STARDUST∮FLAMEHAZE 【完全版】   作:沙波羅 或珂

63 / 85
『DARK BLUE MOONⅩ ~Bake The Dust~ 』

 

 

【1】

 

 

 瀬戸際の状況で編み出された剣技により

何とかトーガ一体を屠った少女。

 しかし次の刹那だった。

 

(……ッ!)

 

 その背後で既に逃げ場のない包囲網を組んでいた11体のトーガが、

余す事なく大挙して雪崩(なだ)れかかった。

 

(数が……多過ぎる……ッ!)

 

 足裏を爆散させ側面に廻り込もうとはしたが、

もうその(いとま) はなく少女は纏った黒衣を拡げて身を包み防御体勢を執る。

 ソコを待ちかねたと言わんばかりに、

無数の炎獣(トーガ)の巨腕が大襲撃をかけた。

 

「ぐ……ッ! うぅ……!」

 

 視界に留まらない、 ありとあらゆる方向から繰り出される乱撃の嵐。

 気を抜けば瞬く間に押し潰されてしまうような炎獣の猛攻。

 速く重く、 そして一向に途切れない、

まるでスタープラチナの連撃(ラッシュ)でも真正面から受けているようだった。

 少女が刀身を(しゃ)に構えているのにも関わらず、

自分の腕が切れるコトも構わず攻撃を繰り出してくるモノ、

それとは逆に着撃箇所を正確に狙ってくるモノもいる。

 どれも同じように見えるが、 実は一体一体に個性があるのかもしれない。

 黒衣が引き裂かれ腕に裂傷が走り、 その白い頬にも赤い(けい)が走り

珠のような飛沫が空間に跳ぶ。

 

(このままじゃ持たない……! 相打ち覚悟で……ッ!)

 

 そう決意し細めた瞳を開く少女への一方的な猛攻が不意に止んだ。

 

(!?)

 

 反射的に双眸を開くシャナの眼前、 先刻己の斬撃を吸収した炎獣(トーガ)

その拳を硬く握り締め弓を引くように大きく振りかぶっていた。

 そして少女の躰を木っ端微塵に砕くかのように、

その巨拳を容赦なく撃ち降ろす。

 

「あうぅッ!」

 

 反射的に出た底掌受けでなんとか直撃は避けたものの

威力を消す事は当然叶わずシャナは背後に高速で弾き飛ばされる。

 乗り越え防止の為かなり頑強に造られた鉄柵に

少女の躰は磔刑のように叩きつけられた。

 暴力的な激突音。

 (ひしゃ) げた背後からそのまま殉教者のように

力無く地に落ちるシャナに再び、 群青の獣が我先にと群がる。

 立ち上がる力が在る内は執拗に叩き、

徹底的に嬲り殺しにするつもりのようだった。

 

(とても……全部は相手に仕切れない……なら……!)

 

 グラつく視界を何とか意志の力で繋ぎ止めシャナは炎獣(トーガ)達の最奥、

最初から構えを違えず細い両腕を腰の位置で組むマージョリーを見据える。

 

(『本体』 を叩く……ッ!)

 

 完璧に統率された群集を成して殺到する炎獣(トーガ)に対し、

シャナは意志の力を研ぎ澄ませる。

 ソレに呼応するように、 千切れた黒衣の裾がさざめいた。

 そこにすかさず繰り出される炎獣(トーガ)の猛攻。

 先刻の一方的な暴虐の熱に浮かされているのか、

威圧感と手数の多さは比較にならなかった。

 そして、 夥しい数の爪撃が無惨に少女の躰を数多の破片へと引き裂いた刹那。

 炎獣の群の前には、 散り散りになった黒衣の脱け殻だけが

巻き起こった気流にたなびいた。

 

((((((!?)))))) 

