STARDUST∮FLAMEHAZE 【完全版】   作:沙波羅 或珂

73 / 85
『DARK BLUE MOONⅩⅩ ~Gravity Angel Drive~ 』

 

 

 

【1】

 

 

 遠間に位置する美女の足下から、

群青の光が一斉に弾けソコから雪崩(なだれ)るように

ガラスの大地を滑走する夥しい量の不可思議な紋章と紋字。

 ソレが一片の誤差も無く円形の自在法陣を組み、

ソコから火柱と共に 『召喚』 される異形のモノ。

 フレイムヘイズ 『弔詞の詠み手』 必勝の定石、 蒼炎の魔獣 “トーガ”

 その存在をライトグリーンの瞳に映した無頼の貴公子が厳かに呟く。

 

「アンタと同じ、 “群体型遠隔操作”

だがコッチは完全に戦闘のみに特化させた能力か。

アノ熊みてーな炎の獣がそれぞれバラバラに、

しかもパワー充分に攻撃して来るっつーンなら、 厄介以上の相手だな」

 

「アノような者達にこれまで()け廻されていたとは……

今更ながら肝を冷やす想いだ」

 

 マージョリーの繰り出した強剛無比なる能力に慨嘆を漏らした承太郎の横で、

ステッキを支えに佇むラミーもまた同様の感想を口にする。

 その熾烈なる戦闘の火蓋が今まさに切って落とされんという最中、

承太郎の手の平から荘厳な声があがった。

 

「どうした? 早く首にかけぬか」

 

「……」

 

 手に携えた優美な造りのペンダントに無頼の貴公子は視線を送る。

 

「よく “視えぬ” のだ。このままでは」

 

 告げられたアラストールの言葉にそうなのかと了得した承太郎は、

その後少しだけ(よこしま) な笑みを浮かべ、

 

「なら視え易いように、 “こう” しててやろーか? お父さん?」

 

コキュートスの細い銀鎖を指に絡ませ、 振り子のようにブラ下げる。

 

 

「ふ、 巫山戯(ふざけ)るな! 貴様ッ!」

 

 珍しく感情の意を明確にした炎の魔神が、 眼前のやや下で声を荒げた。

 その様子を微笑混じりにみつめていた脇の老紳士が、

一転表情を引き締めて問う。

 

「ふむ、 それにしても良かったのか? 空条 承太郎」

 

「ン?」

 

 ペンダントを首かけ、 (タバコ) はよさぬかというアラストールの声を無視しながら

紫煙を薫らせる美貌の青年。

 

「彼女は、 一度アノ者と戦って敗れているのだろう?

力量の差か相性かまでは窺い知らぬが、

既に手の内が露見している以上不利には違いない。

助けられておいて言うのも何だが、

ここは君が行くべきではなかったか?」

 

 そのラミーの当然の物言いに対し、 承太郎は銜え煙草のまま大袈裟に両手を開く。

 

「ハァ? オレが? 何故? ヤらねぇよ」

 

「むう、 しかしだな」

 

 疑念を口にするラミーを承太郎が遮る。

 

「言っただろ? アイツが “行ってくる” ってよ。

つまり、 オレの助けは必要ねぇ、 っていうか端から選択肢に入ってねーんだよ」

 

 そう言って無頼の貴公子は横を向いて紫煙を吹き出す。

 

「まぁここは一つ、 アイツのお手並み拝見といかせてもらおうじゃあねーか。

アンタの生命(いのち)が賭かってるんだ。

勝算もねーのに戦うなんてバカな真似、 アイツはしねーよ」

 

 その鮮鋭なるライトグリーンの瞳は、 視線の先で佇む凛々しき少女を見据える。

 

「彼女を、 信頼しているのだな」

 

 ラミーのその言葉に、承太郎は何故か虚を突かれたように視線を引き、

次いで学帽の鍔で目元を覆う。

 そして。

 

「……どうだかな。

ただアイツは、 一度ヤるって決めたコトは必ず最後までヤり遂げる。

善くも悪くも自分に絶対嘘をつかないのが、 アイツのイイ処だからな」

 

「フッ……」

 

 その風貌とは裏腹の解り易い繕いに

ラミーが穏やかな微笑を浮かべると同時に、

 

「むぅ……」

 

という何か面白くなさそうな呟きが加わった。

 

(昨日みたいに……時間はかけない……秒単位で終わらせる……!) 

