STARDUST∮FLAMEHAZE 【完全版】 作:沙波羅 或珂
【1】
「
焼魂の叫びと逆水平に構えた指先で鋭くフリアグネを刺すシャナ。
その標的に向け “轟ッッ!!” という凄まじい唸りを上げて迫る、
赤熱の 『
「フッ……」
炎架の放つ凄まじい灼光にその耽美的な美貌を照らされ
給水塔の上に片膝を降ろして座っていたフリアグネは、
笑みを浮かべたまま拍手を止めると純白の長衣が絡み合った
女性のように細い左手をゆっくりと前に差し出し、
そして緩やかな反時計廻りに動かしながら
誤差一㎜の狂いもない円を空間に描き始めた。
ピアニストのように細く艶めかしい指先が
時間軸の四半点を撫ぞる度、 その印が複雑に組み換えられる。
流麗な動作とは裏腹に頭蓋の神経が毟られるような
精密手技を執っているにも関わらず、
フリアグネは額に汗一つかかず口元の笑みも崩していなかった。
己の知力と技術とに、 絶対の自信を持っている何よりの証。
その廻転運動に合わせ、
純白の長衣と同色の手袋で覆われた掌中からやがて、
奇怪な紋字と紋様が湧き水のように溢れ出した。
白炎で包まれた無数の紋様はすぐさま立体的に膨張し、
フリアグネの周囲に円球状と成って展開されその華奢な躰を包み込む。
突如場に出現したその白炎障壁に、
シャナの撃ち放った紅蓮の炎架が真正面から激突した。
バシュッッッ!!!
その刹那、 赤熱の 『
跡形もなく粉微塵となって消し飛んだ。
エネルギーの膠着も、 拮抗も、 対消滅も、
白炎の紋様障壁に包まれたフリアグネの周囲を、
砕けた炎架の飛沫が余韻のように靡く。
宛ら、“アノ時” を
そんなコトはさも当然だと言わんばかりに、
フリアグネは口元を長衣で覆ったまま
勝ち誇ったようにシャナを見下ろしていた。
「そ……そ……んな……ッ!?」
一切の光の存在を赦さない、 無明の双眸が驚愕で見開かれる。
自分の、 最大最強焔儀がいとも簡単に防がれた。
炎術の練度が鈍っていた等という些末な問題ではない、
自分は、 先刻の焔儀を刳り出す為に手持ちの存在力の塊
『トーチ』 を全て残らず消費した。
それに加え大きさに比例して制御も難しくなる巨大なる力を、
己の精神力のみで強引に捻じ伏せ最高の威力を編み出した上で発動したのだ。
それなのに、 自分がアレだけ時間と労力を賭けて造り出した攻撃型自在法を、
眼前の男はものの数秒でソレ以上の防御系自在法を生み出し封殺した。
消し飛んだ炎塊の余韻と共にパールグレーの前髪が、
封絶の放つ気流でたおやかに揺れている。
その余裕の表情は、
『
そんな突拍子もない単語がシャナの脳裏に浮かんだ。
しかし事実、 そう認めるしかない。
自分の最大焔儀、 『
重さ一トンの鉄塊を蒸発させるくらいの威力は在った筈。
その上で今までの最高の力を乗せて焔儀を刳り出せた。
ソノ力の結晶をいとも簡単に封殺されたのでは、
否が応でもそう認めざるをえない。
そして再び、 頭上から到来する壮麗な “王” の声。
「フフフフフフ……君のその姿に相応しい、
実に可憐な焔儀だったよ? お嬢さん?
しかしその 『威力』 も君の姿と同じで、
脆く儚い存在だったようだねぇ?
まるで野に咲き乱れる霞草のように。
無人の荒野を駆るこの私には、
ただ踏みしだかれるだけの脆弱な存在だったようだ。
イヤ、“だからこそ美しい” かな?
フフフフフフフフフフフフフフ……」
フリアグネはそう言って倒錯的な微笑をシャナへと向ける。
「ッ!」
その挑発に、 シャナはキッとした鋭い視線で返す。
そして心中の動揺を悟られぬよう、 極力平静を装って言い放つ。
「流石に大口を叩くだけの事はあるわね? “狩人”
超遠距離からの 『暗殺』 を得意とするだけあって、
ソレに対する防御対策は万全ってワケ?
でもそれは同時に接近されたら、
一巻の終わりって白状しているようなものだわ」
その言葉に、 フリアグネはわざと平淡な口調で応じる。
「フッ、 その通りだよ、 お嬢さん。 私は荒事が嫌いでね。
この手では薄氷一枚砕いた事がない」
そう言ってシルクの手袋で覆われた細い手をこちらに差し向ける。
「愛するマリアンヌに、 無骨な手で触れたくはないからね。
フフフフフフフフ」
己の弱点をアッサリと晒らけ出しながらも、
フリアグネは嫌味なほど余裕で右手を振っている。
「第一、 戦闘者同士が暑苦しく近距離で押し合い引き合い、
ソレで一体何が 『美しい』 と云うのかな?
