前たち2人とギル、それにアルフィアもいてザルドまでベル君には着いているから今まで通りに自分の物にできない。だから別方向で関わりが欲しいといったところか。」
白黒コンビは苦笑いを浮かべる。
「それもありますが女神ヘスティアが一番の理由でしょう。」
「うん。えと、ヘスティア様のこと尊敬してる、です!」
「そういえばヘスティアの聖火は不浄を滅する炎だからな。フレイヤの魅了の天敵とも言えるのか。」
「ええ。フレイヤ様も唯一畏れるのはヘスティア様だとおっしゃっていました。」
そんな話をして模擬戦が終わるのを待ち、ベルに魔導書を読ませる。ヘスティアはフレイヤにお礼言わなきゃ!と大慌て。
「ならフレイヤをこの家に呼んでやれば良い。ヘディンから聞いたが魅了のせいで外に気軽に出れんらしいからな。
我もヘスティアもアルフィアもベルも効かんから問題あるまい。」
ヘディンとヘグニは頭を下げ、感謝を伝えてからすぐに帰って行った。その日の夜、ニコニコしたフレイヤが白黒コンビと共に家に来た。
「それでぇ!!兎さん可愛くて!!朝の鍛錬ではかっこいい!!」
「毎回ベロベロになるのやめなよフレイヤ。それになんで神の鏡使ってるのさ。」
「だってぇ!!私抑えても魅了しちゃうから外出れないもん!」
「うんうんそうだね。夜ならボクもこの家でご飯食べるしいるから来ればいいよ。あ、そうだ。ギル君。デメテルも呼んでいい?フレイヤと仲良いんだ!」
「構わん。向こうの部屋を使え。ベッドも置いているが使っていないからな。毎回フレイヤはこうなるなら寝かしておけ。」
頭を抱えている白黒コンビにも伝え、もの凄い勢いで頭をさげられた。こいつ等も苦労しているんだな。
今後女神が飲み会をする時にウチの一室が良く使われるようになる。
子供達と話をしてから歩いていると懐かしい神を見つけた。
「いらっしゃい!美味しいじゃが丸くんはどうだ?」
「タケか?いつオラリオに来たんだ。」
「むお!ギルか!!久しぶりだな!ギルもオラリオに居たのか!!」
バイトが忙しそうだったのでホームの場所を聞いて後日伺うことにした。命や桜花も来ているらしいのでまた食材でも持って行ってやろう。
そんなことを考えながらロキファミリアに向かう。ヘルメスファミリアとヘルメス、そしてロキと幹部で情報の擦り合わせを行う為だ。
「だーかーらー!!リヴェリア様を呼んでって言ってるでしょー!?もう!」
「い、いや、リヴェリア様は幹部ですので…。そのお名前を聞いてからお伝えしますのでお名前を教えてください。」
「それじゃ驚かそうとして来た意味無くなるじゃないっ!!もー!!」
それを見た瞬間に回れ右をした。何をしているのだあの戯けは。我は用事があったような気がする。よし帰ろう。
「あー!!!ギル様!!!ギル様ってば!!」
何故ここにいるのだ。アイナ……
書きたいこと多くて纏まってない文章になってしまった。
申し訳ない。もうちょい掘り下げてゆっくり進めるかもです。