黄金律これくしょん   作:満員座・スノー

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#11 一団の絆

 

 

 

"…れい、…てください!"

 

 

褪人「…………む」

 

翌朝、◯八◯◯。

元気になった秋月は、正座しながら褪せ人を起こそうと試みていた。ベッドの上でさえわざわざ正座とは律儀なものである。

 

 

秋月「司令、おはようございます!!」

 

目を覚ますと、秋月が鎧越しに顔を覗いていた。これは覗き穴じゃないz…どうやら座ったまま寝ていたらしい。

 

褪人「おはよう。もう体調は良くなったようだな」

 

秋月「はい!」ニコッ

 

秋月は晴れやかな笑顔で応える。

とてもまともではないものばかり食べていたようだが、何とか立ち直れたようだな。

 

しばらく眺めていると、秋月は何か言いたげな顔になっていた。

 

秋月「あ、あの司令。その…」

 

褪人「む?どうして秋月、何でも言ってくれ」

 

 

秋月「え、えっと…その~…」ソワソワ

 

褪人「どうしたのだ、遠慮なk「この寝坊助が、とでも言いたいのではないかね」

 

褪せ人の言葉を遮るように横から入り込んでくる青いローブの男。腕を組み高圧的な態度で壁際に立っていた。

 

褪人「貴様は…セルブス!?」ガタッ

 

褪せ人は驚きながらも立ち上がり、構える。

 

彼は魔術教授"セルブス"。

狭間の地時代、褪せ人は彼とは魔術教授よりも傀儡師(くぐつし)として出会っている。傀儡を愛するあまり、円卓の仲間や主であるラニでさえ、魂を支配し傀儡化させようとしていた悪しき者である。

 

セルブ「この小娘に確かに側にいると言ったものの"他の誰か"、が危険に晒されている時に呑気に寝ているのはどうか。と言っているのだよ」

 

秋月「ちょ、ちょっと!私はそこまで言ってません!!何より司令が、本当に私を気遣ってくれていたことは嬉しいんです!」ブンブン

 

辛辣なセルブスに対し、秋月の必死なフォロー。

 

他の誰か…?そういえば私は何かやるべきことがあったような…。

 

 

 

褪人「…はっ!!長門、陸奥!皆はっ!!?」ガタッ

 

セルブ「…君も相変わらずだな。やはり脳筋(バカ)の赤獅子共はどうも好きになれない」ヤレヤレ

 

褪人「くっ…セルブス、皆を何処へやった!?」

 

セルブ「私を疑っているのか?まったく…この計らいは誰のお陰だと思っているのか、浅ましさここに極まれりだ」スッ

 

セルブスはそう言って、部屋を出ていく。

 

 

褪人「お、おい待て!!」ダッ

 

秋月「えっ!?司令ちょと待っ…!」

 

秋月「(行っちゃった…。司令、どうしてそんなに焦ってたんでしょう…)」

 

秋月はそのまま取り残されてしまい、一人疑問に思う。セルブスが何者なのかを知っていればその様子も当然ではあるが…。

 

 

 

………

 

―艦娘寮内、医務室―

 

ここは艦娘寮内にある医務室。

本館の医務室とは異なり、艦娘たちが秘密裏に作り上げた部屋である。それは、どれだけ傷ついても前提督から(ないがし)ろにされてきた艦娘を隠れて治療するため。

 

 

褪人「ここは……」

 

セルブ「君が探しているものはこれかね」

 

褪人「長門…!」

 

長門は眠っていた。至るところに包帯が巻かれ、激しい攻撃を受けたことが分かる…。

 

 

ガチャ

 

翔鶴「失礼します…あら、提督も起床なさったんですね」

 

扉が開くと翔鶴に瑞鶴、そして陸奥が入ってきた。

 

褪人「貴公らも無事だったのか!」

 

大きな失態をしてしまったが…無事で、本当に良かった。

しかしすぐ横で堂々としているこの男の存在が気掛かりだ…。まさか!?

