黄金律これくしょん   作:満員座・スノー

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あの怪しい人物が登場。



#10 異質なる深海棲艦

 

長門「フンッ!」

 

「ガァッ…!!」

 

「クラエッ!!」ドォンッ

 

長門「効かん!!」ゴォンッ!

 

「ウグァッ……」

 

駆逐艦型や軽巡型の深海棲艦たちを撃沈させていく長門。練度はそこそこであろうとも、大戦艦のその力はやはり強大なのである。

 

長門「(弱い。陸奥がこの程度の奴らにあんな傷を負わされるものか?)」

 

長門はあっという間に敵艦隊を殲滅させた。

 

 

そもそも、鎮守府に最も近いこの海域は守りが強固なため、手馴れの者たちが殆ど傷を負うことはない。

そのはずだ、と違和感を感じながらも何より大事なのは妹の容態であるため引き返す長門。

 

長門「まあいい。さっさと戻っ……ッ!?」

 

ドドドドド!!

 

 

振り向いた長門は驚く間もなく、無数の砲撃を受けた。

 

長門「ぐッ!?(ど、どうなってる!?いつの間にあんな艦載機が…)」

 

周囲を見渡すと、50以上の航空機が自らを囲んでいたのだ。

敵の罠にかかったのか…!?と思う長門の前に、海中から何者かが高速で近づいてきた。

 

 

「イッピキノ、センカンフゼイガ……」グググ…

 

長門「がっ…!く、空母ヲ級…!!」

 

現れたのは空母ヲ級。

 

…ではあるが体は少し大きく、頭部装甲の帽子のようなものが幾つにも増えている。そして、まるで"取って付けたかのような巨大な一本の手"で長門を握り潰さんとする勢いで締め付ける。

 

長門「うぐぁぁッ…!!」

 

変ヲ級「ソコラノヤツラトオナジニスルナヨ。ワタシハ"ヒジュツ"ノチカラヲエタ」ククク…

 

長門「ひ…じゅつ……ッ?」

 

変異したヲ級は薄ら笑みを浮かべて言う。

 

変ヲ級「ソウダ。オマエモジキニ、ワタシノイチブニシテヤル!」グッ!!

 

"一部にする"。

長門はそんな不可解な言葉を聞く余裕もなく、強烈な拳の束縛を受ける。

 

 

長門「がぁッ!!」ドスッ

 

変ヲ級「ナニッ!?」

 

瞬間、長門も思い切り蹴りを入れ握り潰されるのを阻止。変異ヲ級の手の力が緩まることで解放された。

 

長門「今だッ!!!」ドオォォンッ!!!!

 

ほぼゼロ距離で相手に主砲を撃ち込む。

 

 

 

長門「はぁ…はぁッ…」

 

変ヲ級「…ガハッ!!!」グァッ!

 

長門「ぐああッ!?(ば、馬鹿な、あの砲撃をくらって…!?)」

 

変ヲ級「ハァ…ハァ、キサマァ…!セッカクノ…!!」

 

変異ヲ級は傷ついた巨大な腕で長門を締め上げる。激怒したその力は先よりも強くなり、長門は息も吸えぬ状況だ。これ以上の圧迫は彼女の身の危機に関わるだろう。

 

変ヲ級「モウイイ、キサマナドツグカチモナイワ!」ブンッ

 

長門「ぬあぁぁぁっ!!!」

 

長門は無数の艦載機が待ち受ける上空に身を放り投げられた。彼女の装甲といえどもこの地獄の郡中ではハチの巣同然だろう。

 

 

 

変ヲ級「ココデシネ!!!」バッ

 

ドドドドドドドドドドド!!!!

 

長門「ぐわああああぁぁぁッッ!!!」

 

 

長門「(何故だ…もう私はあの頃とは違った、はず。皆を守る力もつけた、はずなのに)」

 

長門「(これでは…大和の時と同じじゃないか)」

 

無慈悲な弾丸の雨を浴びながら、ぼそりと言う。

 

長門「…すま…ない、陸奥……」

 

 

 

シャアアァァン! バシュッ バシュッ

 

長門「な……んだ…?」

 

撃沈寸前といった長門の周りに、青く輝く光が流れていった。いくつもの艦載機はそれに当たって砕け墜ちていく。

 

 

───────────────────────

 

 

 

パラパラパラ……

 

冷たい雨が、身体を打ちつける。

 

陸奥「(長門…お願い、無事に帰ってきて。私のことは、もういいから…)」

 

せめて…自分の慕う姉の、本当はあんなにも仲間想いなあの子の間違いを直してあげたかった。

 

 

あはは…私、何もできないでただ中途半端なままで、このまま野垂れ死ぬのね…。

 

陸奥「っ……」ポロ…ポロ…

 

 

「こんなところで倒れちゃダメです陸奥さん!」

 

陸奥「え…?ぁ、あなたたち…どう、して…?」

 

景色の霞んでいく自分を呼び戻したのは、翔鶴型姉妹の二人だった。それに、大きな馬…?

