儚き花の勇者たちと亡霊となり世を彷徨う彼。 作:気まぐれな富士山
「で、あるからして、ここの式が成り立つってわけだ。はい、ここまでで何か質問ある人〜?」
「はいはーい!」
「はい高嶋どうぞ。」
「ここの証明って、こういうのでいいんですか?」
「…………うん。合ってるぞ。」
「やったー!」
「はい、他になにか質問は?…………無いな。よし、じゃあプリントやるぞー。」
彼が担任に就任して約1ヶ月。
彼は徐々に彼女たちと心を通わせることができた。
「やっぱり先生に教えてもらうと超わかるね!」
「そうか?……そう言ってもらうと助かる。」
彼の授業はわかりやすかった。
元々教師に憧れていたからか、情熱に溢れていた。
キーンコーンカーンコーン
「はい終わり。乃木〜。」
「起立。気をつけ。礼。」
当然、生徒からも近づきやすい存在となった。
「なあなあ先生!先生は彼女とかいるのか?」
「いるわけねーだろ。絶賛募集中だ。まあ、俺は彼女いない歴=年齢だけどな。」
「へー、大人なのに経験してなかったのか(笑)」
「うるせぇ。俺はまだ20だからいいんだよ。」
伊予島、土居はとても仲が良く、気さくに話しかけてくる。
土居珠子は自分の珠子という名前が気に入っているのか、よく「任せタマえ!」とか、「こりゃタマらん!」とか言う。どこのドラゴンマスターだ。
伊予島杏は、幼い頃に体が弱かった影響で、年齢は一緒だが、学年が一つ下だ。
勇者としても、力というより知略で敵を倒すタイプらしい。
「みんな。そろそろ道場に行くぞ。」
乃木若葉はリーダーシップが強い。精神的にも肉体的にもタフで、超がつくほどの真面目。
クールで表情がいまいち読み取れないが、話してみた限りそこまで悪いヤツという訳でもなく、ただ表現がわからないだけ、というのを強く感じた。
隣の上里ひなたは、いつも乃木に着いていて、面倒を見ている。素性は不明だが、中身はとても良い子。正しく良妻賢母というやつだ。
ガタッ「………………」
「あっ、ぐんちゃん!一緒に行こー!」
「えっ…………高嶋さん?…………うん、いいよ。」
郡千景は、学校にゲーム機を持ってくるような問題児。しかし性格は中学生らしくツンツンしてる。
話してみた限り、自己承認欲求が高く、自己肯定感が低い、中学生によくある感情の持ち主。
インターネットに固執してるようで、もう少し自主性が上がっていけばいいが…………。
高嶋友奈は、いつもにこやかで、元気に溢れている。そして、人を惹きつける不思議な魅力がある。空手が得意ということで、肉弾戦を好むらしい。
勉強はそこそこで、どっちかというと悪い。
「先生は行くのか?」
「いや、俺はいい。終盤あたりに行けたら行くよ。」
「それ来ないやつじゃないですか〜。」
「行けたら行くって。それじゃあな。」
ガラガラと扉が閉まり、教室がしんと静まる。
「さて……………仕事しますかね。」
いつも通り5人の勇者、ついでに上里の精神状態をバイタルで記録していく。
「カルテもお薬も必要ないな。よし…………」
今はまだ大丈夫だが、これからが大変になる。
彼女達のお役目。外敵、バーテックスから世界を守るのだ。
怪我をするのは必然らしい。下手をすれば死人も出るかもしれないとか。
そうなった時、一番恐れるべきなのは心が壊れてしまうことだ。
人の心は弱く、脆い。
ましてや中学生という未熟な年齢なら尚更だ。
「なんでアイツらがこんなことしなきゃなのかねぇ…………」
仕事と割り切るのは簡単だが、彼女達を忘れることはできない。
良心が刺激され、何もしていないのに罪悪感を覚える。
「…………やめやめ!ンなこと考えてもしゃあねぇわ。テスト作んねぇと。」
と、思考を切りかえて仕事に取り掛かろうとした、その時。
その時が来てしまった。
「……………ん?なんだ?」
最初は気づかなかった。
世界から音が消えるように。
自分以外の全てが止まった。
「まさか…………これがお役目か!」
聞いてた話と違う、と頭の中で混乱する。
なぜなら、お役目は勇者にしかこなせない。
なら、自分は一体なんなのか。
訳が分からないまま、世界は樹海へと飲み込まれる。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ!なんだコイツら!」
白くブヨブヨとした何か。名を星屑という。
大きな歯をガチガチとさせながら噛み殺そうと近づいてくる。
しかも、数が多い。というか多すぎる。
「クソッ!」ザッ!
