STARDUST∮FLAMEHAZE 【完全版】   作:沙波羅 或珂

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『NEXT STAGEⅢ ~Awaking 3queries~ 』

 

 

【1】

 

 

「えいッ!」

 

「このォッ!」

 

「だぁぁッ!」

 

「出ろォォッ!」

 

 深紅の炎揺らめく鳥居の背景が夕焼けに移り、

斜陽に(からす) の鳴き声が響き渡る黄昏時。

 弛まぬ少女の喊声が神社に響き続ける。

 ロクに休 息(インターバル)も取らず、 無頼の青年に諭された

幽波紋(スタンド)』 の発現()し方を愚直に繰り返し続けてもう3時間以上。

“傍に立つ” どころかその影の片鱗すらも

少女が脳裡に想い描くソレは未だ姿を視せない。

 在るのは少女の深紅の髪から、 その全身から迸り続けた

多量の火の粉に灼き焦がされた石畳と、 そこに染み込んだ汗の跡。

 

「く、うぅ」

 

 最早心身共に疲労困憊で、 いつ倒れてもおかしくない状態だったが、

己が 「目的」 を果たさない内に力尽きるコトさえ

「甘え」 だと認識している誇り高き少女は、

危局に在っても尚激しく燃え上がる真紅の双眸を

研ぎ澄ませて立ち上がり、 全霊を込めて仕儀に入る。

 

「……」

 

 安易な 「結果」 だけを追い求めない。

『向かっていれば必ず辿り着ける』

 アノ人がくれた一つの言葉。

 ソレだけをただひたむきに信じて。 

 胸元のアラストールは何も云わず、

ただ少女のヤるコトを傍で見護り続ける。

 

「……」

 

 正直、 “よもや” という想いは在った。

 通常のフレイムヘイズならまだしも、 その中でも例外的な存在、

“天壌の劫火” 足る己の全存在を呑み尽くしてもその 「器」 が

微塵も揺るがないこの少女、“シャナ” で在るならば。

 しかし、 やはり件の人物の言った通り、

無いモノは出現しないのであろう。

 どれだけ強大な力を有していても。

 その戦歴が、 如何に輝かしいモノで在ったとしても。

 少女が少女で在る限り、どれだけ足掻いても 『男』 にはなれないのと同じように。

 

「……」

 

 そう思い至って押し黙る “天壌の劫火” の心中に、 一抹の疑念が過ぎる。

 件のあの男は。

 空条 承太郎は。

 本当に()()()()()()()予測出来なかったのであろうか?

 共に過ごした時間こそ短いものの、 同じ戦地にて幾度もその背を合わせた者同士。

 少女がどのような気質の持ち主なのか、

鋭い洞察力と深い観察眼とを併せ持つ()()()()()

類推出来ないわけがない。

 ソレならば。

 もっと他に言い様も在った筈だ。

 一端 「保留」 して於いて、 後日その 『能力』 を取得出来る可能性を模索するコト。

 いきなり実践からは入らず、 まずはその能 力(チカラ)の概要について討究するコト。 

 有益な選択肢は数多(すうた)在った筈。

 少なくとも、 このように無意味で非合理な、

報われない反復動作を繰り返すよりは遙かに。

 それなのに、 本当に必要最低限度の()()()()()()()()をすれば、

少女の性格上ソレに反発するであろうコトは容易に想像出来た筈。

 そして己の限界を超えて、 力尽きるまでその仕儀を実行し続けるであろうということも。

 

(む……ぅ……)

 

 義憤、 或いは失望にも似た幾分かの慷慨(こうがい)

紅世の王 “天壌の劫火” の心中に沁み(いず)る。

 自分はあの男を、 空条 承太郎を、

少し買い被り過ぎていたのであろうか?

 あの者の、 その余りにも苛酷過ぎる 『宿命(さだめ)』 については、

盟友を通して多少なりとも理解しているつもりだ。   

 そして共通の “宿敵” である、 この世界の頂点に君臨する絶対存在

『幽血の統世王』 その絶大なる能 力(チカラ)をも。

 しかし。

 ソレに比べて、 この少女のコトは一体どうなのか?

 幾ら数多の紅世の王を、 その絶大な能 力(チカラ)の許配下に()いた

狂気と戦慄の魔皇だったとしても。

 彼の者に引き較べ、 この少女はあの男にとって

そんなにも 「軽い」 存在なのか?

 先刻の少女の問い。

 一見無意味としか映らない要求は早々に謝絶し、

己の修練に時を注げればソレで良いとでも考えたのだろうか?

