STARDUST∮FLAMEHAZE 【完全版】 作:沙波羅 或珂
【1】
紅蓮の双翼と流星の流法を併せ蒼炎のフレイムヘイズを
手にした大太刀で完全に討ち果たした少女は、
そのまま相手を追走する事を後回しにし空中に佇んだまま視界を巡らせた。
(!)
目当ての人物は気流と共に開ける眼下ですぐに見つかる。
ホールの外壁にスタンドの指をメリ込ませ、その作用で空中に固定される
カタチになった承太郎が片手をズボンに突っ込んだままこちらを認め、
立てた親指を掲げていた。
(タクシーじゃないんだから)
シャナはちょっとだけムッとした表情のまま滑空し彼の傍へと翔け寄る。
顔は不機嫌だが、 心中はソレとは全く裏腹なもの。
コイツの協力がなかったら、 フレイムヘイズの使命は果たせなかった。
ラミーを助ける事も出来なかったし、 アノ女に勝つ事も出来なかった。
でも抱いた想いは、 何よりも強い気持ちは、 感謝ではなく、 誇り。
自分達の成すべき事を、 二人で共にやり遂げたという掛け替えのない充足感。
(やっぱり…… 最強、 よね……私達……)
心の中でそっと呟き、 シャナはその小さな手を彼へと差し出した。
「おう」
精悍な微笑と共にスタンドの手を伸ばす無頼の貴公子に、
「
と紅髪の美少女は頬を朱に染めながらも確固たる口調で言う。
「……」
チト強い力で掴み過ぎたか? と己を訝りながら承太郎が手を掴むと同時に
紅蓮の翼が煌めいて再び上昇を始める。
頬を撫ぜる風と共に靡く学ランの裾。
大の男が少女に手を引かれ飛んでいるという少々みっともない姿だが、
他に見ている人間もいないのでまぁイイだろう。
「良い 『能力』 じゃあねぇか、 ソレ」
何とはなしに承太郎がそう言うのに対し、
「欲しがっても、 あげられないわよ」
シャナが面映い口調で無愛想に応じる。
「フッ、 今度ジジイのヤツでも乗っけてやったらどうだ?
驚きすぎて心臓でも止めなきゃイイけどよ」
「うるさいうるさいうるさい。 本当に止まっちゃったらどうするの!」
戦闘後の弛緩した空気の中、 取るに足らない会話を混じ合わせながら
シャナは高翔を続ける。
「でも、 折角誉めてもらったのに悪いけど、
正直、 あんまり良いイメージじゃないのよね。 コレ」
「そーなのか?」
折角発動した新たなる 『能力』 に対する
シャナの意外な感懐に承太郎は問い返す。
「そう、 だってイヤでも思い出すもの、 あンの “バカ犬” ……!」
シャナはそう言って、 何故かその口元を苦々しげに軋ませる。
「……犬? そいつも紅世の徒か? 飛ぶのか?」
「砂の羽根を拡げて、 グライダーみたいに滑空するだけだけどね。
でも出したり消したりは自由だから捕まえずらいったらありゃしない。
って、 うるさいうるさいうるさい! 聞くんじゃないッ!」
「オメーが勝手に喋ってたんじゃあねーか」
そう言って瞳を細める承太郎の、
未だ知らない 『スタンド使い』
ソイツに食べようとしていたメロンパンを取られ、
封絶の発動したニューヨークの街を追いかけ回したコト等
格好悪くて話せるワケがない。
そこに。
「今度こそ、 本当に終わったようだな」
薄い蛍光のような光を円形状に纏ったラミーが端然と宙に浮き、
ステッキの柄に両手を添えて目の前に現れた。
「何だ? アンタも飛べんのか」
拍子抜けしたような口調で呟く承太郎に、
「イヤ、 単に浮いているに等しい状態だ。
先刻の君の機転には心から感謝している。
『今のままでは』 編むのに少々時間を要するのでな」
微笑混じりにラミーはそう告げ、落ち着いて話をする為ステッキの先で
外周に設置された螺旋階段を差した。
「……アイツ、 これからどうするんだ?
今は兎も角、 生きてる限りアンタを追ってきそうな、
恐ッろしい “執念” を感じたぜ」
眼下でスローダウンのように落下している創痍の美女を、
楕円状の踊り場で一瞥しながら承太郎は先刻の惨状を想い起こす。
「ふむ、 確かに畏るべき自在師、 そして懼るべきフレイムヘイズだ……
が、 今は当座の危難が去った事を喜ぼうと想う。
何よりアノ躰では、 当面私を追うのは不可能であろうしな」
「これから、 一体どうなるの? アノ人」
その真紅の双眸を細めながら、
先刻まで互いに
シャナが憂慮したような口調で問う。
「あの者の、 紅世の徒に対する凄まじい迄の憎しみ。
“過去” に何が在ったかは窺い知らぬが……
ソレはあの者自身が疵を受け入れ、 そして乗り越えて往くしかない。
“蹂躙” がそう決したように、
我等に出来るのは、 その者が現世と紅世の 『
後は、 あの者が自分自身で
「アラストール……」
厳正とした口調に、 シャナは押し黙るしかなくなる。
中途半端な同情や感傷は、相手にとっても自分にとっても
罪悪でしかない事は、 少女も充分過ぎるほど解っていたから。
そのシャナを後目に欄干へもたれ掛かってマージョリーを見据える無頼の貴公子は、
(……どうなるか? か。 まぁ、 どーにもならねぇな……)
やり場のない気持ちを抱えながら心中で静かに呟いた。
←To Be Continued……
『後書き』
はい、少し短いですが、この後の展開が
【二部のクライマックス】なので一端切ります。