STARDUST∮FLAMEHAZE 【完全版】 作:沙波羅 或珂
【1】
燃え盛る “火時計”
眼前の白銀の騎士、 『戦車』 を司るスタンドが創り上げた戦慄のオブジェ。
その真紅の文字盤、 最初の部分が静かに焼け落ち次の 「2」 が燃え始める。
「この炎が 「12」 を燃やすまでに私を倒すですって? 大した自信ね」
眼前の銀髪の青年、 重装甲をその身に纏った生命の
「本体」 に向け真紅の瞳と深紅の髪を携えた少女が言葉を返す。
「……」
そして少女は纏った黒衣を揺らしながらそのまま青年の脇に在る
“火時計” へと音も無く歩いていきそこで、
「はあぁぁッッ!!」
峻烈なる声で右腕を真一文字に薙ぎ払う。
抜き放たれたその右腕の先には、 少女の身の丈に匹敵するほどの
大太刀が既に握られている。
冷たい刀身の煌めきに走った刃紋がそのまま空間に鳴動するような大業物。
異次元世界の討滅刃、 その銘を “贄殿遮那”
少女の手から放たれた脅威の一閃は若干の
眼前の “火時計” は正確に両断され
鏡のような切断面から上部分が滑り落ちる。
「……」
火時計の倒壊音と共に、 彼等の後方にいた無頼の貴公子が微笑を浮かべる。
相も変わらずの鋭さ、 携えた大刀の威力をほぼ完璧に引き出す技の冴え。
その彼の視線を知ってか知らずか肩口に炎架の紋章が刻まれた制服姿の美少女は、
周囲に舞い墜ちる無数の炎と共に眼前の騎士へ凛々しい視線を返す。
「生憎だけれど、 “炎” よりも 『剣』 の方が得意なのよ、 この私は。
どうやら自惚れが過ぎたようね? おまえ」
そう言って降り落ちる炎の下、
己よりも遙かに長身の男を傲然と見据える。
しかしその男は眼前の事態にも顔色一つ変えず少女を見据え返す。
「フム、 どうやら名前に騙されたようだ。
まさかオレと同じ “剣士” だったとは。
しかし、 このオレを自惚れというのか?
このオレの剣捌きが……」
そう言った男の手には、 いつのまにか5枚のフランス銀貨が乗せられている。
「自惚れだとッ!?」
そう叫ぶと同時に男は、 手にした銀貨を全て無造作に空間へと投げ放ち
炎と共に舞い踊るソレをスタンドと共にライトブルーの瞳に映し、 構える。
そして。
「―――――――――――ッッ!!」
少女とは対照的に声はなく、
しかしその全身から発せられる威圧感は劣るコトなく、
瞬く間の更に一瞬の
その荘重なる騎士のスタンドが携えるサーベルの切っ先で、
揺らめきと共に光を称えるモノ。
その存在を認めたジョセフが叫ぶ。
「く、 空中に放たれた5つものコインをたったの一突きで!
重なり合った一瞬を貫いたッ!」
「いや……ソレだけじゃあねぇ。 よく見て見ろ」
驚愕する祖父を後目に、 その実孫は冷静な視線でスタンドを見据える。
そのライトグリーンの瞳に映るモノは、
中心点を寸分違わず貫かれた銀貨の表面で、 それぞれ燃える炎。
通常の
そのコトに、 スタンドの間近にいた少女も同時に気づく。
(コインとコインの間、 ソコに炎を取り込んでる……!
それは、 つまり)
その解答を、 白銀の騎士を傍に携える 『スタンド使い』 が口にする。
「コレが一体、 どういう意味を持つか解ったようだな?
オレのスタンドが繰り出す斬撃は、
空気を切り裂き空と空の間に “溝”
乃ち 『真空』 を生み出す事が出来るというコトだ。
ここまでの
そう言ってスタンドが軽く右手を引くと同時に、
剣針に突き刺さっていた銀貨と炎が何の抵抗もなく抜け落ちる。
(……ッ!)
