STARDUST∮FLAMEHAZE 【完全版】 作:沙波羅 或珂
【1】
「上等、よッッ!! 」
フリアグネの悪意の叫びを開戦の火蓋と決定した
シャナの右手が黒衣の内側に伸びる。
戦慄の美を流す大太刀 “贄殿遮那” を抜き放つ為に。
その刹那。
ズズズゥゥゥゥゥゥゥゥンンンンッッッッ!!!!
激しい爆裂音が真下から、 屋上全体に向かって鳴り響いた。
ついで巨大な何かが障害物に激突して爆砕したような重低音が轟き、
破壊の余波が足元からビリビリと伝わり靴の裏が揺れる。
(!!)
シャナは反射的に、自分の足下を見つめた。
その 「原因」 が誰なのかは考える迄もなかった。
「あ……」
少女の口元から想わず漏れた。
怒りや憎しみとは対極の感情が篭もった声。
アイツもいま、 戦っている。
自分と同じように。
同じ場所で。同じ相手と。
“自分と一緒に戦っている”
ただそれだけの当たり前の事実に、
心で渦巻く幾重にも絡み合った負の感情にも勝る想いを抱いたシャナは、
一瞬安堵の表情を無防備に浮かべ口元にも笑みが刻まれる。
「……」
しかしその様子を老獪に見据えていたフリアグネは、
すぐさまに冷徹な言葉を少女に浴びせた。
シャナに味方するものは、
例え 「音」 でさえも赦さないという
主譲りのドス黒い精神の残虐さで。
「おやおや? 「下」 は随分派手にやっているようだな?
どうやら私は居る場所を間違えたようだ。
早々にこのくだらないフレイムヘイズを片づけて、
マリアンヌを迎えに行ってやらねばね……」
フリアグネはそこで一端言葉を句切り、
さらに周到にも一拍置いて
その美形を兇悪に変貌させて言い放つ。
精神的に限界が近い今の少女には、 何よりも残酷な言葉を。
「
その 「首」 を手土産に持ち帰れば、アノ方もお歓びになられる」
そう言ってフリアグネは心底愉しそうにクスクスと嗤った。
狂った光の宿るパールグレー流し目で、
シャナの一番純粋な部分を陵辱するかのように。
「!!!! 」
そのフリアグネの言葉が終わるよりも速く
シャナの心の裡で、 理性の「
精神の最後の主柱が音を立てて崩れ落ちた影響で、
シャナの心の中で渦巻いていた様々な負の感情と共に
それとは別に湧き上がっていた 「対極の感情」 とが混ざり合い、
正と負が煮え滾り心の局が無明の渾沌と化す。
「ッッッッ!!?? 」
その
シャナの
ナニカが弾けた。
シャナ自身ですら自覚の無い、
しかし少女の裡で静かにその覚醒の
待ち侘びながら胎動していた、 決定的なナニカが。
脳裏の中、その頭蓋の深奥で一瞬の閃光の後、
紅い
そしてソレは己が全存在を輝きながらも包み込む。
次の刹那、 シャナの 「灼眼」 に変異が起こった。
真紅の双眸に宿る、 いつもの燃え上がるように
鮮烈な色彩は完全に消え去り、
代わりに熔解した灼紅の鋼を瞬時に凝結したかのような、
まるで暗黒の重力場を想起させる超高密度な色彩へと変容する。
虹彩に宿る紅蓮の光は完全に消え去り、
否、 変異した瞳の発する引力によって
光は全て外部へ脱出出来ずにまとめて瞳孔に吸い込まれ、
一片の光の存在すらも赦さない無限の虚無へと変貌した。
“
今のシャナの状態を言葉で現すのなら、
その一言に尽きた。
その己の急激なる 「変貌」 に、
その張本人であるシャナだけが気づいていない。
しかしそれは当然の事象と云えた。
今だ嘗て無いほどの凄まじい正と負の感情に心身を灼かれ、
その他様々な要素が複雑に折り重なって
半ば偶発的に
「……ッッ!!」
シャナの、 未だ嘗て視たコトの無い程の壮絶な変貌振りに、
誰よりも彼女を良く知る筈のアラストールまでもが、
驚愕の余り言葉を失う。
シャナ自身が知り得ない
一心同体であるアラストールもまた知りようがない。
戦いの場に突如降臨した、
【特異点】 とでも云うべき無常の不確定要素により戦局は、
最早誰も予測だにしえない昏迷の事態へと陥った。
ヤ・キ・ツ・ク・ス!!!!!
