今回も出来がいまいちかなと思う話です(呼んでもらう前に言うことじゃないし)。
では、どうぞ。
~第一話 猟兵殺しの
「アハハハハハハハッ!」
月下の山奥は血の海と化していた。
無惨に切り裂かれた骸が無数に転がり、血に濡れた刀を、黒髪を、外套 を振り乱し、シオンは狂気に満ちた笑みを浮かべる。
そして一言、弱すぎる、とだけ言い残す。
この一年、只ひたすら己の身体能力を上げるだけだったが、それだけでこの有様。
至る所に斬痕が刻まれている。
只振るだけで剣戟が飛ぶ。
それは死神の鎌同然だ。
見えない刃が気付けば腕を斬り落としている。
首を撥ねている。
腹を抉っている。
どれも異常な死体だ。
剣術等ではない。
彼の身を焦がし続けた憎悪は、彼を常人離れした異形に変えていた。
狂惜しい喜びも何時しか冷え、刀に付いた血を振り払うと、シオンは一つのまだそれなりに原形を留めている骸に近づく。
その上で、無表情に、冷徹に、刀を振り上げ、目にも止まらぬ速さで三振りする。
―三爪炎痕―
骸が三つの肉塊に解体されると同時に地面に横になった“
彼にとって、それは奪われ横倒しにされた『
人々はこの斬痕を見て、この惨劇を生み出す鬼人をこう呼んだ。
「
「ん?先輩、何スかそのトライエッジって?」
「ああ。お前この現場見るの初めてだったけか?」
リベール王国軍の軍服を着た兵士は、未だ異臭を放つ現場を見回し、顔を顰めながらも後輩に聞きなおす。
「最近
「ハァ?これ魔獣の仕業じゃないんスか?」
「お前なぁ………よく見ろよ、その斬撃の痕」
指摘を受け、後輩が覗き込むように痕を見る。
「綺麗に斬れてますね」
「それが解るなら、考えは一つだろ?」
「いや、解んないッスけど?」
後輩の顔を見て、呆れて溜め息をつく。
「な、何スか!?その珍獣に出会ったみたいな顔は!」
「お前よくそれで軍入ろうなんて考えたな。お前じゃ永久に一兵卒だ」
「言ったッスね!?俺絶対先輩より上の階級にいってやる!!」
「冗談は顔だけにしとけ」
「ああもう!腹立たしい事この上ないッス!………ハァ、んで結局何々スか?」
「どう考えても剣による傷だろ?こんな痕は刃が大きくて重い斧じゃできねぇし、槍は『薙ぐ』か『突く』かだからこんな痕は残らねぇ。………しかしどうやったらこんなに綺麗に痕が残るんだ?」
彼の疑問は尤もだ。
どんなに完成度の高い剣でも、使っていく内に刃毀れは必ず起きる。
況してや
剣は数ヶ月で代える様な物ではない。
それは得物全般に言えることで、どれだけ形状が似ていようとも武器には一つ一つの
おいそれ代える物じゃないし、その為の資金も莫迦にならない。
つまりこれをやった奴は相当な得物を持っているという事だ。
「何にしても、その犯人には感謝ッスね」
「ああ?」
「この猟兵達が何処に行くつもりだったかは知らないけれど、猟兵が行く場所は必ず戦闘が起きるじゃないッスか。周りの一般市民にお構い無しに銃乱射するわ迷惑なんッスよ。やっぱ世の中ゴミを掃除する役割が無いときついっしょ?」
「まぁ、同感だな。下手したら俺達と戦闘になって乱戦になったかもしれねぇ。とち狂った連中に命取られるなんざ俺も御免だ」
他愛も無い先輩後輩の会話。
しかし、ここで異議を唱える者が現れる。
「君達。猟兵と言えども彼等は人間だ。死人に罵声等在ってはならないし、死んでいい人間もいない」
先輩後輩はその人物の顔を見て目を見開く。
茶色の髪の髭のある男性。
「ぶ、ブライト大佐!」
突然のことに動揺を隠し切れず二人揃って敬礼する。
「ああ、敬礼はいい。今はさっきの事だ」
「はいっ!軽率な発言申し訳ありませんっ!以後気をつけますっ!」
はきはきと答える部下達に、うんうんっと首を振り『剣聖』カシウス・ブライトは言う。
「分かってくれたらいい。ここは私が見よう。君達は遺体の移送を手伝ってやってくれ」
「「了解しました」」
そして先輩兵後輩兵はそそくさとその場を立ち去っていった。
小走りで立ち去った部下達から視線を戻し、カシウス・ブライトは考えていた。
この傷は明らかに『刀』による物だ。
鋳型製法の両刃の剣が量産されるようなこの御時世で、また味のあるものを持ち出してきたな、と内心舌を巻いていた。
この犯人、刀の事を知り尽くしている。