真の 『美』 とは、 一切の無駄を省いた所にこそ初めて存在し得るのさ。
そう “アノ方” のように、 ね」
甘くそう呟いて言葉の終わりに軽く片目を閉じる。
人間には持てない幻想的な魅惑がそこには在った。
「さて、以上で
ソレでは私と君の “戦闘組曲第二楽章”
『
そう言ってフリアグネは再び魔力の宿った純白の長衣を上方の空間に翻した。
瞬時に先刻同様薄白い炎が次々と浮かび上がってシャナを取り囲み、
頽廃のマリオネット達が第一波を遥かに超える数で召喚される。
「!」
シャナは表情を引き締め、 先刻同様壮烈な鬨の声を挙げる。
「何かと想えば性懲りも無くまた燐子の召喚ッ!?
この私に同じ 「手」 を二度使う時点で、 既に凡策よッッ!!」
凛々しく叫び、 シャナは右手を素早く黒衣の内側に押し込む。
そこから握られて出てきたのは
少女の名の銘でもある戦慄の美を流す大太刀、
“
「生憎だけど、 どんな強力な防御障壁を展開してもこの私には通用しない!!
編み込んだ己の自在法を 『増幅』 させッ!
同時に触れた全ての自在法を虚無へと還す!!
この “贄殿遮那” の前ではねッッ!!」
そう叫んで掴んだ大太刀を鋭く薙ぎ払う。
己の迷いを、 全て断ち切るかのように。
大気の割かれる痛烈な斬切音と共に、
巻き起こった気流が黒衣の裾が揺らした。
「それに “第二楽章” なんかじゃないッッ!!
これが “最終楽章” !! 『
そうフリアグネへ宣告すると同時に、
シャナは炎髪の撒く火の粉を足裏に集束して爆散させ
石版を踏み砕きながら前方右斜めの武装燐子の群に挑みかかった。
その胸元で突風に揺れるアラストールは、
心に浮かんだ一抹の異和感を拭いきれずにいた。
(むう……先刻、 この子の焔儀から彼奴の身を護ったのは果たして、
少々乱雑な
「でやああああああああああぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!」
アラストールの懸念をよそに、
シャナは燃え上がる鬨の咆吼をあげながら
黒衣を翻して武装燐子の群に突貫した。
【2】
空条 承太郎は階段を5段抜かしで疾風のように素早く二階へと駆け上がると、
素早く軸足をターンさせ屋上へと繋がる中央階段の方向に向かって駆けだした。
今昇ってきた階段で3階まではいけるが屋上まではいけない。
マキシコートのように裾の長いSPW財団系列のブランド
“CRUSADE” 特製オーダーメイドの学ランが風圧で舞い上がり
襟元から垂れ下がった鎖が澄んだ音を立てる。
体温上昇の発汗により蠱惑的な麝香が一際高く空間を靡いた。
今、 その永き血統が司る気高きライトグリーンの瞳には、
明らかに焦燥の色が在った。
彼自身自覚のない、 まだその理由さえも形になっていない
焦り、 戸惑い、 そして苛立ち。
深夜の繁華街でゴロツキ共と刃傷沙汰になった時、
冷や汗一つかかなかった承太郎らしくない焦り方だった。
鍛え抜かれた長い健脚で非日常の場と化した
廊下を疾走する、 無頼の貴公子。
その怜悧なライトグリーンの瞳が一点、 何かを捉える。
「ッ!」
承太郎はスタンドの 「脚」 を使って摩擦熱を伴いながら急ブレーキをかけ、
それ自体は決して珍しくない、 しかしその存在の “有り様” が実に異様な
ソレに視点を向けた。
中空に浮き上がり窓から漏れる白光に妖しく煌めく 「長方形」
くるりと軽やかに回って見せた図柄は、 身の丈を越える大鎌を肩口に掲げる死神
“JOKER”
(トランプ……か……?)