 

 その戦闘空間にはやや不釣り合いの鼎談が行われていた場の遙か遠方で、

マージョリーは狂気の炎を心中に燃え滾らせていた。

 邪魔する者は誰で在ろうとスベテ叩き潰す。

 ソレが将来有望なフレイムヘイズだろうが、 後の味方に成り得る者だろうが関係ない。

 先を見据える未来は跡形もなく灰になり、

消えない過去の追憶が生み出す残酷なる「現在(いま)」のみが在った。

 しかし勢力と総力で圧倒的に上回っていながらも、

美女は怒りに任せて短絡的な人海戦術等には撃って出ない。

 あくまで冷静に、 そして冷徹に、 100%勝てる炎獣(トーガ)の配列を

脳裡で取捨選択し徹頭徹尾妥協なく構築していく。

 まずは、 定石通り相手の四肢をもぎ落とすコト。

 破壊衝動のままにその()をバラバラに引き裂くのは、

それからでも遅くはない。

 やがて前方で扇状に拡がった炎獣(トーガ)の包囲網が微塵の隙も無く完成する頃、

シャナは己の足下を爪先で叩き戦場の地形を確かめていた。

 

(ちょっと、 滑り過ぎるわね。 “斬斗(キリト)” は(つか)えないか。 なら……)

 

 心中でそう呟いた後、 手にした大刀をおもむろ掲げると、 そのまま背へと(かつ)ぐ。

 そして空いた左手は緩やかに前へと突き出し、

その繊細な指先を順に折り曲げながらゆっくりと手招きをした。

 ソレと平行して足下は指の力のみで(ふく)むように静かに這わせ、

ジリジリと互いの間合いを詰めていく。

 

【挿絵表示】

 

 

 しかし少女の用いたその奇怪な構えに対し、

マージョリーは些かの動揺も示さない。

 逆に怒りに伴って尚冴えるその明察により、

少女の攻撃に対応する術を瞬時に生み出した。

 

(フン……そんなくだらない挑発に乗ると想ってるの……?

()れて私が腕を伸ばしてきた所を “後の先” で向かえ撃とうって魂胆だろうけど浅いわ。

折角造り上げた鉄壁の包囲網を自ら崩すなんてバカな真似はしない。

間合いに入った瞬間放たれる一撃を、 トーガに掴ませるか迎撃させるかして終了ね。

フフフ……)

 

 口元に冷然とした微笑を浮かべながらも、 マージョリーの研ぎ澄まされた視線は

互いの間合いを完璧に見極めている。

 シャナがどれだけ(はや)く鋭い斬刀を繰り出そうとも、

“来る” と解っているモノを見過ごす彼女ではない。

 

(あと……三歩……)

 

 ジリジリと互いの間合いが詰まるにつれ、

美女の躰から立ち上る火の粉もその色彩を増す。

 少女は俯くように呼気を呑み、 奥歯をギリッと咬み縛った。

 

(あと、 二)

 

 

 

 

 

 ズヴァァァァッッッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 突如、 何の脈絡もなく響いた斬切音。

 シャナの近接、 マージョリーからは一番遠方にいたトーガの首が刹那に両断されていた。

 次いで宝具の特殊効果により、 後に残った首無し胴体は跡形も霧散する。

 

「ッッ!?」

 

「……ッ!」

 

 対手であるマージョリーは事態を把握できず、

遠間に両者を見据えるラミーの瞳にも結果だけが映るのみ。

 

「……」 

 

「……」

 

 少女をよく()る二人の男の慧眼(けいがん)のみが、

シャナの撃ち放った “剣技” の本質を正確に目視(とら)えた。

 

「一体、 ()()()()()()()()? 巧者ではない私の目にも

彼女の攻撃が命中(あた)る距離では無かったと想うが」

 

「シャナの “手元” を、 よく見てみな」

 

 ラミーの問いに承太郎が悠然とした口調で応える。

 促されて老紳士が視線を送った先。

 

(……ッ!)