 

 目の前にいた筈の標的を見失いキョロキョロと周囲を見回す炎獣達の背後、

セーラー服姿の少女が胸元のペンダントを揺らしながら

最奥のマージョリーへと差し迫っている。

 無数の爪が自分に着撃する瞬間、 即座に己の身を黒衣から素早く抜き出し

「残像」 を代わり身として相手に攻撃したと錯覚させる高度な回避術。

 マージョリーの遣ったモノとは性質が違うが

相手を幻惑すると言った点では同じのモノ。

 トーガ達の足の隙間を転がりながら潜った為やや崩れた体勢ではあるが、

少女はそのまま手にした大刀を足下のコンクリートに引き擦り

凶暴な火花を掻き散らしながら必殺の一閃を射出する為に眼前の美女へと疾走する。

 空を穿つ抜刀炎撃斬刀術、

『贄殿遮那・火車ノ太刀/斬斗(キリト)

 

「フッ……!」 

 

 その少女の姿に邪な笑みを浮かべた美女は、 手にしていた 『本』 を宙へと放る。

『本』 はそのままピタリと固定されたように空間へと貼り付く。 

 そし、 て。

 

 ドグオオオォォォォォッッッッ!!!!

 

 大地を支点にした刀身を己に射出しようとしていた少女へ瞬く間に強襲し、

無防備な水月へ路面に亀裂が走る程の強い踏み込みで跳ね上げた膝蹴りをブチ込んだ。

 

「う……ぐぅ……ッ!?」

 

 想定外の事実に、 そして急所にメリ込んだ蹴撃に少女の瞳が大きく見開かれる。

 意図せずに大量の呼気が吐き出され、 大刀の柄に据えられた両手も小刻みに震えた。

 それと同時に、 並の戦闘者ならその場に(うずくま)り恥も外聞もなく沼田打(のたう)ち回るほどの、

筆舌に尽くし難い痛みと怖気と吐き気が少女の脳幹を劈く。

 

「“遠隔操作能力” を遣うから、 近接戦は出来ないとでも想ったの?」

 

「あ、ぐぅッッ!!」

 

 その直後、 開いて剥き出しになった少女の背中に

美女の肘が錐揉み状に旋廻して捻じ込まれた。

 通常のフレイムヘイズの防御能力なら、 ただそれだけで背肉が爆ぜ、

内部の胸椎も軒並み圧し潰される程の痛烈な撃ち落とし。

 肉が歪み、 みしりと骨が軋む音に混ざって成熟した女の声が到来した。

 

「無数の炎獣(トーガ)を率いるこの私が、 ソレより弱いワケがないでしょう?」

 

 崩れた体勢で硬直するシャナに、 マージョリーは優しく教授するように語りかける。

 そして。

 

(顔は、 勘弁してあげるか。 一応女だものね)

 

 美女は平に構えた拳を収め、 代わりに身を低く鋭く踏み込み

左の肘を少女の右脇腹に挿し込んだ。

 

「ぐァッ!?」

 

 辛うじてに後ろに飛んだものの、 左拳に添えられた右腕の撃ち込みの威力を

完全に殺すコトは叶わず少女は背後へ直線状に弾き飛ばされる。

 主の道を開ける従者のように、 左右に散開したトーガ達の間を擦り抜け

突き破った鉄柵の支柱に、 なんとか指を絡ませ墜落するだけコトは避けるシャナ。

 しかしそこから再びコンクリートの上に降り立った少女の脳髄に、

痺れるような激痛が直撃した。

 

(!!)

 

 一瞬にしてその顔が蒼白となり、 膝が折れて地面につきそうになるのを

少女はなんとか押し止める。

 

(……折……れた……!?)

 

 蒼褪めた表情で着撃箇所を手で探る。

 制服越しの指先から伝わる感触では正確に解らないが、

少なくとも罅は入っているようだ。

 人体の負傷はどんな軽微なものでも常にその全体へと影響を及ぼすモノではあるが、

シャナのような己の身体能力をフルに活用する 『刀剣遣い』 にとって

コレは著しい不利益をもたらす。

 特に上体を捻る動作を要とする廻転、 旋廻系の剣技はコレで完全に封じられた。

『今までの』 少女で在るなら、 負傷に伴う苦痛はソレを上回る闘争心、

或いは使命感に拠って脳内モルヒネのように打ち消してきたが

『今の』 少女にはソレがない。

 故に、 痛みは痛みとしてしか躰に認識されない。

 その創痍の彼女の前に、 未だ無傷のトーガ11体が立ちはだかる。

 最奥にいるマージョリーの姿が、 今はやけに遠く感じられた。

 

(とても今の状態じゃ、 剣技は遣えない。 逆に贄殿遮那に引っ張られる。

なら……!)