斬痕から見るにこの犯人は剣術に関してみればど素人だと言う事は明白であった。
自分は『剣聖』だ。
それなりに剣を見る目はあると自負はしている。
だが、この荒々しい太刀筋からは洗練された剣術と言う物は一切感じない。
感じるのは、憎悪、怒り、嫌悪、そんな物ばかりだ。
だが、それをカバー出来るほどの刀の知識、そして身体能力を持っていて、上手く利用している。
恐らく本人も剣の才は無いと理解しているのだろう。
剣ではなく技術で勝ちに来ている。
次に辺りを見回す。
視界に入ってくるのは銃弾の痕や手榴弾による小さなクレーターなどだが、おかしな点が幾つかあった。
猟兵達はこの開けた場所をベースキャンプにしていたと思われる。
ならば侵入者は外からしか入ってこれない。
だから銃弾の痕が外に向って多いのはいい。
問題なのは手榴弾による方のものだ。
爆風で吹き飛ばした物に、ほとんど粉々に近い薪が見つかった。
焚き火は普通キャンプの中心で行う物だ。
つまり味方がいるど真ん中で手榴弾を使ったことになる。
それは在り得ない。
猟兵はある程度統率された集団だ。
味方諸共手榴弾を使うなんて在り得ない。
よってこれは犯人が使ったと言う事だ。
刀などと言ういい得物を持っていながら、手榴弾を使う。
この犯人、勝てば勝利の仕方などどうでも良いみたいだ。
それに手榴弾は
味方がいる場面で使う物ではない、と言うことは犯人に対しても言えることだ。
ならばこれをやったのは、
背筋が寒くなった。
これを、たった一人で?
自分もあらゆる戦場で策を張り巡らせてきたが、ここまで計算されつくした戦闘は見た事無い。
手榴弾の目的は相手の目暗まし、あわよくば近くにいた者の殺害。
手榴弾を普通こんな事に使うと誰が考えるだろうか?
これでは幾ら対策を立ててもこの犯人はすぐに掻い潜って来るに違いない。
こんな奴に襲われたら、そう思うと本当のところ狙われているのが猟兵で良かったなどと不謹慎にも思ってしまった。
何にせよ、この事件の犯人は早く捕まえなければならない。
この犯人が自分の意思でやっている内は猟兵だけを狙ってやるだろう。
しかし、もし彼もしくは彼女を利用する者が現れたら被害は猟兵だけに留まらないかもしれない。
早く捕まえなければ。
そんなことばかり考えてしまう。
まだ他国との戦争も続いていると言うのに、遠征から帰れば事件の事後処理か。
愛する娘にも会う暇さえない。
と言うのも、通称
軍上層部が遠征帰りの私達に調査させているのは今後の動向や危険性を調べさせておきたいのだろう。
まだまだ娘の顔を見るには遠そうだな、とカシウスは溜め息をついた。
惨劇の舞台となった山の中腹を下り、更に二つ山を越えた麓の小川近くで、シオンは体を休めていた。
血がべっとり付いた外套 を小川に浸し、洗い流しながら思考に耽っていた。
一晩で此処までくればリベール王国の軍も見つけられはしないだろう。
最近何やら追っ手がいるらしいが、軍の連中に捕まる暇なんて無い。
どうもここ最近の猟兵団の動きが活発になってきているようなのだ。
その上、
確かに、十数件も事を起こしていれば猟兵を殺して回っている存在にも気付くだろうが、それにしても
お蔭様で貴重な戦利品の手榴弾を一個使う羽目になった。
自分の戦闘技能の無さから夜襲で殺すことが主流となっていたが、最近じゃ時間をずらして行っているほどだ。
しかも、昨晩の猟兵団は
普通人員を動員するにしろしないにしろ、一個師団で動く猟兵団としては異例なほど少なすぎる。
無論、それは人員が多い処の話で少数精鋭の猟兵団もある。
しかし、事前の調査であの猟兵団は三小隊は確実にいた筈なのだ。
つまり、もともと少ない人員を分けているのだ。
態々さん
丁度血を流し終わった外套 を絞ると、小さな袋から干し肉を取り出し早めの夕飯を取る。
日はまだ高いが、これからまた移動して後二つの小隊を潰すつもりでいる。
干し肉を噛み千切り咥えたまま立ち上がると、外套 を纏うとソードベルトに刀を刺し、上流の方を見つめる。
今回の
発見次第、日が落ちるまで監視、頃合を見計らって夜襲、何時も通りの策で作戦を決めると足に力を入れて歩き出した。
本当に中途半端なグロ描写だけでしたね(汗)。
もしかしたら改めて投稿しなおすかも………
次回はちゃんとした戦闘描写書きます。
後ご期待