Episode.XXX ビッグブリッヂの死闘   作:サンサソー

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なぜこんなにも扱いやすいキャラを使わぬのかと思いまして、ギルガメッシュの一話短編小説を投稿。
もっとギルガメッシュの小説増えてくれていいのですよ?え?ダメ?ソンナー


Episode.XXX ビッグブリッヂの死闘

古今東西あらゆる時代の英雄が集う食堂にて、彼らと契約するマスター『藤丸立香』は後輩のマシュとともに食事に来ていた。

 

英霊が一人にしてみんなのお母さんであるエミヤから料理を受け取り空いた席を探していると、ふと珍しい背中を見つけた。

 

「あ、武蔵ちゃん!」

「んん?あら、マスターちゃんにマシュ!お久しぶり!」

 

宮本武蔵。とある事情によりあらゆる世界を転々と渡り歩く日本一の大剣豪である。そんな彼女も大好物のうどんを啜る時はふにゃりと和らいでしまっているが。

 

「帰ってきていたんですね!」

「旅も一通りしてきたからね。いや~、カルデアとの縁があると便利便利!あ、前の席空いてるから二人とも座って!」

「うん、ありがとう」

「そ、それで、さっそくなのですが…」

「あはは、マシュはやっぱり好きね~」

 

彼女はこの人理保障機関カルデアに召喚された後も旅を続けており、別世界で起こったことを度々聞かせてもらっていた。これにはまったのはあらゆることに興味を示すマシュ・キリエライト。彼女はすっかり武蔵の冒険譚の虜になっていた。無論、立香とて例外ではなかった。

 

武蔵は麺を啜りながら、その思い出も噛みしめるように話し始めた。

 

「今回はとあるお人との戦いのお話なんだけどね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所はどことも知れぬそれはそれは大きな橋。月の光に当てられながら歩いていると、どこからか不気味な声が湧いて出た。

 

「バァッ…ツ……」

「え?」

 

辺りを見回してみるも、誰の姿も無い。しかし頻りに声は響き渡り、だんだんと大きくなっていった。

 

「バァッッツ~~」

「な、なにかしらこの声」

 

やがて小さく橋が揺れだし、ついに声の主が姿を現した。

 

「バッツ‼待たせたな!…ありゃ?」

 

なんと橋の下から飛び上がってきた。赤い布と鎧に包んだこの大男。その腕は丸太の如き太さ。その鍛え上げられた肉体は第二の鎧。背には上物の槍が一差し。

 

見るからに武芸者であり、彼女の食指を刺激する圧を男は放っていた。しかし、まずこれだけは問わねばなるまい。

 

「…ええと、どちらさま?」

「こっちのセリフだ⁉」

 

武蔵は男が先ほど言っていたバッツなどではないし、男もまた武蔵がバッツには見えなかった。つまり、完全なる人違いというわけだ。

 

「ぬ、ぬう……どうやら人を間違えたようだ。失礼。バッツってのはオレのライバルでな。明日、ここで一騎打ちをする予定だったんだ。明日まで待ちきれず、バッツが来たのかと思っちまってな」

「へえ、そうなの。それじゃあ、私はもう行っていいかしら?」

「へへへ、すまなかったな。通っていいぜ……って言いたいところだが。さっきから挑発してるくせに、よく言うぜ」

「あら、バレちゃった」

 

しきりに刀をカチンと鳴らしていた武蔵は面白そうに笑った。彼女のこの行動は誘い。強者と出会った際に立ち合いを求める信号だった。

 

「よくよく見れば、いい剣持ってるなあ。使い古されているというのに、なお輝いている。いや、より鋭さを増してるな」

「へえ、わかる?」

「もちろん。コレクターの血が騒ぐぜ」

 

男は大げさな動きで舞踊を始めた。そして名乗りが交わされる。

 

「遥かな時の彼方より、パラドクスに導かれ。名高い武器を求めてやまず、西へ東へさすらう漢!三度の飯より剣が好き。でもそれよりも喧嘩好き!噂のアイツがついに見参!あ、そ~の~名~は~……ギルガメッシュ、見参!」

「一刀三拝。無限を破り零に至る。新免武蔵守藤原玄信改め、新免武蔵。ここに推参!一対一で…」

「いざ、勝負だ!」

 

