STARDUST∮FLAMEHAZE 【完全版】   作:沙波羅 或珂

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『戦慄の暗殺者Ⅵ ~Standing Beat Up! ~』

 

 

 

【1】

 

 

「スタープラチナァァァァッッ!!」 

 

 承太郎の背後から瞬現したスタンド、

スタープラチナが長い鬣に白金の燐光を散りばめながら

頭上から迫る紅世の少女、

マリアンヌに向け素早く対空迎撃の構えを執る。

 

「せぇいッッ!!」

 

「オラァッッ!!」

 

 マリアンヌは清廉な声で半身の廻転による遠心力を加えた

長 衣(ストール)による打ち下ろしの閃撃を。

 承太郎は猛々しい咆吼で片膝を落とした反動による捻りを

加えたスタンドの対空抉撃(けつげき)を同時に放つ。

 その閃撃と抉撃とがブツかり合う瞬間、

承太郎は意図的にスタンドの拳を逆回転して引き抜き、

動作に連動したスタンドの爪先でリノリウムを罅割りながら

バックステップで背後に高速で飛び去った。

 

「!?」

 

 不意を突かれたマリアンヌの放った閃撃は

目標を失って宙を泳ぎ、

最終的には硬く冷たいリノリウムの床へ着撃した。

 

 

 

 

 

 ヴァガァァァァァァァァァッッッ!!!

 

 

 

 

 

 けたたましい号音で床が爆砕し、

階下に突き抜けてバラバラになった

破片と粉々になった土台のコンクリート、

そして長 衣(ストール)に編み込まれた不可思議な能力(チカラ)によって

合成が解除されたのか多量のコルクの粉塵が白い空間へ舞い上がる。

 承太郎はその驚異に意識を奪われず、 (つぶさ)に状況を分析した。

 

(やっぱりな……曾祖母(ひいばあ)サン (こう呼ぶと怒るがな) の 「首 帯(マフラー)」 と同じで、

アノ 『長 衣(ストール)』 にはジジイの 『波紋』 みてーな

何か妙な力が滞留しているようだ。

十分に水を吸わせた手織りの(たすき)

丈夫な樫の木でも砕いちまうらしいが、

コレはそんなモンとは次元が違う……

しかしどうやら威力がバカデケェだけで

()()()()()()どーこーなるとかはなさそうだ。 やれやれだぜ)

 

 フル稼働させた脳細胞と交感神経とを宥める為、

承太郎は学ランの内ポケットから煙草を取り出して火を点ける。

 昨日の花京院との戦いで、 承太郎は既にDIO配下の者達の

戦闘に於ける “狡猾さ” に気がついていた。

 ソレは逆説的だが、 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 現に昨日も、 自分が圧倒的優位に立っていた状況から

花京院の必殺 『流法(モード)』 輝く翡翠の魔連弾、

『エメラルド・スプラッシュ』 によって戦況はいともアッサリと逆転したのだ。

 

 

 

“相手が勝ち誇った時ッ! そいつは既に敗北している!!”

 

 

 

(やかましい! テメーに言われなくても解ってンだよ! クソジジイ!)

 

 何故か脳裏に甦った祖父の言葉に、 その実孫は心の中で毒づいた。

 

「意外に臆病なのね?  空条 承太郎? 

そんなに、 ご主人様の創造なされた 「宝具」 が恐ろしかったの?」

 

 純絹のように艶やかな肩口を向けながら、 マリアンヌは横目で彼を見た。

 

「相手の能力も解らずに、 (ふところ)へ飛び込むバカはいねーぜ」

 

 承太郎はその挑発を意に介さず、 細い紫煙を口唇の隙間から吹く。

 

「テメーはオレの 『能力』 を知ってるが、

オレはテメーの 『能力』 を知らねーんでな。

でもまぁ良い。 今ので大体の事ァ解ったぜ。

オレのスタンドとの “相性” は、 それほど悪くはねぇようだ」

 

「その憶測が果たして正しいのか、 試してみるのねッ!」

 

「上等だッ! 来なッッ!!」

 

 承太郎は半ばまで灰になった煙草を吹き、

マリアンヌに向け研ぎ澄まされた集中力で念じたスタンドを繰り出した。

 まるでカタパルトで射出されたように、

超高速で自分へと迫るスタープラチナに、

 

「はあぁぁぁッッ!!」

 

マリアンヌは踏み込んだ床にミュールの軸足を反転させ、

発生した遠心力を宿した煌めく左廻しの一閃を

スタンドの側頭部に向けて撃ち出す。

 

『オッッッラァァァッッ!!』

 

 けたたましい猛りと共に足下のリノリウムを爆砕して

踏み込んだスタープラチナは、 白金の燐光で覆われた豪腕で

己に迫る閃撃を廻し受けで素早く弾き飛ばす。

 白金と純白の火花がバチッ! と互いの中間距離で爆ぜた。

 

(キレはあるが定石(セオリー)通りの動き……

競技(スポーツ)」 ならともかくな……ッッ!!)

