儚き花の勇者たちと亡霊となり世を彷徨う彼。   作:気まぐれな富士山

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プロローグ 出会い

 

「あぁ〜………地獄だ。何か異世界転生でも起きないかなぁ…………」

 

彼は社畜だった。

毎日残業のブラック企業に務める中間管理職であり、それなりの成績でクビにならないように、死にそうな毎日を送っていた。

 

「最近はアニメも、ドラマも見てないな…………てか家帰れてないな。」

 

死んだ目をしながら時計を眺める。

 

「午前3時…………深夜アニメも一通り終わってるな…………あー仕事終わらん…………」

 

彼は、世界にウンザリしていた。

どこを取っても地獄になるなら、こんな世界に希望を持つ方が間違っている。

 

「もう……………死のうかな。」

 

世の中の綺麗事は、成功者にのみ語られる。

心に余裕のある者、信念の強い者のみだ。

敗者に、選べる余裕なんてものは存在しない。

 

「次の生は、IT企業の社長にでもなれるかな…………」

 

気がつけば、用具庫から取り出したロープを階段の手すりに括り付け、土台の上に立っていた。

 

「…………親父もお袋も死んだ。俺も、今そっちに行くよ。」

 

土台を蹴る。それだけであの世へ行ける。

 

「……………なのに。」

 

なのに。

 

「なんで…………死ねないんだよ!」

 

ロープを握る彼は、一向に土台を蹴れない。

 

「…………はぁ、止めよ。」

 

そう思い、土台から降りようとしたその時。

 

ゴゴゴ…………

 

「なっ、地震か!?」

 

地面が揺れ、足元がおぼつかない。

そして、思わず台を蹴ってしまう。

 

「あっ……………キュッ」

 

 

 

 

「嗚呼おいたわしや…………こんなことになってしまうとは…………」

 

…………なんだここ。

 

「お目覚めですか。嗚呼おいたわしや…………あなたは死んでしまったのです…………それも不慮の事故で…………これはとても悲しいことです。」

 

…………はぁ。

 

「これを鑑みて、我々上位者連盟はあなたに次の生を与えました。願いを叶える力と共に…………」

 

願いを、叶える?それに上位者って…………まぁいいや。兎も角、俺の願いを叶えてくれるんだな?

 

「はい。 何でもお申し付けください。」

 

んー…………次の生は、夢を叶えたいな。あ、望みじゃなくてね。教師もやってみたいし、医者にもなってみたい。とりあえず、中間管理職にはなりたくないな。あとは、なんかヒーローになって、世界を救ってみたい。

 

「かしこまりました。では、行きましょう。」

 

え、もう?

 

「はい。もうです。」ガコンッ

 

(0m0)ウワァァァァァァァ!!

 

落ちていく彼を見ながら、管理人らしき者はボソッと言った。

 

「ただし、こちらでも制約は付けさせてもらいますけどね……………試練の無い人間は、とても愚かですから。それに、彼らは今、鬱漫画にハマっているので、それを打開するようなハーレムものを望んでいます……………頑張ってくださいね……………」

 

虚ろな瞳で暗闇を見つめる。

そして彼、いや彼女?どちらか分からない何かは、再び仕事に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

「こんな感じだったか…………?でも、今のところ変化ないんだよな…………ここに来て20年、精神科医の資格をとって、今日から仕事って時に思い出すとは………なんたるタイミング。それに、ここ普通に東京だし。西暦2015年だし。」

 

次の世の彼は、精神科医。

と言っても、メンタルカウンセラーのようなものだ。

学部での成績はよく、飛び級で卒業することができた。

 

「それで今日から派遣されると…………ええと、派遣先は…………」

 

手に握っていた紙を再び開く。

 

「大社政府………?そういやこんなのだったな。」

 

大社、という、この世界では聞き慣れた言葉。

2000年初頭、人類の脅威は空から訪れた。

それは、科学の力を超えた存在であり、人類は、次々と死滅していくのであった。

しかし、大社のスピリチュアルな力により、人類は壁を建設。それにより外敵からの攻撃を抑止したのだった。

 

「俺も政府公認のお役人か。ま、どんな所でも前よりはマシだろうがな。」

 

そう呟きながらスクランブル交差点を横断する。

すると、東京中のモニターに政府の生中継が流れる。

 

「おい、なんだあれ?」

「勇者って何?」

「女の子かよ!」

「えー、写メ撮っとこ。」

 

周囲の人間も次々と上を見上げる。

 

「勇者…………?」

 

その光景は、一言で言えば異様だった。

5人の少女を勇者として神のように奉り、人類の危機に対抗する抑止力として権限させる。

政府は、5人の少女に全てを預けることになったのだ。

 

「へぇ、政府も大変だね。ま、俺は知ったこっちゃないけども。やべ、そろそろ行かねぇと。」

 

彼は周囲には見向きもせず、次の職場に向け走り出した。

 

 

 

 

「あなたには、勇者様方のメンタルケアを行っていただきます。勿論、報酬は弾みますよ。」

「えぇ…………」

 

一番関わりが無いと思っていた俺は、彼女達のメンタルケア専門医に選ばれてしまった。

 

「なんで俺がこんな…………教員免許なんて取らなきゃよかったぜ…………」

 

恐らくそこが注目されたのだろう。

就職のためと、教師に少し憧れていたので、中学5教科の教員免許を取ったのが注目されたらしい。

今日からの職場は、政府でもなく病院でもなく、学校の職員室だった。

 

 

 

 

「俺が担任、ねぇ…………男でいいのか。」

 

そう呟き、扉の前に立つ。

 

「あ、もしかして担任の先生!?そうだよね!」

 

明るい声が廊下に響く。

 

「私、奈良県から来ました!高嶋友奈っていいます!よろしくお願いします!」

「お、おう。東京から来た一文字総司だ。よろしく頼む。」

「総司先生だね!よろしく〜!」

 

すると彼女、友奈は思い切り扉を開けて大声で伝えた。

 

「みんな!担任の先生来たよー!」

 

そう言われ、中に入る。

 

「あー、えーっと、本日より皆さんの担任を務めさせていただくことになりました。一文字総司です。えーっとそれじゃ、皆さんの自己紹介をお願いします。」

 

全員(友奈以外)が意外な顔する。

通常の人間、しかも大赦政府の関係者であれば、謙遜し敬語で会話し、関わろうとしないはずだ。

しかし彼は、なんと名前を聞いてきたのである。

 

「あーっと………勇者だって言うのは聞いてたけど、名前まで知らなくてさ。俺あんまニュース見ないし。」

「な、なんかショック…………」

 

兎にも角にも、自己紹介を始めるのだった。

 

 

「土居珠子なのだ!よろしくお願いするのだ!」

「伊予島杏です♪よろしくお願いします。」

「郡千景。」

「乃木若葉。よろしくお願いします。」

「上里ひなたです。よろしくお願い申し上げます。」

「さっき挨拶したけど、高嶋友奈です!よろしく!」

「土居、伊予島、郡、乃木、上里、高嶋な。よし、覚えた。それじゃ、これからよろしく。」

 

これが彼、彼女らにとって、運命の出会いになることは、今はまだ誰も知らない。

 

 

 

 

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