 どんなに荒唐無稽な要求であろうとも、 ソレに込められたこの少女の想いは、

真実(ほんとう)で在るというコトには気づかずに。

 少女が()()()()()()今新たな能 力(チカラ)を欲しているのかも汲み取れずに。

 

「……」

 

 押し黙ったまま長考するアラストールを後目に、

その頭上の少女は今日何度目か解らなくなった 「失敗」 の影響で

力の抜けた片膝を石畳の上に付き、 荒れた呼吸を戻そうと躍起になっている。

 

「く……ぅぅ……出な……い……!」

 

【挿絵表示】

 

 

 悔恨に涙を滲ませ、 震えるその口唇をきつく引き結び、

ようやく漏れたその言葉。

「弱音」 とも呼べない、 今日初めての少女の 「弱音」

 そこに至るまでの過程を知る者ならば誰も彼女を責めるコト等あるまいが、

しかしその張本人である少女だけは、 未熟な己を責め続ける。

 自分の能 力(チカラ)のスベテは。

 そして存在のスベテは。

 決して “自分だけのモノではない” というコトを知っているが故に。

 

(!?)

 

 その、 疲弊した少女の脳裡に、 出し抜けに一つの 『設問』 が思い浮んだ。

 追いつめられた状況と新たな境地を切り開こうとする必死さが、

半ば偶発的に生み出したいわば精神の防衛規制。

 

 

 

 問題です。

 一体どうやって 『幽波紋(スタンド)』 を発現させますか?

 3択-ひとつだけ選びなさい。

 

 

 

答え①強靭無比、 完全無欠のフレイムヘイズ、 空条シャナは、

   突如眠っていた 『幽波紋(スタンド)』 の才能が目醒める。

 

 

答え②承太郎が来て手助けをしてくれる。

 

 

答え③発現しない。 現実は非情である。

 

 

 

(私……が……○を……つけ……たい……のは……)

 

 疲労で朦朧とした意識が生みだした、 精神の幻 想(マボロシ)

 まるで三日三晩砂漠を彷徨って、

ようやく手にした一杯の柄杓を口元へ運ぶかのように、

その 「解答」 を口にしようとする少女。

 しかし。

 

(!)

 

 刹那に生まれた己の甘さ。

 ソレに縋ったコトを認識した灼眼の少女はその頬を紅潮させ、

 

「あぁ~~~~!! もうッッ!!

うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい

うるさぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~い!!!!!」

 

【挿絵表示】

 

 

咄嗟に我へ返り、 焼け焦げた石畳に白い両膝を付けたまま

沈む夕日を背景(バック)屹然(きつぜん)と空に叫んだ。

 その口元をムクらせ涙の珠が数滴、 目じりに引っ付いたままの少女の背後。

 そこ、 から。

 

「オオオオオオオオオオォォォォォォォォォ――――――――――!!!!!!!!」

 

「ハアアアアアアアアアァァァァァァァァァ――――――――――!!!!!!!!」

 

 突如湧き起こる、 勇猛且つ純正なる、 二つの喚声(こえ)

 

「ッッ!!」

 

 その瞬間、 少女はまるで野犬に吠えられたネコのように背筋を伸ばす。

 撥ね返るように振り向いた、彼女の視界に映る、白 金(プラチナ)翡 翠(エメラルド)

異なる色彩の 『幽波紋光(スタンド・パワー)

 ソレを旋風のように周囲の空間に噴き散らす、

二人の幻想的な男の姿が在った。

 

「……」

 

 周囲の硬い石畳の上に、 打撃痕、 射出痕、 その他幾重もの戦闘跡と推察される

夥しい数の亀裂が走り、 そして拳大の刻印が数え切れない程()り込んだ壊滅的惨状。

 ソレらを生じさせた二人の美貌にも、 擦過傷や打撲傷と思しきダメージの痕が浮かび、

そこから血が滲んでいる。

 

「……」

 

「……」

 

 しかし 、その二人は。

 整った口唇に不敵な微笑を浮かべ、 互いの存在に見入っている。

 そんな些細な疵など遥かに超える、 深い信頼関係の許に。

 頬にそれぞれの汗の跡を滲ませ、 荒い吐息をその口唇から断続的に漏らしている。

 荒涼としているのに、 どこか奇妙な 『さわやかさ』 を視る者に(いだ)かせる、 その光景。

 研ぎすました極限の集中力の為、 ()()()()()()()()()()()