澄んだ金属音を傍で捉えながら
少女は眼前に位置する男の想像を絶する剣技に、
その口元を軋らせる。
「是是火!? 忽然子始着火!! 的火燭~~~~ッッ!!」
背後から、 若い男の声がした。
店のウェイターらしき男が両断されて炎上する円卓を指差しながら
しきりに大声をあげている。
(ちょっと調子に乗って騒ぎ過ぎたか。 ここは封絶……)
そのウェイターを視線の隅だけで捉えた少女。
「ッッ!!」
しかしその次の瞬間には、 もう目の前の男はソコにいない。
「……」
傍にいた騎士のスタンドもいつのまにか立ち消え、
銀髪の男は半開きになった店の扉にその背を預けていた。
「いつの間に外に……」
頬を伝う冷たい雫を感じながら、 少女は言葉を零す。
その様子を見据えながら男は少女に、 否、
その後方にいる3人も含め静かに告げる。
「オレのスタンド、 『
“侵略と勝利”
こんなせまっ苦しい所で始末してやってもいいが、
貴様等の 『能力』 は広い場所の方がその真価を発揮するだろう?
ソコを正々堂々迎え撃ち、 そして討ち果たすが我がスタンド、
『
そこで銀髪の青年は一度言葉を切って瞳を閉じ、
不屈の信念をその裡に宿らせて再び青い双眸を見開く。
「全員おもてへ出ろ!! 順番に斬り裂いてやるッッ!!」
一対四という余りにも不利な状況に微塵も臆するコトもなく、
鮮鋭な声でそう叫んだ。
「!」
「ッ!」
「―!」
「!!」
その声に誘発されるように、 それぞれの闘争心を燃え上がらせて
青年の後を追う4人の戦士。
その中でただ一人。
(むう……アノ者……)
少女の胸元で揺れる深遠なる紅世の王だけが、
感歎したような声を微かに漏らした。
【2】
“
軟膏薬 「
胡文虎により1935年、総工費1600万香港ドルという巨費を投じて建設された庭園。
1950年代に一般公開されその中心となる高さ44メートル、
7層構造のパゴダを始め、 周囲に中国仏教、 儒教、
また様々な故事や説話を題材としたジオラマが
コンクリートや陶磁器を用いて多数配置され、
これら地獄や極楽を構成する人物・動物・怪物等の人形は
スベテ極彩色に彩られ、 見方によってはグロテスクとも取れる造形をしている
そのセンスと世界観は香港奇妙ゾーン・ナンバーワンと呼んでも過言ではなく、
まさに狂った道化師の造りし庭と云った景観を否が応にも視る者に想起させる。
その道化師の庭、 陶器で出来た巨大な白竜と猛虎が口を開く石段の踊り場で
白銀の騎士を己の裡に秘める精悍なる 『スタンド使い』 が口を開く。
「さぁ! 最初は一体誰が相手だッ!
4人同時でもオレは一向に構わんぞッ!」
敵とは想えない勇猛極まる声でそう叫び、
不屈の信念に充ちた青い双眸で4者を見下ろす。
「……!」
その声を聞いた、 マキシコートのような学生服を風に揺らす無頼の貴公子が
闘争心に誘発された微笑を端整な口唇に刻み、 眼上の銀髪の男に向かって前へ出る。
「フッ……まさかDIOの配下に、 テメーみてぇな男がいるとはな。
堂々と 「本体」 を晒し、 ストレートに戦いを挑んでくるヤローがよ」
そう言ってレザー製のズボンに両手を突っ込み、
勇壮なるライトグリーンの瞳で男を見据える。
「余計な策や小細工を一切使わねぇ。
初めて出てきた 『正統派のスタンド使い』 か。
面白ぇ、 ここはオレがやらせてもらうぜ」
(フッ、 空条 承太郎か……凄まじいパワーとスピードとを誇るスタンド、
『
無頼の貴公子の上で佇む銀髪の男も、
同じく闘争心に誘発された笑みを口元に浮かべ承太郎の方へと歩み寄る。
その次の瞬間。
「……ッ!」
無頼の青年の前進が、 背後からの強い力によって止められた。
「……」
振り向いた先にいたのは、 燃え盛る灼熱の色彩をその髪と瞳に宿した少女。
その少女が、 細く可憐な造形からは想像もつかないほどの力で、
自分の学生服の裾を掴んでいる。
その鮮烈な姿に似つかわしくない、 どことなく儚げな、
まるで狂ったこの庭園の迷い子を想わせる様相で。
「先にケンカを売られたのは私よ。 おまえは引っ込んでて」
鷹揚のない声で事務的にそう告げ、 少女は青年の前へと歩み出る。
「オイ?」
以前も似たようなコトが在ったが、
そのときとは明らかに様子が違う少女の背中に