シャナは純粋に、 ただソレだけを想った。
通常の彼女の灼眼を、 闘志と使命に燃ゆる修羅の瞳と
今のシャナの灼眼は、 破壊と滅亡を司る羅刹の瞳。
(楽には……滅さない……! おまえの犯したその 『罪』……ッ!
私が灼熱の劫火で断罪するッッ!! )
何よりも強くそう心に誓い、
硬質な色彩を浮かべる無明の存在を宿した
その 【
(
「……ッ!」
無明の双眸と化したシャナの全身から発せられる、
まるでその存在自体が圧搾されるような凄まじいプレッシャーに
フリアグネは背筋に寒気を覚えながらも、
「ほう? なかなからしい表情になったじゃないか?
少しは楽しめそう、 かな? 」
そう言って小さな口笛を奏で、 純白の長衣を翻した。
(チッ……少し煽り過ぎたか……
憤怒が回帰し過ぎて意識の円環を突き破り
ソレが精神の未知の部分を覚醒させて少し 「冷めた」 ようだ。
“アノ方 ” から聞かされていた性格とは大分違うな。
こんなに激情家だとは想わなかった)
心の中でそう呟き、しかしフリアグネは
その老練な頭脳ですぐに戦闘の手順を修正する。
(フッ……まぁ良い。予定と少々違っても
少しくらい力が
そうだろう? 私のマリアンヌ? )
心の中で何よりも優しく燐子の恋人にそう問いかけると、
いきなりその視線を矢を番えた弦のようにキリリッと引き締め
長衣を真一文字に大きく翻した。
純白が滑らかに空間を撫でると同時に、
シャナの周囲を取り巻いて数十もの薄白い炎が
広い屋上に次々と湧き上がった。
「!!」
どうやらフリアグネの纏っている長衣には、
「召喚」 或いは 「空間転移」 の自在法が既に編み込まれていたらしい。
揺らめく白い陽炎の内側から、
武装した無数の等身大フィギュアが次々と姿を現した。
どれもシャナの2頭身以上の長身で全て少女型。
ペット樹脂の上にクロームでメッキされた滑らかな身体のラインに、
目立たない形で関節が仕込まれている。
着ている 「服装」 は古今東西種々折々で、
ストリート・ファッションからセーラー服、
アーミールック、 ゴスロリ、 デカダン調のドレス、
更にブランド物のスーツや無意味に露出の多い武闘着、
加えて浴衣や晴れ着等々、
作り手である主の倒錯したセンスを
象徴したかのような滅裂振りだった。
ソレら、 まさしく頽廃の趣味の産物が可愛らしく描かれた笑顔のまま、
スチールの関節を軋ませながら、 シャナへと向かって詰め寄ってくる。
「フッ……!」
己の自在法が正確に起動した事を確認すると
フリアグネは軽やかに背後へと大きく跳躍し、
純白の長衣を優雅に気流に靡かせながら
屋上最奥に設置された給水塔の上へと着地した。
「クククククククク…………どうだい? お嬢さん?