 

褪人「セルブス!もしや貴様…!!」

 

褪せ人に、一つの緊張走る。

対し、セルブスは鉄仮面で表情が分からないにも関わらずニヤリと笑っているような態度だ。

 

 

 

セルブ「…どうした?"傀儡のこと"、かね」

 

褪人「やはり貴様!この娘らを傀儡に!?」ガッ

 

 

セルブ「ククク…それはどうかn「何言ってるのよ傀儡って!気持ち悪いわね!!」パンッ ぐわっ!」バタンッ

 

調子に乗るセルブスに後ろから叩く瑞鶴。

 

褪人「!? ず、瑞鶴。こ奴に傀儡にされたわけじゃないのか」

 

瑞鶴「そんなわけないじゃない。誰がこんな薄気味悪い男の使い物になるのよ」

 

瑞鶴ははっきりと言い放った。一方、翔鶴は状況がいまいち理解できず困惑していた。

 

セルブ「ぬう…やはり田舎者の艦娘は野蛮だ」スクッ

 

褪人「セルブス、どういう事なのか説明しろ!」グイッ

 

 

セルブ「…ふむ、もう少し遊びたかったが、仕方あるまい」

 

迫る褪せ人に、セルブスは観念したように答える。

 

セルブ「私は悪い鎮守府の噂を耳にして、大本営から此方に越してきただけだ」

 

褪人「なんだと…?」

 

セルブ「それに私自身、傀儡など微塵も興味はない。あれは(ピディ)の趣味に過ぎないのだよ」

 

カーリア家の召使い"ピディ"。セルブスの傀儡を管理していたひ弱な男なのだが、実はそのセルブスも傀儡として操っており、様々な企みをしていた全ての元凶である。

 

本当のセルブスは、文字通りの魔術教授なのだ。(ピディが装っていた高圧的な性格はそのままセルブスのものなのだが)

 

陸奥「…要は軍に居候(いそうろう)していたのよ。この人と少し、話をしていたの」

 

セルブ「おい君。その言い方はよしたまえ」

 

 

 

褪人「しかし……!」

 

褪人「まあ…分かった。ここは一度信頼を置くとしよう。長門達の一件、私の代わりに務めてくれた礼もある」

 

セルブ「随分と上からじゃないか。すっかり提督になり切っているようだ」クク…

 

瑞鶴「まあいいわ。とにかくこの薄気味悪い人は連れてくから」グイッ

 

セルブ「ぐわっ!おい君待ちたまえ」

 

セルブスは瑞鶴に衿を引っ張られながらズルズルと連れていかれた。翔鶴もそれに着いていく。

 

翔鶴「お二人はお話がありますよね。それではごゆっくり」ペコリ

 

ガチャン

 

陸奥と褪せ人を残し部屋を出ていく一行。

今この空間には眠りに就く長門と、急な展開に困惑する褪せ人、そして何やら褪せ人を見つめている陸奥だけだ。

 

陸奥「………」ジー

 

まずい。陸奥は、私が居眠りしていたことをきっと怒っているのだ。くっ…この世界に送られる前から連日で動き回っていたのが仇となったか…!

 

…いや、言い訳はよくないな。ここは素直に謝ろう。

 

褪人「…誠に申し訳ない!!」ドゲザーッ

 

陸奥「頭を上げて、提督。私は一切気にしてないの」

 

褪人「な、何と…?」スクッ

 

陸奥「そもそもあんなことになったのは全部私のせい。提督を責めるわけないじゃない」

 

褪人「貴公…」

 

陸奥「私ね…あの後深海棲艦に襲われて、死んでもいいって思ってた。今までの罰だからって。貴方にも迷惑をかけたわ…」

 

陸奥にも確かに治療痕が見られた。平然と立っているように思えたが、少し震えている。

 

 

…何より彼女は、目を離したら消えてしまいそうに暗い表情をしていた。

 

陸奥「…貴方が私を罰してくれてm「辛かったな、陸奥よ」ポンッ …っ」

 

褪人「もうよい、これ以上背負いすぎるな。過去に何があったかなど聞くつもりはないが、私も背負ってやるから」

 

「いやこの場合は共に支える、だろうな!その方が提督と部下らしいか?ハッハッハ」と褪せ人は続けて、陸奥を励まそうとした。

 

陸奥「……」ギュッ

 

褪人「お、おい…鎧は冷たいぞ?」

 

陸奥「いいの…。もう少し、このままでいさせて…」

 

表面の鎧は冷たいけど、陸奥は確かな温もりを感じていた。

"この人なら、信頼できる…。"

 

