STARDUST∮FLAMEHAZE 【完全版】   作:沙波羅 或珂

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『戦慄の暗殺者Ⅶ ~Marionette in the Mirror~ 』

 

 

 

 

【1】

 

 

 

 

 

『オッッッラァァァァァ――――――――――ッッッッ!!!!』

 

 

 

 

 咆吼。

 その長い鬣を揺らし廻転させた下半身の動きによって

舞い上がった腰布を渦巻く気流に靡かせながら

連動して射出された、 唸りをあげて迫る

スタンド 『星 の 白 金(スター・プラチナ)』 戦慄の豪拳。

 

「ホワイトブレスッッ!! ダメ!! 間に合わないッッ!!」

 

 マリアンヌは手の先から防御式最優先の自在法を長 衣(ストール)へ送り込んだが、

既にして状況は絶望的だと細胞が解しその躰は意志に反して硬直する。

 

「――ッッ!!」

 

 最早出来る事はただ瞳を閉じ、 木偶(デク)人形のようにスタンドの豪拳を喰らうだけだった。

 

(申し訳ありません……!! ご主人様……ッッ!!)

 

「死」 を覚悟したマリアンヌは、

その今際の刻まで最愛の主、

フリアグネの事だけを想っていた。

 

 

…………

……………………

……………………………

 

 

 しかし、 何時まで経っても来るべき筈の衝撃が来ない。

 自分は痛みを感じるまもなく首でも()ね飛ばされ、 絶命したのだろうか?

 目を開けるのは恐ろしいが閉じているのはもっと怖い。

 恐る恐るマリアンヌがアメジストの双眸を見開くと……

 

「……」

 

 眉間の直前で、 白金の燐光を放つ豪拳が停止していた。

 拳風で前髪が(まく)れ上がっている。

 沈黙の(まにま)に、 花々の芳香が気流に乗って靡いていた。

 その先、 剣呑な視線で自分を見下ろしている宿敵、

『星の白金』 空条 承太郎。

 

「どうして……私に……止めを刺さなかったの……?」

 

 鋼鉄の鋲で覆われた鉄拳を、 眉間の照準に当てられたまま

マリアンヌは震える躰を努めて抑えながら承太郎に問う。

 

「言った筈だぜ。 女を殴る趣味はねぇ。

「オレ」 がテメーの一撃を弾き飛ばした時点で

もう既に 『決着』 は着いていた。

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 血に濡れた手に握られている 「黄金長鎖」 を

襟元の留め金に繋ぎ直しながら承太郎は素気無く言った。 

 

「甘い、のね……」

 

 マリアンヌは瞳を閉じ静かに呟く。

 

「まぁ、 人間じゃねぇオメーに言っても、 解りゃあしねーか」

 

 そう嘆息した後、 承太郎はスタープラチナの拳を引いた。

 

「その 『甘さ』 がアナタの命取りよッッ!!」

 

 マリアンヌの瞳が再び妖しく反照し、

承太郎に向けて白い閃撃を撃ち出してくる。

 

「……」

 

 その行動を予め読んでいた承太郎は、

両目を閉じたままスタンドのバックステップで余裕に(かわ)し、

マリアンヌから約10メートル離れた位置に爪先を鳴らして着地する。

 

「私は!! もう絶対敗けるわけにはいかないのよッッ!!

私自身の為に!! 何よりもご主人様の御為にッッ!!」

 

 そう叫んで己を包んでいる懼れを吹き飛ばすかのように、

純白の長 衣(ストール)を尖鋭に翻すマリアンヌ。

 激昂する彼女とは対照的に、 承太郎は怜悧な瞳で彼女を見据えていた。

 

「やれやれ。 往生際が悪ぃぜ、 マリアンヌ。

オメーのその長 衣(ストール)の 『能力』 は、

()()()()()()()()()()()()

 

 そう静かに告げると、 制服の内側から煙草を取り出して口に銜える。

 スタープラチナが五芒星のジッポライターで火を点けた。

 口唇から吹き出された紫煙が二人の中間距離で舞い踊る。

 

「一度 『ホワイトブレス』 を破った位で良い気にならないでッ!

同じ 「手」 は二度通用しない!

今、 私に止めを刺さなかった事を後悔させてあげるわ!!」

 

 確信していた勝利が露と消え、 更に余裕の態度に苛立ったマリアンヌは

純白の長 衣(ストール)を大きく両手に構え、 躍進するため前傾姿勢を執る。

 最愛の主から譲り受けた 「宝具」 を侮辱される事は、

まるで主自身を侮辱されたように彼女には感じられたのだ。

 

「今度は、 『ホワイトブレス』 の中に編み込まれた

全ての攻撃型自在法を全開放して!

“アナタ自身に” 撃ち込んであげるわッ! 