青年は怪訝な視線で声をかける。
「うるさいうるさいうるさい。 おまえ、 怪我してるでしょ。
ベストな状態じゃないのに戦うのは得策じゃないわ」
再び返ってきた、 いつものようなうるさいほどのキレがない声。
そして少女は青年に背を向けたまま、
眼上のスタンド使いの元へと歩みよる。
「……」
反対に銀髪の青年は、 興を殺がれたような表情で石段を登ってくる少女を見据える。
そして一度淡いを嘆息を口唇から漏らした後少女に背を向け、
彼女の戦い易い開けた敷地へと移動を始める。
空間を歪めるような異質な音を伴って
右手に
少女が剥き身の大刀を正眼に構えて対峙したのはその約2分後。
遠間に波濤が響き、 湿り気のある風が互いの髪を揺らした。
「空条 シャナ? 敬愛する我が主の命とはいえ、
女を斬るのは気が進まぬが、 向かってくるのならば話は別。
覚悟を決めて戴こうか」
騎士道の礼に失せず、 敵であってもその存在に敬意を払う銀髪の青年に、
「情けは無用。 さっさと来い」
紅髪の少女は端的にそう告げるのみ。
その両者を離れた位置で静かに見据える白金の青年。
己が戦っているわけではないが、
その研ぎ澄まされた 「戦闘の思考」 は
既に両者の状況を緻密に分析している。
(あのスタンドの身のこなし、 剣の握り具合、 構えの姿勢、 そして前後のバランス。
どれを取っても完璧だ。 それに斬るような殺気を放っているのに
ソレが完全に
少女の対峙する相手の、 尋常成らざる力量に承太郎はより一層視線を研ぎ澄ます。
(さぁ……どうするシャナ? 今回は力押しが通用するような
『
そう心中で呟き青年が視線を送った先。
「……」
少女は戦気が在るのか無いのか、 まるで夢遊病者のような
漠然とした雰囲気でただ大刀を構えるのみ。
そして口唇からは、 譫言のような声無き声が断続的に漏れるのみだった。
その戦闘中にあるまじき少女の姿に、 眼前の青年が訝しげに視線を歪めた刹那。
「――ッッ!!」
少女は足下の年季の入ったアスファルトを踏み切り、
大刀を斜に構えたまま白銀のスタンドへと突っ込んだ。
(どうした!? 不用意過ぎるぜッ!)
(フッ……! このオレを相手に堂々と正面からとはな!
舐められたものだッ!)
少女の取った選択に、 白金と白銀の 『スタンド使い』 が
それぞれ対照的な心情で両目を見開いたのはほぼ同時。
グァッッッッッッッッッギャアアアアアアアアアアアアアア―――――
――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!
周囲に響き渡る、 空間の軋むような斬撃音。
少女の斜め上段の構えから撃ち放たれた力任せの袈裟斬りを、
『片手で』 受け止めた騎士のスタンドは、4
そのまま少女の大刀の腹を細剣の刃で滑らせ己の脇に
“柳に雪折れ無し”
受け止めるのではなく 「抑える」 といった感覚で、
サーベルの刀身を
弾動した刃の空隙で
「……ッッ!!」
極限の脱力が生み出す、 先刻の料理店で見せた技とは対極に位置する
緩やかな剣捌きにより、 少女の躰は開いて大きく泳ぎ
攻撃対象失った大刀と共に前へと流れる。
その刹那――。
ピィンッ!
滑らかな半円を空間に描いたスタンドのサーベルが、
突如閃光の如き白銀の刺突と化し、 少女の左胸へと急襲した。
「――ッッ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!
「……」
「……」
炎の紋章が刻まれた特製のセーラー服、
その左胸の位置でピタリと停止した白銀の切っ先。
そして。
「チェック・メイト」
揺らぎのない鮮鋭な声で戦いの終焉を告げる、
精悍なる白銀のスタンド使い、J・P・ポルナレフ。
一瞬の交錯。
余りにも速過ぎる決着の光景。
湿った海風が一迅、 ソレを物語るように傍らを通り抜けた。
「む、 むう、 何という強さだ。 まさかシャナが手も足も出ないとは……」
脇でそう声を漏らす祖父を後目にその孫は、
(確かに相手は強ェが……ヒデェな、 今日のシャナは)
心中で呟き紅髪の少女を見据える。
(全然戦いに集中してねぇ……今の一撃も心此処に在らずといった、 捨て鉢なカンジだ。
ソレに、 いつものアノ焼け付くような
どういうことだ?
