STARDUST∮FLAMEHAZE 【完全版】   作:沙波羅 或珂

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『DARK BLUE MOONⅩⅩⅠ ~Breathless Night Extreme~ 』

 

 

 

【1】

 

 

「調・子・に・乗るなァッッ!! 若年のフレイムヘイズがァッッ!!」

 

 少女の喊声を打ち消すように美女の叫声も空間に轟いた。

 同時に、 残ったトーガ全てが瞬時に元の存在の力へと還り

蒼き螺旋を渦巻きながらマージョリーの躰へと戻っていく。

 その表情に最早微塵の余裕も無い。

 己が全霊を以て(たお)すべき敵だと、

捲き起こる狂暴な感情と共に美女は理解した。

 

(とうとう “クる” か……!)

 

 一方的に戦局を押し進めていたシャナだが、

美女の裡で練り上げられそして集束されていく

炎気の凄まじさに想わず逡巡する。

 そう、 これまでがどれだけ優勢で在ろうと

ソレはすべて 「前哨戦」 にしか過ぎない。

 どんな不利な戦局だろうと、 ソレを一撃で覆してしまい得る

極大なる “焔儀” を彼女は持っている。

 従ってその 「元」 を全て封殺してしまおうとしたシャナだったが、

それを易々と完遂させるほどフレイムヘイズ “弔詞の詠み手” は甘くない。 

 しかもスタンド能力と違いどれだけトーガを消滅させようと

ソレを行使する 「本体」 へのダメージは一切無い。

 故にこれから初まる、 互いが全力で撃ち放つ

壮絶なる焔儀と焔儀の果たし合いを征した者こそ

この戦いの勝者となるであろうコトを視る者全てが認識した。

 

「う、 む……ここまでは順当に進めてきたが、 流石にコレは無謀に過ぎないか?

炎の戦闘自在法では、 弔詞の詠み手の方に分が在るのは否めぬだろう。

アラストール、 空条 承太郎」

 

「……」

 

「……」

 

 ラミーにそう問われた両者は幾分視線を鋭く、

しかし決して引くコトなくマージョリーと対峙するシャナを真っ向から見据える。

 胸中に懸念や危惧が無いと云えば嘘になるが、

それよりも篤い彼女を信任する気持ちが二人を無言へと至らせた。

 何も言わないその代わりに、 己の瞳は絶対に逸らさない。

 疵もまだ完全には癒えていない躰で遙か格上の者と一歩も引かずに戦う

少女の誇り高き姿を、 スベテ焼き付けておくのが己の責務であるように感じていた。 

 そし、 て。

 

 

 

 

蒼 蓮 拾 参 式 戒 滅 焔 儀(ダーク・フェルメール・ブレイズ)ッッ!!”

 

紅 蓮 珀 式 封 滅 焔 儀(アーク・クリムゾン・ブレイズ)ッッ!!”

 

 

 

 

 

 突如、 均衡が破れる如く、 二人のフレイムヘイズが炎を振り捲きながら

己を司る焔儀領域の御名を吼える。

 同時に少女は眼前で口唇を埋めるように、

美女は天空へと掲げるようにそれぞれ両腕を交差し、

その先に各々が発動させる焔儀の自在式印を結ぶ。

 深紅と深蒼。

 互いの全身から異なる色彩の火吹きが迸り、

既に己が裡で完成した焔儀を全力で以て発動させる為の体勢へと移行する。

 シャナは両手に集束させた炎気を前に突き出す、

マージョリーはグリモアを繋いだベルトごと振り乱す形容で、

それぞれ相手の眉間に銃口を突き付けるように差し向ける。

 そして空間で爆砕する、 両者が全力で以て刳り出す “流式” 名。

 

 

 

 

 

冥 咬 覇 貫 號 獣 架(グリード・クロイツ・エスクライド)ッッッッッッ!!!!!!】

 

炎 劾 華 葬 楓 絶 架(レイジング・クロス・ヴォーテックス)ッッッッッッ!!!!!!』

 

 

 

 