 

 通常の “掴み” とは明らかに異なる形で、

少女の三本の指が振り抜いた大刀の末端部を支えていた。

 

「完全に射程距離外から撃たれたシャナの剣は、

アノ瞬間、 それを掴む手が柄の根本からその端まで 『横滑り』 してたのさ」

 

「その結果、 切っ先は相手の想定を越え伸長するに至った。

無論、 神妙なる指の挙止(きょし)無くば為し得ぬ “(ワザ)” ではあるがな」

 

 承太郎の解説に、 胸元のアラストールが完璧に補足する。

 

「オレの “祖先” も、 攻撃を繰り出すと同時に腕の関節外して

その 「射程距離」 を伸ばしたらしいが、 まぁソレと似たようなモンだな。

一流の遣い手ほど相手の間合いを見誤るコトァねぇし、 その精度も㎜単位になる。

その裏を掻いた巧いヤり方だぜ」

 

 ソノ、 スタンド使いと紅世の王、 両者が惜しみない称賛を送る

少女の繰り出した斬刀術。

 刹空拡刃(せっくうかくじん)虚現(きょげん)廻撃(かいげき)。 

『贄殿遮那・火琥流(ヒグル)ノ太刀』

遣い手-空条 シャナ

破壊力-A スピード-A 射程距離-C(直前で迫るように伸びる)

持続力-E 精密動作性-A 成長性-D

 

 

 

(先手は取った……! さぁ! ここからッ!)

 

 慮外(りょがい)に静寂、 しかし鮮烈に火蓋を切った戦闘の第一合と同時に

11体のトーガが雪崩れ打つように襲い掛かる。

 だがソレよりも速く、 シャナは振り抜いた大刀を反転させて元の掴みに戻し

火花を噴くバックステップでトーガ達の包囲網外側へと移動を開始していた。

 その巨体からは想像もつかない素早い方向転換でトーガの群は彼女へと向き直り、

無数に散開して逃げ場を封じながらその群青の腕を次々と伸ばす。

 

「――ッ!」

 

 視線の先にくねりながら現れた7本の爪撃をその俊敏な脚捌き、

更に屋上内部に設置されたガラスの支柱をも利用してシャナは躱す。

 空間に舞い散らばる、 キラメク硝子の破片(カケラ)

 防衛反応から無意識にその色彩へと一瞬視線が移るトーガを後目に

シャナは突如身を低く、 滑空するような体勢で一番近距離にいる2体へと挑み掛かった。

 一転、 追っていた者が突如追う者に、

「線」 が 「点」 と成ったその動きに対応できないトーガは

己の右斜め、 それもかなり下方から走った

死角の一撃に脇腹を深々と刺し貫かれる。

 

「ぜえええぇぇぇぇッッ!!」

 

 継いで湧いた灼熱の喚声と同時に大太刀の特殊能力が発動、

自在法で在る炎獣は何の抵抗も出来ず無へと還る。

 

(二つ!!)

 

(バカが!!)

 

 トーガ消滅の瞬間、 近郊と遠隔で二人のフレイムヘイズが

心中で対照的な声をあげたのはほぼ同時。

 先刻少女が大刀を突き刺した後、 消滅の余波を煙幕にして

背後へと回り込んでいたもう一体のトーガが、 その巨腕を既に撃ち落としていた。

 全力の刺突に伴い宝具も発動させた為、

躰が一時硬直する少女に斬撃を放つ余裕は無い。

 だ、 が。

 次の瞬間、 シャナの白い肌を無惨に引き破ると想われた群青の爪撃が

ソレを繰り出す 「本体」 ごと空間で停止した。

 

「……ッ!」

 

「――ッ!」

 

 その様子を遠間で見据えながら息を呑む無頼の貴公子と蒼炎の美女。

 舞い踊る紅い陽炎の元、 視覚的には少女が反射的に出した細腕一本で

巨腕を受け止めているようにも視える。

 だが違う!

 実際には少女の纏った黒衣の袖口、

その内側から伸びた無数の “鎖” が

眼前の炎獣を幾重にも巻き絡めているのだった。 

 

緋 ノ 鎖(ルージュ・バインド)ッッ!!』

遣い手-空条 シャナ

破壊力-なし スピード-シャナ次第 射程距離-C(5メートル前後) 

持続力-B 精密動作性-シャナ次第 成長性-A

 

 

 

 その炎で出来た灼熱長鎖の名が、 少女の尖鋭な声と共に鳴り響く。

 

「口が開けられなきゃッ! 喰おうと思っても喰えないでしょ!!」

 

