黄金律これくしょん   作:満員座・スノー

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鎮守府ver.陰謀の夜…?



#7 誇りは絶えぬ

 

いつも歩いていたはずの廊下が、長く感じられる。

 

由良「………」スタスタ

 

 

…私はずっと、ただ従順な兵器でいた。

 

 

~~~~~~~~~

 

 

長門『由良、今夜奴を討て』

 

由良『えっ…?ど、どうして!!』

 

長門『どうしてもこうもないだろう。奴は提督ではない、ただの侵入者だ』

 

由良『で、でもあの人は……』

 

長門『…お前こそどうしたんだ。あれ程提督の話となると避けていたじゃないか。今こそ排除しておくべきだぞ?』

 

確かに私は前のことに関するものは目を背けてきた。もうあんな思いはしたくないし、早く忘れたかったから…。

 

 

でも、あの人は違う。そんな事どうだっていいと思うくらいに、私を満たしてくれた。

 

由良『あ、あの人はちが…!『何を言ってるの』ぅ…』

 

陸奥『貴女はそうやって前提督に裏切られて、ずっと機械みたいに従わせられたじゃない。またそうなるのかもしれないのよ?』

 

由良『そ、それは……』

 

陸奥『…不幸だったけれど、貴女の今の強さはその地獄を乗り越えた成果よ』スッ

 

そう言って陸奥さんは私の手を取った。

 

陸奥『それを今こそ、見せつけてやりなさい。皆を守るために』

 

 

前提督は時折無茶な鍛練や出撃をさせていた。あまりに無謀なその命令を理想的にこなせる子は少なくて、その度処罰として暴力や拷問を受けていた。

 

…そこから帰ってきた子達の姿は、今思い出しても恐怖する。

 

身体そこら中の傷、光を失った目、どんなことをされたのか聞いても何も答えてくれない。きっと、それ程に恐ろしいものなんだ…って。

 

 

~~~~~~~~~

 

 

由良「……」スタ…

 

でも、あの人は違う。

 

 

"…そんな確証、何処にあるの?"

 

 

い、いいえ!そんなものなくても、違う。

…違うんだよ、ね…?

 

由良「………」

 

心の中で信じきれない私が語りかけてくる。

 

"あれはまやかしに決まってる。またあの地獄を味わいたいの?今度こそ、自分が無事でいられるかも分からないんだよ。"

 

 

由良「…っ」

 

じゃあ、どうすればいいの…!?

 

誰か、教えてよ。

誰でもいい、私に教えてよ…!!ねえ…!!

 

由良「い、ぁ…」

 

 

 

 

由良「嫌ぁッッ!!!」ドンッ!!!

 

由良「はぁ…はぁ…」

 

もう、いいや。

考えても、どうしようもない。皆のためなんだから。

 

由良「……」チャキッ

 

自分の心なんて、要らない。

今だけは、また無情でいよう。

 

 

 

───────────

 

―執務室―

 

褪人「……」

 

床にあぐらをかき、窓から見える夜空を眺める。

今宵は雲がかった空のようだ。世にはこれを不安や不幸といった受け取り方をする者もいるが、私はそうは思わない。

 

何せ、あの地に住み着けばいつになっても嫌な予感はするものだからな。

 

褪人「フフッ……」

 

 

ガチャ!!

 

由良「砲撃かいs…ッ!?」

 

 

由良「な、何で起きて…!」

 

勢いよく扉を開け、即砲撃の姿勢を構える由良。

 

既に(とこ)()いたと思われた褪せ人が起きていたことに驚くが、後は自らが撃ちさえすればその目の前の男は吹き飛ぶだろう。

 

褪人「……」

 

しかし褪せ人は微動だにしないのである。

その差し向けられた単装高角砲が自らの命を奪う一歩手前だというのに。背を見せたまま振り返りもせず、ただ空を見上げている。

 

由良「…!」プルプル

 

褪人「……」

 

 

由良「…どう、して…?」

 

褪人「すまぬな。一応、(ゆか)には()いているのだが」

 

褪せ人はハッハッハ、と笑いそのまま話を続ける。

 

褪人「…由良よ。私はやはり貴公らとは相容れぬものだったか?」

 

由良「……っ」

 

由良は何も答えられない。

今、答えてしまったら本来の自分が出てきてしまいそうだから。

 

褪人「従者は主に尽くす。そして、主は従者に尽くす。だからこそ、貴公の幸せそうな顔が見れて嬉しかったぞ」

 

由良「!!!!」グッ

 

褪人「貴公の力なら、皆に幸せをもたらせるだろう。これも貴公の幸せに繋がるのなら、一向に構わん」

 

すまぬな、我が主…と言って褪せ人は合掌した。

 

由良「…っ……ぁ!」プルプル

 

由良は考える。

由良にとっての幸せ、皆にとっての幸せ、今やってることは本当に皆のためなのか?だからといって、やらないことは皆のためなのか?

