儚き花の勇者たちと亡霊となり世を彷徨う彼。   作:気まぐれな富士山

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第2話 二度目の死と力

 

「で、あるからして、ここの式が成り立つってわけだ。はい、ここまでで何か質問ある人〜?」

「はいはーい!」

「はい高嶋どうぞ。」

「ここの証明って、こういうのでいいんですか?」

「…………うん。合ってるぞ。」

「やったー!」

「はい、他になにか質問は?…………無いな。よし、じゃあプリントやるぞー。」

 

彼が担任に就任して約1ヶ月。

彼は徐々に彼女たちと心を通わせることができた。

 

「やっぱり先生に教えてもらうと超わかるね!」

「そうか?……そう言ってもらうと助かる。」

 

彼の授業はわかりやすかった。

元々教師に憧れていたからか、情熱に溢れていた。

 

キーンコーンカーンコーン

 

「はい終わり。乃木〜。」

「起立。気をつけ。礼。」

 

当然、生徒からも近づきやすい存在となった。

 

「なあなあ先生!先生は彼女とかいるのか?」

「いるわけねーだろ。絶賛募集中だ。まあ、俺は彼女いない歴=年齢だけどな。」

「へー、大人なのに経験してなかったのか(笑)」

「うるせぇ。俺はまだ20だからいいんだよ。」

 

伊予島、土居はとても仲が良く、気さくに話しかけてくる。

土居珠子は自分の珠子という名前が気に入っているのか、よく「任せタマえ!」とか、「こりゃタマらん!」とか言う。どこのドラゴンマスターだ。

 

伊予島杏は、幼い頃に体が弱かった影響で、年齢は一緒だが、学年が一つ下だ。

勇者としても、力というより知略で敵を倒すタイプらしい。

 

「みんな。そろそろ道場に行くぞ。」

 

乃木若葉はリーダーシップが強い。精神的にも肉体的にもタフで、超がつくほどの真面目。

クールで表情がいまいち読み取れないが、話してみた限りそこまで悪いヤツという訳でもなく、ただ表現がわからないだけ、というのを強く感じた。

 

隣の上里ひなたは、いつも乃木に着いていて、面倒を見ている。素性は不明だが、中身はとても良い子。正しく良妻賢母というやつだ。

 

ガタッ「………………」

「あっ、ぐんちゃん!一緒に行こー!」

「えっ…………高嶋さん?…………うん、いいよ。」

 

郡千景は、学校にゲーム機を持ってくるような問題児。しかし性格は中学生らしくツンツンしてる。

話してみた限り、自己承認欲求が高く、自己肯定感が低い、中学生によくある感情の持ち主。

インターネットに固執してるようで、もう少し自主性が上がっていけばいいが…………。

 

高嶋友奈は、いつもにこやかで、元気に溢れている。そして、人を惹きつける不思議な魅力がある。空手が得意ということで、肉弾戦を好むらしい。

勉強はそこそこで、どっちかというと悪い。

 

「先生は行くのか?」

「いや、俺はいい。終盤あたりに行けたら行くよ。」

「それ来ないやつじゃないですか〜。」

「行けたら行くって。それじゃあな。」

 

ガラガラと扉が閉まり、教室がしんと静まる。

 

「さて……………仕事しますかね。」

 

いつも通り5人の勇者、ついでに上里の精神状態をバイタルで記録していく。

 

「カルテもお薬も必要ないな。よし…………」

 

今はまだ大丈夫だが、これからが大変になる。

彼女達のお役目。外敵、バーテックスから世界を守るのだ。

怪我をするのは必然らしい。下手をすれば死人も出るかもしれないとか。

そうなった時、一番恐れるべきなのは心が壊れてしまうことだ。

人の心は弱く、脆い。

ましてや中学生という未熟な年齢なら尚更だ。

 

「なんでアイツらがこんなことしなきゃなのかねぇ…………」

 

仕事と割り切るのは簡単だが、彼女達を忘れることはできない。

良心が刺激され、何もしていないのに罪悪感を覚える。

 

「…………やめやめ!ンなこと考えてもしゃあねぇわ。テスト作んねぇと。」

 

と、思考を切りかえて仕事に取り掛かろうとした、その時。

その時が来てしまった。

 

「……………ん?なんだ?」

 

最初は気づかなかった。

世界から音が消えるように。

自分以外の全てが止まった。

 

「まさか…………これがお役目か!」

 

聞いてた話と違う、と頭の中で混乱する。

なぜなら、お役目は勇者にしかこなせない。

なら、自分は一体なんなのか。

訳が分からないまま、世界は樹海へと飲み込まれる。

 

 

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ!なんだコイツら!」

 

白くブヨブヨとした何か。名を星屑という。

大きな歯をガチガチとさせながら噛み殺そうと近づいてくる。

しかも、数が多い。というか多すぎる。

 

「クソッ!」ザッ!

