ヴァンパイアに転生したんですけどスローライフしたいです。 作:麗紫 水晶
いやぁ、街の進行といい頼もしい味方も出来てちょっと浮かれているリュードです。転生者です!ヴァンパイアです!元は人間です!雅 煌太(みやび こうた)と言う名前でした!……ダメですか?
ま、まあ、強調するのもこれくらいにしましょうか。
今私は大変な状況に立たされていました……。
まだ、完成にも至っていないこの街が何故か人間側の貴族に知られてしまったのです!
家を建てる事より遥かに緊急事態です!
何故知られてしまったのかは後で考えるとして、まずはこの状況を打開しなければ……。
「それで一体誰が来ているの?」
「そ、それが……。」
サリーナが、口ごもってしまいました。
「リュード様、私からお話ししましょう。」
「バルジオ……。」
サリーナが話しずらいと感じて、バルジオが代わりに話し出しました。
「リュード様が建てられた休憩所にさる高貴な御方が転移の魔法でいらしております。是非あなた様にお会いしたいと望まれており、お待ち頂いております。」
「え、え、ちょっと待って?ヴァンパイアじゃ……ない……よね……?」
「はい、歴とした人間です。実は私と遠縁にあたります。」
「ええっ!バルジオって貴族だったの?」
「いえいえ、親戚と言うだけで私は貴族になった事などありません。現にリュード様の僕(しもべ)になっている事ですしな。」
「た、確かにそうかも知れないけど……。」
「実は資金集めの為に宝石を買って頂いた方でもあるのです。」
「えっ、そうなの?」
驚きました、貴族にあの血晶石を売っていたとは……でも、確かに巨額な大金を払えるのは貴族や大きく展開している商人、あと王族位のものか……。
「で、バルジオの親戚が何故この場所を?」
そうなんです、いくら親戚でも場所までは教えてなかった筈……。
「はい、場所は確かに教えてはおりません。ですが、後々力添えになるやもしれないと、転移のスクロールを渡しておいたのです。」
「転移のスクロール?あるの?そんなのが?」
「はい。」
はぁ……それは知りませんでした、余り詳しくないだけにそんな高級そうな代物があるなんて。いや、高そう……。
「あれ?でもこの場所は知らないんだよね?」
「そうです、あの方は場所ではなくて私とサリーナをイメージして転移して来たのです。」
「へっ!何それ?」
え、ちょっと、頭がパニックになってます。
「通常ならば行ったことのある、行きたい場所をイメージして転移しますが……かの方は場所ではなくて、我々をイメージして転移して来たのです。」
「ええっ!そんな事が出来るの?でもそれなら何で離れた工事現場に?」
「はい、人物をイメージした場合は場所をイメージするより、目の前に現れる確率が低いのです。希に直接会う事もありますが、周辺に転移する方が多いかと。更には失敗する可能性もありますな。」
はあぁ…なんてとんでもないスクロールでしょ。それこそ失敗して壁の中……なんて事もあり得る訳ですから賭けに近いですよね。
まあ、気持ちは分からなくもないですよ。第一繋がりが出来れば、お互い敵対する確率が下がる訳だし、それだけメリットが増える訳だし得と捉えたんでしょうね……しかし思い切りましたね……。
「それで、この後、どうしますか?お会いになりますか?」
「いやぁ、ここで強引に帰ってもらった所で印象が悪いだろうし……他言無用と言う事で、秘密裏に会うしか無いんじゃないかな。」
「では、こちらにお連れしますか?」
「そうだね、ギルドの会議室を借りるにしても悪目立ちしてしまうからね。あくまでお忍びでいらしているだろうから丁重にお迎えしてくれるかい?」
「分かりましたわ、ではお迎えに。」
「頼むねサリーナ。その間2人も同席頼むよ。私は初対面だしね。ってそうだ、かの方って一体誰なの?その親戚さんは?」
「お会いしてからの……と言う事にしておきましょう。」
ぐっ、バルジオのこのにこやかな顔は……サプライズする気だな……勿体ぶらなくても…うう、緊張して来た。一体誰に会わせようとしてるの?