 同時に強烈な力で引き寄せられたトーガが、

一刃の片手横薙ぎと共に胴体部からバッサリと両断される。

 後には、 霧塵の火の粉と化した群青が寂寥と共にたゆたうのみ。

 

「三つッッ!!」

 

 双眸に宿った黄金の光と共に、 喊声をあげながら少女は

残った炎獣の群に逆水平の指先を向けた。

 

「炎気の具現化か。 先代のモノとは較ぶべくもないが、 アノ若さでよくも」

 

「元々 “縄” で相手をフン縛るくれぇはヤってたからな。

ソイツを応用すりゃあ不可能じゃあねーだろ」

 

 ここまでは非の打ち所が無いほど、 戦闘を有利に進める少女の俊才に

老紳士と無頼の貴公子は落ち着いた声で語る。

 

(――ッッ!!)

 

 ソレとは対照的に彼女と対峙するマージョリーは苦々しく口中を噛み締めた。

 

「おいおいおいおい、 一体ェどーゆーコトだ!?

昨日と動きが全然違うじゃねーか!

アノ刀以外宝具を遣ってる様子もねぇし、

本当に昨日ブッ倒したあのガキンチョかよ!!」

 

 まるで別個のフレイムヘイズを視るような口調で、

腰元のマルコシアスが騒ぎ立てる。

 残るトーガはあと9体。

 戦局的にはまだまだ己の優位は揺るがないが、

心中に生まれた一抹の違和感が(おり)のようにマージョリーの感情をザワめかせた。

 

(……)

 

 その周囲の注目を一身に集める少女は、

一度刀身に(のこ)った蒼い火の粉を血飛沫のように振り払い

あくまで冷静にここまでの戦況を分析していた。

 

(一つ、 ハッキリしたコトがある……

戦闘が始まってこれだけ経つのにアノ女は、

他の戦闘自在法は疎か 「炎弾」 の一発も撃ってこない。

昨日みたいな 『極大焔儀』 を警戒して距離を取ったけど、

どうやらそれは杞憂(きゆう)だったみたいね)

 

 冴え渡る脳裡で紡がれる真理と共に、 その口唇にも澄んだ微笑が刻まれる。

 

(恐らく、 あれだけのトーガを自律(オート)指 導(マニュアル)

切り換えながら同時操作するのにかなり神経を削られるか、

或いは行使する力全体の消費量が大き過ぎるのかもしれない。

何れにしても、 『トーガが出ている限りアノ女は他の焔儀は遣わない』

否、 ()()()()!)

 

 導き出した結論に、 黄金の光を宿す灼熱の双眸が一際輝く。

 そして空間に響き渡る勇ましき鬨の声。

 

「さぁッッ!! どうしたの!! 倒したトーガはたったの3体!!

まだまだこんなモノじゃあないでしょう!!

来なさい!! “弔詞の詠み手” マージョリー・ドー!!

それともまさか臆したのッッ!!」

 

(チビジャリがッッ!!)

 

 再び己を刺す剣尖から告げられた言葉に、

軋ませた(まなじり)と共に美女は激昂する。

 しかし彼女に心中の二の言も与えぬまま、 シャナは森厳な言葉で再度告げた。

 

「来ないなら……()()()()()……行ってあげましょうか……?」

 

「ッッ!!」

 

 言うが速いか少女は両の足裏を爆散させ

滑車で吊り上げられるように大きくトーガ達の頭上、

ガラス張りの天井スレスレを黒衣をはためかせながら

反転した躰で天空を仰ぐように飛翔する。

 時間にして僅か数秒にも充たない帯空だったが

見上げる炎獣と異能者達の視線の元、

制服を取り巻く気流を全身に感じながら少女は双眸を閉じ、

何かの儀式で在るかのように心中の想いを反芻した。

 

(不思、 議……自分でも……驚く位落ち着いてる……

幾ら機先を制したとは言っても……余裕なんか生まれる相手じゃない筈なのに……)

 

 凄惨なる戦場の直中でまるで涅槃の境地へ達したかのように、

想い以外の存在はスベテ意味を無くし、 跡形も無く消え去った。

 

(それに……新しいチカラが……どんどん湧き上がってくる……!

今なら……誰にも……負ける気がしない……なんでも……出来る……ッ!)