武蔵は二振りの刀を、男改めギルガメッシュは背にかけた槍を抜き放つ。武蔵は懐に潜り込まんと駆けるが、ギルガメッシュは槍のリーチを生かして近寄らせない。ならばと槍を打ち返そうと試みるも、ギルガメッシュの膂力の前に失敗に終わった。

 

「おりゃっ!」

「なんの!」

 

しかし武蔵も負けてはいない。小太刀で槍の突きを逸らし、大太刀で一撃を狙う。それを躱されれば今度は大太刀で槍を押さえつけ、小太刀の手数で攻める。臨機応変、変幻自在な戦い方に、さしものギルガメッシュも容易に手が出せない。

 

「ぐぬぬ…ならば、これでもくらえ!飛んでけ拳ッ!」

「は、わわ⁉」

 

ギルガメッシュの手が腕から射出された。武蔵は咄嗟に大太刀で防御するも、その威力に弾かれ無防備となる。その隙をギルガメッシュは見逃さない。

 

「おうりゃあああ!!!」

 

槍が武蔵を貫かんと迫る。しかし、武蔵は素早く態勢を整えると太刀による迎撃ではなく足を振り上げ踏みつけることによって凶刃を逸らした。

 

「お、おお⁉」

「ふっ!」

 

それどころか渾身の突きを止められたことでギルガメッシュの体勢が崩れた。武蔵は切っ先を下に構え、素早い振り下ろしを浴びせた。が、しかし。ギルガメッシュは自ら槍を手放すことでその場から離脱することに成功。武器を失いさあどうするかと太刀を構えると、ギルガッメシュはニヤリと笑いながら話しかけてきた。

 

「なかなかやるな。ふんっ!」

 

ギルガメッシュがその場で床を勢いよく踏みつけると、武蔵が押さえていた槍が光となり消失し、代わりに空から新たな槍が一差し降ってきた。

 

「へへへ、久しぶりの手ごたえだぜ」

 

床に突き刺さった槍を引き抜くと、その刃を思い切り床へと振り下ろす。その時、背筋に悪寒を感じた武蔵は跳躍しその場を離れた。

 

槍が床に打ち付けられた瞬間、凄まじい爆発があたりを包んだ。煙が晴れると、ギルガッメシュの前方が崩れ、巨大な橋が分断されていた。その威力、まさに核熱の如し。

 

「うわぁ、当たればひとたまりもないわね…」

 

ギルガメッシュは武蔵がいる方の橋へと跳躍し、槍の手触りを楽しんでいる。

 

「はあ、やっぱり最強の槍は一味違うぜ。ガンハルバード!」

 

ギルガメッシュはガンハルバードと呼ばれた槍を回転させながら突進を開始。武蔵は先程の爆発を警戒してか攻めを見せず、様子見に徹していた。

 

「……なるほど、そう何度も撃てるわけではない、か」

「ファッファッファッ!当たり前だ。そう簡単にメガフレアをぶっぱなしてたらこっちもあぶねえ」

「ならばっ!」

 

小太刀で刃を弾き懐へと潜り込む。振るわれた大太刀を躱そうとするも、それは囮だった。本命は刃を弾いていた小太刀。大太刀を回避し槍を手元へ引き戻そうとしたギルガメッシュは、続けて放たれた小太刀の連撃に打たれた。

 

「ぐおっ!?」

 

しかしギルガメッシュは自ら後ろへ飛ぶことで斬られる深さ、衝撃を軽減させた。大きく後ろへと下がるギルガメッシュ。武蔵はギルガメッシュの魔力が高まり、再び槍へと集中するのを感じ取った。

 

「それならもういっちょくらえ!うおおお、メガフレア!!」

 

核熱の爆発。先程のアレが来ると悟った武蔵は、砕けた床の一部を拾い上げ槍めがけて投擲した。

 

「うおわぁっ!?」

 

狙い通り刃に命中。あの凄まじい爆発がギルガメッシュを襲った。

 

「ごわっ!?ゲホッ、ウェホエホエホッ!」

 

しかし、ギルガメッシュ自身にダメージは大して無いように見えた。爆煙で咳き込みながら、煤けはすれど傷は少ない。

 

さあ続きだと武蔵が構えると、突如ギルガメッシュが両膝をついた。槍の切っ先は武蔵に向けられておらず、次いで情けない声が響いた。

 

「ま、待ってくれえ!」

「……はい?」

「お、オレが悪かった……」

 

ヘイスト、と小さく。

 

「へへへ、メガフレアを対策されたんじゃ」

 