 両者が()り出したのは、 奇しくも同じ炎架型の焔儀。

 しかし一方は高架形であるのに対し、 美女が刳り出したモノは

その4つの尖端に魔獣の爪をギラつかせる背徳の鉤十字。

 そしてその本質は、 射程範囲こそ単体に留まるが

()()()()()()()、 マージョリーが携える数多の焔儀の中でも最強の威力を誇るモノ。

 炎気と炎気が噴き搾り合い、 熱気と熱気が灼け荒び、

大地と空間すらも融解させる程の壮絶な焔儀戦では在ったが、

コトこの場に至ってはその総合力に於いて勝敗の趨勢は明らかで在った。

 いつかのスタンド戦と同じく、 流式を撃ち放った後も少女と美女は

ソレに炎気を集束して送り込み続け相手の存在を圧倒する為に力を振り絞る。

 だが、 同属焔儀同士の膠着状態は長く続かず、

次第次第に少女の撃ち放った高架の方が()され始めその形容も歪めていく。

 

「やはり敵わぬか……! なれば……ッ!」 

 

 及ばずながら加勢を試みようと進み出るラミーを、 承太郎の手が制す。

 

「空条 承太郎!? しかしっ!」

 

 戦士としての誇りがそうさせるのか、

だがこのままでは少女が灰燼と帰すのは時間の問題の為

老紳士は疑念を呈する。

 だが示された無頼の貴公子は、 ()()()()()()()()諮問(しもん)をシャナに差し向けていた。

 

( “狙い” は、 確かに面白い……だが果たして、

『そんなコト』 が本当に可能なのか? シャナ。

リスクを負って無理に発動しても、 最悪 「相殺」 で終わっちまうぜ)

 

(むう……)

 

 彼の胸元で、 被契約者で在るアラストールも同様の心情で彼女を見つめる。

 だが次の瞬間、 戦闘に於いて極限まで研ぎ澄まされた彼の 【洞察力】 が、

シャナの真の “狙い” を看破した。

 一方的に少女の放った炎架を圧搾しながらも、

自身は(きず)一つ付いてない蒼き鉤十字、

その頑強さ、 (すなわ) ち 『持続力』 を原拠として。

 

(そうか……! ()()()()()()()……ッ! なら、コレはヤれる……ッ!)

 

 青年が確信と共に瞳を見開いたのと同時に、

その表面中心部の紅玉にも無惨な亀裂が走り

最早形容(カタチ)を保つのが精一杯となった灼熱の高十字架(ハイクロス)

を認めた美女の口唇に、 冷酷な微笑が浮かぶ。

 ソレを受けグリモアを透して炎気を送り込みながらも、

裡では存在の力をより強力に収斂(しゅうれん)させ焔儀を粉微塵に消し飛ばすと同時に

その術者をも焼き尽くす為の終撃を密かに()める。

 

「――ッ!」

 

 その潰滅寸前の焔儀を前に、

美女の力の流れに変化が生じたコトを感じ取ったシャナは、

すかさず己の裡で 『既に練り上げていた力』 を両手に集束させた。

 

「――ッッ!!」 

 

 ソレと同時に、 両腕の皮膚が制服と共に裂け鮮血が舞い散るが

少女は苦痛の色も僅かに、 その体勢は微塵も崩さない。

 彼女の躰を支えるのは不屈の精神力、 そして背後から確かに感じる視線。

 その存在が、 少女に限界を超える力を、 魂の叫号と共に湧き立たせた。

 

(私の “男” が視てるのよ……ッ! 私にカッコつけさせてよ……!

みっともない所なんて……絶対視せられないのよ……ッ!)

 

 美女か、 或いは己か、 少女は瞳に宿る黄金の光と共に咲き乱れる血華の許、

“もう一つの” 焔儀発動の体勢に入る。

 左手に無数の紋章と紋字を鏤める小型の自在式法陣。

 右手に極限まで炎気を集束させ “閃熱” と化した灼紅の凝塊。

 ソレを光の矢を(つが)えるように左を前へ、 右を引き絞るように正拳へと握る。

 

(やれ……想いっきりブチかませ……シャナ……ッ!)