幾ら強力なミステスとは言っても所詮は生身の人間!

「宝具」 の一斉攻撃を受ければ跡形も遺らずに粉々よッッ!!」

 

 そう叫んでマリアンヌの漆黒のミュールがリノリウムを踏み切る瞬間――。

 

「オメーの長 衣(ストール)に仕込まれたその “操作系自在法” とやらには、

『発動条件』 が在る」

 

「――ッッ!?」

 

 驚愕。

 紫煙と共について出た、 予期せぬ言葉にマリアンヌは絶句する。

 その影響で細い躰が硬直し、 全ての攻撃予備動作は解 除(キャンセル)された。 

 

「ソレは必ず “一撃目” は、()()()()()()()()()()()()()()()()()、 マリアンヌ」

 

 そう言って承太郎は火の点いた穂先を自分へと向けてきた。

 

「その 「証拠」 に、 さっきからオメーはその長 衣(ストール)から一度も手を放してねぇ。

オレの射程圏内からは距離を取り、

安全地帯から飛び道具のように投げて使えば良いのにも関わらず、

オメーはわざわざ危険を冒してまで 『近距離パワー型』 である

オレのスタンドの射程圏内にまで踏み込んで攻撃してきた。

ソレは、 ()()()()()()()()使()()()()()()だろ?」

 

「――ッッ!!」  

 

 戦慄。

 空条 承太郎の言葉は、 自分の携える 「宝具」 の本質を、

その 「弱点」 までをも正鵠に見透していた。

 確かに内に込められた自在法を発動させるには、

自分が直接 「指示」 を送らねばならない。

だから迷彩も兼ねて攻撃の中にその行為を(まぎ)れ込ませる。

 しかしたったの数回攻防を繰り返しただけで、

初めて視る 「宝具」 の能力をこうも正確に看破出来るものか?

“紅世の王” でもない、 ただの 「人間」 が。

 

「どんな優れた精密機械でも、 スイッチが 「ON」 にならなきゃあ作動はしねー。

能力(ネタ)が割れた以上、 もうオレとスタープラチナには通用しねーぜ。

次は 「一撃目」 から 「掴む」 事に専念させてもらう。

生身のオレに見切られる技とスピードで、

果たしてスタープラチナの 「眼」 が (あざむ) けるかな?

破滅願望でもあるんなら試してみな」

 

 そう言って顔を上げたライトグリーンの瞳が、

再びマリアンヌの瞳を真正面から射抜く。

 

(クゥッッ!?)

 

 その強烈な威圧感にマリアンヌの足が意図せず背後へと下がった。

 戦うことは、 恐くなかった。

 死ぬことすらも、 怖れはしなかった。

 最愛の主の為ならば、 自分の生命(いのち)など少しも惜しくはなかった。

 しかしこのままでは、 自分はその主の身を危機に晒させる事になる。

 人間(ヒト)の身でありながら、

その鋭敏なる頭脳で紅世の宝具の性質を余すことなく看破し、

さらに携えたその途轍もない能力(チカラ)で封殺するような、

想像を絶する存在の力を持つ男を、 最愛の主の元へと行かせる事となる。

 アノ “天目一個(てんもくいっこ)” をも超える、 皮肉にも自分がその名付け親になってしまった

星 躔 琉 撃(せいてんりゅうげき)殲 滅 者(せんめつしゃ) を。

 

「ご主人……様……」

 

 力無く呟いたマリアンヌは、 袋小路に追いつめられた獲物のように後ずさった。

 凄むでもなく威圧するわけでもなく、

()()()()()()()()()()()()の男の存在が、

彼女の恐怖を否応なく増大させた。

 

(だ、 ダメッッ!!)

 

 寒いわけでもないのに震える自分の躰を、 マリアンヌは懸命に(いさ)めた。

 だが、 躰の震えは止まっても心の震えまではどうしようもない。

 それでもマリアンヌは懸命に、

後退しようとする躰と停滞しようとする心を押し(とど)めた。

「宝具」 と “自在法” の加護がなくなり

剥き出しの生身で向き合わざる負えなくなった今、

ハッキリ言って、 目の前のこの男は途轍もなく恐ろしい。

 こうしてただ対峙しているだけでも、 躰が意に(はん)して震え出し止まらない。

 足下の感覚もまるで現実感がなく、 自分がどう立っているのかすらも曖昧だった。

 そしてソレは当然の事と言えた。

 アノ時、 もし承太郎が心を憎しみに呑まれたまま

その拳を全力で撃ち抜いていれば、

ソレを受けたマリアンヌは確実に絶命していたのだから。

 

「……ッ!」

 