落胆にも似た表情で視線の先の少女を見据える無頼の青年。
「不調、 のようだね。 シャナは。
やはり、 まだホリィさんの事を引きずっているのかもしれない」
己の隣で佇む花京院が、 静かな声でそう語りかけてくる。
「……」
そうは見えなかったが。
ちゃんとフッ切れたように見えた。
旅立ちのアノ朝に。
「兎に角、 ボクが代わった方がよさそうだ」
そう言って歩みだそうとする翡翠の奏者を無頼の貴公子は引き止める。
「待ちな。 まだ肩の傷が治ってねーだろ。 ここはやはりオレが行く」
鋭い意志をその瞳に宿して花京院にそう告げ、
少女の左胸にサーベルを突き付けるスタンドへと
空条 承太郎は歩みを向ける。
その背後でワシは? とジョセフが己を指差していたのは、 まぁ余談。
歩きながら勇壮なるその声で承太郎は白銀のスタンド使い、
J・P・ポルナレフへと言い放つ。
「オイ? 選手交代だ。 どうやらソイツは本調子じゃあねぇらしい」
「――ッッ!!」
承太郎のその言葉に、 少女の首筋が羞恥で赤く染まっていった。
その胸中を知ってか知らずか、 無頼の貴公子は言葉を続ける。
「昨日ロクに寝てねーし、 飛行機ン中でクワガタのスタンドとヤりあったからな」
言いながら襟元から垂れ下がった黄金の鎖を鳴らし、
長い学生服の裾を海風に靡かせる。
「ベストの状態じゃねーヤツ、
それも女に勝った所でなんの自慢にもならねーだろ。
勝手なコトを言うようだが、 オレとテメーで仕切直しだ」
そう告げる無頼の貴公子に対し、
白銀のスタンド使いは少女の左胸から
いともアッサリとスタンドの剣先を引き、
三度闘争心に誘発された瞳で向き直る。
「フッ、 ようやく真打ちの登場というワケか」
耳元の特殊なイヤリングを揺らしながら、
ポルナレフはスタンドのサーベルを鮮鋭に構え、 承太郎へと突き付ける。
最早自分のすぐ傍にいる少女は、 眼中に入っていない。
「今度は、 失望させないでくれよ……」
「絶望させてやるぜ。 オレのスタンドのパワーとスピードでな」
互いにそう言い、 近距離で真正面から対峙する二人のスタンド使い。
「うるさい……」
傍らでそう漏らした、 少女の言葉は両者のどちらにも届かない。
「フム。 その意気や良し。
どうだ? せっかく互いの射程距離にまで歩み寄ったんだ。
ここは一つ、 スタンドを一度引っ込めて、
完全なる “ゼロの状態” からでの勝負にしないか?」
鋭い芯はあるがどことなく戯れるような明るい声で、
真剣勝負の方法を提案する銀髪の青年。
「西部劇のガンマン風に言えば、
“抜きな、 どっちが素早いか試してみようぜ”
というヤツか? 良いだろう」
承太郎はその提案を受け、 銀髪のスタンド使いから一歩距離を取る。
「うるさい……!」
自分を見ない、
今はその聞き慣れた声すらも少女にとっては悲痛な響きとなる。
「カウント・ダウンは?」
「任せる……」
最早完全に互いの存在しか眼に入らず、
二人のスタンド使いは戦闘時微弱に流れる
『
「
銀髪のスタンド使い、 J・P・ポルナレフが
を母国の言葉でまず口にする。
「
承太郎もそれに倣い、 同じ言語で返す。
(まだ……終わってない……!)
その両者の間に割って入るように、 傷心の少女の声。
「
「
その少女の存在を無視して、 無情にカウントされていく戦いへの秒読み。
(まだ終わってない!!)
「
そし、 て。
「ZEROッ!」
「ZERO……!」
(ZEROッッ!!)