眼前の事態を少女が認識する間もなく、

 

「スター・プラチナァァァァァッッッッ!!!!」

 

「ハイエロファント・グリーンッッッッ!!!!」

 

喚声と共に両者の身体から異質な重高音を伴って飛び出してくる、 二つのスタンド。

 その全身から強烈な光を迸らせ、背後に彗星のような光塵を靡かせながら、

対照的な生命の幻 象(ヴィジョン)が、各々独特の構えを執ったまま

組み討ち合いのように真正面から高速激突する。

 空間が歪曲するかのような、 異質な衝撃音。

 同時に散華する、 白金と翡翠の混じり合った燐光。

 スタンド同士の激突で巻き起こった突風が、

石畳の上で瞳を丸くしている少女の白い頬を打ち、

長い紅髪をはためかす。

 

「……」

 

 明らかに。

 両者共に以前よりも 『幽波紋(スタンド)』 の威力(チカラ)向上(あが)っていた。

 恐らくは、 先刻の仕儀。

 己の裡に存在の力(スタンド・パワー)を集束して高め、 更に圧縮。

 そしてその溜め込んで凝縮した力を、 一挙に開放。

 まるで滑車を用いて鋼線を幾重にも捲き絞られた弩弓(ボーガン)のように、

己が 『幽波紋(スタンド)』 を超 高 速(ハイ・スピード)で射出したのだ。 

 二人の周囲で対流していた光は、 その存在の裡から漏れ出した能 力(チカラ)の余波。

 自在法の技巧としては比較的簡易なモノでは在るが、

その 「(もと)」 となる 『能力』 が凄まじいと、

ただソレだけでも必殺の威力を宿す絶技と成る。

 それも。

 威力(チカラ)を “抑えた状態” でだ。

 

「……」

 

 まるで一人置いてけぼりを食ったかのように、

灼けた石畳の上で放心する少女の目の前で、

二人の 『スタンド使い』 の勢いは止まらない。

 

「いくぜッッ!! オイッッ!!」

 

「準備はいいか!! ハイエロファント!!」

 

 まるで操り人形(マリオネット)のようにスタンドを自分の傍にまで引き戻し、

若き二人の『スタンド使い』は、

コレから繰り出す新たな “幽波紋技能(スタンド・スキル)” に備え

それぞれ己が 『分身』 に問いかける。

 そして!

 承太郎は即座に右手を逆水平に構え。

 花京院も両腕を対角の位置に据え。

 その視線を、 極限まで研ぎ澄ます。 

 

(!?)

 

 次の瞬間。

 少女の目を疑う光景が、 その真紅の双眸に飛び込んできた。

 突如両者の足下から、 それぞれ色彩の異なるスタンドパワーが

烈火の如く円柱状に噴出し、 本体とスタンドの周囲を覆っていく。

 その半径約1,5メートル程の、 白金と翡翠の光方陣。

 激しく上昇し、 音も匂いも煙も無いが、

しかし高密度の重金属を叩きつけるような感覚を以て

その光はスタンドの躯体(ボディ)を駆け抜けていく。

 そしてソレは、上 に昇るにつれて徐々に色彩を希薄にしていき、

最終的にはその本体頭上近くの位置で掻き消える。 

 一見、 派手な演 技(パフォーマンス)としか眼に映らないが、

視える者には視える、 ()()()()()()()()()()()

 

「……」

 

その 「意図」 を察してただ黙するだけの少女の胸元で、

 

「むう。 この短時間で、 もう此処まで 『遣い(こな)した』 か」

 

