白銀家のきつねじゃい!   作:ポンタ ponta

4 / 37
 Ahoy!

 人間って一歳前後で話し始めるんですね。知りませんでした。てっきり三歳頃かと思ってました。
 というわけで、白銀ノエル及び白銀シエル現桐生ソコロの年齢は一歳とします。しかし宝鐘マリンについては、他の方々より年上だと思色気が凄いので四歳くらいにします。
 また、ホロノメトリアという公式世界観アーカイブという存在があるのを知りませんでした。
 そのため、既存の話でホロノメトリアのロケーション、キーワードに変換できるところは変換しました。ただ、独自設定も使いますので、もしかしたら矛盾が生じる可能性があります。
 この度は私の調査不足故に混乱させてしまい申し訳ございませんでした。
 もう一度一話と二話を読んでおくことをお薦めいたします。三話は編集し直してないので大丈夫です。

 ホロライブの二次創作ガイドラインの一部に、『第三者の名誉・品位等を傷つけるもの、第三者の権利を侵害するもの』という一文があります。
 私はホロライブメンバーの配信で明かされた父親や姉、妹などの情報も組み込むつもりです。そのため、今回宝鐘マリンの父親と姉も登場します。しかし、上記のガイドラインに違反するかどうか判断に迷っているため、読者の皆様方に指示を仰ぎたく記しました。申し訳ないですが、ご協力をお願いいたします。

 今回宝鐘マリンが幼女として登場します。そのため、口調はホロAmongu us等の配信を参考に書いております。正直なかなかにキツいと思いましたが、そんな思いは断腸の思いで断捨離。船長や博士も配信で言ってました。断捨離できる女は良い女って。なので私は悪くない。でも幼女ムーヴは最初だけ。以降はクソガキムーヴですのでご安心を。


第4話 秘密結社においでよ

「Ahoy!」

 

 そんな声と共に幹部といろはの元に歩んだ幼女。赤い髪をツインテールでまとめ、おおよそ肩の高さまで垂らしている。瞳は左が赤、右が黄色のオッドアイ。その両眸は好奇心だろうか、きらきらとした輝きを放っており、幼女は風真いろはの元へと駆け寄った。

 

「どうしたでござるか?」

「あのね、あのね、私宝鐘マリンっていうの!」

「自分の名前言えて偉いでござるな。拙者は風真いろはでござる。何用でござるか? 迷子でござるか?」

「ううん、あのね、マリンたんね、いろはちゃんが戦っているとこ木の上から観てたの! 頑張ぇっていっぱい応援してたの!」

「そうでござるか。応援ありがとうでござる」

「それでね、その刀触ってみたいなって思ったの!」

「お安いご用でござるよ。でも抜いたらめっ、でござるよ」

「うん! ありがとう!!」

 

 ふわぁぁぁぁ!! とした表情でチャキ丸を眺めて触るマリンを見て、幹部はひとつ思うことがあった。

 

(宝鐘ねぇ……あまり聞かない名前だし、この子宝鐘海軍総帥の娘かな。だとしたらどこかに護衛が居るのか?)

 

 怪しまれないように素早く周囲を確認したものの、それらしき人物は見当たらなかった。

 

(外に待機しているとか、抜け出して来たとかそういうことか?)

 

 と、幹部が思考を巡らせていると、二人の声がそれを遮った。

 

「チャキ丸って名前……なんか電池入ってそう」

「電池は入ってないでござる! 正真正銘の武器でござる! おもちゃじゃないでござるよ!!」

「抜けば鳴る?」

「鳴らないでござるよ!」

 

 刀を抜こうとするマリンに、幹部は質問を投げかける。それに気を取られたマリンから、いろはがチャキ丸を取り返した。

 

「ねぇ、君ってどこから来たの?」

「山の方からきたよ?」

「そう、ありがとう」

 

 マリンが指差したのは宝鐘海軍本部の方向とは逆。どうやら彼女は苗字が同じなだけらしい。

 しかし、ひとつ思い浮かんだ事があった。

 

(宝鐘なら、もしかしたら『宝鐘』に関する資料とか持ってるかもしれない)

 

 幹部はマリンの家に資料があるかもしれないという可能性にかけて、マリンの家にお邪魔することにした。

 チャキ丸を奪おうといろはに『ジャスティスパンチ』を繰り出しているマリンに訊ねてみれば、いいよとの快諾。ただし交換条件として手土産を要求された。強かな幼女である。

 さて、早速会計を済ませて外に出れば、秋らしい爽やかな風が吹いた。

 