三者三様の想いを込め、 爆発する精神の波動。
そこに。
「待てぇいッッッッ!!!!」
雷神の放つ
ソレが急転直下で招来したかのような峻厳なる声が、 三者を直撃した。
「……」
「……」
「……アラストール」
再び三者三様に、 声を発したペンダントへと視線を向ける
二人の 『スタンド使い』 と一人の “フレイムヘイズ”
「この勝負、 我が預かる……」
各々戦闘態勢を執ったまま己を見る3人に対し、
深遠なる紅世の王は静かな声でそういい放った。
ソレは、 我が子を慮る父親の如き心情。
そして、 遙かなる悠久の刻の中、 確かに感じた感情。
己を、 完全に見失ってしまうほどに。
半ば諦観にも近い想いで炎の魔神は自分の上、
いま現在酷く不安定で暴走状態にも近い少女を見る。
「……」
戦いの 「結果」 だけを求めるのなら、
先刻の一合で決着は付いていたのかもしれない。
しかし。
一対一。
ソレも、 男と男の真剣勝負。
そこに横槍を入れるような、 しかも一人の者を二人で討ち果たすような
「勝ち方」 は、 眼前のこの男は絶対に納得しないであろう。
その事が、 余計にこの少女を傷つける事になる。
少女の想いは、 至ってただ純粋なだけ。
しかし純粋で在るが故に、 時に傷つき苦しまねばならないコトも在る。
その想いに 「自覚」 が無いならば尚更。
そしてソレは、 眼前にいるこの男も同じ事。
互いが互いを想い遣るが故に、 そしてその想いが純粋で在るが故に、
誤解を生じ、 擦れ違い、 傷つく事になる。
そして想いの深さ故に、
それは時に愚かな行為をそうだと気づかずに
行ってしまう事にも繋がる。
“そのような悲劇” はもう避けねばならない。
『そんなコト』 はもう、 “自分達だけで” 十分だから。
消えない過去の記憶を一度心中で深く噛み締めた紅世の王は、
同時に焼け付くような視線で眼前の 『
そして、 厳かに口を開く。
「白銀の騎士よ。 まずは非礼を詫びよう。
一対一の果たし合いに、 余計な横槍を入れてしまったな」
(アラストール……!)
自分の所為でアラストールにまで責任が及んだコトに、
少女は衝撃を受ける。
「Non、 オレも戦いの熱に浮かされ些か性急過ぎたようだ。
どうやら、 まだまだ精進が足りぬらしい」
少女の胸元から上がる声に、 銀髪のスタンド使いは敬意を失さずそう返す。
「しかし、“預かる” とは一体どのような御意向かな?
まさか、 もう一度そちらのお嬢さんと立ち合え、 と?」
「……」
垢抜けた振る舞いでそう問うフランス人の青年とは対照的に、
その手前から鋭い視線でアラストールを見る無頼の貴公子。
あくまで少女の代わりに自分が戦う、 その立場を譲る気はないようだ。
その両者を見据えながら、 深遠なる紅世の王は言葉を続ける。
「うむ。 先刻の貴殿の “
戦いの終局とするには少々言い過ぎだろう。
そのような脆弱な鍛え方はしていない。
何より、 アノ時この子はまだ剣を放してはいなかった」
そう問う異界の魔神に対し白銀の騎士は、
「Oui、 ごもっとも。 しかし気が進まぬな。
このお嬢さんの剣には、 “迷い” が在る」
そう言って鍛え絞られた両腕を厳粛に胸元で組む。
「剣は心以上にその人間の 『真実』 を、 残酷な迄に映し出す。
幾らパワーとスピードが在っても、 ソノ太刀筋が見切られてしまえば
それはもう勝負等という領域に属するモノではない、 一方的な惨殺だ。
そのようなモノは我が 『スタンド』 の名誉に似つかわしくない」
「うむ」
『剣技』 の腕では明らかに少女を上回る力量を持つ騎士に、
アラストールはその事実を認めた上で頷く。
そして。
「そうだな。 ソコで貴殿の相手を仕るのはこの子ではない。
紅世の王、“天壌の劫火” 足るこの我だ」
「!?」
「!!」
蒼天に紅き激震
古よりの絶頂に君臨する深紅の王、
←To Be Continued……