STARDUST∮FLAMEHAZE 【完全版】   作:沙波羅 或珂

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『DARK BLUE MOONⅩⅧ ~Cry for Tears with love…~ 』

 

 

 

【1】

 

 

 紅世の徒 “屍拾い” ラミーの 『能力』 は、

己が存在を無数の断片(ピース)に分割し、

ソレに遠隔操作系の自在法を編み込んで

自律行動を促すという云わば“増殖” の幻術。

 無論スタンド能力と同様その司令塔である 「本体」 は存在し、

ソレが消滅すれば他の断片も同時に霧散するが

元の存在が()()()()()()()()()

広域に点在する数十体以上のラミーを 「本体」 か 「断片」 か、

判別するのは非常に困難である。

 恐らく卓抜した自在師、 紅世の王クラスでもまず看破は不可能。

 しかし、 水が火を消すようにどんな領域にも “天敵” というモノは存在し、

ソレがジョセフ・ジョースターの持つスタンド 『隠 者 の 紫(ハーミット・パープル)』であった。

 過程も方策も一切消し飛ばし、

ただ 「結果」 のみが歴然と現れる未知なる 『能力』

 絶対の安全圏に位置しながら他の断片になど見向きもせず、

さながら蒼き凶星の如き暴威を捲き散らしながら「本体」へと一直線に

突っ込んでくる存在を感知した刹那、

ラミーが思わず死を覚悟したのは想像に難くない。

 

「封ゥゥゥゥ絶ェェェェェェッッッッッ!!!!!」

 

 けたたましい爆裂音と共に精巧に研磨された分厚いガラスが

軒並みブチ割れるよりも速く、 この世の因果の流れを切り離す自在法が発動し

その建物を中心として群青の炎が波濤の如く異郷の街路を塗り潰していく。

 蒼き封絶の中に降り注ぐ硝子の豪雨を背景にソコへ降り立ったのは、

復讐と憎悪のドス黒い凝塊を瞳に宿す一人のフレイムヘイズ。

 崇高な芸術品が静謐に陳列される閑静な雰囲気を称えた美術館内部は、

一瞬にして殺戮の狂気に充たされた地獄と化した。

 

「どこだァッッ!! どこにいるゥッッ!! 

紅世のッッ!! 徒アアアアアアァァァァァ――――――!!!!!!!」

 

 空間をバリバリを撃ち砕くような威圧感(プレッシャー)を伴ってまず美女が

 

「今さら隠れたって無駄なんだよッッ!! もうチェック・メイトだッッ!!

せいぜい優しく咬み散らかしてヤっから出て来なラミーちゃんッッ!!

ヒャアアアアアーーーーッハッハッハッハアアアァァァァァ!!!!!!」

 

【挿絵表示】

 

 

次いでその被契約者である紅世の王が蒼の空間に狂声を響かせる。

 破滅の戦風が内と外に吹き荒ぶ中、

半ば無意識にマージョリーは胸ポケットの写真に手を伸ばしていた。

 ソコに映る存在をもう一度眼に灼きつけ、己の憎悪を更に増大させる為に。

 彼女は明らかに、 そのドス黒い焔に灼かれるコトを 『愉しんでいた』 が、

それを認識する理性は既に灰燼と帰していた。

 

「ッッ!!」

 

 その美女の瞳が、 大きく見開かれる。

 継いで冷酷な微笑が、 ルージュで彩られた妖艶な口唇に刻まれた。

 

「コレは、 本当に、 便利な 『能力』 だわ……

今の私の、 望むがままに存在を映し出してくれる……!」

 

 言うが速いか、 美女は巨大な 『本』 の形容(カタチ)をした神器、

グリモアを先鋭に構え

 

「 “ソ・コ” ッッッッだあああああぁぁぁぁ―――――――ッッッッッッ!!!!!!!」 

 

己の左斜めの方向へ開いて発光するグリモアを通し蒼い炎弾の嵐を乱射する。

 優美な芸術品が展示硝子ごと幾つも砕け散り燃え上がるのと同時に、

空間を仕切る黒いカーテンから一つの影が視界に過ぎるのを

マージョリーは見逃さなかった。

 

「逃・が・す・かァッッ!!」

 

(クッ…… ()()、 か……!

存在の気配は完璧に消し去った筈……なのに何故……)

 

 それぞれ対照的な心情のまま、 両者が頭上へと飛び上がったのはまた同時。

 動きも表情も失った人々が後に残るその空間で、

蒼い炎に照らされるフロアに落ちた一枚の写真。

 その右上に記載された街路図は、

いつのまにか今いる場所の館内図に切り替わっていた。

『能力』 と 「対象」 との距離が狭まれば、

その威力と精度が増すスタンド法則。

 ソレを使用する者とされる者に、 その事実を知る術はない。

 一方は透化、 もう一方は爆砕しながら幾つもの天井を突き抜けた両者が、

最終的に真正面から対峙した場所。

 ソコは幾何学の波のようなガラスの大天蓋で覆われた、

絡み合うアーチと吹き抜けを見下ろす美術館最上部。

『DRAGON’S DREAM』 の名を冠するが如く、

背に陰陽盤を背負った巨大な龍の彫像が4体取り囲む威容の空間。 

 

 

 

 

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッッ!!