プロテス、と密かに。

 

「手も足も出ないぜ……」

 

シェル、と呟く。

 

ここで武蔵は気付いた。彼女は最後に勝てれば死んだフリもする。勝ちに興味は無いと宣うが、しかしいざ戦いとなれば貪欲にもあらゆる手段を用いて勝利を求めるのだ。

 

それゆえに、この命乞いに違和感を持ち、小さな呟きと微力な魔力のうねりを感じ取れたのだ。

 

ギルガメッシュへと駆ける。速さを追求した両手を広げ切っ先を下に向ける独特な構えをとるも、気づくのが一足遅かった。すでにギルガメッシュは、つい先程に準備を終えていたのだから。

 

「……てのは、ウーソだけどな!!」

 

ギルガメッシュが空高く跳躍し、物理法則を無視した急加速をかける。空から高速で武蔵へと落下する彼を、彼女は避けることしかできなかった。

 

「へへへ!……お!?うおおおお!?」

 

威力が高すぎたのか。はたまた度重なるメガフレアで橋が脆くなっていたのか。凄まじい勢いでギルガメッシュは着地し……そのまま床をぶち抜いて落ちていった。

 

「えぇ……?」

 

さすがの武蔵も動揺と困惑を隠しきれない。どこか天然な部分がある彼女はよく人を振り回すことがあるが、彼はそれ以上のものだろう。

 

「ぬう、むんっ!」

 

橋の下からギルガメッシュが跳躍し戻ってきた。ボリボリと頭を掻きながら手に持った槍を見つめる。

 

「やっぱり扱いが難しいなあ。勢い余って床を抜いちまった。よおし、かくなる上は……別の武器だ!」

 

槍が光の粒となり消え、今度は両手に光が集まる。形成されたそれは━━

 

「え」

「ふっふっふっ、次元の狭間で拾った武器だ。弾丸砲弾雨あられ、たっぷりとお見舞いしてやろう!」

 

マシンガンであった。真剣勝負にまさかの銃火器である。

 

「それはさすがに予想外…」

「はーっはっはっはっ!来い!」

 

マシンガンが火を吹く。連続射撃に対し、刀で弾くのは愚策。左右に身体を揺らしながら必死にくぐり抜けるしかない。

 

言ってもただの銃火器。弾が尽きれば棒にも劣る。小太刀で弾き、躱しながらも進み続ける武蔵だったが……。

 

「ちょ、ちょっと!撃ちすぎじゃない!?」

「そりゃそうだろうな!コイツの弾は無尽蔵!撃っても撃っても弾が出る!」

「うええ!」

 

面倒極まりない。しかし攻略しなければ勝機は無い。だいぶギルガメッシュへと近づきさあ斬りかかろうかという時、ギルガメッシュはさらなる武器を取り出した。

 

「見せてやる!」

「はあ!?」

 

手に持つはロケットランチャー。その威力もまた凄まじいものである。

 

「これがホントの、隠し弾!……お?」

「まったく、ネタが寒いから返すわね!」

 

しかし、威力は高いが小さく速い弾丸よりも捌きやすい。武蔵は小太刀で尾付近を軽く打ち上げ回転させる。そこへ大太刀の腹でタイミングよく尾を打つことで、砲弾をギルガメッシュへと返してみせた。

 

「どわああっ!?」

「せいっ!」

 

砲弾が直撃したギルガメッシュへ即座に斬りかかる。ギルガメッシュはマシンガンで対応。武蔵よりも身体も大きく、また武蔵の身の丈程の巨大なマシンガンは太刀が届く前に武蔵を打ち払い距離をあけさせた。

 

「ぐぬぬ……ええい、やめだやめだ!飛び道具はつまらん!気分がさっぱり盛り上がらんぞ!」

「あら、もういいの?」

 

マシンガンとロケットランチャーを放り投げたギルガメッシュ。槍を用いた時間よりも短めに、彼は武器を手放した。

 

「へへへ、お前とやるのは楽しいからなぁ……飛び道具じゃあもったいないぜ。それに、さっきまでのはほんの小手調べ。言わば序曲!真の戦いは、これから始まるのだ!ギルガメッシュチェーンジッ!」

 

目を見張る事が起きた。ギルガメッシュの背丈が伸び、さらには腕が6本追加で生えた。そう、彼は人間では無い。異世界では怪人、または魔人と呼ばれる存在である。

 