 

 

由良「うああッッ!!!」バァンッ!!!!

 

考えのつかない由良は、思い切り砲弾を放った。

 

 

 

 

褪人「フ…」

 

由良「はぁ……はぁッ…!!」シュウゥゥ…

 

()()()()()、自らの艤装を床に叩きつけた。

艤装は煙を上げ、砲口もぐしゃりと折れて故障してしまう。

 

由良「ぁ…あ、どうし…て、ぐすっ、す…かぁ!!」グスッ

 

褪人「どうしても何も、私は貴公の選択に従ったのみだよ」スクッ

 

褪せ人は立ち上がり、由良の元へ近づいた。

 

褪人「よくやった。これからも自分の心を大切にするんだぞ?貴公はもう、自由だ」ポンッ

 

由良「うぇ…?あううぅぅぅっ、あぁ、あぁぁぁ……っ!」ポロポロ

 

褪人「よしよし!落ち着くまでそうしていなさい」

 

 

 

 

ガチャバタン!!

 

長門「まさかあの由良を止めるとはな…」

 

陸奥「どうやって手懐けたのか知らないけど…まあ、こうなることも見越していたわ」

 

 

 

由良「!?そ、そん…な?どうして…」

 

褪人「貴公ら…!!」

 

 

 

長門「準備はできているか?翔鶴、瑞鶴」

 

そう言うと扉の後ろから二人の艦娘が現れる。彼女らは五航戦の空母姉妹の翔鶴、瑞鶴。長門一団の正規空母部隊である。

 

翔鶴「ほ、本当によろしいのですか…?」

 

瑞鶴「何言ってるの翔鶴姉!ここで仕留めなきゃ!私はもうアイツみたいなのはウンザリよ!!」

 

翔鶴「うぅ…そう、そうよね!艦載機準備!!」バッ

 

瑞鶴「室内じゃ狭いけど…爆撃準備よ!」バッ

 

二人が合図を送ると執務室内に仕込まれていた艦載機たちが動き出す。褪せ人に照準を合わせ、爆撃の準備をする。

 

 

褪人「ほう。小型の飛行船が数機…これは既に仕掛けられていたか」

 

長門、流石はあの一団の長なだけある。

よき長というのは力だけでなく、頭脳でも語るものだ。

 

 

長門「由良、離れていろ。お前の代わりに我々が始末する」

 

陸奥「貴女といえども流石に一人じゃ荷が重かったものね…後は任せておきなさい」

 

 

由良「いやっ!!由良はていとくさんに「今のうちに逃げておけ」え…?」

 

褪人「相手からのご厚意は受け取るものだぞ?それにたった今、貴公の武器もそのようになってしまった」

 

由良「そ、それでもっ!!」

 

褪人「大丈夫だ。私にも手立てがないわけではない、な?」

 

由良「ううぅ…」ザザ…

 

由良は渋々ながらも部屋を出て離れていった。いくら練度の高い彼女といえども、艤装が壊れてはまともには戦えない。

 

 

長門「これで心置きなく撃てるというものだ!」チャキッ

陸奥「そうね。さようなら、騎士さん?」チャキッ

 

 

褪人「ふむ…」

 

四対一…通常ならかなり分が悪いところだが、どうするか?あまり待たせてはくれまい…。

 

 

…まあやはり、多数には"あの手"しかないか。

 

褪人「昔の事はとうに置いてきたつもりだったがな」

 

長門「何だ?そんな話を聞いている余裕はな「見せてやろう」…?」

 

褪人「最大のものをなっ!!!」グッ

 

 

陸奥「何かするつもり!?翔鶴瑞鶴やるわよ!!」

 

翔鶴「ええ!全機、突撃!!!」バッ

 

瑞鶴「料理は美味しかったから残念だけど…ここでくたばりなさい!!」バッ

 

 

五航戦の艦載機が褪せ人目掛けて突撃する。戦艦二人も狙いを合わせるが…。

 

褪人「我らが誇り、"赤獅子(あかしし)(ほのお)"!!!」ゴオォォォォッ!!

 

長門「っ!!?」

 

褪せ人はその赤く燃える炎を四方に放ち、まるで炎の柱のようなものを上げた。

 

暫くすると炎は消えていき、黒く焦げた床が残る。そこへ焼けた艦載機も墜落していた。

 

翔鶴「な、何が起きて!?」

瑞鶴「う、うそ……」

 

 

褪人「貴公らに一つ、教えておこう」

 

褪人「我が騎士の由来は、"赤獅子騎士(あかししきし)"。誇り高き大将軍と共にありし、勇ましき猛者の集いである!!!!」シャキンッ

 

すまない将軍よ。

少しばかりこの名、もう一度立てさせてもらおう。

 





褪せ人は驚きの〈素性: 赤獅子騎士〉でありました(昔の癖で好戦的だったのもそのため)
今の彼はもうその立場から離れています。なにゆえ…。
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