私の可愛い
得意気なフリアグネの声が、
その武装フィギュア達の遙か向こう側からかかる。
「良い趣味してるわ……ッ! 虫酸が走るくらいにね……! 」
吐き捨てるシャナにフリアグネは、
「つれない感想だねぇ。
せっかく記念すべき今日という日に備えて、
腕に
そう言って給水塔の縁に右足をダラリと下げ左膝を抱えて座り込み、
純白の長衣の裾を頭上の封絶から発せられる気流に靡かせる。
「まぁ、 良い。 開戦の宣告にしては少々物足りないが、
さぁ!!! 始めようかッッ!! 」
フリアグネは再びDIOと重なる
サディスティックな微笑を浮かべると、
今度は長衣の裾を鋭く斜めに翻した。
その合図と同時に武装フィギュア達の盲目の瞳が白く発光し、
サーベルやレイピア、 スティールウィップやライトスピア、
ジャベリン、 クロスボーガン等女性でも扱える軽量の、
しかし殺傷能力は充分の武器を携えた人形達が
シャナへの包囲網を徐々に狭めていく。
表面をクロームで覆われたそのフィギュアの群は、
開かない口からそれぞれ同じ機械合成音のような声を
全く同調のトーンで口走りながらシャナに詰め寄ってきた。
「行かせない……」
「ご主人様を……」
「キズつけるものは……」
「誰一人……」
「どこにも……」
「ここから……」
「行かせない……」
「フレイム……」
「ヘイズ……」
「炎髪……」
「灼眼……」
「討滅の……」
「討滅の……道具……」
金属の軋む耳障りな音が、 シャナの苛立った神経をささくれ立たせ
その苛立ちが更に己の使命感と破壊欲とを刺激してより激しく燃え上がらせる。
ようやく訪れた、 約束の時。
フレイムヘイズの使命を果たす事に、 胸が高揚した。
同時に目の前に存在する全てを、
粉々に破壊してしまいたかった。
そう、 なにもかも。
恐らくは自分自身すらも。
そんな矛盾した心象を併せ持ちながらも、
戸惑いは微塵も感じられなかった。
頭の中は限りなく透明に澄み切っていた。
草原を翔る清らかな涼風と、
廃墟で吹き荒れる破滅の乱風とが同時に混在していた。
『世界の果て』
心象の在り様を一言で云うなら、 その表現こそが適当。
少女は顔を俯かせたたまま、
口中を軋らせ黒い熱の籠もった声で呟く。
「冗談じゃ……ないわ……! どこにも……行かない……ッッ!!」
そう言いながら細く可憐な手の先を、黒衣の内側に入れる。
再び出てきた
煌々と光る存在の灯火 『トーチ』 の塊が乗せられていた。
決して、 フリアグネの挑発に乗ったわけではない。
だが、 今の自分には “炎” が必要だった。
自分の心象の有り様を余す事なく顕現させる事の出来る、
紅蓮の “炎” が。
「例え……一匹でも……この私が……おまえ達を放って……
素通りすると……想う……!?」
言葉の終わりとほぼ同時に、
掌の上のトーチが激しく渦巻く紅蓮の炎へと変貌する。
自在法の練度が鈍っている為、
炎は彼女の制御を離れて気流に靡き
黒衣の肩口をチリチリと焦がす。
シャナはそんな事など意に介さず、
黙ってこれから発動させるべき
『炎の自在法』 を精神の中で丹念に編み始めた。
確かに自在法の 「練度」 は鈍っていた。
しかし、
先程から自分の内部から絶え間なく沸き上がる、
得体の知れない
心の深奥から滲み出てて、 神経を介して全細胞を駆け巡り
やがて雨露のように冷たく全身へと染み渡る。
その冷たく硬質で、 しかし何よりも危険で甘やかなカオスの感覚が
シャナの心の中の弱みを一切残さず全て吹き飛ばした。
同時に屋上全域に響き渡る、 凛々しく猛々しい鬨の声。
「
おまえ達を一匹残らず焼き尽くしてッ!! 私はアイツを討滅するッッ!! 」
勇ましきその喊声と同時に20を超える武装フィギュアが
一斉にシャナへと襲い掛かり、 更に十体以上が空中へと飛び上がり
頭上から共に襲い掛かってきた。
「せりゃあああああああああああああああああッッッッ!!!! 」
シャナはまず跳躍のエネルギーを使い切り
自由落下へと陥った武装フィギュアに
右の掌から火炎の連弾を撃ち放った。
己の内で炎の砲弾を瞬時に量産し次々に射出するシャナの躰は、
まるで戦闘機に搭載された機銃ように微細な振動を繰り返す。
射撃の精密性は無きに等しいがまるで暴風のような炎弾の狂瀾に、
重力に縛られた空中で自由が利かないフィギュア達は
まさに炎の篭に囚われた雛鳥も同然だった。
鉄製の刺が付いた鉄球を持ったブレザー、
セラミックのメスを構えたナース服、
カスタムされたスタンガンを持ったゴスロリ等が
次々に手と顔面、 ついでに胸と武器を撃ち抜かれ
瞬く間にグロテスクなジャンクへと変わる。
「うりゃああああああああああああああああああああああ!!!!」
すぐさまにシャナは視線を前方に移すと、
交差した左の掌で同じように炎弾の嵐を一斉乱射し
チャイナ服やランジェリー姿の
まるで炎髪の撒く深紅の背後に、
無数の機銃と副砲、 そして爆弾を搭載した重戦闘機のシルエットが
視えるかのような壮絶さだった。
武装フィギュアの斬り込み部隊を
即座に壊滅させたシャナは、
その虚無の視線で解れた包囲の外で二の足を踏む後方支援部隊、
更にその奧、 給水塔の上で優雅に座っているフリアグネを鋭く貫く。
(おまえ? さっき言ったわよね?
