黄金律これくしょん   作:満員座・スノー

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ウロウロ褪せ人。
これじゃ怪しいおじさんだぜ。


#12 一山越えて、放浪

 

長門一団の一件から、昼頃。

皆、これまでの極度の緊張感から解放されたのか、様々な話に花を咲かせているようだ。

 

邪魔をするわけにもいかないと、私は一人で鎮守府を歩き回っていた。何をするなどの当てもないのだが、セルブスがどこで何をしているかも分からないし、探しに行くのもありだな。

 

しかし、こちらに来て早何日ばかり。狭間の地で慣れているものとは全く違う感覚に、驚きや発見、疲れもかなりある。(寝てた割には)

安息地でも作るか…、そんなことを思い浮かべながら、ぼっと歩いていると…

 

 

「きーしれーかんっ!!」ポンポン

 

褪人「…む?」

 

 

雷「ちょっと?もう忘れちゃったの…?私よ、いかづ「忘れるわけがないだろぉぉっ!!」ひゃあぁっ!?」

 

電「きしれーかんさん!?雷ちゃんに飛び込んじゃダメなのですー!?」ポカポカ

 

………

 

 

褪人「す、すまん。少し色々あってな、気が動転していた…」

 

電「でも、急に飛びついたりするのはこわいのです…」

 

褪人「いや、それはな。お前達二人を見ていると、もはや安心感がありすぎて何というべきか…。おぉ癒しというか、よくやった!というか、万歳!というか…」フムム

 

要は褪せ人にとって、この二人はマスコット的存在なのである。某大壺の漢と同じ感覚だろう。

 

電「……???」ハテナ?

 

褪人「ま、まあともかく!すまなかった、許してくれ」パチッ

 

雷「いいわよ別に。でもその鎧重いんだから…」

 

雷「(鎧無しだったらよかったのに…///)」ブツブツ

 

 

心なしか何か聞こえた気がするが、気のせいだろう。

無事に雷からも許しを得たところで、私は用件を聞いた。

 

雷「あ、そうそう。これから倉庫の掃除をしにいく所だったの。きしれーかんも一緒に…と思ったけど、その様子じゃ…」

 

褪人「いや、私にもやらせてくれ」

 

雷「でも…昨日は本当に大変だったって、陸奥さんから聞いたから。それなのに、わたし……」

 

電「電たちが寝てる間、そんなことがあったなんて知らなかったのです…。お役に立てなくてごめんなさいっ」ペコリ

 

雷と電の二人はずっと申し訳なく思っていた。やっと見つけた信頼し合える提督、その命の危機に駆けつけられなかったのだから。

 

褪人「うーむ。あれは種々の問題があったからなぁ…特段、謝ることでもないだろう?」

 

電「それでも…」シュン

 

褪人「それに先も言ったが、お前達を見ていると私も安心できるのだ。だから、私も共にいたい」グッド!

 

雷「きしれーかん…」ウルウル

電「ふえぇぇ…」ウルウル

 

お、おぉ…?泣くほどか?

本当に、そこまで気にすることでもなかったと思うのだが。二人とも涙脆いものだな、はっは。

 

ちなみに、騎士司令官→きしれーかんに短縮されていることに褪せ人は全く気がついていない。むしろこの方がお互い違和感のない呼び名なのかもしれない。

 

 

…………

 

―鎮守府・倉庫群―

 

ガシャァァァン…

 

倉庫の入口の重厚な扉を開けると、そこには沢山の宝物…

 

 

褪人「ってすっからかんじゃないか!!」ズテーン

 

雷「前の司令官がいなくなった時に、軍の人たちが資材とか全部持っていっちゃったの」

 

電「皆であんなに頑張って集めたのに…ひどいのです!」プンプン

 

やはり…。

これだけの大人数がいて、軍部は物資を根こそぎ横取りしていったのか?何たる非情さ…。

 

褪人「(奴には早く着いてもらわねばな…)」

 

褪人「ふむ…そうとなると、何を掃除すればいいのだ?」

 

雷「床や壁に散らかってる埃を取るくらいね。倉庫なだけあって、広さは結構あるから二人じゃ大変なの」

 

褪人「なるほどな…。む、暁や響はどうした?何ならはぐ公にも手伝わせるべきだったか…」

 

雷「あの子達は寮の方で、また一仕事してるわ。ほんとにどこもかしこも散らかりっぱなしなのよ」

 

"皆、そんなこと気にしてられなかったからしょうがないんだけど…。"、と雷は加えた。

 

まあ人数に合わせて、この建物もかなり規模は大きい。それを一辺に片付けようとしても時間はかかるのは間違いない。

 