 

 承太郎は眼前の状況を一切見落とすことなく更にスタンドを念じ、

その精神に呼応したスタープラチナはすぐさまに足下の床を蹴り砕いて

マリアンヌの懐へと飛び込む。

 

「!!」

 

 その無駄のない、 あまりの踏み込みの速さに

マリアンヌはアメジストの双眸を見開く。

 まるでその存在自体が巨大なプレッシャーのような、

途轍もない威圧感を放つスタンドの両眼が超至近距離で

マリアンヌを傲然と(すが)める。

 

( 「攻撃」 はともかく 「防御」 がなってねぇよ!

生身のタイマンじゃあ急所に一発喰らっても

怯まず前に出てくる(ヤロー)もいるんだぜ!

無抵抗の人間ばっか相手にしてやがる紅世の徒(テメーら)には想像もつかねぇだろうがなッ!)

 

 心中でそう叫ぶと、

 

『オッッッラァァァァッッ!!』

 

回避の予備動作は疎かガードすら上げていないマリアンヌ、

その無防備なる 「水月(みぞおち)」 にスタープラチナは瞬速のボディーブローを撃ち放った。

 

(眠れッッ!!)

 

 元々長い時間を掛ける気など毛頭なかった承太郎の

渾身の覇気を乗せた一撃。

 しかし、 意外。

 ソレが目標箇所に命中する瞬間、

マリアンヌは先刻と変わらぬ清らの微笑を口唇に浮かべた。

 その微笑みに呼応するように、 純白の長 衣(ストール)

突如何かの 「引力」 に引っ張られたかのように高速で動き、

鋼鉄の鋲が無数に撃ち込まれたスタンドのブラスナックルを包み込んで

衝撃を吸収し、 打拳の動きを停止させた。

 再び火花が、 互いの空間で宙を舞う。

 そしてその火花の飛沫すらマリアンヌの肌に触れる瞬間、

長 衣(ストール)が大きく扇状に拡がって全て吸収した。

 

(何ッ!?)

 

 今度は承太郎が、 スタープラチナと同時に双眸を見開く。

 マリアンヌは、 別段何の動作も行っていない。

 防御や回避の 「初動」 は、 その躰のどこにも視られなかった。

 一度エリザベスに、 全身を微動だにせず強烈な一撃を放つ

帯術の 「極意」 を見せてもらった事があるが、

ソレは曾祖母のような達人クラスの 「領域」 に成って

初めて使う事が出来る絶技だ。

 防御の基本も出来ていない目の前の少女に

とてもそんな 『能力』 があるとは想えない。

 

(能力……?)

 

 脳裡に閃きが走った承太郎は、 純白の衣が絡みついたスタンドの拳を

強引に引き剥がしスタープラチナを自分の傍まで引き戻した。

 

「テメーの、その長 衣(ストール)の 「能力」……

どうやら “透明になる” だけじゃあねぇな。

相手の攻撃に反応して、 ()()()()テメーの躰を防御(ガード)しやがるわけか」

 

 鋭い視線で承太郎はマリアンヌの躰を包む純白の長 衣(ストール)

紅世の宝具を指差す。

 

「御明察の通りよ。フフフフ。

ご主人様が攻撃強化の他に、 様々な 「防御系」 自在法を

この長 衣(ストール)に編み込んで下されたのよ。

他にも色々と、 ね。

この紅世(ぐぜ)宝具(ほうぐ) 『ホワイトブレス』 は、

様々な自在法を編み込んで溜めておく事の出来る、

いわば超軽量のタンクのようなモノ。

そして編み込む自在法によって、

その性質や属性を変化させる事の出来る 「宝具」 よ」

 

 そう言ってマリアンヌは一度言葉を切り、

その長く麗しい白水晶の髪を秀麗な仕草でかきあげる。

 

「ソレによって、攻撃・防御の二つを “同時に行う事” が出来る。

だから私は安心して攻撃だけに専念することが出来るというわけよ」

 