 

翔鶴「こんなにケガをして…無茶しないでください!」ウルウル

 

瑞鶴「どうしてもこうしてもないわよ!いきなり出ていって何でそんなに傷ついてるのよ!もうっ!」

 

陸奥「そう、ね………」

 

トレ『ヒヒ~ン…!』ツンツン

 

瑞鶴が陸奥に寄り添うと、トレントが後ろで何か伝えようとしている。

 

翔鶴「! もしかして、後ろのバッグに何か入って…」ガサッ

 

翔鶴「これは…何、かしら」

 

翔鶴が取り出したのは何かを象った金属製の印。

トレントが"それを使うのです!"と言わんばかりの目で見つめてくるが…。

 

瑞鶴「きっとそれで陸奥さんを助けられるのよ翔鶴姉!」

 

翔鶴「え…で、でもこれは何をど、どうすれば」アセアセ

 

 

 

 

「やれやれ。艦娘というのはそんな物も扱えないのかね?」

 

困惑する翔鶴たちに、背後からやって来る青基調のローブの男。その笠の広い帽子、鉄仮面は彼のトレードマークだ。

 

翔鶴「だ、誰!?」

 

瑞鶴「艤装展開、発艦準備!」ギッ

 

二人は陸奥を守ろうと警戒し身構える。その様子に青いローブの男は怪しい笑みをこぼす。

 

 

「…噂通り、野蛮な連中だ。まあいい、その"(ゆび)聖印(せいいん)"を貸したまえ」

 

翔鶴「え…?は、はい」フルフル

 

今はあまり時間を無駄にはできない。翔鶴は要求通り、恐る恐る彼に聖印とやらを預ける。

 

「よろしい。ふむ…」カッ

 

不審な青いローブの男は、聖印を用いて陸奥に祈祷"回復"を使った。

 

 

陸奥「な、なに?急に、体が軽く…」

 

瑞鶴「傷が…治っていってる!」

 

翔鶴「す、すごい…」

 

「本来、魔術専門の私でさえ扱える低級祈祷だが、田舎者の艦娘はその程度の信仰もないか」クク…

 

瑞鶴「な、何よさっきから!いきなり出てきて失礼ね」

 

「感謝の言葉一つくらい、言ってみてはどうかな?…まあいい、それよりも海の方の仲間はいいのかね」

 

青いローブの男がチラりと向いた方向を見ると、三人はその光景に驚いた。宙に浮く一人と、下で身動きの取れない巨体。二人とも青光の鎖で縛られていて動けない様子だった。

 

陸奥「長門!!!」

 

翔鶴「な、長門さん!!」

 

瑞鶴「何よあれ…早く行くわよ!」ダッ

 

 

長門…待ってて。私もすぐ向かうから!

 

陸奥「ええ…ッ!」ヨロッ

 

陸奥も駆け出そうとするも治ったばかりでは身体も追いつかないのか、よろめいてしまう。

 

翔鶴「陸奥さんはまだ無理しないでください。私達二人で仕留めてみせます!」

 

陸奥「で、でも!」

 

翔鶴は真剣な眼差しで私を見つめた。そうね…この子達も十分強くなった。私が足手まといになっちゃダメ。

 

陸奥「……分かったわ。長門をお願い」

 

翔鶴は陸奥に頷く。

そして、二人は陸奥の願いにも応えるべく、長門の元へ全速力で向かっていくのだった。

 

 

 

…………

 

 

 

長門「な、な…んだ、これは……」

 

 

変ヲ級「ナ、ナニガオキテル!!?」ガチャガチャ

 

二人は青光の魔術…"カーリア"式の鎖に繋がれてその場から動けなくなっていた。

 

 

瑞鶴「目前の化物に爆撃開始、やっちゃってッ!!」バッ

 

翔鶴「長門さんを守って!周囲の敵艦載機を破壊します!!」バッ

 

変ヲ級「グガアァァァッ!!!」

 

翔鶴、瑞鶴姉妹の猛攻撃が蹴散らしていった。鎖は割れて消滅し、変異ヲ級は艤装を破壊され沈んでいく。

 

変ヲ級「オ、オボエテイロ…!!」ブクブク…

 

 

長門にかかっていた鎖の魔術も時間が限界を向かえたのか、消滅してしまった。力ももう残っていない彼女はただ真っ逆さまに落ちていく。

 

翔瑞「「長門さんっ!!」」

 

すかさず降ってきた長門を抱える。満身創痍な様子の彼女は今にも意識を手放してしまいそうだ。

 

長門「っあ……お、まえたち…」

 

翔鶴「もう大丈夫です!すぐに鎮守府へ戻りますからね!!」

 

瑞鶴「お願い…こんなとこで死んじゃ嫌だよリーダー!」グスッ

 

長門「フ……心配する、な…。この、長門、が…」カクッ

 

瑞鶴「な、長門さんッ!!!」

 

翔鶴「気絶してる…みたい。早く鎮守府で処置を!!」ザァッ

 

瑞鶴「分かってる!」ザァッ

 

瑞鶴は長門をおぶって高速で海を駆け出した。

絶対に助けて見せる、と…。

 

 





長門と翔鶴&瑞鶴は一団の上下関係だけでなく、師弟関係的なイメージ。

まともに戦えることもなく絶望していた彼女ら二人に、前を向かせ鍛え上げたとかなんだとか…。
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