少しでも皆さんの妄想の足しになれば……。
楽しんでいただければ嬉しいです。
「ほ~ら、
気づいたら、赤ん坊になっていた。
そして知らない男性に抱かれ、知らない名前で呼びかけられている。
「あっ、見てあなた! 翔がこっち向いたわ!」
黒髪の綺麗な女性が、飛び上がらんばかりに喜んでいる。
男性も俺を見て、優しく微笑んだ。
死んだ記憶はない。
だがどうやら俺は、この夫婦の子供として転生したらしい。
最初こそ戸惑いで一杯だったが、幸いこの状況を受け入れるだけの時間はたっぷりあった。
大学と童貞を卒業する前に生まれ変わることになったのは、少々残念ではある。
だが原因はどうあれ、なってしまったものは仕方がない。
前向きにとらえよう。
「あうあ、あうあう?」
「おっ、翔。これが気になるのかい? これはねぇ、父子手帳っていうんだよ。……君がこの世に生まれてきてくれた過程が書かれてる、とても大事なものだ」
今世の父が感情たっぷり込めて、小さい冊子のようなものを見せてくれた。
『子の名前』の欄には『
最初は母子手帳じゃないの? と一瞬だけ疑問に感じた。
だが“母子手帳”のイメージが強いだけで、別段“父子手帳”が存在しないわけではない。
父親が専業主夫として主に子育てを行う家庭もあるだろうから、この段階では特にその疑問を掘り下げずに終えた。
― ― ― ―
「むかぁ~しむかし、あるところに。おばあさんとおじいさんがいました」
とある休日。
父が俺に、絵本の読み聞かせをしてくれる。
この段階でも、まだ具体的な言葉にはならない違和感程度。
まあ先に読み上げられるのが“おばあさん”だろうが“おじいさん”だろうが、どっちだろうと内容に違いはないはずだ。
「おばあさんは山へ芝を刈りに。おじいさんは川へ洗濯に――」
おろっ?
このお話はおばあさんの方がアクティブなのかな?
だが続く内容を耳にし、これまでの違和感は具体的な形をもって俺を困惑させた。
「するとどうしたことでしょう。可愛らしい女の子が――」
――えっ、女の子?
……昔話の主要人物の性別、違うくない?
子煩悩からか、父はその後も沢山の絵本を読み聞かせてくれる。
だが“〇〇太郎”とつくはずのものは、どれもすべて“〇〇子”となっているのだ。
つまり女の子が主役となっているのである。
何かおかしいぞと流石に思った。
そしてそれは、勘違いでも早とちりでもなく――
≪――日本はG7でも最下位と、男性の閣僚数のみならず、男性の国会議員数の増加も今後の課題となっています≫
赤ん坊の体で寝落ちしそうなのを何とか持ちこたえ、夕方のニュース番組を目にする。
≪続いては特集です。――女性と一定の時間を一緒に過ごすことで金銭的な援助を受ける、いわゆる“ママ活”。本日は実際にママ活を行ったことがあるという女性・男子大学生の両方に、匿名を条件にインタビューすることができました≫
真面目な顔でそれを伝えるメインキャスターも、もちろん女性だ。
この特集の中で“パパ活”というワードは一度たりとも出てこなかった。
≪次はスポーツです。デイゲームで行われた本日の野球。さて、伝統の一戦はどちらのチームに軍配が上がったのでしょうか?≫
流れたのは、女性の野球選手が試合をする映像だった。
選手も女性なら、審判も女性。
ただ時々映り込むビールの売り子だけは年若い男性だ。
ここまで来ると、流石にどういうことなのか、思い当たる節は出てくる。
――これ、貞操観念が逆転した世界じゃね?
ただでさえ転生のことを未だ完全には消化しきれてないのに。
そこへきて、またややこしい可能性の出現である。
流石に、もう全部が面倒くさくなったので、赤ちゃん特権を行使して寝させてもらいました。
― ― ― ―
「……ねぇ。翔、まだ寝てるみたいだから。これから、どうかな?」
だがその後、ふと夜に目が覚めた。
両親が何やら話しているのが聞こえる。
……そしてしばらくして。
隣室から微かに届いてくる、両親の男・女としての声。
……なるほど。
どうやら弟か妹ができるかもしれませんね。
何故か衝動的に泣き声を上げたくなった。
だが色々と察して、全力で寝たふりを続けたのだった。
― ― ― ―
それからまた時が経ち――
「ほ~ら、翔。今日から翔はこの子のお兄ちゃんになるんだ。名前は“
やはり妹ができました。
メインとなる高校時代まで、かなり駆け足で進むと思います。
長々と赤ちゃん編・幼稚園編・小学生編とか続けても、そこはメインじゃないですし。
何より多分私も続かないでしょうから……(白目)