二人がそんなことを話していると、電が箒などの掃除用具を持って走ってきた。

 

褪人「おぉ、そんな焦らなくてもいいぞ~」

 

電「ふたりともー!持ってきたのでs」ドターーン

 

 

褪雷「「あちゃあ……」」

 

見事にずっこけた電なのであった。

 

しかしそこからというのは、時折雑談や褪せ人の戯れが繰り広げられつつ、意外にもテキパキと掃除をこなしていく。

 

 

 

褪人「掃除も久々にすると楽しいものだな。こう、箒をっ、ほっ!」ササッ

 

電「武器みたいに使っても埃が飛ぶだけなのですー!」アワアワ

 

───

 

褪人「お前たちー!こっち見てくれ!!」

 

雷電「「?」」クルッ

 

褪人「」(死体のポーズ)

 

雷「ひゃっ!?び、びっくりしたぁ…」

電「はにゃああぁぁぁぁっ!!!?」

 

褪人「ハッハッハ!こういう場所で遺体が転がっているのは醍醐味だからな」

 

───

 

褪人「一番奥の倉庫は倒壊していたが…何があったんだ?」

 

雷「昔、大和さんと長門さんがものすごい戦いをしたのよ。それはもう大変でね?」

 

褪人「(大和……?)」

 

電「後、あの倉庫には、実は…ご、拷問部屋が、隠されていた!なんて噂があったのですぅ…」カタカタ

 

褪人「それは悪趣味な…。後で詳しく聞かせてもらおう」

 

───

 

 

褪雷電『できたぁーっ!!(よくやった!)』

 

無事に第一倉庫を綺麗に仕上げた三人。かなりペースは速かったものの、高窓からは既にオレンジ色の光が射し込んでいた。

 

褪人「しかしもう夕暮れだ。隣の倉庫はどうする?」

 

雷「しばらくはここ一つあれば十分よ。またの機会にしましょ」

 

褪人「分かった。では、執務室まで来てくれないか?ここで次の話をするのも癪であろう」

 

 

─────────

 

―執務室前―

 

む?扉の前に誰かが立っているな…。

 

電「あ…」

 

褪人「おーい、貴公!私に何か用があったか?」

 

「?」チラッ

 

「あー、もしかして!!」

 

その少女はこちらを見つけては物凄い速さで走ってきた。な、何だ、あの走り様は…!?おそらく犬…っ!?

 

夕立「新しい提督さんっぽい!?あたし夕立っていうの!よろしくね!!」ダキッ

 

夕立「何か、これ本当に鎧っぽい~♪」スリスリ

 

褪人「ぬおっ!?やはりいぬ…」

 

実のところ、褪せ人は犬に弱い。三匹の飼い犬…もといはぐれ狼には気を許せているのだが、どうも犬には凶暴さとそこからの苦手意識が払拭できない。

 

褪人「(まあ落ち着け…この子は艦娘。犬ではない、おぉ犬ではない…)」

 

雷「夕立?しばらく会わない間に随分変わったわね」

 

電「あ、あの…きしれーかんさん、ちょっと…」アセアセ

 

褪せ人は犬で頭いっぱいだが後ろの二人については、雷は意外な出会いをしたという反応であり少し警戒し、電は何やら焦っているようだ。

 

夕立はその様子に気づくと、顔をしかめた。

夕立「…ちょっと後ろの二人、その反応やめてくんない?バレちゃうっぽい」

 

褪人「……む?」

 

雷「やっぱり!また何か企んでるのね!きしれーかんから離れなsにゃっ!?」

電「な、なのでsむぐっ!?」

 

「おっと、これ以上はいけないよ…♪」

 

二人のさらに背後から忍び寄る影。口封じをしかけてずりずりと後ろへ下がっていく。

 

褪人「雷!電!」

 

褪せ人は助けに行こうとするも、夕立が力を入れて離さない。

 

夕立「睦月ちゃん、ナイスっぽい~」

 

睦月「にゃしし!睦月の手にかかればどうってことないねぇ!なーんて♪」

 

褪人「貴公ら!一体なにを「こうっぽい!」ドガッ ぬあぁっ!」

 

夕立は雷、電の二人が離されたのを確認して、褪せ人を思いきり蹴り飛ばした。鎧の防御力をもっても相当な威力で、吹き飛ばされるも何とか体勢を維持する。

 

雷電「「~っ!!」」バタバタ

 

睦月「危ないから大人しくしててってばー!睦月達は雷ちゃん電ちゃんは傷つけるつもりはないのねっ!」

 

 

褪人「何がどうなっているか分からないが…いいだろう。その勝負、受けて立つぞ」シャキッ

 

正直少し戦には疲れていたところなんだが…。まあいいか、御嬢との遊び事に付き合うくらいならば。

 

夕立「騒ぎになる前にねじ伏せて、地下まで連れてくっぽい」ダッ

 

褪せ人が構えると、夕立はそれ目掛けて突進。ただ夕立は艤装を出していないが…。

 

夕立「ほらぁ!」ザシャァッ

 

夕立は高く跳んでくるりと一回転。回転の間にすかさず両手に武器を持つ。そしてその勢いのまま攻撃を仕掛ける。

 

キイイイィンッ!!