 

 言葉の終わりと同時に、 先刻以上の気高き色彩を以て見開かれる、 真紅の灼眼。

 気づけば眼下、 己の着地点数メートル先にマージョリーが在り、

呆気に取られたような表情でこちらを見ている。

 無想の刻は終わりを告げ、 少女は再び戦闘神経をギリギリまで研ぎ澄ませた。

 

(でも……一体どうして……?)

 

 一抹の疑念と共に、 少女は躰を鋭く反って縦に廻転し美女に背を向けた体勢で

ガラスの大地へと火線を描いて着地する。 無論直前に大刀を円周状に振り廻して

周囲を牽制するコトも忘れない。

 

(アイツが……視てるから……?)

 

 背後のフレイムヘイズへの警戒を怠らず、

大刀を両手で構え直すシャナへ波浪のように迫る群青の群。

 その隙間から垣間見えた、 自分の一挙一動を見過ごすまいと光るライトグリーンの瞳。

 

(アイツが、 視てるからッッ!!)

 

 二つの瞳が交差した刹那、 疑念は確信へと換わり

まるで起爆剤のように己の裡で弾け燃え盛る闘気へと変貌した。

 紅蓮舞い踊る炎髪が一度吹雪のように火の粉を振り捲き

その威圧感に身構えるマージョリーを無視してシャナは再度足裏を爆散、

それぞれ三位一体となって迫る炎獣の波浪内一対に撃ち掛かる。

 標的は、 あくまでトーガ。

 この(あまね)く炎獣の群は、 交戦するフレイムヘイズの強力な攻撃手段で在ると同時に、

極大焔儀発動の 『原動力』 とも成っている。

 相手の自在法を “喰らう” という特殊能力も、

ソノ威力を最大限に高めるというコトを目的として造り上げられたモノ。

 故にソレをスベテ潰してしまえば、 後には片腕をもがれたも同然の自在師が残るのみ。

 如何に歴戦のフレイムヘイズと云えども 『元となる力が存在しなければ』

どれだけ強大な焔儀を修得していようとも遣うコトは出来ない。

 相手の得意手は、 奪える時即座に奪う。

 コレもまた、 凄惨なる戦場での定石。

 

「「「グウウウウウゥゥゥゥゥゥオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォ

ォォォォォォォォ―――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!」」」

 

 しかし相手のトーガもただ狩られるのを待つ脆弱な獣ではない。

 虚を突いた攻撃ならまだしも真正面から向かってくるシャナに、

相討ち覚悟で獰猛に襲い掛かる。

 少女の斬撃射程距離より遙か離れた場所からその巨腕を伸ばし

彼女を場に縫い付ける為、 上下左右更に斜交からの同時攻撃を仕掛ける。

 空を劈く強烈なスピード。

 如何なる 「達人」 と云えど、 遮蔽物もない場所で6方向から放射状に迫る爪撃を

一振りの刀のみで対処するのは事実上不可能。

 しか、 し。

 次の瞬間、 それぞれバラバラの軌道で振り下ろされたトーガ3体の腕6本が

少女の華奢な躰に着撃する刹那、 突如何かの法則に触れたかのようにスベテ斬り飛ばされた。

 

「「「――――――――ッッッッ!!!!????」」」

 

 爪撃の勢いで大きく弧を描いて宙を掻きそして放散する蒼き腕の束。

 その結果をもたらしたシャナの剣技が、 気流に揺らめく黒衣の間から正体を現す。

 左肩口を鋭角に突き出す 「車の構え」 から、

右手で大刀の柄頭を基点とし円環状に廻転させて生み出された

月輪(がちりん)の如き捲刃(けんじん)

 ソレが空間に無数の刃紋を描き、 円形チェーンソーのように

襲い来るトーガ達の腕をその勢いも併せて瞬時に削断したのだ。

 本来相手の武器、 或いはソレを振るう腕や触手の 「破壊」 を

目的として練り上げられた反 撃(カウンター)技。

 

「だあァァァァッッッッ!!!!」

 

 そして両腕をもがれ達磨(だるま)と化した相手の喉元に

無慈悲の一尖の突き立てる完殺の交差刺刀術。

 疾風剥迅(しっぷうはくじん)惨空(ざんくう)叛牙(ほんが)

『贄殿遮那・火車ノ太刀・朔斗(ザクト)

遣い手-空条 シャナ

破壊力-A++(相手の力により増減) スピード-A 射程距離-D

持続力-D(相手の力により増減) 精密動作性-A 成長性-B

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 その脇で瞬速の片手逆斬りの許、 一刀両断にされたもう一匹のトーガが