硬質な無明の色彩と化した双眸が、
一際重く狩人を
(みたい、の……?)
シャナは仇敵へ言い聞かせるように、 小さく呟く。
「そんなに見たけりゃ
そして激高したシャナは、 手の中のトーチを全て紅蓮の炎に換えた。
(おまえは一つ、 大きな勘違いをしている……ッ!
私は 『炎の自在法』 が 「苦手」 なわけじゃない……!)
やがて右手に宿った炎が火勢を弱め、
その減った分の炎が左手へと移る。
( “贄殿遮那” で斬り倒した方が手っ取り早いから使わないだけよッッ!!)
開いた両手で炎を腰の位置に構えた少女は、
心の中でフリアグネにそう叫んだ。
「はあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
猛りと共にシャナの両脇に広げられた手に宿る二つの炎が、
一切の過程を省いて瞬時に変容する。
右手に、 波濤が渦巻く業火の炎。
左手に、 静謐に揺らめく浄化の炎。
シャナはその二つの炎の塊が宿った掌を、
固定されたリズムと軌道で何度も何度も眼前で撃ち合わせる。
静と動の火花が、 何度も何度も弾けて交錯した。
そして混ざり合った属性の違う炎は、
やがてシャナの目の前で巨大な深紅の球となり
宝玉のような神聖さで煌めきながら宙に浮く。
(恐悦の歓喜に
フレイムヘイズ炎髪灼眼最大最強焔儀最初の討滅者だッッ!! )
渦巻く紅蓮の炎が心の内で顕現したかのような、
魂の慟哭。 シャナの誓い。
紅く輝く炎の球は、 砕けた戦刃のように
凶暴な火走りの余波で空間を灼きながらも、
自身は静かに発動の
(思い、 知らせてやる……ッ!)
シャナの両手に宿った二つの炎は、
その密度を薄めつつも尚も激しく
互いに炎の球へと撃ち付けられ、
その身を軋ませながら融合し、 膨張していく。
(“フレイムヘイズ” をナメるとどうなるかッッ!! 私をナメるとどうなるか!!
それにッッ!!)
シャナの脳裏に、 一人の人間の姿が浮かんだ。
(モタモタなんてしてられないッッ!!)
ほんの僅か二日前、 少女の心中に宿ったまだ小さい、
しかし他の何よりも強い輝きを放つその存在の篝火が、
少女を、 シャナを、 己が黒い炎に呑み込まれるのを
ギリギリで踏み留まらせていた。
「
己の決意を叫ぶと同時に、
右と左、 属性の違う炎が互いに混ざり合い
極限まで引き絞られた炎の球は
眼前でまるで生き物のように蠢き、 そして胎動する。
シャナは焔儀発動の構えを緩やかな動きで執りながら、
閃烈な無明の瞳で前方を射抜いた。
炎弾を警戒して寄ってこれないフィギュア達ではなく、
その奧にいる人形達の主、 殺戮の “狩人” フリアグネを――!
「くらえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッッ!!!!」
勇ましき駆け声と同時に、
シャナは両腕を
直角に折り曲げられた左肘に顔を埋めるようにして
隙間から覗く視線は標的、 フリアグネからやや降ろす。
そして交差された腕の指先には、
いつの間にか密教徒が結ぶ 「印」 のような、
不可思議な形が結ばれていた。
その動作と呼応するように、 今は無明の
カーディナル・レッドの灼眼が初めてキラメキながら何よりも強く輝いた。
その輝きに
高密度の真紅の球は、 周囲に火花と放電とを撒き散らしながら
徐々にその身を巨大な 『
其の、 シャナが執った 「術式」 は。
地上に
“フレイムヘイズ専用戦闘焔儀大系” の中の一つ。
遍く幾千もの炎を集束して高め、 そして爆発的な威力で
アラストールを始めとする紅世の王達と、 優れたフレイムヘイズ達に
幾重にも渡る淘汰と研磨、 進化と深化の相剋の果てに創り出された
究極の綜合汎用型焔術自在法。
【|紅 堂 伽 藍 拾 弐 魔 殿 極 絶 無 限 神 苑 熾 祇《ゾディアック・アビスティア・アヴソリュート・エクストリーム》】
その 「領域」 の一体系、 『
シャナの目の前でさらに激しく高ぶる。
「
己が執行する焔儀の 「
八字立ちで指の印を振り解きながら交差した両の
鳳凰の
『
絶叫した。
ソノ、 術式発動の叫声と共に閃光とスパークとに揺らめく火の粉を
即座にドギュッッ!! という爆発的な加速音を立てて
白い封絶に覆われた空間を駆け巡った。
グァジュウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥッッッッッッッ!!!!!!!