「あら、人じゃなかったのね。あまりにも人間味があるからビックリ」

「へへへ、そうか?だが今はそんなこと、どうでもいいだろ?ハアッ!」

 

ポーズを決めれば、空から次々と剣が降り注いだ。そのどれもが世界に名だたる伝説の武器。『エクスカリバー』『エクスカリパー』『斬鉄剣』『斬鉄剣(カオスネイル)』『マサムネ』『ムラマサ』『芭蕉扇(エンキドウ)』『トロの剣』。それらを床から抜き放った彼は、嬉しそうに全ての剣を構えた。

 

「やっぱり、こうでなくてはな!」

「うわぁ…私は2振りだけど、そっちはまさかの8本」

「ファファファ!まさか卑怯とは言うまいな?」

「まさか!新しい体験、感謝しながら叩き斬ります!」

「上等だぜ!このギルガメッシュ様が……倒せるかな?」

 

先に仕掛けたのは武蔵。異様な姿をしたギルガメッシュへと斬りかかる。そこへ8本の剛剣が襲いかかるも、剣の思うままに状況の流れを読み戦うのが二天一流。そして武蔵は戦闘の勘が鋭く、それゆえに勘のままに戦う。

 

剣の軌道を漠然と察知し、事前に避ける。たとえどれほどの威力があろうとも、当たらなければ意味は無いのだ。

 

しかし、物事には限度がある。

 

触れていないというのに剣の斜線上にあった大太刀が大きく弾かれ、さらには橋の手すり、果てには写真が真っ二つになるかのように空間までも両断する。

 

軽く放り投げただけで雲を割る斬鉄剣。それと同等またはそれ以上の剣を8本も振るうという恐れ知らず。剣心無き攻撃は全て切り捌く武蔵も、多重次元屈折現象を用いた攻撃すら届かない無空にさえ届くと確信した。

 

「末恐ろしいわね…」

「ウワーハッハッハッ!この手に握りし太刀、飾りではないぞぉ!!」

 

ギルガメッシュが飛び上がる。武蔵は最大の構え、『第五勢』で迎え撃たんとするが、ギルガメッシュの狙いが自分ではないことを見抜くとすぐさま背を向けて走り出した。

 

究 極 幻 想

 

剣が橋に叩き付けられた。浸透した剣気は次々と橋を破壊し、武蔵を追うように連鎖的に爆発を引き起こした。

 

「これはちょっとやりすぎではあああ!!?」

 

明日は宿敵との一騎打ち。その舞台がもはや見る影もなくボロボロになっていることに、戦いに興奮しているギルガメッシュは気づいていなかった。

 

なんとか逃げ切った武蔵。しかしまだ悪寒は拭えていない。異音が響き、武蔵は空を見上げる。上空にはトロの剣を中心に全ての剣を束ねたギルガメッシュが魔力を解放していた。

 

「いくぞ!必殺剣!でやああああ!!」

 

王 者 の 剣

 

凄まじい雷がトロの剣へと集中し、ギルガメッシュは巨大な雷球を作り出す。そのまま武蔵のいる地上へと剣を振るうことでぶん投げた。

 

「くっ!だけど、魔力があるならこっちのもの!」

 

武蔵の対魔力スキルはA。あらゆる魔術や妖術を斬り捨てる。雷球は伝説の剣による権能であるが、魔力を元にしているためにその例外ではない。

 

「はあっ!」

 

一刀両断。雷球は真っ二つになり、床に着弾。凄まじい大爆発が起こった。ギルガメッシュが武蔵の前方に着地すると、拍手をした。

 

「今のを斬るか!やっぱりお前は凄いぜ!」

「あはは……さすがに肝が冷えたけどね」

「へっ。ここまでやれるなら、光の戦士にも届きうるかもな」

「光の戦士?誰かしら」

「運命に命を賭し、世界を救った英雄だ」

 

あの子みたいなものかしら、と武蔵は脳裏に己のマスターを浮かばせた。彼もまた非力でありながらも強い。きっと、皆と力を合わせて世界を救うのだろう。もちろん、その時は私も一緒だ。

 

「チャラそうでピュアなアスリートや、空気を読まない空賊志願と自称主人公の空賊。白黒はっきりしている聖騎士に、裏切ってナンボの竜騎士。誰かを助けるのに理由がいらないイケメン。なぜか、女の子に囲まれるチョコボ好きなどなど!」

 