 

 刀身を足下のコンクリートに突き立て代わりに右手を顔前に構える。

 

焔儀(コレ)しかない……ッ!)

 

 開いた掌中に紅蓮の炎が激しく渦巻いた。

 

「アラ? もう終わり? 最近欲求不満だったから、

もっと格闘戦を愉しみたかったんだけど」

 

 追いつめられた少女とは裏腹に、 美女は世間話でもするように軽く言う。

 それを無視し、 シャナは己が焔儀の執行に移る。

 

「はあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 喊声を挙げると同時に、 右脇腹がズキンッと悲鳴をあげるが歯を軋らせて

ソレを堪え、 両脇に広げた手にそれぞれ属性の違う炎を瞬時に生み出す。

炎 劾 華 葬 楓 絶 架(レイジング・クロス・ヴォーテックス)

 今ある少女の焔儀の中では最大最強の威力を誇るモノだが、

ソレがどこまで通用するかは解らない。

 相手は明らかに焔儀の腕では自分の上をいく存在、

トーガを二体か三体までなら片づけられるだろうが、 全ては無理だ。

 しかも途中で吸収される可能性も在る。

 

()()()()()……こんなとき……どうする?)

 

 当たり前のように口にしていた心中の言葉に、 少女は自分自身でハッとなる。

 頼らないと決めた筈なのに、 一人で出来ると今朝言ったばかりなのに。

 それなのに、 気がつくと、 いつも……

 その時、 全く予期しなかった音響が少女の心臓を撃った。

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 耳元で鳴る、 無機質なコール音。

 夕暮れ時なので街は人波でごった返しており走り辛い事この上ない。

 進行方向を遮る人々の脇を抜い、 時に肩をブチ当てながらも

無頼の貴公子は目的の場所へ疾走していた。

 

(……でねぇな。 ホテルに忘れたのか?)

 

 だったら別にそれで構わない。

 少女が依怙地になって電話に出ないのだとしても一向に構わない。

 しかし、 もし、 ()()()()()()()()()()()――。

 

(あそこかッッ!!)

 

 焦燥よりも先に認識が走った。

 視線の遙か先、 高層ビルの隙間に煌めく群青の色彩をスタープラチナが捉えた。

 無論周囲を行き交う人々にソレは視えていない。

 耳に真新しいメタリック・プラチナのスマホを当てたまま、

空条 承太郎はその場を目指す。

 しかしその中心点で、 既に同属同士の熾烈な戦いが始まっているコトを彼は知らない。 

 

 

 

 

 

 

(――ッッ!!)

 

 スカートのポケットから断続的に発せられる、 無機質な電子音。

 困惑したまま瞳を上へ下へと動かす少女に対し、

遠間からそれを聴くマージョリーは訝しげにその音の発生源をみる。

 

「……何か知らないけど、 鳴ってるわよ? 出たら?

その間に攻撃するなんて、 セコい真似はしないから。

これが現世のラストコールになるかもしれないしね」

 

 封絶の中で何故携帯電話が鳴るのか?

 疑問には想ったが考慮に値しないと判断した美女に促されるように、

少女は小刻みに震える左手でポケットに手を伸ばす。

 その音を待ち望んでいたかのような、 全身で拒絶するような、 矛盾した表情。

 着信音に合わせランプが点灯する紅い携帯電話の、

液晶画面に記載された名前。

 

「……」

 

 しかし少女は通話パネルの上で震える指先をそれ以上押す事はなく、

どうしたらいいか解らないまま呆然と立ち尽くした。

 やがて静寂した空間に無機質な電子音が20回以上鳴り響いた後、 それは途切れる。

 沈黙の中、 興醒めしたように美女が口を開いた。

 

「良かったの? 彼氏からの熱烈なラブコールとかだったんじゃない?