 震える躰を長 衣(ストール)越しに掻き抱いているマリアンヌを見据えていた承太郎は、

やがて淡い嘆息をその口唇から漏らした。

 その様子はまるで激しい雨の中、 ずぶ濡れで足元にすり寄ってくる

仔犬のように弱々しかったからだ。

 そのか弱き異世界の少女の様相に、

無頼の貴公子は学帽の鍔で苦々しく目元を覆う。

 

(やれやれ。 これじゃあどっちが悪モンか解らねーな。

理由はどうあれ弱い者イジメみてーで気分が悪いぜ。

その、 テメーの “ご主人様” とやらに対する気持ちを、

ほんの少しだけでも他の人間に与え(クレ)てやれば、

こうはならねー筈なんだがな) 

 

 瞳を若干斜めに逸らし、 そして承太郎は少女に促す。

 

「オメーの負けだ。 マリアンヌ。

もうこれ以上続けてもオメーに勝ち目はねぇ。

潔く認めて道を開けな」

 

 そう言って自分へと歩み寄る無頼の貴公子に、

異界の美少女はアメジストの双眸をきつく結んだ。

 

(ご主人……様……)

 

 脳裏に甦る、 最愛の者の笑顔。

 

(ご主人様……ッッ!!)

 

 その(くるお)しい程に愛しき存在が、 『決意』 と成って心に巣喰った 【恐怖】 を吹き飛ばした。

 

「ご主人様の(もと)には!! 絶対に行かせないわッッ!!」

 

 閉じていた双眸を見開いたマリアンヌは、

鮮鋭にそう叫んで長 衣(ストール)を再び空間に翻す。

 純白の衣が弧を描いて、 空間を扇ぐと同時に内部へ編み込まれた 『召喚系自在法』 が発動、

承太郎の前方に数十もの薄白い炎が、 封絶の光に照らされる廊下へ所狭しと噴き上がった。

 

「!」

 

 その中からマリアンヌの着ているものと同じ、

瑠璃色を除いた色とりどりのドレスに身を包んだフィギュア型の燐子、

承太郎の言葉で云えば悪趣味な動くマネキンの群が

形状もまちまちな細身の武器を (たずさ) えて現れた。

 

「無駄だぜ。 雑魚(ザコ)を何匹掻き集めようが、

オレとスタープラチナの敵じゃあねぇ」

 

 微塵の動揺も示さず、 スタンドと共に指を差し向ける無頼の貴公子。

 心中を突かれたように気勢を削がれる異界の美少女。

 ソレは、 解っていた。

 天目一個以上の超強力なミステスに、

低級燐子が喩え何体集まろうが砂上の楼閣にもならない事は。

 しかし、 ほんの僅かでも可能性が在るというのなら、 退くわけにはいかない。

 ()()()()()()()()()()()()()

 最愛の主のために、 この身を犠牲にしてでも護りたい(ヒト)のために――。

 退()()()()()()、 何が在っても絶対に!

 

 燐子の少女は己の決意を強く胸に誓い、

その双眸にも同様の光が宿る。

 ソレは、 承太郎の瞳に宿るモノにも全く引けをとらない精神の輝き。

 

「!」

 

 空条 承太郎はそこで初めて、

マリアンヌに対し、そして紅世の徒に対し、

「怒り」 以外の感情を抱いた。

 コトの善悪は抜きにしてこの異界の少女もまた、

自分以外の 「誰か」 の為に戦っていた。

 

“大切な者を護る為に”

 

 種の違う者とはいえど、 その一点だけは自分と何ら変わりはしなかったのだ。

 

(やれやれ……オレが想像していた以上に、 厄介な相手だったのかもな。

紅世の徒(テメーら)(ゆる)す気は全くねーし、

ブッ倒す事をカワイソーだとは微塵も想わねぇが、

窮地にあってもその “ご主人様” とやらの為に

ヘコたれねぇ精神にだけは、 『敬意』 を払うぜ、 マリアンヌ)

 

 承太郎は互いの中間距離で足を止め、 その背後からスタンド、

スタープラチナを静かに出現させる。

 己の全霊を持って戦い、 そして倒すべき相手だと

承太郎自身がマリアンヌを認めたのだ。 

 

「どうやら、 何が在っても退く気はねぇみてぇだな?

ならもう今度は拳を止めねぇ。

()()()()()()()()()()()? マリアンヌ……!」

 

 承太郎は静かに、 だが有無を言わさぬ口調でそう言い放ち、

逆水平の指先を武装燐子越しにマリアンヌをへと差し向けた。

 

(――ッッ!!)

 

 とうとう 「本気」 にさせたという事実を実感しながら、

再び迫り上がってきた脅威と畏怖で下がろうとする脚を、

逆にマリアンヌは一歩前へと踏み出した。

 

(ご主人様……どうかマリアンヌに……『勇気』 を与えてください……!)