 

急カーブを切り、なんとか撒こうとする。

しかし、それが運の尽きだった。

急カーブを切った先には、もう一匹の星屑が。

 

「ヤバッ!?」

 

気づいた時にはもう遅い。

頭ごとかじられる、そう思い身構えた時。

 

「やぁぁぁっ!」

 

ピンク色の光が突撃し、星屑は消滅する。

 

「助かった…………って、高嶋!?」

「え、先生!?何してるんですか!」

「今はいいから、とにかく助けてくれ!」

 

 

「それで、なんで先生がここに?」

「俺にもなんとも……………」

「ぶっタマげたな!先生も勇者の才能があるのか?」

「そういうことになるのか…………?」

「…………ともかく、先生は隠れていてください。私たちが波を退けますから。」

 

若葉が戦線に戻ろうとする。

 

「あ、ちょっと待ってくれ!」

「まだ何か?」

 

早く戦線に戻りたい、というような意思が若葉から見える。

 

「俺が言えることじゃないかもしれないが、それでも言いたい。」

 

珠子、杏、友奈が近づき、円陣を組む。

それに釣られ、千景、若葉も輪に入る。

 

「何があっても、生き残ってくれ。泥を啜って、地を這いつくばっても、生きるんだ。命を軽いなんて思うんじゃない。」

「先生……………」

「世界を救う本当の勇者は、自分が生きてこそ、真の勇者だと、俺は思っている。」

 

全員が真剣な表情をうかべる。

 

「全員、生きて帰ってこい!」

「「「「「はいっ!!」」」」」

 

 

 

「そろそろか…………あっ。」

 

少し遠くで噴煙が上がる。

あそこで戦っているのだろう。

ちらちらと勇者たちが、そして異形の怪物が目に入る。

 

「あんなのと戦っているのか…………。ッ!こっちに来る!」

 

乙女座のバーテックスが近づいてきた。

思わず近くの物陰に隠れる。

 

「ここにいれば……………」

「きゃあっ!」

 

すると、真横に一人吹っ飛んでくる。

 

「郡………!」

「くそっ!もう一回!」

 

再び跳躍しようする千景。

しかしそこに、一匹の星屑が背後から接近する。

千景は気づいていない。

 

「危ねぇっ!」

「えっ?」

 

気づいた時には、走り出していた。

千景を突き出した一瞬。

 

目の前を、鮮血が覆った。

 

 

 

 

「はぁ…………はぁ……………」

 

(あれ、俺は何をして……………)

 

「………せい………せんせい…………先生!」

 

気づけば、地面に仰向けになっている。

全身が寒い。出血が酷いのだ。

 

「そうか……………生きてるか、郡。」

「生きてるかじゃないですよ……せんせぇ………」

 

左脇腹を噛みちぎられた。

千景が必死に部位を抑えているが、出血が止まらない。

 

「…………もう、止めろ。俺は、死ぬ。」

「ウソ…………ウソウソウソ!先生、私達に生きろって言ったじゃないですか!なんで、なんで私なんかに!」

「お前は…………生きるべき人間だ……………」

「嫌!絶対に死なせない!」

 

最後の力を振り絞り、千景の腕を握る。

 

「お前には、助ける、人間が、いる!おまえの、助けを待つ人々が…………!生きろ!郡千景!」

「先………生…………」

「最後の最後まで…………自分の生を、全うするんだ…………この先、幾多の壁がお前たちを阻もうとも………………生きるん…………だ………………」

「先生……?先生…………!先生!」

 

千景の声がどんどんと小さくなっていく。

あぁ、神様。二度目の死です。

教え子たちと、もっと話したかった。まだまだ、死にたくなかった。

 

(未練タラタラじゃねぇか………………)

 

そうして彼は、意識を手放した。

 

 

 

 