 そう言ってマリアンヌは再びその純白の長 衣(ストール)鷹揚(おうよう)に構え直すと、

 

「さぁ!! この 『ホワイトブレス』 をさっきみたいに、

封殺出来るというのならどうぞやってごらんなさいッッ!!」

 

 挑発的な笑みを口元に浮かべてそう叫び、

足下のリノリウムを踏み切って

真正面から堂々と承太郎の射程圏内へと飛び込む。

 

「ハアァァァァァッッ!!」

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァァァ!!!!』

 

 一直線に突っ込んできたマリアンヌの細い腕から

撃ち出された直突の一撃をスタープラチナは紙一重で(かわ)すと、

その華奢な躰に向けて音速の多重連撃を一斉射出する。

 

「フフフ……ッ! おバカさん……!」

 

 マリアンヌが笑みを深くすると同時に純白の長 衣(ストール)が先刻同様、

否、 ソレ以上に素早く拡散して羽根吹雪のように捲き上がり、

空間を舞い踊ってスタープラチナの連撃を全て防御、 吸収する。

 

「チィッ! ()()すらも防ぎやがるのか!」

 

 音速の動きにすら対応する 「宝具」 の潜在能力に驚愕しながらも、

承太郎は反撃に備えスタンドのバックステップで距離を取る。

 しかし彼が背後に飛び去るよりも速く、 マリアンヌの長 衣(ストール)が再動。

 

(ッッ!!)

 

 捲き上がって収斂し、 正面のあらゆる角度から

白の帯撃が豪雨のようにスタープラチナへと降り注ぐ。

 

「クッ!」

 

 承太郎は咄嗟に十字受けの構えで防御体勢を執らせ、

顔と首筋を腕の中に埋めさせると

やや前屈の構えで腹部の面積を減らし

更に左脚を上げて脇腹を防ぐ。

 

 ズギャギャギャギャギャギャギャッッッッ!!!!

 

 流麗に煌めく神秘的な外見とは裏腹に、

凶暴な炸裂音がスタープラチナの全身を撃ち抜いた。

 

「グッ!?」

 

 苦痛に顔を歪める承太郎の脇を、

マリアンヌがホワイトサファイアの髪を

揺らしながら華麗に飛び去っていく。

 連撃でガードを抉じ開けられ

さらに衝撃で背後に弾き飛ばされたスタープラチナと、

そのダメージの影響を受けた承太郎の両腕部と右脚部が

学ランごと鎌 鼬(カマイタチ)にでも()ったかのように

引き裂かれ鮮血が空間に飛び散る。

 

「!」

 

 承太郎は自分とスタンドの蹴り足で

何とか崩れた体勢を立て直し、

リノリウムの上に急ブレーキをかける。

 しかし。

 その眼前に再び、 清らの微笑を浮かべたマリアンヌが

長 衣(ストール)を気流にはためかせながら迫る。 

 

(クッ!? 向かえ討つのはマジィ……!

アノ長 衣(ストール)の 『能力』 で

こっちの 「攻撃」 が全部 “カウンター” になっちまう……!)

 

「せえぇぇぇぇぇぇぇいッッ!!」

 

 マリアンヌは手練の手捌きで閃光の三連撃をスタープラチナの急所

「聖門」「秘中」「水月」 の位置に向けて撃ち出してくる。

 

『オラオラオラァァァァァァッッ!!』

 

 スタープラチナは精密な()の動きでその閃撃を全て迎撃する。

 急所に向かって撃ち出された長 衣(ストール)は、

スタープラチナの胴体に掠る事もせず全て撃ち落とされる。

 

(“コレ” は……見切れる……!)

 

「ハアァァァァァァァッッ!!」

 

 地に足を着いたマリアンヌは、

直進の動作で発生した力を殺さず軸足を滑らかに反転させ

円舞のような流麗の動きで身体を何度も廻転させながら

遠心力の増幅した巻撃をスタープラチナに向けて次々と繰り出す。

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!』

 