「ところでマリンちゃん」

「マリンのことはマリン船長って呼んで! マリン将来海賊になってお宝を探したいから!」

「そ、そうか……海軍に捕まらないように頑張ってね」

 

 海軍本部が近くにあるというのに随分と大胆である。幹部は苦笑混じりに応援し、それで、と話しを戻す。

 

「マリン船長はどうやってここに?」

 

 その質問を待っていたかのように、マリンはちょっとヤンチャそうな卍ポーズを取り、一言。

 

「船で来た」

「嘘つけお前」

「嘘じゃないもん!」

 

 マリンの『チャリで来た。』のノリに幹部の容赦ないツッコミが飛んだ。

 

「あれだよ、あれ!」

 

 負けじとマリンが指差した方向にあるのは赤色の三輪車。

 赤色の 三輪車

 

「三輪車じゃねぇか!」

「海賊船ですぅ!」

「三輪車でござるな」

 

 どっからどう見ても三輪車。

 見る方向で形が変わるトリックアートでもなんでもなく、普通の三輪車。

 

「マリンの海賊船は赤色って決めてるの! つまり海賊船=赤色、赤色=三輪車、なら三輪車=海賊船でしょ!」

「強引過ぎるでしょ!」

 

 三輪車を海賊船と認識するマリンの気持ちなど分からない。

 やはり幼女に限らず、幼い者の思考は支離滅裂。未知の魚が泳いでいる。

 

 さて、道中なんやかんやありながらも、船長が住むという山奥の貧困住宅にやってきた三人。

 マリンが立ち止まったのは、玄関扉に大きな穴が空いているアパートの一室。

 

「ここだよ。マリンのお家。ちなみにこの穴は、夜中の二時にワザップ光彦の練習してたら近隣の人に蹴破られた。全く野蛮な人だよねー!」

 

 やれやれと首を振るマリン。

 最後の部分が聞こえてきたのか、隣の部屋からうるせぇとの声が飛んできた。

 

「やーいやーい!! 働かないニートめぇ!! 親の脛かじっておいしいかぁああ!!?」

「ぶちのめすぞクソガキィ!!」

「なはははははは!!!」

 

 腹を抱えて爆笑するマリンに、幹部といろはは呆れた視線を送る。

 と、マリンの家の扉が開き、ひょっこり少女が顔を出した。顔と身長的にマリンの姉だと思われる。

 

「マリンちゃん? あっ」

「あっちょっとお姉ちゃん!? 愛しのマリンちゃんが帰ってきたのにその仕打ちはなに!?」

 

 マリンの背後にいる幹部といろはを見た瞬間、姉はドアを音を立てて閉め、さらにガチャリと鍵を閉めた。この様ではおそらくチェーンロックもしているだろう。

 マリンがガチャガチャとドアノブを回してもうんともすんとも言わず、インターホンを鬼連打しても扉が開く気配がない。

 

「おーいお姉ちゃんドア開けてくれぇぇええ!!」

「…………」

 

 返ってきたのは沈黙。

 何だかいたたまれなくなって、幹部はマリンの肩を叩く。

 

「私たちお邪魔そうだから帰るよ」

「いや、手はまだある……う゛うんっ゛」

 

 何をするつもりなのか、マリンは咳払いして喉の調子を整えると両手を口の傍に添えた。

 

「お前は包囲されている! 抵抗は無駄だ! 大人しく投降してドアを開けなさい!!」

「…………」

「田舎の母ちゃん泣いてんぞ!! 可哀想だとか思わんのか!!」

「母さん一緒だろ」

 

 何をするかと思えば、籠城する犯人に声をかける警察の真似ではないか。

 

「あの、マリン船長殿、喧しく騒ぎ立てていたらまた隣人から怒られるでござるよ」

「あーあー聞こえないー」

 

 いろはの正論に、耳をぱたぱたさせて聞こえないフリをしてやり過ごすマリンは、再び声を張り上げる。

 

「あくまで出てこないつもりか! こうなっては仕方ない! これをやりたくはなかったが仕方あるまいなぁ!! 秘技――」

「あぁ隣人殿に怒られるでござる……風真逃げても良いか?」

 

 頭を抱えるいろはは、懇願するように幹部にしがみつき、顔を見上げる。

 一方でマリンは、リズミカルにドアをノックすると祈るように両手を組んだ。

 

「『雪だるまつくーろー、ドアを開けてー』」

「え、それが秘技なの?」

「『一緒に遊ぼう、どうして出てこなーいーのー?』」

 