 

 心の中でそう呟き、 開いたドレスの胸元から取り出した、

メビウスリングを模した鎖の刻印が入った 「金貨」 を手に握り、

静謐に煌めく鏡のような表面に主の面影を想い起こした。

 

「……」

 

 そして一度、 その金貨に可憐な唇でそっと口づけると、

 

「さあ!! 行きなさいオマエ達!! 

ご主人様を傷つけようとする者を討滅するのよ!!」

 

マリアンヌの叫びと共に長 衣(ストール)の絡まり合った右腕が尖鋭に振り下ろされる。

 それを合図に四十を超える燐子の大群の目が薄白く発光し、

陣形などはお構いなしで真正面から十数体まとめて承太郎に襲いかかった。

 ある者は関節に仕込まれた機械部品を軋ませ、

またある者はペット樹脂の肢体に互いの身体と武器にブチ当てながら、

自虐的な無数の斬撃を承太郎とスタープラチナに振り下ろす。 

 煩雑な軌道と剣速だが、 しかしその凶悪さと凄惨さは一層にも増して

自分に一斉に襲いかかる剣林を承太郎は眉一つ動かさずに見据えると、

 

「スタープラチナァァァァァッッ!!」

 

精悍な声でそう叫び、 力強く右腕を薙ぎ払った。

 

 

 

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァァ!!!!!!』

 

 

 

 

 ソレに同調したスタンド、 スタープラチナが猛りながら

引き締めた拳の嵐撃を目の前を覆い尽くす斬撃に向けて撃ち放つ。

 数こそ多いがどんな状況でも冷静に対処出来る精神を持つ人間、 空条 承太郎と

音速のスピードとソレに対応する動体視力をも携えるスタンド、 スタープラチナの前では

その兇刃乱舞ですら端から止まっているも同然だった。 

 

 

 

 

 ドグッッッッシャアアアアアァァァァァッッッッッ!!!!!

 

 

 

 

 衝撃と共に強烈な破壊音を伴って砕けた夥しい刃の破片と

フィギュアの残骸が瞬く間に空間へと散乱した。

 肉眼では判別不能の速度で繰り出される、

スタープラチナのスタンドパワーが乗った豪拳に触れたものは、

刃だろうがフィギュアの本体だろうが内部に組み込まれたスチールの骨組みだろうが、

文字通り触れた先から枯木のように粉砕された。 

 余波によって生まれた旋風が、 紅世の少女へと勢いよく叩きつけられる。

 

「……あうぅぅぅッッ!!」

 

 パールグレーの髪が風に舞い踊りストールが激しくはためき、

ドレスの裾が捲れ上がって白い脚線美が露わとなる。  

 

「フン、 敵とはいえ女の姿をしたモンを殴るのはチト心が痛むが、

テメーらは放っておきゃあ他の人間を襲い出す。

悪いが全部まとめてブッ壊させてもらうぜ」

 

 そう言って承太郎は一度微かに口唇を歪めると、

スタープラチナと共に周囲を囲む武装燐子の集団など

まるで存在しないかのように悠然とマリアンヌとの距離を詰めてくる。

 先刻の攻撃。

 たったの一合しただけで、 全戦力の三分の一以上がアッサリと持っていかれた。

 廊下にはバラバラに砕けた燐子の残骸が、 薄白い残り火を上げながら爆ぜている。

 蒼白の焦燥がマリアンヌの胸を突いた。

 先程の言葉通り、 今度 『星の白金』 の射程圏内に入られたら、

もうあの男は決して容赦しないだろう。

 それだけの 【凄味】 が、 もう今のあの男にはある。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(違うッ!)

 

 マリアンヌは心に浮かんだ感情を即座に否定した。

 もし自分がやられれば、 この危険極まりない男を主の許へと

行かせてしまう事になる。

 そのことだけを強く胸に刻みながらマリアンヌは残った全ての燐子に、

内に編み込まれた攻撃動作自在式発動の法儀(ほうぎ)長 衣(ストール)を翻して放った。

 

「ま、 まだ終わりじゃないわッ! 行きなさい! オマエ達!

()()()()()()ご主人様を御護りする為にッッ!!」

 

 悲壮なその言葉に華美なドレスを纏った

殺 戮 操 り 人 形(キリング・パペット)」 の群が全て、

縦横無尽に廊下全体へ(ひし)めき多重方向から再び襲いかかってきた。

 しかし。

 

 

 

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアアアアアアァァァァァァァ―――――――――ッッッッッッ!!!!!!』

 

 

 

 再度廊下全体に響き渡る、スタンド 『星 の 白 金(スター・プラチナ)』 の咆吼。

 強力な紅世の宝具、

『レギュラー・シャープ』 の速度と複雑な軌道にも対応出来る精密動作の前では、

幾ら背後から襲いかかろうとも真正面からの超 低 速(スローモーション)と全くの同義。

 さながら先刻の場面を再 現(リプレイ)するが如く、

武装燐子の群は風の前の塵に同じくバラバラに分解爆裂させられ

空間にジャンクの残骸を振り撒いた。

 

(……ッッ!!)