急カーブを切り、なんとか撒こうとする。
しかし、それが運の尽きだった。
急カーブを切った先には、もう一匹の星屑が。
「ヤバッ!?」
気づいた時にはもう遅い。
頭ごとかじられる、そう思い身構えた時。
「やぁぁぁっ!」
ピンク色の光が突撃し、星屑は消滅する。
「助かった…………って、高嶋!?」
「え、先生!?何してるんですか!」
「今はいいから、とにかく助けてくれ!」
「それで、なんで先生がここに?」
「俺にもなんとも……………」
「ぶっタマげたな!先生も勇者の才能があるのか?」
「そういうことになるのか…………?」
「…………ともかく、先生は隠れていてください。私たちが波を退けますから。」
若葉が戦線に戻ろうとする。
「あ、ちょっと待ってくれ!」
「まだ何か?」
早く戦線に戻りたい、というような意思が若葉から見える。
「俺が言えることじゃないかもしれないが、それでも言いたい。」
珠子、杏、友奈が近づき、円陣を組む。
それに釣られ、千景、若葉も輪に入る。
「何があっても、生き残ってくれ。泥を啜って、地を這いつくばっても、生きるんだ。命を軽いなんて思うんじゃない。」
「先生……………」
「世界を救う本当の勇者は、自分が生きてこそ、真の勇者だと、俺は思っている。」
全員が真剣な表情をうかべる。
「全員、生きて帰ってこい!」
「「「「「はいっ!!」」」」」
「そろそろか…………あっ。」
少し遠くで噴煙が上がる。
あそこで戦っているのだろう。
ちらちらと勇者たちが、そして異形の怪物が目に入る。
「あんなのと戦っているのか…………。ッ!こっちに来る!」
乙女座のバーテックスが近づいてきた。
思わず近くの物陰に隠れる。
「ここにいれば……………」
「きゃあっ!」
すると、真横に一人吹っ飛んでくる。
「郡………!」
「くそっ!もう一回!」
再び跳躍しようする千景。
しかしそこに、一匹の星屑が背後から接近する。
千景は気づいていない。
「危ねぇっ!」
「えっ?」
気づいた時には、走り出していた。
千景を突き出した一瞬。
目の前を、鮮血が覆った。
「はぁ…………はぁ……………」
(あれ、俺は何をして……………)
「………せい………せんせい…………先生!」
気づけば、地面に仰向けになっている。
全身が寒い。出血が酷いのだ。
「そうか……………生きてるか、郡。」
「生きてるかじゃないですよ……せんせぇ………」
左脇腹を噛みちぎられた。
千景が必死に部位を抑えているが、出血が止まらない。
「…………もう、止めろ。俺は、死ぬ。」
「ウソ…………ウソウソウソ!先生、私達に生きろって言ったじゃないですか!なんで、なんで私なんかに!」
「お前は…………生きるべき人間だ……………」
「嫌!絶対に死なせない!」
最後の力を振り絞り、千景の腕を握る。
「お前には、助ける、人間が、いる!おまえの、助けを待つ人々が…………!生きろ!郡千景!」
「先………生…………」
「最後の最後まで…………自分の生を、全うするんだ…………この先、幾多の壁がお前たちを阻もうとも………………生きるん…………だ………………」
「先生……?先生…………!先生!」
千景の声がどんどんと小さくなっていく。
あぁ、神様。二度目の死です。
教え子たちと、もっと話したかった。まだまだ、死にたくなかった。
(未練タラタラじゃねぇか………………)
そうして彼は、意識を手放した。
目が覚めたのは、確かに樹海化している世界だった。
自分の死体を精神体で上から眺める、それならまだ分かる。
しかし、泣いている千景、友奈、珠子、杏、そして後ろを向き、歯を食いしばっている若葉の5人のの姿が止まっている。