 

褪人「だあッ!!」ズァッ!!

 

褪せ人も大剣を一振し、夕立の勢いをそのまま押し返した。普通ならば、二点からの攻撃を防ぎ切るのはかなりの力を要するため辛いが、こういう時の大剣はやはり心強い。

 

夕立「きゃあああっ!?」

 

褪人「驚いた。両手斧とはな…ただ遊びたいのかと思っていた。やはり艦娘の力量はすごいな?だが技量が足りていないぞ。そんな扱いではまだまだその武器を活かし切れん」

 

夕立「むー…夕立だってこれ初めて使うっぽい!明石さんにテストするの頼まれただけ!!」

 

褪人「そうか?ではもう一度来い!今度は刃に重心を置くようにやってみろ、腕力がそこへ向かえばさらに強力な攻撃になるぞ」

 

 

雷「敵に使い方を教えちゃダメじゃnむぐっ!」

 

睦月「こらこら!だから暴れちゃダメって~…」

 

睦月「まあでも…確かにあの人、なんで教えてくれるのかにゃ?」ニガワライ

 

少し遠くから見ている三人だが、ノリに乗ってきた褪せ人のコーチングに揃って困惑するのであった。

 

 

夕立「やあぁっ!!」ブウゥンッ!

 

褪人「ほっ!!ぐおぉっ…!」ギギギ…

 

夕立「どうっぽい提督さん!?これでやられてくれるかしら!!」

 

夕立…押しの力がかなり強いな。この大剣でさえ折れてしまわないか、心配になるくらいだ…!

 

褪人「だが、まだまだ…よおッ!!!」キイン!

 

激しい力のぶつかり合いを繰り広げる二人。その分音も激しいため、そろそろ人がいれば駆けつけてきてもおかしくはない。

 

夕立「うわぁっ!!うぐぐ…やっぱりこれじゃ勝てないよぉ!」

 

夕立「もう面倒だし、普通にいくっぽい!」チャキッ

 

褪人「むっ!お得意の砲台か!!」ガッ

 

一点留まりの体勢から動き回り始める褪せ人。数が多い場合などは大盾を使うが、通常の遠距離戦は避けまくるのが有効だ。

 

しかし長門達との戦いを経て分かったが、内部での砲撃戦は避けたいところだ。すぐにでも止めにいくべきか…?

 

 

 

「そこまでになさい!!」

 

夕立「ぽい?」

 

睦月「にゃ!?た、大鳳さん…」

 

二人の暴動を止めにきたのは空母、大鳳。彼女も二人と同じように、個々の制服の上から白いインバネスコートを着ている。

 

大鳳「新しい提督には付き従うよう言われていたでしょう。もう言いつけを忘れていたんですか?」

 

夕立「そ、そんなことないっぽい」アセアセ

 

睦月「ふぇぇ…早く連れてって、大和様にいい顔したかったからとか全然違いますからぁ…!」

 

大鳳「もう…勝手は後が怖いんですからね。それとも、お叱りを受けたいのかしら」ジトッ

 

大鳳が二人に睨みを効かせる。その凍てつくような瞳は、無邪気な二人をおびやかす。

 

夕睦「「いやぁ~!!」」ブンブン

 

大鳳「そう。じゃあその子達を離して、ほらもう行きなさい」

 

夕立はすぐに艤装をしまい、睦月も「ごめんなさーい!」と二人を解放し、慌てて逃げていった。

 

 

大鳳とやら、一瞬で二人を追い返してしまった…。それに何だ、ノクスの民が着てそうなあの服装は。

 

まあ助かったのだから、何でもよいのだが。

 

褪人「貴公、ありがとう?」

 

褪せ人は大鳳に近づき、手を差し出す。だが彼女はその手を冷たい顔して振り払った。

 

大鳳「…勘違いしないで。私は…教えに従うのみ」

 

褪人「教え?」

 

大鳳「…あの子達にはまだ早かっただけ。気をつけなさい、いずれ"桜の剣(おうのつるぎ)"たちが貴方を(さら)う」

 

そのまま足早に去ってしまった…。

桜の剣…、一体どういうことだ…?

 

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