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッ!!!!

 

 

 

 

 片や一切の気配を発さず、 片や触れれば焼き尽くされる程の脅嚇を以て

存在する、 異界の住人。

 フレイムヘイズと紅世の徒。

 上昇に伴ってかかった髪により片目だけだが、

この世のスベテを滅ぼしても尚足らないという憎悪をギラつかせながら

彼女は口を開いた。

 

「ったく、大した 『能力(チカラ)』 も無い癖にチョロチョロと……

アンタみたいな雑魚に拘ってる暇はないのよ……

他にもブチ殺さなきゃならない徒は腐るほどいるんだから……ッ!」

 

 まるで地獄の底から這い擦り出すような怨嗟の声で、

もう殺した後のようにラミーへと迫るマージョリー。

 

「こっちの警告シカトしやがったのはテメーの方だからなぁ?

もうラクには死ねねーぜ。 ()()()()()()()()()オレでも止めらんねーからな。

ヒャーーーーーーーッハッハッハッハァァァァァァァァ!!!!!!!」 

 

 心底欣快(きんかい)そうな狂声で、 サディスティックに己が同胞への別離(わかれ)

宣告するマルコシアス。

 

戯言(たわごと)を……)

 

 絶対の殺意を向けられた老紳士ラミーは、

頬に冷たい雫が流れるのを感じながらも

手にしたステッキの先端を前へと差し出した。

 

「……」

 

 対して美女は、 路傍の石でも見るような視線でソレを一瞥。

 被契約者の王はただゲラゲラと嘲りの狂声をあげ続けるのみ。

 その両者を意に介さず、 ラミーは己の精神を一点に集中させた。

 

「……惑えッ!」

 

 枯れた声と共に両眼を見開き一度タクトのようにステッキを振った後、

小さく回ったその先端から深い緑色の炎が繁吹(しぶ)く。

 

「――ッッ!!」

 

 次の瞬間、 マージョリーの双眸がその眦を引き裂くが如く散大した。

 眼前で発動するこの世成らざる存在の事象、

自在法ではなくその炎の 『色彩』 に。

 瞬時に純白の羽根が、 吹雪のように空間を乱舞し互いの中間距離を隈無く覆っていく。

 だ、 が。

 

「小ッ賢しいィッッッッ!!!!」

 

 己の右手に炎気を集束させ、 鉤爪で引き千切るように空間を薙ぎ払った

美女の一閃により純白の羽根吹雪は瞬く間も無くスベテ灼き尽くされた。

 後には焼塵と群青の余韻が音もなく燃え散るのみ。

 その先で、まるで手負いの獣のように、 フレイムヘイズは息と声とを荒げていた。

 

「……本当に……本当、に……! クソ、ヤローね……アン、タ……!

最後の最後まで……とことんムカつかせてくれる、わ……ッ!」

 

「!?」

 

 一体何が彼女の逆鱗に触れたのか、 ソレはラミーの解する領域には在らず

その怒気に気圧された彼は想わず一歩下がる。

 炎の戦闘自在法は兎も角、 “幻術” に於いては王をも凌ぐという自負を持っていたが、

まさか己を追っている相手も同じ階層(レベル)に達しているとは誤算だった。

 その恐るべき存在を、 ()()()()()()()()()()()()、 ソレ自体が既に致命的損失。

 これ以上退く事は適わない。 断片を統合する時間もない。

最早自分に、 一切の打つ手は無い。

 

「――ッッ!!」

 

 次の刹那、 神器グリモアから延びた魔獣の頭部のような炎が、

己の右足に噛み付いていた。

 

「グッ……!」

 

 一拍於いて吹き出る深緑の炎と共に、

膝を支える力が抜けラミーはガラスの大地に(つくば) う。

 相手を確実に討ち取る為には、 まず行動手段を先に潰す。

 次いで攻撃手段、 防衛手段、 知覚手段と順にもぎり取っていき、

最後に微塵の容赦も無く首を()ね飛ばす。

 冷酷非道にも映るが、 弱肉強食の摂理で充たされた戦場では当然の定石。

 

(ここまで……か……)

 

 己の生きようとする想いを、 相手の “執念” が上回った事を意外にも冷静に認め、

ラミーは眼前の怒れるフレイムヘイズを見上げた。

 己が 『目的』 を果たせずに消滅するのは無念ではあるが、

胸中に甦る一人の人間と同じ世界へようやく旅立てるという切望が

不思議と “彼女” の心を安堵させた。 

 

(コレが……私の 『罪』 に対する、 【罰】 だというのであれば……

致し方あるまい……)

 

「……」

 

