黄金律これくしょん   作:満員座・スノー

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さあ、フロム脳じみてきたぞ。



主なき首領
#5 二つの派閥


―艦娘寮・奥の大部屋―

 

 

「ほう。新たな提督が?」

 

古びた丸机に肘を置き座って、考え込む艦娘。

 

彼女は戦艦、長門。前提督の失踪後に着任したのでその仕打ちを実際に受けることはなかったが、あまりに酷い惨状であったために傷ついた艦娘たちのケアをしていた。

 

そしていつからかその頼りがいが艦娘たちの心を惹き付け、ここ"舞鶴鎮守府を守る首領"となったのである。

 

由良「うん…電ちゃん達が話してくれたの。よく分からないんだけど、連れの狼?みたいなのがいて…仲良くなってた、かな?」

 

由良を筆頭に十数人程度の艦娘たちが長門を取り囲むようにして、会合を行っている。

 

龍驤「狼ぃ?そりゃガラに悪いもん飼っとんなあ…今度はヤクザ提督でも来たんか?」ケッ

 

瑞鳳「何かナイフみたいなの持ってる変な黒い人?も見たよ、もしかして…拷問器具…っ!?」ブルブル

 

瑞鳳がそう言うと、数人の艦娘はひっ…、と声にもならない声を出して恐怖のあまり震え出してしまった。

 

白露「ぁ…いたっ…」ガタッ

 

昔つけられた傷が痛む白露。傷痕を押さえながらも思い出さないように目を瞑る。しかしそれがかえって力みすぎて悪化してしまう。

 

村雨「て、て…いとく…?」ガタガタ

 

時雨「落ち着いて村雨。白露姉さんも、そんな力を入れちゃダメだよ。ほら、僕の手握って?」

 

長門「落ち着け!お前達、大丈夫、大丈夫だ。これまで何度も立ち上がってきたんだ。そう心配するな」

 

長門「ほら、一度深呼吸だ。大丈夫…我々は立ち向かえるぞ」

 

……

 

何とか場を落ち着かせる長門。

やはり心を壊してしまった者たちに、彼女の心強い言葉は大きいのだ。

 

長門「いつもすまないな、時雨」

 

時雨「うん。話を続けて」

 

長門「ああ。しかし第六駆逐隊が…ということは天龍型姉妹も同じくか」

 

陸奥「あの子達はいつもそうねえ…もうちょっと疑ってかかった方がいいんじゃないかしら」

 

長門型二番艦の陸奥。

彼女は前提督が指揮をする頃からここに属している。長門がここに着任したばかりの時は酷く傷ついており、心を失いかけていた。

 

姉妹艦の存在はやはり大きいか、現在は長門のお陰でかなり立ち直っている。

 

長門「そうだな…。もはや提督という存在も暫くぶりだが…どうするべきか」

 

ガチャ

 

扉が開き、会合の参加者が一人、現れた。

 

青葉「どもー青葉です!新司令官の情報仕入れてきましたよー」

 

実は青葉はこの会合に入っている。

一見褪せ人の味方のように思えたが、スパイをしていただけ。

 

提督になることを推していたものの、それは本当に"ただネタが増えそうだから"という理由によるもの。

彼女は、"仕事に囚われている"のだ。

 

 

陸奥「ありがと、流石青葉ね。仕事が早い」

 

青葉「恐縮です!」ヘヘッ

 

陸奥「……」ペラペラ

 

長門「…ふむ」

 

まとめあげられた資料を読む二人。

周りもその内容が気になるが、どんな恐ろしいことが書いてあるかということが怖くて読む気にはならなかった。

 

陸奥「…一度私と貴女の二人で様子を見に行きましょう」

 

長門「そうだな」

 

長門「もしその時点で危険ならば"即刻排除"しよう、この舞鶴のために」

 

 

長門「(陸奥をもう一度、あんな目に逢わせないためにもな…!!!)」グッ

 

長門は本来、提督というものに従順な性格であった。冷静沈着な洞察、采配もできる統率、優秀な戦艦なのである。

 

しかし妹の惨状を見、激怒した彼女は"妹の危険の及ぶ可能性があるならば何もかも消し去ろう"と考えている。

そんな彼女は、まさに"首領"なのであった。

 

 

 

───────────────────────

 

―鎮守府・ある地下室―

 

「へぇ…提督、ですか」

 

大理石の座に手を揃え、端坐位(たんざい)の姿勢で座る艦娘。

 

彼女は戦艦、大和。この舞鶴鎮守府において初の戦艦であり、大型建造艦という立派な称号を持つ立派な戦艦である。練度も最古参組を抜かし、まさに最強に名高い戦艦だ。

 