狂嵐の焦熱地獄。
唸りを上げて武装フィギュア達に迫る灼熱の炎架は
まるで錯乱した兇天使のように、
縦横無尽に踊り狂い誰の予測も付かないランダムな軌道で
高熱の巻き起こす余波と共に空間を
樹脂の灼ける音。
鉄の焦げる匂い。
焔儀創造の際、 同時に内部に編み込まれていた
無数の “操作系自在式” によって
空間に紅い精密な幾何学模様の軌跡を描く
『
防御も回避も視認すらも出来ないフィギュア達に
情け容赦なく激突してその身を
そしてバラバラになった残骸を次々に蒸散させていく。
まるで、 シャナの内なる精神の火勢を代弁するが如く。
気が付けば、 70体以上いた筈の武装燐子フィギュアは
残り僅か数体、 内無傷なものはたったの3体のみ。
残りは必殺の大太刀 “贄殿遮那” を温存したままの怒れるフレイムヘイズ、
“炎髪灼眼の討ち手” その凄絶なる焔儀によって全て跡形もなく焼き尽くされた。
術の反動、 そして射出の勢いで宙に舞い上がっていたシャナは
その身を中空で反転させ軽やかにコンクリートの上へ着地する。
目の前の視界、 白い火花を放つ燐子達の
最早残骸とも呼べぬ存在の残滓が
見る者によっては阿鼻叫喚の地獄絵図を想起させるような
無明の双眸で見つめていた。
今し方発動した輪舞型の操作系自在式は、
あくまで目の前の視界を明瞭にするため高架に編み込んだモノ。
幾ら武装しているとはいえ燐子如きが例え何百体集まろうと、
そのシャナの傍らに、 術者の命令を忠実に果たした紅蓮の炎架が
主を護る
シャナはその一切の光を宿さない無明の双眸で、
給水塔の上、 笑顔のまま拍手をしているフリアグネを冷酷に見据えると
人間の関節可動域を完全に無視して複雑に絡められた
自在式発動印が結ばれた右手を肩口へと掲げる。
そして咎人を断罪する執行官のような峻厳足る動作で
勢いよく印を振り解きながら真下へと振り下ろした。
その動作に合わせ内部に編み込まれた突貫型の操作系自在式が発動し、
炎架中心部に埋め込まれた灼熱の紅玉がより強く発光する。
「ッッッけぇぇぇぇ!!!!」
シャナの叫びが終わる前に深紅の炎架は迫撃砲が発射されたかのような
爆裂音を轟かせながら超加速し、 笑みを浮かべて拍手を続ける
フリアグネに向かい一部の狂いもない正確な命中精度で襲い掛かった。
(灰に! なれ!!)
空間に紅蓮の軌跡を残す火炎の疾走を見送りながらシャナは強く心の声で、
「
そして現実の声でそう叫ぶと、 自分が認める二人の血統の男と同じように
右手を逆水平に構え標的を、フリアグネを貫くように差した。
←To Be Continued……
『
流式者名-空条 シャナ
破壊力-A スピード-B 射程距離-B
持続力-A 精密動作性-B 成長性-C
能力-業炎と浄炎。 異なる二つの属性の炎を自在式によって結合させ、
相乗効果によって増大した存在の力を高架型に変容させて
相手に撃ち込む炎の戦闘自在法。
高架に様々な自在式を編み込むことによって、
その軌道や属性を複雑に変化させる事が出来る剛柔一体の焔絶儀。
弱点は発動までの所要時間が長い事と、 存在の力の消耗が大きいこと。