 心中でそう呟き儚むように瞳を閉じるそのラミーの想いなど微塵も斟酌せず、

マージョリーは殺戮の焔儀を己の右腕に宿らせる。

 ものの数秒で 『炎獣(トーガ)』 数体分の炎気がヴォゴヴォゴと肉瘤(にくりゅう) のように

彼女の細腕を覆っていき、 やがてソレは巨大な群青の “脚” と化す。

「本体」 とはいえ、 実質トーチに過ぎない己を討滅するには大袈裟過ぎると

半ば諦観にも近い感情でラミーはソノ焔儀を見つめていたが、

最早風の前の塵に同じく黙として語らない。 

 そして生と死が一点に交錯する終極の中で、

今や絶対的な捕食者となったマージョリーの心奥に甦るモノ。

 ソレは、 これまでの残虐な記憶ではなく、 一つの優しい追憶。

“アノ娘” と出逢って以来共に織り成した、 光り輝くような幾つもの場面。

 

(……)

 

 部屋に戻ると、 アノ娘がいるのが嬉しくて。

 マー姉サマと呼びながら、 自分の娼館着に擦り寄ってくるのが可愛らしくて。

 子供っぽい仕草で自分の作った食事を口に運ぶのは愛しくて。

 他の娼館仲間達みんなから、 アノ娘が好かれるのは少しだけ妬ましい反面、

とても誇らしかった。

 自分を死の淵から救ってくれた、 優しい娘。

 自分に人間の心を取り戻させてくれた、 大切な娘。

 だから、 何でも出来た。

 だから、 何でもしてあげたかった。

 

 

 

 

 

 

“とても、 幸せだった”

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 アノ娘が笑ってくれるなら、 どんな悪逆非道な行いだろうと怯みはしなかった。

 そして。

 やっと。

 やっと……

 

(ルルゥ……もうすぐ、よ……)

 

 優しい過去の追憶に浸りながら、 マージョリーは今はもう傍にいない少女の名前を呟く。

 同時に、 胸元のロザリオも熱を持つ。

 

(もうすぐ、 終わるわ……ねぇ? ルルゥ……)

 

 その口唇に浮かぶ静謐な微笑とは裏腹に、

右腕に宿る巨大な群青の前脚は唸りをあげて折れ曲がる。

 

(そうしたら……二人で……静かな場所で……穏やかに暮らしましょう……

ずっと……ずっ……と……ねぇ……?)

 

 ソノ刹那、 マージョリーの瞳から流れ落ちる、 一筋の涙。

 

「ルル……ゥ……」

 

【挿絵表示】

 

 

「!?」

 

 彼女の時間の概念が混濁している理由を知らないラミーは、

長年自分を追い続けてきた戦闘狂のその意外なる素顔に息を呑んだ。

 美しく、 そして優しい記憶は、 人の心を捕らえて離さない。

 ソレは、 人間も紅世の徒も関係ない。

 そしてソレを惨たらしく踏み躙ったモノは、 誰であろうと絶対に赦さない!

 憎しみと絶望が生み出す狂気の微笑を浮かべるフレイムヘイズから、

断裁処刑の如く撃ち堕とされる魔狼の爪牙。

 その、 刹、 那。

 突如空間を疾走る、 一迅の光が在った。

 

(――ッッ!!)

 

(ッッ!?)

 

 今まさに、 ラミーの存在を原型も留めぬほどに壊滅させようとしていた群青の前脚は、

その光に肘部分から真っ二つに剪断(せつだん)され構成を絶たれた上半分は、

余波で中空に弧を描きながら弾け飛び多量の火の粉と成って爆ぜる。

 歴戦の研ぎ澄まされた戦闘神経でフレイムヘイズが反射的に視線送ったのは、

攻撃が来たであろう背後ではなくその「正体」が突き立つ前方。

 

( 『(スター)ッ!?』 )

 

 足下の強化ガラス内部に組み込まれた分厚い鋼鉄の梁に刺さったモノは、

有り触れていながらこの場には絶対にそぐわないモノ。

 一枚の 『タロットカード』

 希望と自由とを暗示する、『(スター)』のカード。

 しかし、 こんなモノで。

 その強度と耐熱性からして “紅世の宝具” には違いないが、

体積比と頑強さで遙かに上回る自分の焔儀を両断するには、

常軌を逸した途轍もないスピードと構成の脆い部分を微塵の誤差なく撃ち抜く

精密動作性が必要な筈だ。

 一体 “誰” が、 こんな真似を?

 驚愕の事態に意識の混濁から醒めたマージョリーの頭上で、

その解答(こたえ)がけたたましいガラスの破砕音と共に

己の眼前へと舞い降りた。

 

 

←To Be Continued……

 

 

 

 

 

『後書き』

明日は「お休み」です(≧▽≦)ノシ

 

追記

 

https://www.youtube.com/watch?v=tTNybXzqb-g

 

やっぱりマージョリーは【X】の曲が似合いますね……('A`)

 

 

 

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