その宙に浮く、 一枚のカードからはらり、 と、 存在しないはずの二枚目が落ちた。
続けて三枚目、 四枚目……月下の白光に酷似した光に反照するカードが
次々と空間に零れ落ち、 そして舞い上がり、 どんどん増えていく。
やがてトランプの規定枚数52枚を超えて増殖し、
無軌道に宙を固まって紙吹雪ように舞い踊るソレは、
徐々に速度を速めながら渦巻いて承太郎を取り囲み
周囲半径5メートル以内を完璧に覆い尽くす。
現実性を完全に欠如した光景。
まるで奇術師のいない悪趣味なマジックを魅せられているようだった。
承太郎は周囲を警戒しながら、 静かに臨戦体勢を執る。
(コレが……アラストールの言ってやがった
スタンドと同質の
“
やれやれ全く薄気味悪いったらありゃしねーぜ)
心の中で毒づきながらも承太郎は研ぎ澄まされた五感を総動員して
カードの動きを追跡しながら集中力を高めていく。
突然、 そのカード群の軌道の一つが周囲から外れて
流れ始めたと思うと、 一方を指向する。
承太郎の首筋、 頸動脈の位置を。
続けて他のカード達もそれぞれ軌道を外れて各々の流れを造り出すと、
同じようにそれぞれの指向を刺し示した。
人体の急所、 頚椎、 眉間、 鳩尾、 背梁、 脇影、 聖門、 手甲、
そして
まるでギリシア神話に出てくる
ヒュドラのように鎌首を
それぞれが差し示した致命点へと高速で襲いかかってきた。
「スタープラチナァァァァァッッ!!」
承太郎の猛りと共に、 ストリートダンスの 「フロア・ムーブ」 のような、
『
あらゆる角度から致命点へと襲いかかる死のカードに向けて貫き手の乱打を射出する。
『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!』
その流麗且つ壮絶な姿、 まさに輝く黄金の竜巻、 否、 煌めく白金の乱気流。
『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァァァァ!!!!!!!』
自らの起こした拳風によって周囲の空気を円環状に攪拌しながら、
同時に捲き上がった旋風と共に中空へと舞い上がり承太郎の前方右斜め、
1,5mの位置へと着地したスタンド、 スタープラチナ。
その交差された剛腕の先端、 引き絞られた指の隙間には
それぞれ同数のカードが一枚の誤差も無く挟み込まれていた。
タネも仕掛けもない、 勇壮なる 『スタンド使い』
空条 承太郎の、 神業的な 『
スタンド本体の
そして何よりもソレを操る宿主の適切な状況判断力と
ソレに対応できる
それぞれ融合して初めて繰り出す事が可能な戦巧技。
流星の
『
流法者名-空条 承太郎
破壊力-B スピード-A 射程距離-C(最大半径3メートル)
持続力-D 精密動作性-A 成長性-B
『オッッッッッラァァァァァッッ!!』
刃よりもキレのある咆哮と共に今度はスタープラチナがそう叫び
交差した両腕を眼にも止まらない動作で払い合わせる。
先端のエッジが薄刃のように研がれた殺人カードの束は、
自身の切れ味で互いが互いを刻み、
シュレッダーにかけられた薄紙同様に
線切りとなってリノリウムの床に力無く舞い落ちた。
「フン、 こんな子供騙しでこの空条 承太郎を仕留めようなんざ
随分と虫のイイ話だぜ」
承太郎は足下で動かなくなったカードの残骸を
ドイツ製の革靴で乱暴に蹴り払う。
そし、 て。
「出てきやがれッッ!!
そう叫んで誰もいない空間へ向かい、
逆水平に構えた指先を差し示した。
“流石……ね……! 『星の白金』 ……空条 承太郎……ッ!”
開けた視界の中、 誰も居ない筈の空間に若い女の声が木霊した。
日本人離れした長身を持つ彼には通常あり得ない位置 “頭上” から。
“いいえ……! 我が主の
『
仰々しい言い回しに、 承太郎は小さく舌打ちする。
“ご主人様御自慢の 「宝具」……
『レギュラー・シャープ』 をいとも簡単に封殺するなんて……ッ!
それでこそ私自身が討滅する価値があるというものよ……!! ”
「ケッ! 余計な御託を並べてんじゃあねーッ! 勝手な 「通り名」 まで付けやがって!
とっとと姿を現しやがれッ! もう
“フフフフフフフ……光栄に想いなさい……!
アナタの為に、 とびきり高貴な真名を考えてあげたわ……!
ご主人様勝利の御為に、 ね……ッ!”
微かな笑みを含んだ声と共に、
静寂な廊下中央にいきなり白い炎が濁流のように渦巻いたかと思うと、
そこに人型のシルエットが浮かび上がった。
「……」
余韻を残して余熱も残さず立ち消えた炎の向こう側。
膝下まである砕けたホワイト・サファイアを
至純なる
神秘的な雰囲気を纏わせながら其処に立っていた。
←To Be Continued……
はいどうもこんにちは。
この
正直かなりイイ出来になったと個人的には満足しております。
まぁ当然「中身」は
ソレも含めて面白いかと。
ソレでは(≧▽≦)ノシ