黄金律これくしょん   作:満員座・スノー

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前回の続きではありますが、間のちょっとした小話のようなものでございます。


#4.5 月夜の一時

 

…夜闇の海岸線に月明かりが照らす。褪せ人は一人岩場に腰掛け、海を眺めていた。

 

静寂な波の音、吹きつける夜風、輝く星空。

 

褪人「やはり…この地は空気が心地よいなぁ」シミジミ

 

 

結局はぐ公と小さき四姉妹はすっかり仲を深め、今は共に寝付いているらしい。

ティシーも青葉、天龍に押し寄せられていたことだし。(質問攻めされかけた私が面倒を押しつけただけだが)

 

 

褪人「しかし、提督か…」

 

今こそ遺灰達の主のようなものだが、私は生来従者気質だった。

褪せ人となってから里を失った私はとある老将の世話になっていた。それから円卓のよろず屋として働き、火山館の一員として仕えた。

 

そして何より、かの"月の魔女"の使いとしてあの方の我儘に付き合っているのは…。

 

 

『おいお前。今失礼なことを考えただろう?』

 

褪人「!?ど、どこから声が…!」サッ

 

『下を見ろ』

 

褪人「!?」

 

 

何ということ。私の足元に一人の小さなロr…いや、小さな人形が此方を向いているではありませんか。

 

褪人「ラ、ラニ様!!?」ザザーッ

 

ラニ『相変わらず、いちいち騒がしい男だな。後その幼女を見るような目はやめろ』

 

噂をすれば何とやら…本当にいらっしゃるとは。

彼女が"月の魔女"、ラニ。今まで仕えてきた者々の中で私が一番振り回されているのは間違いなく彼女だろう。

 

狭間の地では"デミゴッド"と呼ばれる神の子孫達がいる。その中でもラニは元"神人"である恐ろしい魔女なのだ。しかし長い付き合いからか、もはや安心感の湧く褪せ人。

 

ほっ…と再び腰掛けた。

 

褪人「しょうがないでしょう、その小さな人形姿はあまりに可愛い過ぎるんですから」ハッハ

 

ラニ『う、うるさいわっ!///』

 

あぁ、照れるラニ様もお可愛いらしい。ニヤリ。

 

褪人「そういえばラニ様。お話しておきたいことがあるのですが…」

 

ラニ『…そっちの世界の事だろう?』

 

褪人「Yes, Master」

 

ラニ『いつその"盗んだ指輪"を渡しに来るかと思ったが…よりその機会も遠くなってしまったようだ』

 

"暗月の指輪"。

ラニが王家の王女だった頃、その伴侶に渡すはずだった指輪である。

 

"何者も、これを持ち出すことなかれ

夜の彼方、その孤独は、私だけのものでよい"

 

という本人からの忠告があるにも関わらず、褪せ人は興味本位だけでそれを偶然見つけてしまった。

にしても実質的な婚約指輪を盗む褪せ人…大したものである。

 

褪人「そ、その節はほんっとうに申し訳ない!!まさか彼処にあるとは思わなかったのだ!」

 

ラニ『まあよい。お前はいつも好奇心だけは異常だからな、この奇人コレクターめ』

 

褪人「」(´・ω・`)

 

ラニは褪せ人の反応を見てクスクスと笑った。会話はじめに従者を弄ってリアクションを見るのが彼女の嗜みなのだ。恐ろしい魔女!

 

さて…、と調子を戻して話をし始める。

 

ラニ『異世界のことだったか。正直、お前に伝えておきたいことは山程あるが…』

 

褪人「やはり知っておられる事があるようで。流石ラニ様でございます!!」パチパチ

 

ラニ『まだ何も言っておらぬわ。まあしかし…今回の一件は私でも面倒そうだ。私の知っている外界とは異なっていてな…まず戻る方法が見つからん』

 

褪人「何と…しかし私、この度提督という役職に就きましてな。どちらにせよ暫くは戻れないのです」

 

ラニ『分かっている。全く…本当に、いつも私だけずっと待たされ続けているな?』ジッ

 

褪人「す、すみません…」

 

ラニ『よい。お前を自由にさせたいと願っているのは私だ。いつかまた、私の元へ戻ってきてくれればそれでいい』

 

 

 

ラニ『いつも、みたいに…な』

 

ラニは、真剣な目で褪せ人を見つめる。

 

褪人「ラニ様…」

 

ラニ『…』ソッ

 

ラニ様が私の脚に抱き着いておられる…!?

しかも手が微かに震えて…これはただ事ではない予感。

 

褪人「…何を恐れているのです。貴女らしくない」

 

ラニ『…先も言ったが、その異世界は…狭間とは異なる。何が起きるか…分からんのだ。だから、気をつけろ』

 

褪人「ええ、勿論ですとも」

 

ラニ『…お前は、消えてくれるなよ』

 

 

ラニ『もう、失うのは散々だ…』

 

ラニ様は弱気な声でそう言った。

 

失う、か…。私も…あれは辛いものであった。

帽子の鍔に隠れて表情こそは見えないが、彼女は今とてつもなく悲しいのだろう。それは、先程の落ち着いた様子とは違っていた。

 

褪人「ラニ様」

 

ラニ『…』

 

褪人「私は、貴女との古き約束を忘れはしない。別れることはないのです」

 

ラニ『…ああ』ギュッ

 

ラニは褪せ人をより強く、抱きしめた。

 

そして、帽子に深くつくった影に光が射す。

 

 

 

褪人「…朝日ですな」

 

ラニ『あぁ…暫くの別れだ。世界を隔てる影響か、この小人形には一時的にしか接続できないらしい』

 

褪人「そうでしたか…それは残念」

 

ラニ『また何か分かったら伝達する。ティシーにもよろしくいっておいてくれ。彼奴にずっと重石を背負わせるわけにはいかないしな』

 

褪人「承知。ではラニ様もお元気で」

 

ラニ『私にそうしてきたように、あの娘達に見せてやれよ。お前の希望をな』フフッ

 

ラニは少し笑って、軽く手を振る。

褪せ人もグッドラック、とジェスチャーしてラニを見送った。

 

そして、人形から魂がすぅと消えていった。

 




とあるコメ殿から、ハーレムとかどうなんですか!?という質問を頂いたのですが、今回のラニ様の件を前々から考えていたので、どうするか迷っていたんですよね…。
(ちなみに愚作者はハーレムがすきでありますd(°▽°) )


・一応婚約はしていない(指輪は"見つけただけ")、
・この褪せ人君は昔からラニ様と特別な関係がある(とある設定のため)
というものがあるので、どちらの展開にも持っていける…とは思ふ。
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