暫く、その部屋には、静かに啜り泣く声だけが広がった。

 

 

…………

 

 

褪人「落ち着いたか?」

 

陸奥「ええ…本当に、ありがとう」

 

褪人「あぁ。しかし長門の容態はまだ…」クルッ

 

 

長門「呼んだか?」

 

陸奥「長門っ!?」

 

振り向くと、長門は目を覚ましていたようだ。陸奥はすぐに彼女の元へと寄り添う。

 

褪人「おぉ、起きたのか」

 

長門「お陰様でな。こんな姿になって情けないが」

 

褪人「情けなくなどない。大切な者を守るためにそこまでしているのだ。貴公は立派な長だろう」

 

長門は"そうか、ありがとう"と言いながらも、それは決して晴れやかな顔ではないまま俯いてしまう。

 

長門「…だが、そんなことはないんだ。やはり私は弱い。現に陸奥をこんな危険な目に合わせて…自身もこのザマさ」

 

陸奥「長門!それは違「いや違わん!!」ぅ…」

 

 

長門「単純な力の強弱だけじゃないんだ…!陸奥、お前がそこまで悩んでいることも一切気付けなかった」

 

陸奥「それは…私だって、ずっと言えなくて…」

 

長門「提督、あなたに何度チャンスを与えられても私は全て無碍(むげ)にしていたな。今更ながら、皆のおかげあって、やっと気がついた」

 

褪人「むう…」

 

長門「…どうして、私はここまで首領気取りでいられたのだろうか?本当に罰されるべきは…私じゃないかッ!!」グッ

 

長門はこれ以上にないくらい歯を食いしばり、自分を怨むと言わんばかりの悔しい顔をしている。

 

長門「…提督よ。その剣で一思いに私を斬ってくれ。もはや、大戦艦長門の名誉はここまでだ」スッ

 

長門はゆっくりと立ち上がり、覚悟を見せる。

かなりの負傷を受けたはずが、目を瞑って堂々と立つその姿は厳格さそのものである。

 

陸奥「嘘でしょ…そんなこと言わないでよ長門っ!」

 

 

 

褪人「なるほど…貴公、その覚悟は伝わった」スッ

 

陸奥「!?」

 

長門「フッ…流石、武人は気が分かるな」

 

褪せ人は長門の頼みを承諾し、陸奥が急いで止めようとするも…。

 

 

 

褪人「…しかし長門よ。そうも言ってはいられないぞ?」

 

長門「何…?」

 

褪人「扉の外にいるのだろう。入ってこい」

 

褪せ人がそう言うと、扉がバァンと思い切り開いて沢山の艦娘が入ってくる。

 

 

翔鶴「長門さん!それは私達が許しませんよ!!」

瑞鶴「そうよリーダー!!こんな所で折れちゃ絶対ダメっ!」

 

由良「私だって昨晩は少し衝突したけれど…いつも支えになってくれたのはあなた達なんです!」

秋月「そうです!悪いのは、長門さんだけじゃないんです…これから私たち、みんなで変わらなきゃ!!」

 

ザワザワ! ソウダヨー! セヤー!! ウワァァン! サセナイワー!!

 

 

長門「お、お前たち……」

 

皆が長門の周りに集まる。

それは真摯な顔で伝える者、涙を流す者、斬首を止めようとして焦っている者、様々である。

 

褪人「私は元々誰も見捨てる気など無い。だがそれは、彼女らも同じということだ」

 

 

陸奥「私たち…あんなに苦しかったはずなのに、本当はこんなに恵まれていたのね」

 

長門「あぁ、…ああ…ッ!本当に、ありがとう…っ!!」

 

長門は、これまで見せることはなかった笑顔で応えた。それも涙を流しながら。釣られて泣く者もいるくらい、彼女が表情を露にするのは珍しいことだったのだ。

 

 

 

 

=======

 

一方、その様子を壁越しに見る一人の影。

 

「感動的な話ですねぇ…さて、次は、っと…」スタスタ…

 

何やら怪しい企みをしながら、その場を去っていった。

 

 





セルブス、原作にて死亡時のポーズが他の傀儡と同じなんで多分そうなんですけど、いつから傀儡なんでしょうね。

これにて首領編は解決です。
次回は日常編を書きたいですね、辛い話ばかりでは疲れてしまいますよ。
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