私は、自宅の拠点に応接室と客人が泊まる時の部屋を追加で建てて置きました。いざというときの為になんですが……まさかこんなに早くに使う事になろうとは……。
まあ、飾り等があるわけではなく殺風景ですけどね……。
その応接室で待っていると、サリーナが2人を連れて直接転移して来ました。人目につかないようにとの配慮です。現場ではメリザさんも気を使ってくれて、作業員さん達には気付かれていないようです。後でお礼言っとこ。
「お連れしました、リュード様、こちらはラスマンド侯爵と側近のヒューイ宰相です。」
サリーナが、紹介してくれましたが……こうしゃく!?侯爵って言った今?急にそんな凄い人達と対談なんて……そりゃとんでもないわ、緊張感半端ないでしょ!あ、汗が出てきた……。
「は、初めまして。リュードと申します。」
「うむ、私はラスマンドと言う。こっちは私の側近であり宰相をしている……。」
「ヒューイと申します。以後お見知り置きを…。」
「よ、ようこそこの様な所に…ど、どうぞお掛けになって下さい。」
私が促すと、ラスマンド侯爵は椅子に腰掛け、その後ろにヒューイさんが立つ形になりました。流石に並んで座るなんて事は無いですかね。
私も対面の椅子に腰掛けます。バルジオが椅子の後ろに立つ形になりました。
直ぐにサリーナが紅茶を出してくれました。そしてバルジオと共に並んで立ちます。遮音の魔法をサリーナが掛けて、密談が整った訳です。そこで私から話を切り出しました。
「バルジオから話を聞きました。この度は宝石を買って頂きありがとうございます。ご来訪に際して、驚かれたかと思いますが街を再興する資金が出来ました。お礼申し上げます。」
「なに構わぬ、バルジオより貴殿の事は聞いている。こちらこそ街を救ってくれた事に、礼を言いに来た。」
2人は頭を下げてきました。凄いですね、普通なら頭を下げるなんて、めったにありません。
「あ、頭を上げて下さい。街を半壊…いや全壊させてしまった私にお礼などと……。」
「いや、領主が民を見捨てて逃げ出して、街は蹂躙される所であった。貴殿があのヴァンパイアを倒してくれていなければ完全に街が滅んでいたし、最悪ヴァンパイアの領地となってしまう所でもあったのだ。確かに犠牲者も多く出てはいるが、それ以上の犠牲を出さずに済んだのだ。感謝している。」
「いえ、元々原因は私にありました。大切な者を守る為に戦ったのですが、かえって事が大きくなってしまいました。ですので、償いになるかは分かりませんがこの街の人々を守りたいと思ってみんなに手伝ってもらい、街を作っています。」
私も、ラスマンド侯爵も目をじっと見据えていました。暫し沈黙の後、ラスマンド侯爵が話し掛けて来ました。
「フッ…私の見込み道理のようだ。突然だが、リュード殿。我が領地との外交を開かぬか?」
「えっ!?」
爆弾発言の様な話を切り出されて、驚いてしまいました。外交!?いや、有り難いですけど。
商人が往き来出来るとなれば、流通が生まれ更に人々も街も発展していく事が出来るでしょう。お互いに潤う事が出来ればウィンウィンです。
「あ、あの、大変有り難く光栄な事ですが、宜しいのですか?ご存知かと思いますが私はヴァンパイアですよ、地位も名誉もない者が領主で良いんでしょうか?」
「うむ、貴殿はヴァンパイアかも知れぬ。しかし民はほとんどが人間だ……。我々としてもこれから発展しそうな街と早めに繋がりを作ればメリットが大きいと判断した。そして貴殿がここの領主になってくれれば、なお良い。」
「は、はあ、私には自信が無いのですけどね……。」
「みな、リュード様しか居ないと思っておりますぞ。」
「バルジオ……。」
「当然です!旦那様以外にはおりませんし、旦那様でなければ私は出て行きます!」
「サ、サリーナ!?」
ちょっ、そんな覚悟してたの?
「この街にも、我が主の様に強さと優しさと威厳を持った者が領主として必要でしょう。前任の様に、民を見捨てて逃げ出す様では民も納得しないでしょうし。」
「ヒューイ宰相……。」
いや、まだまだ責任感のある人物は沢山居ると思いますけど………フゥッ、確かに街の再興を言い出したのは私だしなぁ……。
「……分かりました、私が領主としてこの街をまとめたいと思います。力を貸して頂けますか?」
周りが、笑顔になりました。サリーナなんて涙ぐんでます。
「無論だ、宜しく頼む。」
「こちらこそ。」
お互いに握手を交わし、同盟が出来た事を喜びました。
その後も、流通経路や細かいところの打ち合わせをしました。街が完全に出来上がるまでは内密に流通をするとし、お披露目が終われば堂々と往き来出来る様にしましょうとなり、サリーナが再度転移で侯爵邸に送って行きました。お二人も俄然乗り気で、早速準備に取り掛かるとの事。何せお忍びなので……。
はあ、でも…領主……ですか…まあ、覚悟はしましたけどホントはもっと気長にスローライフしたかったんですけどね……ダメですか?何がどうしてこうなった?