 

 両腕を朱に染めた、 無惨ながらも美しきソノ姿を

己がコトのように凝視する無頼の貴公子。

 

「ハアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」

 

 その彼の心中に呼応するかのように、 湧き熾る灼熱の喊声。

 

(オレはおまえを……見護って……いるぜ……)

 

 遠く離れていても近くに感じている存在を背に、

『スタンド使い』 と “フレイムヘイズ” の精神(こころ)は、

今再び一つと成る。

 その互いの双眸に宿る黄金の光で、 『運命』 さえも(つらぬ) くように!

 そして背後に在る最愛の存在と共に、 同時に拳を撃ち出して炸裂する新生の流式名。

 左手で創り出した自在式法陣に、 右手に宿らせた閃熱の凝塊を叩き込み

その威力を増幅させて射出する強大焔儀。

 星焔融合(せいえんゆうごう)彗星(すいせい)灼烈(しゃくれつ)

 天壌の流式(ムーヴ)

焔 劾 星 吼 煉 灼 翔(プロミネンス・ヴァースト・インフェルノ)ッッッッッ!!!!!』

流式者名-空条 シャナ

破壊力-A++ スピード-A++ 射程距離-B(最大50m)

持続力-B 精密動作性-D 成長性-AA

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 音速で撃ち出された正拳の先から、 それ以上の速度で閃光のように疾走(はし)る灼熱の星吼。

 

「――ッッ!?」

 

 死に体と想っていた者の、 突如の造反に美女は炎気を放出しながらも双眸を見開く。

 想像だにしえない、 そして、 ()()()()()()()()法儀を、

少女が敢行したその事実に。

 そう、 数多の高度な自在法を携えるマージョリー程の “自在師” で在っても、

強力な焔儀を間を置かず 『連続して』 撃ち放つコトは出来ない。

 スタンド能力と近似して、 フレイムヘイズも紅世の王で在っても

原則として 『一度に撃てる焔儀は一発だけ』

 故にソレで相手を討滅出来なければ、

当然また一から自在法を編み直さなければならない。 

 しかし目の前の少女は、 一つの焔儀を生み出すその過程の最中

もう一つの焔儀も平行して、 二つの自在法を 『同時に』 編み上げていたのだ。

 ソレは、 努力や修練、 経験という領域を超えた生まれついての才能、

天倫(てんりん)” の域に既存。

 美女がいくら少女を上回る百戦錬磨のフレイムヘイズだとしても、

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 無論ソレを発動する際の躰に対する反動は焔儀を二発撃ち放った時の比ではなく、

更に複雑に錯綜する力の制御に伴う精神の消耗も甚大なモノとなる。

 己の超人的な恢復(かいふく)能力すらも犠牲にして、

一切の迷いなく無謀とも云える法儀を敢行した少女。

 しかし!

 空条 承太郎と空条 シャナ。

 素質は潜在の中で眠っていたとしても、 その何れの存在が欠けたとしても、

ソノ 『能力』 を目醒めさせるコトは不可能だっただろう。 

 そしてソレこそが、 昨日(さくじつ)アラストールの刳り出した、

歴代フレイムヘイズの中でもごく僅かしか()し得なかった

紅世至宝の究極焔儀 真・流式(ネオ・ムーヴ) の “骨子” と成る儀法。

輪 流 式(デュアル・ムーヴ)』 

 炎の形容を超え、 純粋なエネルギーの塊と化した閃熱の光芒が

崩れかかっていた灼熱の炎架を爆発的に後捺しする。

 一発一発の焔儀では遠く及ばないが、 二つの焔儀を 「結合」 させれば

如何にマージョリーの最強焔儀と云えども()()()()()()凌駕し得る。

 やがて狂暴な炎を噴き散らす蒼き鉤十字はシャナの放った二つの焔儀の圧力に

捺されて大きく(ひしゃ) げ、 そのまま放った勢いを逆方向に変換してマージョリーの許へと

蜷局を巻いて戻ってきた。

 

(な、 に――ッッ!?)

 

 グラス越しの視界を埋め尽くす、 紅蓮と蒼蓮の極彩色。

 彼女の美貌を焔儀の放つ灼光が一度鮮やかに照らした。

 

 

 

 

 

ヴァッッッッッッッグオオオオオオオオオオオオオオオオオ

ォォォォォォォ―――――――――ッッッッッッッ!!!!!!