 その動作に、 妖艶な体捌きに幻惑される事なく

集中力を研ぎ澄ました承太郎は、

スタンドで次々に迫る長 衣(ストール)の側面を弾き、

胴体と顔面に向かって放たれた攻撃を全て叩き落とす。

 円を描く死の (ステップ) が12廻転を終えた所で、

マリアンヌは演舞を舞い終えた 「巫女」 のようにその両腕を交差し

片膝をリノリウムの床についてその顔を俯かせた。

 終演の動作で舞い上がり散らばった

煌めく白水晶の髪が、 壮麗に周囲の空間を優しく撫ぜる。

 華麗さこそ極まるが、 戦闘中には自殺行為と言って良い無防備な挙動。

 並の戦闘者なら 「機」 の誘惑に負けて想わず

反撃に撃って出る処だが、 承太郎はあくまで冷静に対処した。

 

(完全に隙だらけ……! だが違う……ッ! ()だ……!)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 防御体勢を保ったままマリアンヌの目の前で停止するスタープラチナ。

 その眼前で捲き上がった長 衣(ストール)が一迅、

突如煌めきを増したかと想うと更に先刻以上の勢いをつけて再動。 

 マリアンヌが腕を動かしていないのにも関わらず、

またも純白の長 衣(ストール)はソレ自身が意志を持ったかのように周囲へ拡散し、

変幻自在の軌道でスタープラチナへと襲いかかった。

 

(今は()()()()()()()()()()()……!

「防御」 にも反応しやがるのか……!? イヤ……!)

 

 瞬く間もなく襲いかかる白撃の乱舞を前に、

承太郎の思考は中断を余儀なくされた。

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!』

 

 再度羽根吹雪のように縦横無尽で

空間を舞い狂う長 衣(ストール)の多重連撃を、

スタープラチナは猛々しい咆吼で迎え撃った。

 その夥しい弾幕と同義の一斉掃射をスタンドの腕が

超精密な動作で己の対角方向に迎撃していく。

 しかし、 死角の位置から両腕の隙間に侵入した長 衣(ストール)の先端が

そこで一瞬力を矯めるかのように停止すると、

 

 ズギャッッッ!!!

 

素早く発光し鎌首を(もた)げた白蛇の如く、

スタープラチナの左胸へ急速に伸びて撃ち抜く。

 

「ガッッ!?」

 

 その閃撃で再び背後に弾き飛ばされたスタープラチナと承太郎は、

リノリウムの床に足裏を滑らせ派手なスキール音を立てながら

片手を床につき前屈の構えで停止する。

 革の焦げた匂いが周囲に漂った。 

 閃撃のダメージは左胸から背中にかけて突き抜け、

着弾箇所のシャツが引き裂かれその内部が熱を持って痺れている。 

 承太郎の口元から、 血が細く伝った。

 

(クソッタレが……ッ! あんな布っ切れが当たっただけなのに、

まるで鉄のシャベルでも胸にブッ込まれたみてーだ……ッ!

オマケに競馬場のハズレ馬券みてーに空中をヒラヒラ舞ってやがるから

動きが読み難くてしょうがねぇぜ……ッ!)

 

 心中で毒づきながら手の甲で血を拭う。

 

(アノ女の攻撃自体は見切れない動きじゃあねー……

だが、問題はその後の 『追撃』 だ……!)

 

 不意を突かれた事に苛立ちながらも、

承太郎は冷静に戦況を分析する。

 

()()()()()()()()()()()()長 衣(ストール)自体が動く……!”

つまり攻撃の 「起点(きてん)」 がねぇから

“全部動体視力と反射神経だけで”

防がなきゃあならねー……! だが……ッ!

無数に撃ち出される帯撃の、 その一発一発がとんでもなく速くて強ぇ……!) 

 

 異質な相手の 『能力』 に歯噛みする承太郎の、

その10数メートル先で悠然と佇む異界の美少女。

マリアンヌは幻想的なアメジストの瞳で悠然と彼を見据えていた、

 獲物を狡猾につけ狙う、 まさに “狩人” の(しもべ)そのままの視線で。

 

「ウフフフフフフフフフフ……

失礼。 空条 承太郎。

どうやら少し説明不足だったみたいね?」

 

 調律の狂ったプリペアドピアノのような、

奇怪なトーンの声が廊下に木霊(こだま)した。

 

「この 『ホワイトブレス』 の(なか)に編み込まれた

「攻撃」 「防御」 の “自在法” の中には、

無数の 『操作系自在式』 が組み込んであるのよ。

法儀(ほうぎ)の名手として名高いご主人様御得意のね。

つまりアナタは今、

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

自分の置かれている状況が、 どれだけ絶望的か理解出来たかしら?