街が完成する迄はと、大きな転移魔方陣が作られました。勿論目立たなく、そしてラスマンド侯爵領との往き来限定です。
普通に街道を来るとなれば、ラザルドの街を通過することになります。まして、この街の民が他の場所から現れる等と入り口を見張っている騎士達にバレる訳にはいきません。商人達がどこに向かっているのかを突き止められたら終わりです。街が完成するまで、気を抜く事は出来ないでしょう。
その夜に、広場に人々が集められ、臨時で作られた壇上に私は立たされていました……わたし…晒されて、打首獄門???
「皆の衆、疲れている所集まってもらって済まない。ここに居られるリュード様は私の主にしてこの街を作る事を決意された御方……この度、ラスマンド侯爵との外交をすることと相成った!そこで、リュード様をこの街の領主として行政を担って貰おうと思うのだが、皆の意見を聞きたい?」
バルジオが、人々に聞こえる位の大きな声で皆に問うていました。全体がざわつきます。当然ですよね、余り知られていない私が領主?しかもヴァンパイア?
大丈夫なのか?ってね……。
「……わ、わたしは、賛成します!!」
人々の集まる真ん中辺りから、若い女性の声が上がりました。
見ると、茶髪のロングヘアで給仕の服装をしています。一緒に手を繋いで居るのは銀髪のショートヘアの女の子です。姉妹だと後で分かりました。
「私達はあの時、目の前で両親がヴァンパイアに殺されました。絶望と、あのヴァンパイアに対する怒りが
込み上げていました……でも、そこに居られるリュード様が仇を取ってくれた所を見ました……それから生きる為の住む場所や食事、仕事を下さった……この御方には感謝しかありません。この御方であれば、街は安泰だと思います!!」
な、なんていい子………ダメだって、おじさん涙脆いんだから!
「そうだ、俺もあのままじゃ絶望で気力を失くしていた。生きる希望を与えてくれたのはあんただ!」
「そうだ!俺達は、あんたに生きる希望を貰ったんだ!」
「そうよ!貴方を信じるわ!」
「リュード!」
「リュード!」
「リュード!」
み……皆さん……。
「…ありがとう、みなさんと一丸となって街を守っていきましょう。どうか力を貸して下さい!!」
私は深々と頭を下げました。この時ばかりは魔物が驚いて尻込みするほどの歓声が上がったんです……。
「うおぉ!焼き肉パーティーだぁ!!」
「「「「「うおおおぉぉっ!」」」」」
なんと!そのまま焼き肉パーティーに突入!マジかっ!飲めや歌えやの楽しい一時が……。
人々は辛い事や苦しかった事を一時忘れ……その夜は遅くまで月明かりに負けないくらいに、灯りが灯っていました……微笑ましい風景に私は感謝していました……ありがとう皆さん、私も頑張ります……。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ところで皆さん凄い!二日酔いどころか、逆に仕事に気合いが入ってる!私の方が気負い負けしそう……。
「おはようございます!領主様!」
「おはようございます!リュード様!」
「お、おはようございます!」
な、なんか良かった、街の人達の表情が明るくなって……。いい傾向で有り難いです。商店街も出来上がって来て、冒険者ギルドの近くに商業ギルドも建ち上がった様で、バルジオも役員として事に当たっているそうな……身体大丈夫かな?無理しなきゃいいけど。
「リュード様外壁の件ですが……。」
「リュード様、向こう側の土地についてですが……。」
「リュード様、こちらの人数を増やして欲しいのですが……。」
私まで世話しない日々が続きました。人数確保と生活面の確保、みんなに分担してやってもらっているけど……大丈夫かな?
「主殿!」
「あ、ミレーナ、どうしたの?」
ミレーナが私の所に慌てて飛んで来ました。
「街道が……草原まで到達したぞよ!」
「マジで!やった!すぐ行くよ!」
2人で、飛んで一直線に道路現場に向かいます。
樹海の入り口付近で歓声が上がっていました。
「ご苦労様!とうとう開通したって?」
「はい、リュード様。無事に開通いたしました。」
おお、確かに草原を見るのは久し振りかも。
荷馬車が余裕ですれ違えれる程の幅で、煉瓦が敷き詰められてます。
両サイドの脇には、間隔を置いて丸太を立て上から魔光石の取り付けられた街灯が道を照らす様になっていました。暗くなると自動で明るくなるんだとか。チートかこれも?
更に入り口に立派な門が出来ました。
「街の名前はどうするのじゃ?」
ミレーナが疑問を投げ掛けて来ました。確かにそう思いますよねぇ。
「うん、この場所の名前をそのまま貰おうと思う……。」
「なに、この樹海のか?」
「そう、例え適当と言われてもこれにするよ。……樹海の街“エンルージュ”!」
私の独断と偏見で……街の名前が決定したのです……………………。
読了ありがとうございます。次話もお付き合いください!では。