「じゃあ零くん一緒に回ろう?」
新入生勧誘期間。生徒会勧誘の時に軽く言われていたので情報としては知っていたがまさかここまでとは...
「それで風紀委員には入れなかったんだ」
「ああ。実力が足りないからな」
「でも零くんの魔法の素質は凄いと思うのになー。最初二科生って知った時もビックリしたし」
「あの時の零の魔法力にはお母さんも驚いていた」
零は昔、ほのかと雫の前で魔法を披露して
(あの時は仕方なかったとしてもしまったなぁ...)
「だとしてもだ。今の俺の実力は変わらないよ」
(ほのかと雫は俺が魔法事故に遭って俺の魔法力が落ちたと誤解している。...都合がいいのでそういう事にしておいた)
向井零は彼女らの間違いを訂正していない。彼の魔法力は落ちてなどいない。しかし彼には自らのその力を隠さなければならない秘密がある。彼の実力を正しく理解しているのは彼の両親、そして母の姉、後は家の執事だけである。
その他の人間は程度の差はあるものの零の実力を正しく理解していない。彼女たちも、同僚もクラスメイトも。
「あれ見て! 入試成績2位の光井さんと3位の北山さんよ!」
ほのかに一緒に部活動を回るように誘われた零だったがそのあまりの熱気に虚空を見つめる。
(別に俺の力がバレない限りは力を出してもいいか)
向井零は自らの実力がバレる事を恐れているのであって別に自分が有名になる事を恐れている訳ではない。彼は「改竄」で魔法の使用が分からないようにしてから魔法を発動させる。
「「えっ?」」
零はほのかと雫を両脇に抱えて空を蹴るようにして追撃を免れた。魔法の発動兆候などない。そして跳躍魔法の動きではない。先日トーラスシルバーが発表した飛行魔法の動きでもない。
「零...今のって」
「ああ、空中を蹴った」
零は息をするかのように嘘をついた。その翌日から魔法力に優れたほのか、雫と共にその圧倒的な身体能力から主に陸上部などをはじめとして零も勧誘の対象となったのは言うまでもない。
──────
翌日、零も勧誘の対象となる中、しかし零達は今日も変わらず三人で部活動をまわっていた。
「でもほのかも雫も剣はしないから剣術部は見なくてもいいんじゃない?」
「せっかくだから全部見ておきたい」
「雫もこう言ってるし。それに零くんって剣術似合いそうだけどね!」
「剣なんて握った事ないよ」
(俺の剣は部活動でするような剣じゃないからね)
時たま予期せぬタイミングで鋭い指摘をするほのかに零は冷や汗をかいた。
「あれ、何だか騒がしいね」
ほのかのその言葉で零も我に返る。
「あれって!」
雫も目の前の光景に言葉を失う。そう、武道場では剣道部が新入生向けにデモンストレーションを行なっていたのだが剣術部主将の桐原武明がそこに乱入、そしてなんと魔法を使用する事態にまでなったのだ。
「あれは! 達也さん!」
雫がそう言った通り、達也が風紀委員としてその場に介入した。しかし準科として名が売れている達也が風紀委員として自分達を取り締まっているのに反感を覚えたのか剣術部の一科生達は一斉に達也に対して攻撃を始める。
(達也ならあれくらい何でもないと思うが...)
「達也さん!」
(だからと言って静観する訳にもいかないよな)
「任せろ」
そう言ってから零も群衆をかき分け...否、正確には
「大丈夫か達也?」
「零か。大丈夫だ。それより手伝ってくれるか?」
「へいへい」
そう言葉を交わして零も加勢した。達也の目的は零を観察する事にある。零もその事には朧げながら気づいていたが別にいいやと考える。
(この程度なら...改竄使って魔法使わなくても素手で大丈夫だな)
思い立ったが吉、零はCADを向けてくる一科生の剣術部部員を素手で昏倒させた。
(あの動き...体術だけなら俺より上だ)
その動きを見て達也は零への警戒を更に引き上げた。
零と達也が絡むと零への警戒が上がる結末しか起きない...
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