ウフフフフフフフフフフフ……ッ!」

 

 そう言ってマリアンヌは口元を長 衣(ストール)で清楚に覆い

その瞳を綺麗な笑みの形に(ほころ)ばせる。

 背後に、 主の不敵な微笑が透けて視えるような確信の様相で。

 周囲を純白の長 衣(ストール)が、 微かな衣擦れすら伴わず

天使の羽衣のように燐光を(なび)かせ揺らめいている。

 攻防連導。 稀彩(きさい)聖衣(せいい)

 紅世(ぐぜ)宝具(ほうぐ)

『ホワイトブレス』

創者及び法者名- “狩人” フリアグネ

破壊力-B スピード-A(自在法発動時) 射程距離-C(最大7メートル)

持続力-C 精密動作性-A(自在法発動時) 成長性-なし

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 マリアンヌ告げられたその事実に、

承太郎の苛立ちはさらに激しさを増す。

 

(チッ……! “自在法” ……ッ! 

一昨日(おととい)シャナがやってた()()()……!

ブッ壊れた街を元に戻したのにも驚かされたが……

コト 「戦闘」 に使うとなるとこんな厄介な代モンはねーぜ……ッ!)

 

 衝撃の余波で裂けた額から伝う血を手の甲で拭う。

 

(それにその 『操作系自在式』 とやらを長 衣(ストール)に組み込んだ

“フリアグネ” とかいうヤロー、

花京院の云う通り相当()()性格してやがる……!

多量の目眩ましの中に 『本命』 の一撃を紛れ込ませる……!

それも意識が前方に集中している相手(オレ)からは完全に 「死角」 の位置から……!

幾らスタープラチナの 「眼」 でも、

()()()()()()()()()その精密動作も空廻りするしかねぇ……!)

 

 心中で毒づきながら承太郎は血の混じった唾液を廊下に吐き捨てる。

 しかし苛立ちは持続せず、 すぐに彼は持ち前の冷静さを取り戻す。

 無益な愚行と周囲には想われていた幾多の争いの日々が、

彼に合理的な戦闘の思考を密かに育んでいた。

 

(さて……どうする……!?)

 

 自分が護るべき者、 多くの人間達の姿を想い浮かべながら、

空条 承太郎は打つべき 「手」 を模索し始めた。

 

(理想としては、 このまま攻防を繰り返すとみせかけて防御と牽制(けんせい)とに徹し、

あの長 衣(ストール)の内蔵エネルギーを使()()()()()()()()ってのが上策のようだが……)

 

「!」

 

 脳裏に、 一人の少女の姿が(よぎ)った。

 黒寂びたコート、 真紅の瞳と深紅の髪、

その左胸に照準を合わせる、

“フレイムヘイズ殺し” の 「拳銃」

 

(やれやれ……グズグズしてる暇はねぇみてぇだぜ……!)

 

 戦法を長期戦から短期戦へと移項し、

承太郎の頭脳は新たな戦略を生み出すために再始動する。

 脳裏で紡がれる幾つもの布石の中、

承太郎は先刻からのマリアンヌの 「行動」 から類推出来る、

ある戦闘パターンを発見した。

 

(アノ女は……さっきから 『スタープラチナ』 にばかり意識がいっていて、

「本体」 である()()()()()その眼中に入ってねぇ……

オレをスタープラチナの 「付属物」 或いは 「消耗品」 だとでも考えていて、

『司令塔』 だとは夢にも想ってねぇみてぇだ……

つまり……()()()()()()()()()()

 

 その事実に、 怒りが再び躯の内部から迫り上がってきた。

 

(舐め腐りやがって……! そうやって軽くみていやがるから、

その生命(いのち)も虫ケラみてーに簡単に喰い潰すことが出来るってわけか……!

いいだろう……紅世の徒(テメーら)が甘くみてやがるその 「人間」 の力……!

この空条 承太郎が思い知らせてやるぜ……!!)

 

 決意と共にそう叫び、 承太郎は襟元から垂れ下がった

黄金の長鎖(くさり)を血に塗れた右手で強く掴んだ。

 攻撃を仕掛けてこないのを諦めと受け取ったのか、

マリアンヌは再び軸足で足元を踏み切り、

純白の長 衣(ストール)を揺らめかせながら真正面から突っ込んできた。

 

「どうやら万策尽きたようねッ! ではコレで終劇とさせてもらうわッッ!!」

 

 華麗なるその容貌と手にした宝具の背徳から、

まるで死の天使が如く迫り来る異界の美少女。

 

(勝負は……()()……ッ!)