アラストールが落ち着いた口調で感慨を漏らす。 

『存在の力』 の変化を、 五感に頼らず鋭敏に感じ取るコトの出来る、

“フレイムヘイズ” と “紅世の王” だからこそ気づいた事実。

 おそらく他の 『スタンド使い』 でも、

()()()()()()()()その真意を推し測るコトは不可能であったろう。

 いま、 二人の眼前で噴き挙がっている二本の光柱。

 一見炎と見紛うその裡には、 既に無数の操作系 “自在法” が

「変換」 されて編み込んで在る。

 ソレが足下から噴出する形容(カタチ)で 『幽波紋(スタンド)』 内部に組み込まれ、

(しか)る後に 「自動的」 な特殊機動を可能とする “鍵” と成る。

 コレにより、 スタンド 「本体」 との “連続的” な同時攻撃や時間差攻撃が可能。

 更に本体を介さずスタンドに直接 「命令」 を叩き込むコトに()り、

攻撃を読まれるリスクが減りそのタイムラグも解消されるが故に、

スピードと精密性も常態より向上。

 尚且つその組み込む 『存在の力(スタンド・パワー)』 を「集束」 させてあるので、

威力も通常の3割方上乗せ(レイズ)されるという下組みだ。

「弱点」 はその発動までに少々時間を要するのと、

一度発動させたら攻撃が終わるまで 「解除」 出来ないといった処だが

ソレは実戦を想定した修練の許、 随時修正していけばいい。

 存在の力の集束、 練成、 止揚、 そして開放。

 全て諸々(つたな) いがソレはこれから研鑚(けんさん)していけば良いだけのコト。

 寧ろ両者が自在法の初心者という事を(かんが)みれば、

コレは最上の選択と言えた。

 

(……)

 

 数在る紅世の徒もそしてフレイムヘイズも、

今まで誰も用いたコトのない自在法の行使。

 その為に先刻の疑念も一時忘れ、 まるで己が高弟を見るような様相で

静かに両者を見据えるアラストール。

 

「……」

 

 それとは裏腹に、 レザー製のキャップで俯いたまま表情が伺えないシャナ。

 その少女と炎の魔神を後目に、

 

「ッッッッラァァァァァ―――――――――――ッッッッ!!!!」

 

「ッッッッけェェェェェ―――――――――――ッッッッ!!!!」

 

鮮烈な駆け声とほぼ同時に、 間髪入れず発動の術式がスタンド中心部に叩き込まれ、

その瞳孔がそれぞれ鈍く発光し、 ソレをシグナルとして両者のスタンドは音よりも遙か(はや)く、

雷光のように眼前へと撃ち出される。

 そして。

 瞬刻の(まにま) に繰り出される、

スタンドの超高速多重連続攻撃。

 

 

 

「ォォォォォォォォォォォォォォォラオラオラオラオラオラオラ

 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ

 オラアアアアアァァァァァァ―――――――――――!!!!!!!!」

 

「――――――――――――――――――――――――――――

 ――――――――――――――――――――――――――――

 ――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!」

 

 

 

 声を荒げ、 まるで廻 転 式 機 関 砲(ガトリング・キャノン)のような暴威を(ふる)って

拳撃と蹴撃とを乱発するスタープラチナと、 緘口(かんこう)したまま超速の連撃を

風圧式掃射(バルカン)砲のように射出し続けるハイエロファント・グリーン。

 その幻 象(ヴィジョン)こそ対照的だが、 光と共に撃ち出される夥しい数の

閃撃火勢は全く以て互角。

 パワーとスピードは、 『近距離パワー型』 で在るスタープラチナの方が当然上で在るが、

“遠隔操作型” で在るハイエロファント・グリーンは、

その長年の経験で培われたスタンドの技術(ワザ)と四肢を触手状に延ばすのコトの

出来る特異性を利用して攻戦に応じる。

 そのパワーとスピード、 テクニック、 何よりもスタンドに込められた精神の力が

凄まじ過ぎる為、 互いの攻撃は一発も目標に着弾(ヒット)せず

ただ眼前の閃光(ヒカリ)と成って超高圧電流のような

幽波紋(スタンド)の火花を空間に迸 出(へいしゅつ)させ続ける。

“攻撃は最大の防御”

 その論理(ロジック)を地でいくような超高速のスタンド戦。

 互いの能力の総量が完全に互角でなくては起こり得ない、

極めて稀なスタンド現象。

 

 

 

 

「オッッッッッラアアアアアァァァァァァ――――――ッッッッッ!!!!!」

 

「――――――――――――――――――――――――ッッッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 空間の割れるような爆砕音。

 組み込まれた 「自在法(プログラム)」 の最後。

 右直撃と左延蹴撃とをブツけ合った両スタンドは、

再びミエナイ糸に引かれるようにそれぞれの宿主の許へ、

高速によって発せられた気流を纏いながら舞い戻る。

 戦闘空間で弾かれた空気がようやく膠着状態からの開放を許され、

周囲に拡散して木々を揺らす。

 

「……」

 

 少女の紅髪も同じように空間へと靡いたが、

しかし少女は無言のまま何も言わない。

 その少女の様子に気づかず、 というより今は互いの存在しか目に入らず、

二人の美しき 『スタンド使い』 は再び微笑の許、

真正面からスタンドと共に罅割れた大地に屹立した。

 