 それと同時に、先程の隣人の玄関のドアが開いた。

 

「そっちはお呼びじゃないんだワ。 か え れ ! か え れ !! 帰って親の脛でもかじってな!」

「さっきからうるせぇんだよメスガキが!! ギャン泣きさせてやろうか!!?  ああ゛ん!!?」

「マリンを泣かす前に泣いてる親を何とかしたら? 脛かじり虫」

「がっ……くっ…てめぇ」

 

 顔を真っ赤にした隣人は、青筋をいくつも巡らせて、一発ぶん殴ろうとマリンに一歩近付いた。

 

「おっと近付くのはやめて貰えますか? こんな幼女に近付くなんてあなたロリコンですか? おぇっ、ニートの上にロリコンだなんて……エンガチョエンガチョ」

 

 『世も末ですわー』と肩をすくめるマリンに対し、隣人はひたすら深呼吸を繰り返すことで冷静になり、ロリコンと呼ばれることを回避。

 しかし未だに頭に血が上っているので、唾を跳ばす勢いで口を開いた。

 

「いい加減黙れ貴様!! それにさっきから一体何をしてるんだ!!」

「………」

「話せよ!!?」

「やだなー『黙れ』って言ったのはソッチじゃないですかぁー、忘れちゃったんですかぁ? 三歩歩いたら忘れる鳥頭ですかぁ?」

「「ぶちころすぞ」」

 

 まさかの幹部のぶちころ発言。鳥頭云々は看過できなかったようだ。

 幹部の鉄拳を喰らってたんこぶをこしらえたマリンは涙目で大人しくなった。

 やはり暴力。暴力は全てを解決する。

 ということで玄関の穴を塞いでいる板(ニトリ製)をぶち抜いて部屋に入ることに成功した。

 

「お姉ちゃんマジでチェーンロックまでかけてやがる」

 

 姉の陰キャぶりに戦慄くマリン。このように肩を震わせたのは久しぶりである。

 ひとまず来客として幹部といろははリビングに通し、マリンは姉の部屋へと足を向かわせた。

 そして姉の部屋の前で足を止めた。

 

「『前は仲良くしてたーのに、なぜ会ーえなーいーのー』」

「『あっち行って』マリン」

「おう……これには返事してくれるのか」

 

 まさか返事が返ってくるとは思っておらず、マリンは束の間ポカンとした。

 しかしそれもすぐのこと。

 

「『わかったよー』……とでも言うと思ったか!!?」

 

 と、ドアを蹴破る勢いで姉の部屋へと侵入した。

 するとマリンの視線の先にはヤドカリみたいに布団に丸まって閉じこもっている姉の姿があった。

 それを見てマリンは『人間からヤドカリって、それって進化してるの? 退化してるの?』とどうでも良いことを疑問に思ったが、ひとまず頭を振って追い出した。同様に、追い剥ぎよろしく震えている姉から布団を剥いだ。

 

「酷いよお姉ちゃん。外に閉じ込めるだなんて」

「酷いよマリンちゃん。外に追い出すなんて」

 

 顔を見合わせたかと思えば、二人とも似たようなことを同時に言った。

 

「お姉ちゃんさぁ……そろそろそのコミュ障直したら? 人と顔を合わせられないのはまずいよ」

「いいもん。コミュ障でも生きていけるもん」

「……じゃあ陰キャを直しなよ。妹のマリンを見習いな。ありのままのLET IT GOだよ」

「マリンちゃんのそれはもう終わりの“IT”だよ。もう少し周りの目を気にした方がいいよ」

「周りの目を気にして、自分の夢を叶えられると思ってるのか!?」

「そういうとこだよ。脈絡無く急に語尾強くするの。そういうとこ」

「…………」

 

 束の間流れた沈黙。それを破ったのは姉の方だった。

 

「ところで、お客さん待たせてていいの?」

「あっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ソファーに座りながら、幹部は何ともなしにぐるりと部屋を見渡す。

 隣にはいろはがぽこべぇと戯れており、非常にホワホワとした空気を醸し出している。

 

(随分古そうな見た目だったけど、中身は割りとしっかりしてそうだな……)

 

 生活感溢れるリビングではあるが、目に見えて気になる汚れや損傷はない。

 こまめに掃除を行っているのだろう。

 

 さて、ヒマゆえに何の益にもならないことを考えていた幹部であるが、先程姉の部屋に走って行ったマリンが戻ってくると、そちらに意識を傾けた。

 

「お帰り。お土産は棚の上に置いといたからね」

「うん、ありがとー」

 