 

 マリアンヌの眼前で、 白い炎に包まれながら

次々と無惨に撃ち砕かれていく己の同胞。

 自分と違って 『意志』 こそ持たないが、

最愛の主の手から産み出された

“燐子” で在るという点では、 全く変わりがなかった。

 その 『同類』 が今、 眼前で跡形もなく、

何の抵抗も出来ないまま次々と葬られていく。

 白金色に輝く、 美しさと畏怖を併せ持つ超絶の弾幕 “星 躔 琉 撃(せいてんりゅうげき)” に。

 その悪夢のような光景を目の前に、 マリアンヌは想わず視線を背けそうになる。

 が、 しかし、 主に与えられた 『意志』 の力で、

少女は無理矢理その双眸を見開いた。

 何も出来ないのなら。 何もしてあげられないのなら。

犠牲になる事(こ う な る こ と)を承知で自分が呼び出したのなら。

 せめて、 その最後の時まで、

主の為に戦おうとした名もなき燐子達の 「姿」 を、

その目に焼き付けておかなければならないと想った。

 

(ごめん、 ね……本当に……ごめんね……

でもお願い……もう少しだけで良い……ご主人様の為に()えて……!

ほんの一瞬だけで良い……

あの男の意識が、 ()()()()()()()()()()……ッ!)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 胸元で金貨を強く握りしめながら、

心の深奥から沁み入ずる、 マリアンヌの純正な祈り。

 その少女の切なる願いは、 彼女の予期せぬ形で唐突に訪れた。

 

(ッッ!?)

 

 空間に舞い散らばる、 無数のフィギュアの残骸と

その内部に組み込まれた数多の機械部品。

 一瞬、 本当に神の気まぐれのような一瞬だったが、

ソレが承太郎とマリアンヌの間を覆った。

 承太郎からはマリアンヌが、 マリアンヌからは承太郎が、

完全に互いの視界から消え去る。

 さらに砕けた刃とフィギュアの塗料とが

封絶の光を反射してその効果を増大させた。 

 

()()……!! ()()()()()()……!! ご主人様……ッッ!!)

 

 マリアンヌは生まれて初めて 「神」 に心から感謝し、

手にしていたチェーンレリーフの金貨を素早く長 衣(ストール)の先端に忍ばせると

渾心の力を込めて白の閃撃を撃ち放った。

 

「せやああああああああぁぁぁぁぁッッッッ!!!!」

 

「!」

 

 視界の向こう側から挙がった清冽な掛け声を承太郎は一瞥する。

 

(完全に()()()……フェイントか……? それにしちゃ雑な……)

 

 次の刹那。

 

「!?」

 

 その射程距離外から撃ち出された筈の長 衣(ストール)から、

煌めく 『金色の鎖』 が追伸して瞬時にスタンドの周囲を取り囲み、

全身を幾重にも巻き絡めた。

 

(とら)えたわよッ! 空条 承太郎!

これで今度こそアナタの敗北は決定的だわッ!」

 

 撃ち出した長 衣(ストール)の裾をきつく引き絞りながら、

紅世の美少女は歓喜の嬌声(きょうせい)をあげる。

 

「こ、 これはッッ!?」

 

 スタンドと本体の因果関係により、

承太郎自身の躯も見えない力で引き絞られ

その圧力が獣の牙のように食い込み前衛的なデザインの学ランが歪み出す。

 純白の長 衣(ストール) 「内部」 からまるで手 品(マジック)のように

金鎖が延びているため重量は関係ないのか、

それとも長 衣(ストール)を引き絞る力がそのまま金鎖にも連動しているのか、

ともあれマリアンヌ細腕でも金鎖には万力のような力が込められ、

巻き絡めたスタープラチナの全身を軋ませる。

 先刻、 長 衣(ストール)の中に仕込まれた 「金貨」 は、 

彼女の精神と同調して瞬時にその形を黄金長鎖に変容させ、

帯撃と共にスタープラチナへと射出されたのだ。

 二つの 「宝具」 を結 合(ドッキング)させてその射程距離を延長()ばし、

そして背水の陣を覚悟して放ったまさにマリアンヌ執念の一撃。 

 魔装封殺(まそうふうさつ)簒奪(さんだつ)縛鎖(ばくさ)

紅世(ぐぜ)宝具(ほうぐ)

『バブルルート』

操者名- “燐子” マリアンヌ

破壊力-なし スピード-A(変異速度) 射程距離-C

持続力-A 精密動作性-C 成長性-なし

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「ウフフフフフフフフフフフフフ!