それにしても封絶の中までかかってくるなんて変な電話」

 

「うるさいッッッッ!!!!」

 

 からかうように告げられたマージョリーの言葉だったが、

それに心の深奥を無遠慮に触れられたように感じたシャナは怒声で返した。

 戸惑いも逡巡も、 躰の痛みもその一声で全て吹き飛んだ。

 

(おまえが……おまえなんかが……!)

 

 わなわなと震える全身を駆け巡る理解不能の感情と共に、 再び両手に炎が宿る。

 

()()()()()入ってくるなッッ!!)

 

 そう激高し、 少女は手に宿った二つの炎を眼前で鋭く弾き合わせた。 

 そのたった一度の動作だけで属性の違う炎同士が一瞬で融合し

巨大な深紅の球となる。

 戦慄の暗殺者、 紅世の王 “狩人” フリアグネとの戦い以降一ヶ月余り、

この少女も何もしていなかったわけではない。

己に課した日々の鍛錬の中、 確実にアノ時よりも 「成長」 し

焔儀発動までの時間を大幅に短縮するコトを可能としていた。 

 

(“連発” だッ! 自在法を吸収するのなら、

()()()()()()()()()連続で射出し続ければ良い……!

3回、 4回、 ううん、 手が千切れるまで撃ち続けるッッ!!)

 

 そう思い切り決意の炎が燃え上がる灼眼を、美女は興味深そうに見据える。

 

“ゾディアック” の力較べ、 ね。 子供っぽいけど面白そうだわ。

折角だから乗ってあげましょうか?

試してみたい “(ワザ)” も在るし、 ね」

 

 そう言ってマージョリーが指先を弾くと同時に、

少女の前に傲然と立ちはだかっていた炎獣(トーガ)の壁が一瞬で消え去り、

元の存在の力へと戻った群青の炎が蒼き螺旋を渦巻いて美女の躰へと還っていく。

 

炎獣(トーガ)を消した!? でも、 逆に好 機(チャンス)ッ!)

 

 油断なのか傲りなのか、 理由はどうでも良い。

 コレで勝負は総力戦ではなく、 極めるか極められるかの瞬発戦になった。

 ならば既に焔儀を完成させかけている自分が有利。

 如何に練達した 『自在師』 だとはいえ、

“アノ男” のように 【不死身】 というわけではない。

 炎への耐久力はどのフレイムヘイズも一律で在る以上、

コレが極まればソレで全てが終わる。

 ()()()()()――。

 

紅 蓮 珀 式 封 滅 焔 儀(アーク・クリムゾン・ブレイズ) ……!」

 

 己が存在を司る、 究極自在法大系内の一領域の深名が、

目睫で両腕を交差した少女の口唇をついて出る。

 指先に神妙な印を結び、 交差した腕の隙間から

標的であるフレイムヘイズを鋭く射抜く少女。

 だが、 意外。

 その視線の先の美女も、 合わせ鏡のように自分と同じ形態を執った。

 

()()()()……!? フザけてるの……!?)

 

 一瞬の逡巡。 

 その(まにま) に、 美女は構えを崩さぬまま足下をヒールの先端で踏み割って

カメラのズームアップのように強襲する。

 

迫撃(はくげき)型焔儀……!?) 

 

 刹那の間に思考するがソレよりも勢いが勝り、

 

「レイジング・クロス!!」

 

己が流式名を刻みつけるように、

少女は印と共に重ね合わせた両掌を深紅の球に繰り出す。

 しかし術式発動の自在式が球内に叩き込まれる瞬間に、

眼前の 「標的」 が突如姿を消した。

 

(!?)