前言撤回。あの子とは違う。コレかな?という人もいたけれど、生きるために戦い続ける彼とはちょっと違う。

 

「……なんにしても、素晴らしい戦士たちだったのね」

「おう!魂を燃やし、世界を救わんとする……確かにアイツらは、希望をもたらす『光の戦士』だった。グスッ」

 

何やら込み上げてくるものがあったのか、涙を流し始めるギルガメッシュ。少し引きながらも、武蔵は己の剣を見つめた。

 

「そんな方々に届くと言われると、いささか照れますね。未だ無空に至らない身だから何とも言えないけど……貴方はどう思う?私は、いつか彼らに適う剣者となりうる資格があるかどうか」

「………………」

 

軽い質問だった。目標を完全に達しきれていないが、やはり世界を救った大層な英雄に届くかもと言われると嬉しいものだ。それゆえに、ギルガメッシュの意見を聞いてみたかった。ギルガメッシュはしばらく閉口していたが、やがて厳しい顔で言葉を紡いだ。

 

「失格だ」

「……そう」

 

やっぱりそうか。まずは己の成すべきことを成さないと。未熟者の身では届かない。

 

しかし、ギルガメッシュはそんなことを口にしなかった。

 

「オレに聞いたりするからだ」

「……え?」

「何かになろうとするにあたって、なれるかどうか人に聞いてるうちは、何者にもなれやしないぜ。他人なんざ気にせず、がむしゃらに生きた奴だけが、誰のものでもない自分だけの境地に辿り着く」

「………………」

「逆に問おう。お前は、己の道を行き続けてきたんだろう。ならばそれを変える以外に、己の目標に届きうると思うか?」

「……いいえ、思わないかな」

「わかってるんなら後は進むだけだ。その意志を、その覚悟を、オレが直々に見定めてやる」

 

ギルガメッシュの周囲にあらゆる武器が降り始めた。剣だけではなく、槍や斧、爪にメイス、その種類は次々と増えていく。

 

対し、武蔵もまた己の最高の技を顕現させる。剣圧はやがて仁王像を形作り、その威を示す。武蔵がまだ体得していない『空』の概念、『零』の剣の具現。その本質は対因果宝具。あらゆる非業、宿業、呪い、悲運すら一刀両断する仏の剣。

 

「ごめんね、マスター。ちょっと多めに、魔力貰っちゃいます」

「さあ、さあ!オレにお前の全てを、見せてみな!!」

 

全ての武器がギルガメッシュの周囲を旋回し、武蔵へと牙を向ける。武蔵もまた、仁王像と共に剣を構えた。

 

「それではご要望通り、五輪の真髄、お見せしましょう!南無、天満大自在天神。仁王倶利伽羅小天衝!ゆくぞ、剣轟抜刀!伊舎那大天象!!」

「伝説の武具にうつつを抜かし、されど得物の手入れに余念なし。全ては宿敵打倒の悲願のため!因果を越えて覇者とならん!古今東西武器繚乱!!これなるは次元一の強者、大剣豪ギルガメッシュなり!!」

 

仁王像の剣が数多の伝説の武具と衝突し、武蔵の握るエネルギーの太刀はギルガメッシュの持つ最強の剣エクスカリバー数えて8本と競り合った。全身全霊粉骨砕身。斬られ斬り捨てその果てに━━

 

 

2人は立っていた。

 

 

「……大した奴だぜ。この技とまともに打ち合ってなお健在とはな。合格かどうかは、これから来る未来、自分の目で確かめな」

「あはは、そうさせてもらおうかな」

「まだ四肢は繋がってる。得物もある。さて、どうする?」

「それはもちろん……存分に死合いましょうか!」

「そうこなくちゃなあ!」

 

互いに剣を構える。気合いは充分、まさに一触即発の空気。

 

痺れる闘志に浸りながら、再び激突した。数度打ち合い、互いに笑いあってるうちに……ふと武蔵が気付いた。

 

「ちょ、ストップストップ!」

「んお!?」

 

ギルガメッシュが剣を変なポーズのまま止めた。恥ずかしいやら止められてムズムズするやらで、ギルガメッシュはプンスカと怒り始めた。

 