「フッ、 なかなか難儀しそうだった “ジザイホー” だが、

想わぬ 「使い方」 が在ったな」

 

「流石だよ。 空条。 まさかスタンドのこんな 「使い方」 があったなんて」

 

 己の生みだした新たな “幽波紋技能(スタンド・スキル)

 その予想以上の成果に、 二人のスタンド使い達は

充足した表情を秀麗な風貌に浮かべる。

 

【タンデム・アタック】 

本来スタンドに(あらかじ) め 「命令」 をインプットしておいて、

「本体」 との 「同時攻撃」 を可能とする(スベ)

主に虚を突く技だったが、

ソレを 「応用」 すりゃあこーゆーコトも可能になる」

 

「イイカンジだ。 “自分の身を護れ” や “相手を攻撃しろ”という大雑把な命令ではなく、

具体的な 「技」 を連続してイメージしスタンドパワーを操作、

直接スタンドに叩き込む事でより力強く精 密(スピーディ)機動(うご)くとはね」

 

「初めは力み過ぎで “繋がり” が悪かったが、

鋭く細かく 『連係』 を組み立てるコトでその廻転も飛躍的に上がって行く。

後は “デケェの” を、 一体どのタイミングでスタンドに放り込むかと言った点だが、

コレばっかりは一概にあーだこーだと決められねーな。

場数踏んで感覚に沁み込ませるしかねぇか?」

 

「確かにソレは戦闘の状況に拠るからね。

寧ろ形式(パターン)化しない方が良いだろう。

その方が状況に応じて千変万化出来る強みにもなる。

ボクらの 『能力』 は、 もうDIOを通して敵全体に知れ渡っているだろうから、

“知られてもマイナスにならない” 能力を開発していった方が得策だ。

幾らスタンドの破壊力(パワー)向上(あが)っても、

ソレが命中()たらなければ何の意味もないからね」

 

 怜悧な立ち振る舞いで、 自説に対し適確な意見と正鵠な助言を返す花京院。

 

「……とはいえ、 想ったより精神の消耗が激しいな。

調子こいて(つか)(まく)ってりゃあ、

負けの込んだ博打みてーにすぐに神経が擦り減っちまう。

どーやら追撃や反 撃(カウンター)、 ここぞという時の決め処で出した方が良さそうだぜ」

 

「賛成だ。 あくまで 『流法(モード)』 の一部。

戦術の幅が少し拡がるくらいに考えて於いた方が無難だね。

頼りすぎもよくない。 他の技が鈍るからね」

 

「……」

 

 再び。

 異論の付けようの無い、 ほぼ完璧な回答。

“頼れるヤツだな” と、 承太郎は純粋にそう想う。

 今まで、 自分に真の意味での 『友人』 等、 只の一人もいなかった。

 そして、 ソレはこれからもきっと現れないのだろう、 と想っていた。

 でも、 『花京院(コイツ)』 は、 そうではないのかもしれない。

 コイツと なら、 『スタンド』 や 『宿命』

そういったモノとは全く無関係に、

共に居るコトが出来るのかもしれない。 

 何の他意も余分な気遣いも、 なにもなく。

 ただソレが、 当たり前で在るかのように――。

 

「……」

 

 らしくもない、 自分でも気恥ずかしいコトを考えているというのは重々承知していたが、

何故か少しも不快な感覚(カンジ)はない。

 そこに。

 

「どうしたの?」

 

 承太郎の全身から発せられていた闘気が微かに揺らいだコトを

敏感に察知した花京院が、 琥珀色の澄んだ瞳で問いかける。

 その質問に承太郎は答えず、 ただ穏やかな、

そして少しだけ優しげな色を帯びた微笑のみで応える。

 

「……」

 

 それだけで彼の意図を察したのか、

微笑を向けられた翡翠の美奏者も同じような仕草で応じる。 

 

「フッ」

 

「フフッ」

 

 特に、 理由はない。 

 それでも意味の無い微笑を互いに交わし合う、 若き二人のスタンド使い。

 荒涼とした破壊空間の中にて交錯する、 甘美なる刹那。

 その横合いにて、

 

「……は……しの……のに……!」

 

一人取り残されたフレイムヘイズの、 呻く様な呟きに気づく者は誰もない。

 そして。

 

「さて、 今日の仕上げといくか?」

 

「そう、 だね」

 