 

 目標を失った灼熱の高 十 字 架(ハイクロス)は、

そのまま空を滑走し鉄柵を熔解させて突き破り封絶の彼方へと消え去るのみ。

 直後に背面から(かお)る、 魔性の美香に気づいた時はもう遅かった。

 

「――ッッ!!」

 

 背中合わせの状態から左拳に右掌を添え穿つように放たれた肘打ちが脊椎を直撃し、

下腹部が弛緩するような衝撃と共に少女は前方へ飛ばされる。

 そのまま冷たいコンクリートの上に受け身も取れず叩き付けられるが、

追撃の可能性に際して躰が勝手に反応し震える足下のまま少女は背後に向き直った。

 

「馬鹿正直に、 真正面からの “ゾディアック” の撃ち合いなんかに応じると想ったの?

ただの消耗戦にしかならないのに。 見た目の通り、 本当にお子さまね? アンタ」

 

 先刻、 自分が言い放ったコトをあっさりと反故(ほご)にし、

悪びれる様子もなくそう告げるマージョリー。

 圧倒的な能力(チカラ)を持ちつつも尚、 勝つ為なら何でもするという狡猾さ。

 一見えげつなく想えるが、 一切の綺麗事が通用しない戦場に於いては寧ろ当然の仕儀。

 精神的な少女の不調を差し引いても、 戦士としての機転に於いて

マージョリーはシャナを上回っていた。 

 

「でも、 少しだけ誉めてあげるわ。

完全に(かわ)したと想ったけど、 余波に掠っただけでこの威力とはね」

 

 美女はそう言って、 微かに焼けて白い煙を(くずぶ) らせる手の甲をみせつけるように(かざ)す。

 

姿(ナリ)はチビジャリでも、

流石は “天壌の劫火” のフレイムヘイズと言った処かしら? 

でも、 まだまだね。

アノ程度じゃ、“フレイムヘイズの焔儀” ()()()()()()()

 

 そう言った美女が指先を弾くと、 遠間で浮いていたグリモアが滑るように

移動し頭上で停止する。

 そして、 微笑と共に告げられる、 ゾッとするほど妖艶(あま)やかな声。

 

「アンタに、 教えてあげるわ…… “ゾディアック” の……

その真の能力(チカラ)をね……」

 

 言葉の終わりと同時に美女は、 その両腕を高々と掲げ頭上で交差し

己を司る焔儀領域の深名を口にする。

 

蒼 蓮 拾 参 式 戒 滅 焔 儀(ダーク・フェルメール・ブレイズ)……”

 

「ヒャーーーーーーーーーーッハッハッハッハァァァァァ!!!!!!」

 

 艶やかなマニキュアで彩られた指先の印の上で

神器 “グリモア” の表紙が開き、 中のページがマルコシアスの狂声と共に

嵐の中ではためくように暴れる。

 やがて、 規定のページでピタリと停止した 『本』 の紙面が

強烈な群青の光を放ち、 それと同時に凄まじい存在感を轟かせるモノが、

美女の背後に出現した。

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

   ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

  ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッ!!!!

 

 

 

 

 

 空間に展開した、 闇蒼の紋章と紋字を鏤める特殊自在式法陣。

 その裡から、 異次元空間より現世へ這い擦り出すかのように姿を見せた存在。

 ソレは、 焔に因って形創られた、 一本の巨大なる腕、 否、 (あし) 

 鋼鉄の如き骨格と装甲に等しき肉塊を刃のような群青の毛革で覆われ、

その先に破滅の爪牙を鳴轟する 【魔狼の前脚】

 掌握すれば周囲の高層ビルを砂の城の如く()り砕き、

振り廻せば枯葉の如く粉微塵にしてしまうで在ろうコトを否応なく

視る者に感じさせる、 その脅 嚇(きょうかく)

 

「――ッッ!!」 

 

 フレイムヘイズとしての、 焔儀の遣い手としての絶対的戦力差を魅せつけられ、

絶句する以外術をなくす少女の前でマージョリーは静かに口を開く。

 