捕らわれの雛 鳥(ひなどり)になった気分はどう!?

空条 承太郎ッ! 

両腕を封じられてしまっては、 アナタ御自慢の嵐撃も(カタ)無しねッッ!!」

 

 不安、 恐怖、 安堵、 歓喜、 様々な正と負の感情が綯い交ぜとなって

混沌となり、 その(くら)い熱に浮かされたマリアンヌは頬を桜色に染め、

小悪魔的な笑み刻んで言い放つ。

 

「クッ!」

 

 幾ら鋭敏な頭脳を持つ承太郎でも、

()()()()()()()()()までは予測しえない。

 先刻の一瞬、 本当に瞬き程度の一瞬だったが、

目の前を覆う残骸の所為で自分は確かにマリアンヌから 「意識」 を逸らした。

 その一瞬の間隙(かんげき)が、 今スタープラチナを捕らえている

『能力』 の起動を捉え損なったのだろう。

 そんな偶発的な事象にも支えられた、

殆ど僥倖(マグレ)に等しいような戦略上のミスだったが

歴戦の修羅場を潜り抜けてきた承太郎は厳しく己を諫めた。

 

「調子に乗ってンじゃあねーぜ。

こんなチャチな “鎖” でこの空条 承太郎を縛り付けたつもりか?

ナメんなよこの(アマ)

 

 己の(ゆる)みに苛立ちながらも、 承太郎はスタンドに絡みついた金鎖を

スタープラチナのパワーで引き剥がそうと精神を集中する。

 しかし、 近代建造物も内部に仕込まれた鉄筋ごと破壊する筈の剛力でも、

己を縛る金の鎖はただ軋むだけでほんの僅かな隙間すらも()じ開ける事が出来ない。

 その様子をみつめていたマリアンヌが

鎖の繋がれた長 衣(ストール)を逆くの字に折り曲げて自分の側に引き込みながらも、

揚々とした口調で主が宝具を誇る。

 

「無駄よ! 無駄無駄!

いくらアナタが天目一個以上のミステスだったとしても、

ご主人様秘蔵のもう一つの 「宝具」

武 器 殺 し(キリング・ブレイド)” 『バブルルート』 を砕く事は決して出来ないわ!

どんな業物の刀剣、 仮に炎髪灼眼の持つ “贄殿遮那” で在ったとしても絶対にねッ!」

 

 その宝具、 白い封絶の光で幻想的に反照する 「黄 金 長 鎖(ゴールド・チェーン)

『バブルルート』 は、 まるで熱帯の密林に潜む(おぞ)ましき大蛇のように

スタープラチナを圧迫し更に恐ろしい力で引き絞った。 

 

「グッ!! オオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォ!!」

 

 躯を束縛する圧力が強まり、 次第に呼吸もままならなくなってきた承太郎は

その物理法則に反抗するが如くスタープラチナと喚声をあげ、

スタンドの全能力を開放してバブルルートを引き千切ろうとした。

 猛りと共に白金色の膨大なスタンドパワーが互いの全身から迸る。 

 しかし、 先刻のマリアンヌの言葉通りスタープラチナの全力を持ってしても、

頑堅無双の強度を誇る武器殺しの宝具 『バブルルート』 はビクともしない。

 それどころか力を込めれば込めるほど、

その反動で鎖はより深くスタンドのボディに喰い込んでいった。

 

「ウフフフフフフフフフフフ! 往生際が悪いわよ? 

もうアナタの 【敗北】 は決定されたの!

やはり 「アノ時」 私に止めを刺しておくべきだったわね?

空条 承太郎ッ!」 

 

 完全に立場が逆転したマリアンヌが承太郎の台詞をトレースし

勝ち誇ったように微笑(わら)う。

 

「こちらの燐子もだいぶやられたけど、

でも動けないアナタを討滅するだけなら、 コレで十分過ぎるわね」

 

 長 衣(ストール)を引き絞る動作のまま首だけで周囲を見渡す。

 40体以上いた筈の武装燐子の群は、 今や僅か7体を残すのみ。

内、 無傷なモノはたったの2体だけだった。

 他は腕なり腹なり顔面なりを打拳の嵐によって半分以上吹き飛ばされ、

金属の関節を軋ませながら敗残兵のような姿を晒している。

 あと、 ほんの数秒バブルルートを発動するのが遅かったのなら、

戦況は全く別のモノとなっていた事だろう。

 

「……」

 

 それら傷だらけの燐子達を、

一度労るような表情で見回したマリアンヌは即座に表情を引き締め、

生き残ったその者達に一斉攻撃をしかけさせるため

長 衣(ストール)の絡みついた左腕を処刑執行官のように高々と掲げる。

 

