黄金律これくしょん   作:満員座・スノー

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#9 後悔は罪を映す

 

 

 

長門「…随分な余裕ぶりだな?この長門も由良のように欺けるとでも思っているのか!」

 

長門の目は不信感で積もっている。その目に映る暗い視界には、ただ目の前の鎧騎士が危険だということのみ。

 

 

 

褪人「…貴公」

 

彼女…長門は必死なのだろう。

生きて、仲間を守り…何より姉妹の陸奥のことをよく気にかけている。それ故に…。

 

長門「何だその腑抜けな態度は…!今更怖じ気づいt「もうやめなさい長門!!」

 

陸奥は声を張り上げて長門を静止した。

 

長門「…陸奥?」

 

陸奥「これ以上この人を疑って何になるの!?由良や秋月、他の娘達を見てて気付いたわ…もう、どれだけ目を背けようとしても出来ないの!!」

 

長門はまさか、陸奥にさえそのようなことを言われるとは思ってもいなかった。なぜ皆この男に騙されていくのか、すぐにこちら側に引き上げねば。

 

長門「し、しかしこれはお前や皆のために…!」

 

陸奥「ええ分かってる!分かってるわよ…」

 

 

陸奥「…私もそう思ってた。だから貴女を見ると、そんな自分が嫌になるの!!これだけしてもらっても優しさに気付けない自分に…!!」フルフル

 

陸奥は下を向いたまま、拳を握りしめ震わせていた。それは長門への怒り…いや、自分の重ねてきた罪に耐え切れないでいる衝動か。

 

 

 

陸奥「もう嫌ぁッ!!!」ダダダッ

 

ガチャンッ!

 

長門「お、おい陸奥!?待っ…」

 

陸奥はそのまま部屋を飛び出して何処かへと行ってしまった。

 

 

長門「クッ…!」ダダダッ

 

長門も一度此方を睨みつけてから出ていった。

 

 

 

褪人「…こ、これは……」

 

瑞鶴「驚いたわ…まさかあの二人が、ねぇ」

 

翔鶴「だ、大丈夫でしょうか…」

 

大淀「私が探してきた方が……」

 

褪人「いや、大淀には秋月に何かあった時に対応してもらいたい。だからここは私が…しかし秋月に側にいるといった反面…」フムム

 

翔鶴「では私と瑞鶴で艦載機を飛ばして捜索します。まだ数機は残っていますから」

 

瑞鶴「……」

 

翔鶴「瑞鶴?」

 

瑞鶴「あ、う、うん!任せて、すぐ見つけるから」

 

褪人「ありがとう二人とも。ではしばらくここで様子を見ることにするか」

 

しかし陸奥…そこまで思い詰めていたのか。

あれは怒りとも悲しみとも取れるような形相をしていた。ひょっとしたら…彼女は心の内でずっとあんな様に嘆いていたのかもしれない。

 

 

 

…………

 

 

捜索を始めて暫時。

秋月を起こさないためにも、医務室は静で包まれている。

 

褪人「……」ウトウト

 

その雰囲気に流されたのか、褪せ人は眠気が回っていた。昨日から起き続けていた影響もあるだろう。

 

 

瑞鶴「! み、見つけた!北方面の近海に複数の反応」

 

大淀「近海?ど、どうして海に出て…」

 

瑞鶴「待って。海の方に深海棲艦…長門さんが戦ってるわ!」

 

翔鶴「大変、私達もすぐ向かわなきゃ…!提督…は、お休みになられてますね」

 

 

褪人「…グガー」…zzZ

 

一方、周りの焦り様に関わらず褪せ人は寝ていた。早く起きろの時間だ。

 

大淀「て、提督も起きてくださ「待って。大淀さん」…え?」

 

瑞鶴「そのまま寝かせておいてあげて」

 

大淀「ど、どうしてですか」

 

 

 