半身同士を上下にズラして立ち消える。

 最後の一匹は惜しくも逃したが、 一つの剣技で二体を屠り一体を

再起不能に出来たのは秀逸の戦果。

 

「「「「「「「グウウウウウウゥゥゥゥゥガアアアアアアアアアアアアア

ァァァァァァァァァァ――――――――――!!!!!!!!!!」」」」」」」

 

 少女は無傷のままほぼ半数の戦力を殺がれたトーガ達は

宿主の心情をそのまま現すかのような狂声で吠え、

最早策も何もない数の暴力のみを(よすが) とし

残り7体が蒼い霹靂と成って一斉に襲い掛かった。

 

「ブッ殺せェェェッッッッ!!!!」

 

「ッッ!!」

 

 神器から魔獣の形容で狂猛に叫ぶ王の声に、

一瞬速く狂熱から醒めた美女が咄嗟に口を開く。

 しかしその展開を予め読んでいたかのように

逆水平に構えた少女の指先が差すと同時に、

決然と告げられる言葉。

 

「おまえは次にッ! “おまえ達迂闊(うかつ)にそいつに近づくな!” と言う!!」

 

「おまえ達!! 迂闊にそいつに、 ハッ!?」

 

【挿絵表示】

 

 

 出した言葉を否定するように、 ルージュで彩られた口唇に手を当てるマージョリー。

 意識の虚を完全に突かれる一瞬の喪心。

『遠隔操作能力』 の法則として、

宿主の心情がそのまま伝播しトーガ達もソレに連動して止まる。

 その隙にシャナは、 大刀を鉄梁(てつはり)に突き立て己の身を低く

そして掌中に強大な力を集束させながら焔儀発動の構えを執っていた。

 

(えん)(がい)(ごう)……!」

 

 凝縮していく粒子線状の炎気と共に、

大気を呑みこむ竜 顎(りゅうあぎと)の如き形容(カタチ)で折り曲げられた

指先に灯る、 真紅の炎。

 

( “アレ” は……ッ!)

 

(むぅ……!)

 

 その構えと色彩に、 青年と魔神が瞠目したのはほぼ同時。

 継いでソノ焔儀が真正面を向いた少女の視線の先へ、

古の灼絶流式名と共に爆裂する。

 

 

 

 

炎 劾 劫 煉 弾(タイラント・フィフス・フレア)ッッッッッ!!!!!』

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 咆吼と共に開いた竜の口から、

3つの巨大な炎弾が正面、 広角、 そして頭上から強襲し

その凄まじいスピードに対応出来ないトーガは着弾と共に炸裂し、

天蓋を突き破った火柱に呑み込まれ跡形もなく炎蒸した。

 

「アレほど巨大な火球を一度に3発も撃ち放つとは……

しかもそれぞれ軌道を(たが)えて……

また、 恐るべきフレイムヘイズを仕えたものだな。 アラストール」

 

焔儀の放つ灼光に風貌を照らされ驚愕するラミーを後目に、

 

「本当は5発撃つんだ」

 

正鵠(せいこく)には10発だがな」

 

スタンド使いと紅世の王が歪みない口調で返す。

 

「しかし、 幾らアラストールが遣ってみせたとはいえ

たったの2日で “モノ” にしやがるとはな。

オマケにジジイの “フェイント” まで途中に織り交ぜて。

アイツ、 一体ェどこまでイキやがる……ッ!」

 

 湧き起こる覇気を抑え切れないといった表情で、 承太郎は意図せず拳を握る。

 普段の弛まぬ訓練の成果も在るだろうが

明らかにソレを超えて天井知らずに騰がって行くシャナの能力(チカラ)を呼び水に、

己の血も熱く(たぎ)った。

 

(やれやれ、 柄にもなくオレの方まで(うず)いてきやがった……

カッコなんぞつけねぇで、 やはりオレがヤるべきだった、 かな……?)

 

 言いながら無頼の貴公子は、 少しだけ口惜しそうな微笑と共に煙草を銜える。

 

「残りあと4体ッッ!!」

 

 梁に突き立った大刀を前に、

黒衣を叩きながら左手を振り翳した少女の喊声が空間に轟いた。

 

 

←To Be Continued……

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。