「アナタの忠告に従い、 一番危険なアナタから先に討滅させて戴くわ。

今度こそ “覚悟” は良い? 空条 承太郎? フフフフフフフフフフフフ」

 

「……」

 

 妖しく冷たい死の光を双眸に称えるマリアンヌの宣告を受け止めながらも、

承太郎の瞳に宿る気高き光は断裁処刑される寸前の、

絶望に支配された囚人のソレではなかった。

 

『……』

 

 そしてその分身であるスタンドもまた決して諦める事なく、

最後まで紅世の宝具、 バブルルートと無動の戦いを繰り広げていた。

 金の鎖が絶え間なく軋み上がり、 鼓膜を掻き毟る音が空間に錯綜する。

 

(やれやれ。 こいつぁマジに頑丈な鎖だ。

単純な腕力だけじゃあいつまで経っても破壊は出来そうにねぇ。

逆にオレのスタンドのプライドってヤツが、 粉々にブッ壊れそうだぜ) 

 

 その承太郎の周囲を、 凶暴な光を放つ砕けた刃を構えた

ボロボロの燐子達が取り囲み、 ジリジリと包囲網を狭めていく。

 数多くの同胞を皆殺しにした、 承太郎とスタープラチナに、

この世で最も残虐な死を与える為に。

 だが承太郎はそんな怨 讐(おんしゅう)に狂う燐子達には目もくれず、

その先で冷たい微笑を浮かべているマリアンヌに向かって呟いた。

 

(だがマリアンヌ……人間じゃあねぇオメーに言っても解りゃあしねーだろうが……

この世に特別な存在(モン)なんてありゃしねぇのさ……

“紅世の徒” だろうが…… 『DIO』 だろうが……何一つな……ッ!)

 

 言葉の終わりと同時に、 高潔なるライトグリーンの瞳に決意の炎が燃え上がる。

 同様に、 スタープラチナの白金の双眸も鋭く発光した。

 

 

 

 

 

『「オォォォォォォォォォラァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」』

 

 

 

 

 まるで空間を劈くような喚声で、

承太郎とスタープラチナは共に(トキ)の声をあげる。

 

(突破口は……必ず……どこにでも在る……ッッ!!)

 

 心中でそう叫び、 スタンドの踏み込みを利用して生まれた

最後の力に渾身の勢いを込めて、

紅世の宝具 『バブルルート』 内部へと一斉に注ぎ込んだ。

 

「……」

 

 その一心不乱な様子に、 マリアンヌはやや白けたような表情を浮かべ

ツマラナイものでも見るかのように承太郎とスタンドを(すが)める。

 

「無様ね。 空条 承太郎。

まさか追いつめられて自暴自棄になるなんて。

もう少しマシな男だと想っていたけれど。

生憎だけれどアナタが力を込めれば込めるほど

『バブルルート』 はより深くアナタの(からだ)()じ込まれていくわよ」

 

 そのマリアンヌの言葉を無視して承太郎は尚もスタンドを念じ続ける。

 

 

 

『「オッッッッッッッッラァァァァァァァァァァッッッッ!!!!」』

 

 

 

 スタープラチナは自分を螺旋状に絡みついて拘束し、

尚も屈服させ続けようとする異界の金鎖 『バブルルート』

そのありとあらゆる箇所を鋭い眼光で微細なく()めつけ、

宿主譲りの強靱な精神力で金鎖を圧搾し続ける。

幽波紋(スタンド)』 と “紅世の宝具”

異なる強力な能力(チカラ)が互いに擦れ合い、

軋み合う音が間断なく白い封絶空間に鳴り響き続けた。

 

「この男ッ! 本当になんて諦めがッ!」

 

 自分が起死回生で放った、 正に乾坤一擲の切り札だったのに

その事をまるで意に介さない承太郎に苛立ったマリアンヌは

怒気を含んだ声で彼に叫んだ。

 

「いいかげんになさいッ! 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

もう無駄な悪足掻きはお止めなさい! 

大人しくしていれば苦しみを与えず、 楽に死なせてあげるわ!」

 

 その申し出に対し、 承太郎は微塵の動揺もない表情で微笑を返す。

 

「悪、 足掻き、 ね。 さて、 それは、 一体、 どう、 かな?」

 

「何を」 

 

「この世に」

 

 マリアンヌが何か言う前に、 承太郎の言葉が割り込む。

 

「 “絶対” なんてモンは……()()()()()()()()……」

 

 そのとき。

 

 

 ビギッ……!!

 

 

 次の瞬間。

 

 

 ビギビギビギビギ…………ッッ!!

 

 

(ッッ!!)

 

 微かな。

 しかし、 確実に、 アメジストの飾る耳元に届いた、 罅割れる金属音。

 

「ま、まさか!? ()()()()()、 在り得る筈がッ!?」

 

 今日何度目か解らなくなった驚愕を、

再びその秀麗な顔に浮かべるマリアンヌ。

 

 

 ビギ!!