 

 

 

 

 

 虹彩を灼く焦熱と、 鼓膜を劈く大爆裂音が因果の流れを無くした

美術館全域とその周辺に響き渡る。

 継いで屋上を覆うガラスの大天蓋が風に散る花片のように次々と割れ、

内部に組み込まれた鉄骨も飴細工のように融解して捻じ折れ、

足下の強化ガラスにも夥しい亀裂が走った。

 構造の重心が著しく切り替わった為、 グラグラと不安定に揺れる足場。

 

「終わった……か……」

 

 その後に吹き荒ぶ破滅の戦風に痩身を包まれ、

自分達の直前にまで走ってきた亀裂を

ステッキの先で確かめながら老紳士が呟く。 

 ラミーがそう判断するのも無理はない、

先刻の一合で美術館の一画が

その下の階層も含めて跡形もなく吹き飛んだのだから。

 正拳を突き出した少女の眼前に巨大な焼煙が茫々と立ち籠め、

開けた空間から外の風景が剥き出しになり、

封絶の放つ蒼き火の粉と冷たい気流が入り込んで来ている。

 

「やれやれ、 全くブッ飛んだスケールの判断と行動をするヤローだ。

相手の “(ワザ)” までも利用して、 テメーの炎の威力を上げようってんだからな。

想いつきはしてもフツーは実行しねぇ。

これから先、 一体どんだけ成長するか解らねぇな」

 

 荒涼とした空間に無頼の貴公子の美声が流れる。

 継いでその胸元から荘厳な男の声。

 

「うむ。 よもや “アノ法儀” までも、 この場にて完遂させるとはな。

まだ尚早だとは想ったが、 我の想像を超えてあの子は夙成してゆく。

或いは、 過日(かじつ)の貴様と花京院の “(ワザ)” が、 余程腹に据えかねたのかもしれぬな」

 

「アン? 何でオレと花京院が出てくンだよ? 関係ねーだろ」

 

「む……あくまで忖度(そんたく)での話だ。 深く詮索するでない」

 

 シャナの想像を超える成長に想わず口が滑ってしまった

炎の魔神は厳格に己を諫める。

 

「ま、 ともかく後ァブッ壊れた場所を元に戻して終いだな。 いこうぜ」

 

「うむ」

 

 アラストールを促し片手をポケットに突っ込んだまま

シャナの傍へと歩み寄ろうとする二人の男。

 しかしその足は僅か数歩足らずで止まる事となる。

 

「マジ、 か……?」

 

「まさか、 な……」

 

 各々そう呟き気流に霧散しつつある焼煙の中。

 二人よりも早く近距離に在る少女は既にその存在に気づきつつある。

 足下に突き立てた大太刀を再び正眼に構え、 警戒心を切らしてはいない。

 その刹那、 薄くなった煙幕の向こう側から群青の牙が飛び出してきた。

 

「――ッッ!!」

 

 咄嗟に身を翻し廻り込みながら避けた少女は、

そのまま大刀を腰下から斬り上げ魔獣の頭部を両断する。

 

「チッ……!」

 

 中空に刎ね飛ばされたその首は宝具の特殊能力で掻き消える刹那、

忌々しそうに舌打ちした。

 やがて、 気流に捌ける焼煙の中から朧気に現れるシルエット。

 不完全な形容だったとはいえ、 3つの焔儀の集合体を直に喰らって尚立ち続ける

蒼炎のフレイムヘイズ、 『弔詞の詠み手』 マージョリー・ドー

 流石にダメージは受けたらしくその嬌艶なタイトスーツは爆炎でズタボロになり、

所々が灼き裂けて白い素肌が露出している。

 だが戦意と殺意は微塵も衰えるコトはなく、

寧ろ先刻以上の急迫を滲ませ燃え滾っていた――!

 

 

←To Be Continued……

 

 

 

 

 

『後書き』

 

はい、今回「挿絵」が少ないかもですが

良い『絵』が創れませんでした。

半端なポーズなら載せない方がマシです。

ってか本来『小説』ってそーゆーモノですけどね。

『絵』はあくまで【オマケ】なのです……('A`)

 

 

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