「 “ゾディアック” の神髄、 その真の意味とは、

『王の存在をこの世に完全顕現させるコト』

アンタの遣っているような低級焔儀は、

その過程に於いて派生した 「副産物」 に過ぎない」

 

 両腕を頭上で組んだまま、 まるで諭すような口調で美女は言葉を続ける。

 

「今はまだ、 マルコの前脚を一本現世に召喚するのが精一杯だけど、

いずれはその “全身” を完全に顕現させてみせるわ」

 

「おぉ~おぉ~、 頼んだぜぇ~。

我が最強の “フレイムヘイズ” マージョリー・ドー。

一日も速くこのオレサマのカッコイイ躯体(ボディ)を現して、

大暴れさせてくれよなぁ~」

 

 破滅の戦風と共に、 蒼蓮の火走りが空間に迸る。

 

(むう……蹂躙、 己がフレイムヘイズを此処まで鍛え上げたか……!)

 

 まるで蛇に睨まれた蛙ように、 微動だに出来ない少女の胸元で

アラストールが戦慄と共に呻く。

 もうこの時点で既に勝敗は決したと言って良いほど、

マージョリーの発動させた超焔儀はその絶対的大要を揺るがすコトはない。

 少女は既に、 美女がこれから刳り出す “流式” の

その死の射程圏内に位置し、 現状の如何なる術を用いようが

防ぐコトも躱すコトも不可能な状態へと陥っている。

 意図せずに口の中がカチカチと鳴り、 冷たい雫で濡れた首筋がチリチリと疼いた。

 頼みの綱である贄殿遮那も、 今は自分から遙か遠い位置に突き刺さっている。

 

(何も……出来ない……? 何も……出来ない……ッ!)

 

 かつて、 最も忌むべきアノ男の、 その真の能力(チカラ)と対峙した時と同じように。

 

「……」

 

 少女の口唇が、 意図せずに動いた。

 

「さぁ~て、 一応 “同属” だから手加減してあげるけど、

もし殺しちゃったらごめんなさいね? 

この焔儀(ワザ)制御が難しくて、 ()()()()()()遣ったコトないから」

 

 そう言って蒼き焔で彩られた指先を、

四足獣が爪を立てるように折り曲げた美女の背後で、

数十倍のスケールを誇る魔狼の前脚もソレに連動するように蠢く。

 現世に顕現した魔狼の爪。

 しかしその絶対的威力は、 最早爪に留まらずソレを超えた牙!

 そして、 美女が空間を斬り裂くように右腕を繰り出すと同時に響き渡る流式名。

 闇蒼刻滅(あんそうごくめつ)魔狼(まろう)爪痕(そうこん)

“蹂躙” の流式(ムーヴ)

冥 拷 禁 曝 蹂 躙 牙(フォビドゥン・バイツァ・ブレイクダウン)ッッッッッ!!!!!】

流式者名-マージョリー・ドー

破壊力-AA+ スピード-A++ 射程距離-B(最大50m)

持続力-D 精密動作性-E 成長性-B

 

 

 

 

 空間を断絶する、 フレイムヘイズ “弔詞の詠み手” 最大最強焔儀。

 コレを受けて生き残った者は、 未だ嘗て皆無……

 

 

←To Be Continued……

 

 

 

 

 

 

『後書き』

 

 はいどうもこんにちは。

 ()()マージョリーは、原作と違って【圧倒的に強い】です。

『ジョジョ』ではよくあるパターンで

【何かを背負っている者ほど強い】ので

彼女もそのラインに乗せたと云った感じですね。

(ソレは追々解ります)

 だから不調だろうが好調だろうが【勝てない】んです。

まぁ何百年も生きてますから、「新人」にあっさり負けるのも

ソレもどうかと想いますからね……('A`)

「噛ませ犬」にも「ラブコメのダシ」にもしたくなかったのですよ。

 故に「屠殺の即興詩」を使わないのも解って戴けるでしょう、

出すと『強さ』がボケてしまいますし

またその必要も無いというコトですね。

 ソレでは。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。