「んもお、なんだよいいところで!」

「いや、あの…ちょっと貴方の身体を見てみてくれないかな」

「んん?なんだ?そうやって余所見させる気か?フッ、武蔵よ。お前もなかなか━━」

「そうじゃなくて。その……身体が透けてるんだけど」

「な、なんだと?ほ、ホントだ。まさか、力を出しすぎちまったから次元の狭間の影響で…?ぬ、マズイ。また次元の狭間に戻される!?」

 

ギルガメッシュの足元に穴が空き、未知のエネルギーがギルガメッシュへとまとわりつき始めた。必死に藻掻くも効果は無く、ズルズルと穴の中に引きずり込まれていく。

 

「そんな!?ま、まだバッツとの一騎打ちが控えてるのに!!勝負はまだまだこれからだってのにいい!!嫌だ!待って!お願い!ぐああああ……」

 

武蔵は突然のことに頭が働かず、動けない間にギルガメッシュは全身を穴の中に飲み込まれてしまった。悲痛な声が穴の中から武蔵の耳に届く。

 

「く、くそお…待ってろよ宮本武蔵!お前はオレのライバルだ!今決めた!オレは必ず、お前の元に戻って、来るからな!!あ〜〜れ〜〜」

 

 

 

 

 

「それを最後に出会いは無く、こうしてカルデアに戻ってきたのでした」

「こ、これはバトル……でいいのかな?」

「はい、先輩。ギャグ要素強めのバトルジャンルです」

 

なんとも濃い武蔵ちゃん物語だった。これならしばらくは何か振られてもネタに困らないであろう。

 

「いやぁ、楽しかったなあ。最後の約束なんか、美少n…んん!カッコイイってわけではなかったけれど、ドキドキしちゃいました」

「俺も会ってみたいな、そのギルガメッシュさんに」

 

 

『へえ、ギルはあの女剣士にも手を出したんだね。昔のことは反省してなかったのかな。セイバーはどうするつもり?』

『な、なに?我があのような雑種を手馴らすわけがなかろう!』

『本当かなー。ねえ、詳しく教えてよギル』

『お、ぬぐぐ、助けて雑種!』

『なんでさ』

 

 

なんか騒がしいけど気にしないでおくのが吉。食事を終えた立香は、食器を返却し未だにうどんをお代わりする武蔵のところへ戻った。

 

「武蔵ちゃん、ありがとうね。俺はこれから召喚室に行ってくるよ」

「日課の召喚ですね。お供します!」

「あ、なら私もついて行きたいな。久しぶりにちゃんと召喚できるか見てあげましょう!」

「やめてあげてください武蔵さん!その言葉は先輩に効きます!」

「まーぼー……」

 

ぐったりとしてしまった立香をマシュが抱え、召喚室へと赴いた3人。聖晶石を投げ入れると、渦が回り始め3つに分裂した。

 

「新規来い新規来い新規来い新規来い新規来い」

「先輩の祈りが切実です」

 

やがて光が収まり……部屋の照明が消えた。

 

「え?」

「な、なんでしょう?スイッチは…」

 

マシュが壁を伝って電源スイッチを探そうとした時、ブーッというその場に似つかわしくない音が響いた。

 

「これは…ブザー音?」

 

立香がそう言うと同時に、巨大な満月が顕現する。その前には大きな人影。それは大股で歩きながら舞踊を始めた。

 

「英霊の座でずっと待っていたぞ!呼んでくれなかったらどうしようかと不安になっていたところだ。誰が呼んだか知らねえが、呼ばれて飛び出てここに参上!呼ばれてなくてもここに参上!」

 

あれ、どこかで聞いた流れだぞ。と、何かしらの予感を感じた立香。無情にも名乗りは続く。

 

「人理の白紙?新たな剪定事象?大盤振る舞い!皆のピンチに駆けつける次元一の大剣豪!その名は━━ギルガメッシュ、見参!!」

 

照明が戻り、噂の男が姿を現す。互いに確認し合った彼らは……。

 

「「あ」」

 

好敵手の姿を見た。

 

「おお!ここで会ったが100年目!宮本武蔵!その武器は貰ったァ!!」

「武器泥棒、何するものぞ!いざここにて決着をつけん!」

「え、あの、武蔵ちゃ━━」

「「いざ、尋常に…真剣勝負!」」

「やめてー!?」

 

びっくり仰天怒涛の展開。しかして喜ばしい奇跡の再会。

 

我らが見れるのはここまで。後は彼らのみ水入らず楽しんでもらいましょう。

 

『Episode.XXX ビッグブリッヂの死闘』、これにて閉幕にございます。

 

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