 

 

 ビギビギビギビギビギビギビギビギッッッ!!!

 

 

 

 バギィッッ!!!

 

 

 

 しかしその間にも、 まるで薄氷を踏み砕くような破壊音は鳴り続け、

次第次第にその音響を上げていく。

 そし、 て。

 その無敵の強度を誇る筈の宝具 『バブルルート』 の、

鏡のような鎖面に夥しい数の亀裂が浮かび上がってきていた。

 

「そ、 そんな! バカな!  ()()()()()()()()()()()()!!」

 

 完全に想定外の事態にその素肌をより白く染めるマリアンヌに向け、

承太郎が変わらぬ静かな口調で告げる。

 

「フッ、 人間じゃあねぇテメーに言っても解りゃあしねーだろーが、

冥土の土産に教えてやるぜ」

 

 宝具本体のダメージによりその圧迫が弱まってきたのか、

承太郎は赤味の戻った表情で言った。 

 

「どんな強固な物質だろうと、

その分子レベルでの 『結合』 は常に一定じゃあねぇ。

必ず目には見えない細かな 「(キズ)」 や、

結合の(ゆる)い「(ゆが)み」が存在する。

宝具だか秘蔵だか知らねーが、

()()()()()()()その法 則(ルール)からは逃れられねぇのさッッ!!」

 

 そう言って承太郎は再びその不敵な微笑を口唇に刻んだ。

 

「オレはスタープラチナの 「眼」 でその部分を見つけだし!

更にッ!

()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

 スタープラチナの虹彩が、 一際強く光る。

 

 

 

 バギバギバギバギバギバギバギバギバギバギィィィィッッッッ!!!!

 

 

 

 そして、 極寒の湖面に張った分厚い氷が一斉に砕けたかのような、

より強烈な破壊音が両者の鼓膜に飛び込んできた。

 

「そ、 そ、 そ、 そんなッッ!? まさかッッ!?」

 

 目の前の現実を受け止められず、 動揺するマリアンヌに尚も冷静に承太郎は続ける。

 

「この鎖、 確かに頑丈だが、 どうやら相当な年代モンらしいな?

スタープラチナの 「眼」 でその 「(ゆが)み」 を見つけだすのは難しくなかったぜ。

後はその小さな 「疵痕」 を! スタンドの (パワー)()じ開けるだけさッッ!!」

 

『オッッッッッッラァァァァァァァァァァ―――――――――――ッッッッッ!!!!!』

 

 言葉の終わりとほぼ同時に、 猛々しい咆吼で長い鬣を振り乱し、

躯を反転させながら()し拡げられたスタープラチナの剛腕(かいな)

 

 

 

 

 ガギャンンンンンッッッッッ!!!!!

 

 

 

 

 繋ぎ目が集束したスタンドパワーに()って断砕され、

二つに割かれて輝く破片と共にスタープラチナから弾き飛ばされた

『バブルルート』 は、 行き場を失った 「力 」を溜め込んだまま

空間を狂ったように暴れ廻り、

傍にいた武装燐子フィギュア達を巻き込んで爆 削(ばっさく)させた。

 一方は3体の燐子を(から)み込んだまま右の窓ガラスをブチ破って

噴水のある中庭の方面へと飛び消え、 もう一方は同じく燐子の上半身を

容易く千切り飛ばして2-4の壁面にメリ込み、

教室の内と外とに貫通したまま絶命した蛇のようにダラリと垂れ下がった。

 その、 凄まじい破壊劇の原動力となったスタンド能力。 

 超至近距離で接触した対象を、 スタンドの冠絶(かんぜつ)した暗視能力を駆使して

瑕 瑾 箇 所(ウィーク・ポイント)」 を高速スキャンし、 そして分子レベルで破壊する。

 極点滅壊(きょくてんめっかい)星眼(せいがん)裂撃(れつげき)

 流星の流法(モード)

流 星 眼 破 砕(スター・アイズ・クラッシュ)

流法者名-空条 承太郎

破壊力-A スピード-E 射程距離-E(接触膠着状態のみ)

持続力-A 精密動作性-A 成長性-B

 

 

 

「ご主人……様……」

 

 最後の切り札すらも、 その圧倒的な精神の力で完殺した承太郎を前に、

マリアンヌは虚ろな瞳で主の名を呟く。

 そして黄金の縛鎖から完全に自由を取り戻した承太郎とスタープラチナは、

 

『「さぁ? お祈りの時間だぜ? マリアンヌ」』

 

甘く女の心を蕩かす声でそう告げ、

緩やかに構えた指先を燐子の恋人に差し向けた。

 

←To Be Continued……

 

 

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