そして、それに似つかわしくないこの薄暗い部屋でも、その堂々たるは、まさに"舞鶴鎮守府を導く主教"なのである。

 

山風「はい。鎧を着けてる騎士…のような人…でした」

 

その禍々しく削られた石座はまるで玉座のようであり、そこに鎮座する大和。

 

それを前に、左右に一列の並びを形成する十数人の艦娘。瞑想なのか、皆正座をし、俯いて目を瞑っている。

山風はその真ん中に形成された暗き道で正座し、大和の前で土下座の姿勢をしている。

 

否、それは謝意を持つ土下座ではない。

最強の彼女を…いや、絶対的信仰を掲げる彼女を前にしての敬意なのだ。

 

大和「騎士…それは随分と、"捧げ物に相応しい"かもしれませんね」フフッ

 

山風「…」ビクッ

 

大和「?あら、山風ちゃんはそうは思いませんか!」

 

山風「い、いえ…!そんなことは、ない…です」

 

大和「いいのよ、どちらでも。私達の意志に関係なく、何れそうなることが決まるのだから。すべては"彼"の元にね」

 

そう言って大和は一度、息を整えた。

 

大和「…気が急っていたわ。怖がらせちゃってごめんなさい、山風ちゃん。夕立ちゃん、介抱してあげてくれる?」

 

夕立「ぽい!」サッ

 

夕立は山風を優しく抱きしめてあげた。

 

夕立「大丈夫。きっと、提督さんは"本当の提督さん"になって、帰ってくるっぽい?だから、それまで頑張ろ?山風」ギュッ

 

山風「う、うん…!」ポロポロ

 

山風は元々暗い性格であったが、"かつての提督"に様々な灯りを見出だし、楽しみを見つけた。引っ込みがちな自分を変えていったのだ。

 

しかし、それはあの変貌によって消えてしまう。それでも数々の思い出…"灯りの灰"だけは残り、今でも悲しみと得体の知れぬ恐怖を抱えてしまっている。

 

 

睦月「はぁ~、やっぱ大和様の言葉は心に沁みますなあ…」

 

如月「ほんと…満たされるわ」ウフフ

 

弥生「…」ナムナム

 

卯月「捧げ物…あげたら帰ってくる、ぴょん…♪」フヘヘ

 

 

川内「…zzZ」

 

阿武隈「あーあ…こんな時でも寝ちゃってますよぉこの娘」

 

明石「いいのよ。こんな昼間から寝てられるなんて幸せじゃないの。私は四六時中工作ですからね」

 

阿武隈「それよりはマシかなぁ…それであなたの作ってるものはどこまで進んだのぉ?」

 

明石「どうでしょうね。大和さんの言う通り、時期が来ればその時にはもう…」ククク

 

山風だけではない。

彼女等はいずれも"大事なものを失い"、それに耐えきれず、その目から光を失っている。

 

だからこそ、その虚ろげに映る世界に少しの光を取り戻そうと、こうして怪しい儀式のような集を定期的に開くのだ。

 

大和「まあしばらくはその提督に付き従いましょう。所詮は供物…それが輝かしいものであるならば…そうであるほど…」

 

大和「帰ってくるでしょう!!我らの待ち続けるものが!!!」

 

大和はその石座から立ち上がり、目を両手で覆い隠しながら、見上げた。

 

大和「フフフフ…!アハハ♪」バッ

 

 

ハハハ…ウフフ……!

 

皆も同じようにして、静かに笑った。

目を覆い隠す理由は、その虚空の世界に星を見出だす為。灰の上に、星の光を。

 

大和「もう少し…もう少し、よ…」

 

それは目ではなく、脳裡に響くのだ。

 

 

大鳳「…っ(く、狂ってる…)」

 

空母、大鳳は同じく儀式の素振りをするも、その異常さに気がついていた。

 

そう、彼女たちはもはや狂っているのだ。

失った代償が大きすぎるあまり、救いを探さなければ自身を保てないから。

それが、根拠も論理も何もない"捧げ物"を創り出した。

 

大和「アッハハハ!フフハハハハハッ!!!」

 

…そんな鎮守府の異常者たちの集まりは"桜花隊(おうかたい)"と自称している。大和の、その麗しきに似合わぬ猟奇的な笑みは…まさに"主教"たらしめるものであった。

 





言い忘れてましたが、ここの鎮守府は"舞鶴"です。
そしてついに、鎮守府の艦娘達が登場しました。今回はその一部の紹介です。

弾圧派の首領長門。傷ついた艦娘達を護り、まとめあげるリーダーです。(やっぱ長門さんはこのイメージよな)

信仰派の主教大和。変貌前の提督…我々の知らない存在に心を寄せる教祖です。(もはやホテルではなく大和聖堂ですな)

皆はどっちに付く?(ポケモソ並感)
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