 再び元の不敵な表情へと戻り、 先刻以上に視線を研ぎ澄ませるスタンド使い二人。

 即座に足下から噴出する、 白金と翡翠の光方陣。

 その旋風、 否、竜巻のような光の奔流が、

余すコトなく両者の身体とスタンドとを覆い尽くし、 駆け昇っていく。

 

暴走族(ゾク)のタイマン風に言うならば、

“来な、 どっちが強いか試してみようぜ” というヤツだぜ」

 

 白金の光の中、 逆水平に構えた指先で花京院を差す承太郎。

 

「手加減は、 しないよ」

 

 翡翠の光の中、 威風堂々と左腕を振り翳す花京院。

 

「“したら” ブッ飛ぶのはテメーの方だぜ。 花京院」

 

 承太郎がそう返す中、

 

「……!……ッ!」

 

 その胸元で小さな拳を握り、 ソレを、 否、全身を震わせるシャナ。

 

【挿絵表示】

 

 

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!」

 

「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」

 

 その少女の存在には微塵も気づかず、 再び二人のスタンド使いは

頭上へと立ち昇る光の奔流の中、共に勇壮な(とき)の声を挙げる。

 今度は、 無数の戦闘技ではなく、 ソノ 「対象」 を()()()()()に絞り、

代わりにその威力(チカラ)を極限まで集束して高め、

スタンド内部に存在の力(スタンド・パワー)をギリギリまで()める。

 

(ジザイホー入りの 『新型・流 星 爆 裂 弾(スター・ブレイカー) か……

正直ドンだけ威力が向上(あが)ってンのか興味あるぜ……)

 

(限界までスタンドパワーを高めて撃つ 『強化型・エメラルド・スプラッシュ』

正直ドレ程の威力になるのか、 奏者であるこのボクにも想像がつかない)

 

 承太郎のスタンド、 スタープラチナはその両腕を逆十字状に組んだ

独特の構えで白金のスタンドパワーを右拳に集束させ、

花京院のスタンド、ハイエロファント・グリーンは重ね合わせた両掌中に

同じく翡翠に輝くスタンドパワーを集め、

うねるような高速廻転流動のもと一極に凝集、 攪拌させていく。

 

「――――――ッッ!!」

 

 ソレら二つ、 進化した 『幽波紋流法(スタンド・モード)』 の初期機動を眼前に、

顔の上半分がレザーキャップで隠れた紅髪の美少女が、

その口元をきつく結び、 白く整った歯を軋らせる。

 自分はまだ、 スタンドの “影” すら見るコトが出来ていないというのに。

 でもこの二人はもう、 その遙か 「先」 の “領域” にまで達してしまっている。

 本来の 「予定」 じゃ、 もうとっくに 『幽波紋(スタンド)』 を発現させて、

()()()()自分も一緒に居る筈なのに。

 ソノ自在法の遣い方を、 『彼』 と討究するのは “自分” の筈なのに。

 そうできないのは、 他の誰の所為(せい)でもない。

 全て、 自分の所為。

 自分の能力(チカラ)が未熟だから。

 自分の研鑚が足りないから。

 それ以外の、 何モノでもない。

 でも。

 ズルイ。

 ヒドイ。 

 不公平。

 殆ど逆恨みにも等しい、 でも今まで感じたコトのない新種の悔しさが

少女の胸中を埋め尽くしていく。

 そんな少女の胸の裡など露知らず、 眼前の二人は極限まで()まったそのスタンドパワーを

それぞれ服の裾を旋風に靡かせながら全開放する。

 空間を劈く、 異能の閃光(ヒカリ)

 その中心部で爆裂する、 スタンドパワー。

 まるで周囲に存在する全てのモノに、 己が存在を刻み付けるかのように

猛り立つ二人のスタンド使い。 

 そしてその艶めかしい口唇から同調して宣告される、

己が 『幽波紋流法(スタンド。モード)』 の流法名。

 新星爆裂(しんせいばくれつ)及び翠蓮光翔(すいれんこうしょう)

 流星、 聖法の 【新 流 法(ニュー・モード)

 

 

 

「スタアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」

 

「ェェェェェエメラルドオオオオオオオオォォォォォォ!!!!!!!!!!」

 

 

 

 幽光捲き奮う両者のスタンド。

 そこ、 に。

 

 

 

「なァァァァァにやってンのよおおおおおおぉぉぉ

ぉぉぉぉぉ―――――――――――!!!!!!!!!」

 

 

 

 二人の覇気に勝るとも劣らない少女の怒声が、

流法(モード)』 よりも速く爆裂した。

 

←To Be Continued……

 

 

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