瑞鶴「…だって。私達、提督さんにあんな酷いことしたのに今更助けを請うなんて、できないよ」ウツムキ

 

ヒュオオォォォ……

瑞鶴は切ない顔をして俯く。

 

強情な彼女とて、いつも冷静だった陸奥のあんな様子を見ては気付くこともあったのだろう。

 

大淀「で、ですが…ッ!?」

 

翔鶴「そうね…瑞鶴の言う通り。これは私達の問題だかr…瑞鶴後ろッ!?」

 

瑞鶴「翔鶴ねぇ…今はそんな気分じゃな…」クルッ

 

『……』ジー

 

瑞鶴「きゃあッッ!!!?」ズザッ

 

瑞鶴は振り向くと、思わずその黒いフサフサの毛に顔をうずめてしまった。そして驚きのあまり尻餅をついてしまう。

 

 

『…ヒヒーン!』ゲシッ

 

褪人「ゴフッ…ガァー…」zzZ

 

褪せ人の相棒である、霊馬(れいば)"トレント"は褪せ人に顔をグッと近づけ鼻でつついた。すっかりお怒りのようである。

 

褪せ人を最大限信頼し親しいこの馬とて、ここまで存在を忘れられていてはそりゃ怒るだろう。

後の褪せ人曰く、"だ、断じて忘れていたわけではないのだが…喚ぶタイミングがなくてだな…。"というわけだが。

 

 

大淀「う、馬ですか?ど、どうして…」

 

トレ『……』スッ

 

トレントは脚を曲げ、翔鶴、瑞鶴の方を見る。

 

瑞鶴「いたた…の、乗れってこと…?」

 

大淀「きっとそうですよ。ここは私に任せて、お二人は早く長門さん達の元へ!」

 

瑞鶴「分かったわ。提督さんのかな…よ、よろしく?」

 

翔鶴「」ポカーン

 

瑞鶴「翔鶴姉も早く!」グイッ

 

翔鶴「えっ?あ、ちょっと引っ張らないで乗馬なんて初めてで心の準備が」

 

トレ『ヒヒーン!!』バッッ!

 

翔鶴「キャアアァァァッ!!?」

 

二人が乗るとトレントはすぐさま立ち上がり、駆けていった。普段屋内で喚ばれることを拒んでいるのにも関わらず、今回ばかりは鎮守府の広さが幸をもたらしたか、凄まじい高速である。

 

 

ハヤスギルワァァァァ……!!!

 

 

大淀「無事に帰ってきてくださいよ…皆さん」

 

秋月と褪せ人を見守る大淀は、静かに目を閉じて無事を祈るのだった。

 

 

 

 

──────────

 

 

―鎮守府近海、港―

 

ザァァァァ……

 

◯二◯◯を越えた深夜の真っ最中。

暗闇の空からは雨が降り始め、近海にも関わらず不穏な雰囲気の荒々しい波が押し寄せている。

 

 

陸奥「………」

 

私は疲れ切ってただ黒い曇り空を見上げていた。目に染みるのは雨かな。いえ、涙かしらね。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

長門『陸奥!!この状況はどうなっているんだ!?』

 

陸奥『なが、と…?』グスッ

 

 

長門が初めて鎮守府に来た時、荒んだ姿の私達を見て衝撃を受けていた。それが消えた提督の仕業だと分かると、あの子はとてつもない怒りに燃えていた。

 

そして…落ちぶれた私達、舞鶴鎮守府の指導者として立て直してくれた。何より、失った心を取り戻させてくれた。

 

 

 

 

…でも、代償は大きかった。

 

 

憲兵『前提督失踪につき、これより舞鶴鎮守府は呉の管轄となる!艦娘は全員持ち場に戻るように』

 

ザワザワ… ソンナ… モウイヤァ…!