 さて、ようやく本題に入れるようになり、幹部は再びマリンに『宝鐘』の事を訊ねた。

 しかしマリンが言うには、そういうものは見たことが無いそうで、知っていそうなのは父親だと言う。

 

「父上はどこに?」

「キュウジツシュッキンってヤツで今は家に居ないよ」

「そ、そうか……御苦労様です」

 

 思わず苦笑が溢れたその時、玄関の扉が開いた。

 

「ただいま参上! 今日も今日とて社会の歯車として回ってきたぜい!!」

「……うちの親がごめん」

「おっ、お客さんやないか!? 珍しいやな、ゆっくりしたってや! ま、何もあらへんがなぁ!! ガハハハハハ!!!」

 

 豪方磊落、豪快奔放。

 活達に笑う父親は、娘のマリンの肩をバシバシ叩き、マリンはうざそうに顔をしかめて父親の手を叩き払った。

 幹部といろはは簡単に自己紹介すると、幹部が経緯も含めて父親に『宝鐘』のことを訊ねる。

 

「あぁ、街が賑やかやなぁと思っとったら、そんなイベントがあったんか」

「ええ。それで何か情報があればとお伺いしました」

「せやなぁ……」

 

 ハゲ頭に片手を置いて悩む父親。

 それを見て『キュキュット♪』と小声で呟くマリン。

 思わず吹き出してしまう幹部といろは。

 

「「ご、ごめんなさい」」

「気にしないでええんやで。ご近所さんにも『電球』と言われとるからのぉ!!」

 

 ニヤッと笑い、口からキラリと零れる光とキラリと光る頭。

 一体何Wだろうか。

 

「まぁ、それはともかく、ひとつ有益そうな情報があるで。家に伝わるお伽噺、いや昔話と言った方がいいか」

「昔話……ですか」

「そうや。親から子供へ、そしてその子供へと伝われてきた話や……そう、それは――」

 

 意味深に語り出す父親に、ごくりと唾を呑んで耳を傾ける幹部といろは。思わず身を乗り出してしまうのも仕方無い。

 それを見た父親は、厳かに口を開いた。

 

「――ハゲが遺伝するという話や」

「おい電球そういうのいらんから。真面目にやれ」

「すまん。誤魔化すつもりは毛頭無かったんや……ハゲだけに。ぶふっ」

「いやクソつまんねーわ」

 

 キメ台詞と共に天頂が輝いた。

 そしてマリンからの手加減なしの平手が、父親の曇り無き頂点を叩く。出鼻を挫かれた幹部といろはもジト目で父親を責める。

 もう一度すまんと謝った父親は、今度こそその昔話を語り始めた。

 

 

 

―――………

 

 

 

 むかしむかし、遥か昔の古代のことです。世は暗黒時代。ニブルヘイムとイワレている時代のことです。

 

 その時代はケガレが蔓延したセカイで、ヒトの心は乱れ、大地はひどく荒廃し、邪悪なアヤカシやカミが跳梁跋扈していたセカイです。悪魔と天使が別れたのも、邪悪なカミによるものと言われています。

 そのセカイでは、マクスウェルの魔、通称魔王と呼ばれる超越的存在が居ました。

 どこから来たのか、何を目的に猛威を奮っていたのかは知りません。その者の通った跡には、何も残らなかったと言われています。

 

 そんな魔王に立ち向かう存在が居ました。

 その者達の名前は残念ながら伝わっていませんが、そのうちのひとりは、我々を創り出した創造主です。

 

 その創造主は魔王を封印した後、名も無き御先祖様に『宝鐘』を託しました。私達の御先祖様は、その神器『宝鐘』から名前を頂戴し、名字としたのです。

 

 その『宝鐘』の権能は、創造主曰く、『ありとあらゆる生物の魂に作用する。しかし、真の持ち主ではないとその権能は把握出来ない上に発揮されない』と。

 

 そして、付け加えるようにかの創造主は我々にこう言いました。

 

 ――いつか、来るべき時に備えよ、と。

 

 

 

―――………

 

 

 

「――ていう話しや。一部抜けてるところもあるが、これで全部や。どや、役に立ったか?」

「ええ、ちょっと驚くような内容があったのは確かですが、十分に」

「まぁ、驚くよな。真偽はともかく俺も小さい頃聞いて驚いたわ。俺達は創られた存在だったなんてさ。どうせならハゲの遺伝子失くして欲しかったわ」

「お父さんハゲ気にしてたの?」

「いや全く。だが俺の父さんは気にしてたな。毎朝枕についた抜け毛を見て、悲しそうに泣いとったわ。んで、俺は情けをかけてトドメのひと毟りをしたってわけ」

 