 

 承太郎は即座にスタンドを正面に出現、 配置させ

同時にその裡では他の何ものにも揺るがない

確固たる 『覚悟』 を決める。

 ソレが彼の全神経を、 極限まで研ぎ澄ました。

 

「コレでお別れよッッ!!  “Au revoir(オ・ルヴォワール)!!”

星躔琉撃(せいてんりゅうげき)!” 空条 承太郎ッッ!!」

 

 最後の言葉と共にスタープラチナの顔面へ向けて、

煌めく聖衣の閃撃が一際鋭く撃ち出された。

 その瞬間(とき)

 

「オッッッラァァァァァァァァァ―――――――――――ッッッッ!!!!」

 

 突如、 激しい喚声が白の空間に挙がった。

 スタンド、 スタープラチナではなく

その「本体」 ()() ()()()()()()()()()()

 そして挙がった咆哮の先から真横へ延びるようにして撃ち出された

白金に輝く一迅の閃光が、 マリアンヌの右手に艶めかしく絡みついた

純白の長衣を鋭く打ち据える。

 

「……()ッッ!?」

 

 ソレによって閃撃の軌道が逸れ、

純白の長 衣(ストール)は本来の標的とは

あさっての方向へと流された。

 いつのまにかスタープラチナの左側面、

接近しているマリアンヌからは完全に 「死角」 の位置から

()()()()()()攻撃を放ったのだ。

 その手に握られた、 普段は学ランの襟元から垂れ下がっている

『黄金長鎖』 によって。

 

「ま、まさかッ!? ひ弱な 「人間部分」 が攻撃してくるなんてッ!?」

 

 アメジストの双眸が、予期せぬ驚愕で大きく見開かれた。

 そして次の刹那。

 

 

 

 

 雷・光・()()るッッ!!

 

 

 

 

 攻撃したのが承太郎なので紅世の宝具 『ホワイトブレス』 の 「攻撃目標」 は、

()()()()スタープラチナから空条 承太郎へと 「変更」 される。

 その情報の変遷によって一時停止状態に陥る

「宝具」 『ホワイトブレス』 のその一瞬の間隙を縫って

『流星』 を司るスタンド、 スタープラチナが

乾坤一擲の拳をマリアンヌの麗しい顔に向けて射出する。

 その強襲の許となった 『能力』

 人智を越えた超常の力を携える、

波紋戦士やフレイムヘイズを初めとする

「超能力者」 のなかでも 『スタンド使い』 にしか使えない、

幽波紋(スタンド)』 と 「本体」 による超高速連携技。

 名付けて――。

 

 

 

【タンデム・アタックッッ!!】

 

 

 

 

 ライトグリーンとアメジストの瞳が重なる、

凝縮されたゼロコンマ一秒の世界で、

互いの思惑が交感した。

 

(このチェーンは、 オレのケンカの 【奥の手】 だ……

多人数に囲まれた時と相手が光モン(刃物)抜いた時しか使わねーがな……)

 

(そ、そんな……!? “宝具” でもない、 ただの 「鎖」 がなんで……!?)

 

()()()()じゃあねーんだよ……

曾祖母(ひいばあ)サンから貰ったコレには、

バアサン特製の 「波紋」 が練り込んである……

ついでにジジイのヤローも騙くらかして波紋込めさせたから、

“相乗効果” で 「強度」 が半端ねー事になってんだよ……

オメーの一撃程度なら弾き返せる位にな……)

 

(ただの人間が……!! 紅世の徒である私の動きに着いてこれる筈が……!!)

 

(昔、ガキん頃曾祖母サンに、 「帯術」 の基本だけ教わった……ジジイには内緒でな……

テメーの得物(エモノ)は威力こそデケーが、 その 「使い方」 がまるでなっちゃいねー……

スピードとキレはあるがその軌道は直線的だ……

曾祖母サンの帯捌(たいさば)きに比べれば止まって見えるぜ……ッッ!!)

 

(ク……ッッ!!)

 

( 『スタープラチナ』 にばかり目がイって、

本来一番警戒するべき 「人間」

()()()() ()()()()()()()()()()()()()()敗因だったな?

マリアンヌッ! オメーの負けだぜッッ!!)

 

 ライトグリーンの双眸が一際強く輝き、マリアンヌの瞳を鋭く刺し貫いた。

 熱く。 激しく。 燃え尽きるほどに。

 

 

【挿絵表示】

 

 

←To Be Continued……

 

 

 

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