 

長門『ふざけるな!!傷ついた子達を見て何も思わないのか?あんな状態で再び提督が着任したらどうなるか分かるだろう!?』

 

憲兵『これは決定事項だ』

 

長門『黙れ!断じて認めるか!!』ドンッ

 

憲兵『ぐわっ!』

 

憲兵2『貴様、何をする!』

 

 

長門『我々はこれ以上、軍には屈しない!!舞鶴は提督不在のまま活動を続行する!』

 

長門はそう宣言した。まだ立ち直れていなかった艦娘達にとって勇気ある進言だった。

 

それから憲兵達もいつの間にか姿を消し、大本営から支援が途切れた。

周辺地域から蔑まれるようにもなった。

時々駆逐艦の子達が物を盗んできて、それを囃し立てる子もいた。

 

そうして私達はだんだん孤立していった。でも当時、そんなものは何も怖くなかった。逆に嬉しいくらいだった。ここは私達だけの楽園なんだ、って。

 

 

 

監視の目も無くなったことにより長門率いる一部の娘達による暴動は増長していき、一部の艦娘と決裂することになった。

特に、本来の艦娘としての使命、それに提督を重んじた大和型姉妹とは大きく道を違えたわ。

 

長門と大和が第三倉庫で衝突した時は大きな損害が出た。資材も高速修復材も殆どが消し飛んだ。

あの事件を機に、姉妹や友達で派閥を分かれていった子達も多かった。大泣きした子もいた。また心を壊してしまう子だっていた。

 

 

陸奥『………』グッ

 

そこでもう気付くべきだったと思う。

でも私はそんなあの子のやり方に賛成し続けた。どこか違和感を感じながらも、そのやり方で私達は確かな安静を得られていたのだから。

 

長門のせいなんて、絶対に思わない。

むしろ私が言ってあげなきゃいけなかった。やり過ぎなんじゃないかって。今ならまだやり直せるって。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

…それで結局、自分が気付けたのはいつ?

あの新しい提督が散々甘やかしてくれるまで、何も見えてなかったじゃない。

 

陸奥「…私、ほんと…馬鹿ね」

 

 

遠くを眺めると、ぼんやりと黒い影がいくつか見えた。

 

深海棲艦…ちょうどいいじゃない。

 

陸奥「もう…一思いに撃ってよ」バッ

 

長門を止められるのは私だけだったのに。そうはしないで、安定に逃げ続けて…皆を苦しめた。

結果的に私もあの前提督とやっていることは同じなのよ。

 

 

…そんな屑に、生きる価値なんて無いじゃない。

 

 

私は両手を広げ、その砲撃の雨を受け入れた。

 

陸奥「…ッ、う、ぁっ…!」

 

その砲撃の雨は思ったより痛かった。

私を罰するための、無数の鋭い砲弾で身体を抉られる激しい痛み。

 

…でも、これでいいの。

ごめんなさい…長門、みんな…。

 

 

 

 

ドオォォォォォォンッ!!!

 

長門「陸奥!!!」ダダッ!

 

…あの子の声が聴こえた。

砲撃の煙に包まれ、フラついた私は抱えられる。

 

陸奥「…どうして、よ…」

 

長門「それはこっちの台詞だ。いきなり飛び出して…詳しいことは後で話してもらうからな」ソッ

 

長門は私を下ろして、海の方を見た。

 

長門「少し冷たいだろうが…ここで大人しく待っていろ。すぐに終わらせる」

 

陸奥「ま、まって…!ひとりで向かう、つもり?」

 

長門「案ずるな。天下のビッグセブンが奴らをすぐ消し炭にしてやるッ!!」ザッ

 

陸奥「いっちゃだめ…よ……」

 

 

私はボロボロの震えた手を伸ばして止めようとするけど、そんなものじゃ届くはずもなく。

 

勢い付くあの子の姿は、遠ざかっていった…。

 

 

 




遅れてしまい申し訳ありません。最近は多忙極まりつつなのです(^O^)
ペースはゆっくりですが、未完にはならぬよう努めて参ります。
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