 父親の残酷な仕打ちはさておき、幹部の頭の中は高速で動いていた。

 

(今の話……おそらく、いや確実に私達のことだ。それに創造主ってのも確かに。けど、当時彼は神器は作ってなかったから、私達が眠っている間に作ったことになる。なら、来るべき時に備えよと言ったのはラプラスじゃなくて彼になる)

 

 幹部は無意識に顔を上げ、ウェスタがある方角を見た。

 

(…………いや、あの(つるぎ)がある限り、ニブルヘイムが再来することはない筈だ)

「姉ちゃん? どうした?」

「ああ、すみません。ちょっと色々考えていました」

 

 随分と深く考えていたらしい。幹部は後でまた考えることにして、父親に深く感謝の言葉を述べた。

 

「ええってことよ。それにこっちもうちのマリンと遊んでくれてありがとなぁ。わんぱく娘で困ったろう」

「いえ、それは……まぁ」

「うおい!? そこは否定するとこ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 マリンの家をお暇した幹部といろはの二人は、再び港町への道のりを歩いていた。

 日は既に沈みかけており、東の空は一番星が輝いていた。

 

「凄い話でござったなぁ……かざまもあの昔話の中の人達みたいにカッコいい侍になりたいでござる」

「そ、そう? そう言われると嬉しいなぁ」

「え? 何でルイねぇが照れるでござるか?」

「だって、その人物が私達だから」

「ええええええええええええ!!?!!?!?」

 

 いろはのその反応に気を良くした幹部は、ふふんと胸を張る。

 あまりの衝撃で固まるいろはに、幹部は歌うようにこう紡ぐ。

 

「かの魔王と死闘を繰り広げた一つの集団。そう、その名は秘密結社がholox」

 

 幹部はいろはに手を差し伸べる。

 燃える夕日を背に受けているせいか、後光が入っているように、幹部の輪郭は光っていた。

 

「さて、ここで問おうではないか。侍の風真いろは」

 

 顔には陰がおりて表情が窺えない。しかし、その天空を連想させる瞳は爛々と輝いていた。その光を受けて、いろはの心臓がどくりと脈打った。

 

「あ――」

 

 神々しさすら感じるその立ち姿に、いろはは頬を紅潮させる。何か、運命染みたものを感じていた。

 いろはは息を忘れたように幹部に魅入り、そして出所不明の熱が、その身を焦がさんばかりに溢れ返っていた。

 

「我々holoxに、入る気はないか?」

 

 その(いざな)いに、いろはは何の躊躇も無く差し出された手を掴んだ。

 

 

 

―――………

 

 

 

 狐耳に、狐の尻尾。首から特徴的な首飾りと、何かの角を下げている。

 その中でも特に目を引くのは、顔につけている狐の面である。

 別にお祭り気分で着けている訳ではなく、普段から常備しているものである。

 この人物は机の上に広げてある宝鐘云々の紙に指を滑らせて、とある一点で止めた。

 

「懐かしいですね……」

 

 そう呟くと、『宝鐘ディーネ』の名前を懐古の念に浸るように、そっと指で撫でた。

 と、不意にノック音が響き、外から騎士の声が聞こえてきた。

 

「副団長、そろそろ会議の時間ですのでお呼びに参上しました」

「わかりました。直ぐに行きます」

 

 立ち上がった狐の獣人――白銀騎士団副団長は、身に纏っていた白衣に似た衣服を脱ぎ、丁寧に畳むと机の上に置いた。

 そして先程の紙に視線を向け、逡巡するように瞬きを何回したかと思えば、こちらも丁寧に畳んで懐に入れた。

 

「副団長」

「あぁ、すみません」

 

 外から飛んだ部下の声に、副団長は急いで礼服に着替え、外で待っていた部下と共に会議室へと足を向けた。




 『宝鐘』の詳しい権能。
 指定した魂に作用することで、バフデバフをかけることができる。対象の魂の強さによって抵抗もあるが、完全に対象の魂を把握することができれば、対象を意のままに操ることができる。かつての宝鐘ディーネは、クラーケンの魂を完全に把握したことにより、意のままに操ることができた。

 風真いろはゲットだぜ!!
 これで報酬が五円チョコでも大丈夫。憧れたのはそっち。入ると決めたのもそっち。活動内容や報酬の話もしてないのに飛び付いたのが悪い。なので幹部は悪くない。悪くないったら悪くない。

 出航ー!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。