「どうなってやがる…………」
『もし…………そこのあなた……………』
「うっ………コイツ、脳内に直接!?って誰だよ!」
『あなたをこちらに送り込んだ上位者です…………ここがあなたの試練ですよ……………死んでしまったあなたには、生き返るための試練を課します…………』
「試練だぁ?」
『
「どんな願いも…………これもお前たちのシナリオか?ケッ、弄ばれてるな。俺も。」
『しかし、あなたに選択権は無いのでは…………?』
頭を掻きむしると、ぶっきらぼうに彼は叫んだ。
「あーあー!そーだよそーだよそーですよ!俺は全くもって死にたいなんて思ってねぇ!今も昔も、思うことは変わってねーんだ!」
『ならば、これを授けましょう…………』
頭上から何かが降りてくる。
「目玉…………?」
『それは
「これでどうにかしてその、眼魂ってのを集めりゃいいんだな?」
『眼魂は、人間界への進出を企む眼魔が持っています…………樹海化した世界に眼魔は出現し、神樹に到達することで、人間界を侵食していきます…………勇者たちと共に、その試練を乗り越えるのです…………』
「アイツらも巻き込むのか?」
『彼女らの目的は元々世界を救うこと…………通常のバーテックス退治となんら変わりありません…………』
「なかなか、
『さあ、現実に魂を戻します…………そのゴースト眼魂を使用し、仮面ライダーゴーストに変身するのです………ほら、早く…………』
「アンタ毎回せっかちだな!クッソ、やるしかねぇ!」
眼魂にあるボタンを押すと、Gの文字が浮かび、眼魂が起動する。
「えーっと、ここがこうで…………おっ。」
ベルト上部のバックルを開く。
「ここに入れるのか…………?」
眼魂をセットし、バックルを閉じる。
すると、
『アーイ!』
「うおっ!?びっくりした!」
『バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!』
なにやら待機音声のようなものが流れ始める。
「待機音声ダサくね……?えー、次はこのレバーか?」
引っ張り、押し込む。
『カイガン!オレ!』
「へ、変身!」
すると、ベルトからなにやらパーカーのような物が飛び出して、彼に着せられる。
『レッツゴー!覚悟!GOGOGO!ゴースト!』
『さあ、あなたの試練…………とくと楽しませて貰いましょう…………』
「うあぁぁぁ!!」
郡千景は、怒りのままに突撃して行った。
あの担任は、最後まで自分たちのことを想ってくれていたと。
「はぁぁぁっ!」
「たぁぁぁっ!」
それは、他の勇者たちもだった。
少しの間とはいえ、確実に一文字総司という男に感謝をしていたし、心を許していた。
「ぐっ!」
「高嶋さん!」
乙女座のバーテックスの布に弾かれ、友奈が飛ばされる。
すかさず乙女座から爆弾のようなものが射出され、友奈に向かって飛んでいく。
「やばっ!?」
「友奈!」
「高嶋さん!避けて!」
若葉も千景も撃ち落とそうとするが、爆弾は予想外な軌道を描く。
杏のボウガンも虚しく空を切った。
「くっ!」
友奈が身構え、直撃するかと思われた。
しかし。事態は変わった。
『ダイカイガン!オオメダマ!』
「!?」
オレンジ色の大玉が、一点に集中した乙女座の爆弾を押し潰し、爆破させる。
「大丈夫か、高嶋。」
「ッ!?その声…………!」
土煙の中から、段々とその姿が見えてくる。
一本の角に、オレンジ色の顔。そして黒のパーカー。
「さぁ……命!燃やすぜ!」
「「「「「いや誰!?」」」」」
仮面ライダーゴーストの誕生だった。