目が覚めたのは、確かに樹海化している世界だった。

自分の死体を精神体で上から眺める、それならまだ分かる。

しかし、泣いている千景、友奈、珠子、杏、そして後ろを向き、歯を食いしばっている若葉の5人のの姿が止まっている。

 

「どうなってやがる…………」

『もし…………そこのあなた……………』

「うっ………コイツ、脳内に直接!?って誰だよ!」

『あなたをこちらに送り込んだ上位者です…………ここがあなたの試練ですよ……………死んでしまったあなたには、生き返るための試練を課します…………』

「試練だぁ?」

眼魔(がんま)を倒し、偉人たちの魂を15個手に入れなさい…………さすればグレートアイの力により、どんな願いでも叶うでしょう…………』

「どんな願いも…………これもお前たちのシナリオか?ケッ、弄ばれてるな。俺も。」

『しかし、あなたに選択権は無いのでは…………?』

 

頭を掻きむしると、ぶっきらぼうに彼は叫んだ。

 

「あーあー!そーだよそーだよそーですよ!俺は全くもって死にたいなんて思ってねぇ!今も昔も、思うことは変わってねーんだ!」

『ならば、これを授けましょう…………』

 

頭上から何かが降りてくる。

 

「目玉…………?」

『それは眼魂(アイコン)…………人間の魂を封じている物です…………そして腰のそれは、ゴーストドライバー…………偉人たちの魂を借り、自らの力とすることができるアイテムです………………』

「これでどうにかしてその、眼魂ってのを集めりゃいいんだな?」

『眼魂は、人間界への進出を企む眼魔が持っています…………樹海化した世界に眼魔は出現し、神樹に到達することで、人間界を侵食していきます…………勇者たちと共に、その試練を乗り越えるのです…………』

「アイツらも巻き込むのか?」

『彼女らの目的は元々世界を救うこと…………通常のバーテックス退治となんら変わりありません…………』

「なかなか、()()()()()ことを言ってくれるな。」

『さあ、現実に魂を戻します…………そのゴースト眼魂を使用し、仮面ライダーゴーストに変身するのです………ほら、早く…………』

「アンタ毎回せっかちだな!クッソ、やるしかねぇ!」

 

眼魂にあるボタンを押すと、Gの文字が浮かび、眼魂が起動する。

 

「えーっと、ここがこうで…………おっ。」

 

ベルト上部のバックルを開く。

 

「ここに入れるのか…………?」

 

眼魂をセットし、バックルを閉じる。

すると、

 

『アーイ!』

「うおっ!?びっくりした!」

『バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!』

 

なにやら待機音声のようなものが流れ始める。

 

「待機音声ダサくね……?えー、次はこのレバーか?」

 

引っ張り、押し込む。

 

『カイガン!オレ!』

「へ、変身!」

 

すると、ベルトからなにやらパーカーのような物が飛び出して、彼に着せられる。

 

『レッツゴー!覚悟!GOGOGO!ゴースト!』

 

『さあ、あなたの試練…………とくと楽しませて貰いましょう…………』

 

 

 

 

「うあぁぁぁ!!」

 

郡千景は、怒りのままに突撃して行った。

あの担任は、最後まで自分たちのことを想ってくれていたと。

 

「はぁぁぁっ!」

「たぁぁぁっ!」

 

それは、他の勇者たちもだった。

少しの間とはいえ、確実に一文字総司という男に感謝をしていたし、心を許していた。

 

「ぐっ!」

「高嶋さん!」

 

乙女座のバーテックスの布に弾かれ、友奈が飛ばされる。

すかさず乙女座から爆弾のようなものが射出され、友奈に向かって飛んでいく。

 

「やばっ!?」

「友奈!」

「高嶋さん!避けて!」

 

若葉も千景も撃ち落とそうとするが、爆弾は予想外な軌道を描く。

杏のボウガンも虚しく空を切った。

 

「くっ!」

 

友奈が身構え、直撃するかと思われた。

しかし。事態は変わった。

 

『ダイカイガン!オオメダマ!』

「!?」

 

オレンジ色の大玉が、一点に集中した乙女座の爆弾を押し潰し、爆破させる。

 

「大丈夫か、高嶋。」

「ッ!?その声…………!」

 

土煙の中から、段々とその姿が見えてくる。

一本の角に、オレンジ色の顔。そして黒のパーカー。

 

「さぁ……命!燃やすぜ!」

「「「「「いや誰!?」」」」」

 

仮面ライダーゴーストの誕生だった。

 

 

 

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