あべこべ虹ヶ咲   作:リス許すまじ

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また最初の何行か、主人公以外の人の視点になります。

……まあ本人が自供してるので、誰の視点かはすぐにわかると思いますが。




3.あべこべ世界で、小学生の夏休みを過ごしました

 

 お店の手伝いをしていた、夏のあの日。

 

 君と、初めて出会った。

 

 暑くて沢山汗をかいていた。

 ……服もちょっと透けちゃってて、アタシには凄く刺激が強かったっけ。

 

 にもかかわらず、君は辛そうな表情を一切せず。

 アタシに優しい笑顔を浮かべていた。 

 とても魅力的で、まるで太陽みたいだと見惚れてしまった。

 

 店の手伝いをしているアタシを、君は褒めてくれたよね。

 それだけで体がすっごくふわふわとして、顔が赤くなってしまったのを、今でも覚えている。

 

 あんな暑い中で外に買い物へと出かけていた、頑張り屋な君に。

 アタシの頑張りを見てもらえた、認めてもらえたようで、とっても嬉しかった。

 

 これが初恋ってやつなのかなぁ~。   

 愛さん、君と愛し合いたい! 

 

 ……なんちゃって。 

  

 

◇■◇■ ■◇■◇ ◇■◇■ ■◇■◇

 

 

 

「あれ。これ、なんで間違ってるんだろう。……お兄ちゃん、これ、教えて?」

 

「どれどれ? ……ああ。この計算はな――」

 

 

 小学生の多くが大好きな、夏休みのとある1日。

 だが一方で、その大半が大嫌いな宿題を、俺たちはこなしていた。

 

 

「うーん。この社会の問題、何が正解なんだろう。……(しょう)君。私も教えてもらってもいい?」

 

「都道府県の問題か……。歩夢ちゃん、教科書で一緒に調べてみようか」

 

 

 侑だけでなく、歩夢ちゃんも一緒に課題へ取り組んでいる。

 

 お隣さんということもあり、今ではすっかりお互いの家を行き来する関係だ。 

 それに双方ともに親が忙しいということもあって、年長の俺がまとめて面倒を見ることが多い。

 

 

「うぅぅ。歩夢ぅ~。同じことの繰り返し、辛いよぉ」

 

「侑ちゃん、頑張ろう! もう少しでお昼だから、ね?」

 

 

 ぐでぇ~っと机に突っ伏す侑。 

 歩夢ちゃんはそれに苦笑しながらも、優しく頭を撫でてあげていた。

 

 ……君たち、本当に仲良いね。

 

 幼稚園からこの親密さがずっと続いている。

 それを一番間近で見ている身としては、とても感慨深いものがあった。

 

 願わくば、二人のこの関係がずっと続いてくれれば……。

 

 

 ― ― ― ―

 

 

「あ~美味しかった! やっぱりお兄ちゃんの作るごはん、私大好き!」

 

「うん。私も翔君のお料理、凄く好きだな」

 

 

 お勉強タイムを乗り越えた二人は昼食をペロリと平らげ、とても満足げな様子だ。

 そう言ってもらえると嬉しいが、父さんが下ごしらえしたものをチンしたりIHで炒めたくらいのものである。

 

 

 まあ前世の大学時代、一人暮らしで簡単な料理をしていた経験がここで生きてくれたのがよかった。

 この世界では、男性の方が家事できるというイメージが強い。

 

 育ち盛りの二人に美味しいものを食べてもらえるよう、今後も頑張ろう。

 

    

「ふんふふ~ん♪」

 

「……フフッ」

 

 

 午後からは完全にフリータイム。

 しっかりと勉強をしたため、後ろめたさなく堂々と遊べる。

 

 クーラーの効いた部屋でゴロゴロしながらマンガを読む。

 これぞ至高の時間!

 

 

「――ふ~。面白かった。歩夢、はい。次読むでしょ?」

 

「うん、ありがとう侑ちゃん」

 

   

 侑が読み終わった週刊のマンガ誌。

 それを歩夢ちゃんが受け取り、そして読み始める。

 日本だけでなく、世界でも有名ないわゆる“少女マンガ誌”だ。

 

 そう、このあべこべ世界では“週刊少年〇〇”ではなく“週刊少女〇〇”と呼ばれている。

 ただ大体の中身は変わらず“友情・努力・勝利”がお約束だ。

 

 唯一違うのは、やはり登場人物の性別。

 主人公が女性なのが多いだけで、俺でも全然問題なく楽しめるのはやはり凄い。

 

 

「……なあ、侑。寝ながらは流石にちょっとお行儀が悪いんじゃないか?」

 

 

 とは言いつつ、主に指摘したいのはスカート部分だ。

 あべこべ世界でも恰好自体はあまり前世と変わりなく、女子は普通にスカートをはく。

     

 だが今の侑は、とても丈の短いミニスカートのまま、俺のベッドに寝そべっている。

 なので、その、何て言うか……下着が見え――

 

 

「えぇ~? ふふっ。やだぁ~。お兄ちゃんが起こしてくれないと、このまま読んじゃうも~ん」

 

 

 そうして脚をパタパタと動かし、自力で座るのを拒否する。

 その間にも、脚の動きのせいでスカートがめくれ、チラチラと……くっ!

 

 

「……はぁぁ~。――ほらっ」

 

  

 腰から下は努めて見ないようにし、侑のお腹に手を回す。

 そして力を入れて一気に抱き起した。

 

 

「わっ、きゃっ! ふふっ、お兄ちゃんに起こされちゃった」

 

 

 言葉に反して、侑は抵抗せず。

 むしろアトラクションでも体験しているように、はしゃぎながら座ってくれた。

 

 

「むぅぅ~侑ちゃんと翔君、凄く楽しそう」

 

 

 一方で歩夢ちゃんはというと、可愛らしく頬を膨らませていた。

 

 ……いや、あの。

 これ、本当アトラクションでもなんでもないんで。

 

 

「さて――」

 

 

 二人がマンガに戻ってしばらくしたところで、リビングへと移動。

 午前に頑張ったご褒美的な意味もかねて、少し早めに3時のおやつを用意。

 

 ジュース、3人分のコップもお盆に乗せて部屋へと戻る。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 うんうん。

 侑も歩夢ちゃんも、マンガに夢中だ。 

  

 邪魔しないように……。

 

 

 ――んんっ!?

 

 

 あっ、歩夢ちゃん!?

 そ、それは、その少女誌内でのお色気枠マンガじゃないか!!

 

 あべこべ世界でのお色気マンガとはすなわち。

 主人公の女の子が、ラッキースケベを経験したりエッチな目に遭うものである。

 

 

 

「…………」

 

 

 だが、歩夢ちゃんは俺に気づくことなく。

 午前の勉強でも見せなかった集中力で、えっちぃマンガにグッとのめり込んでいる。

 

 

 

 ――しかし幼馴染の男の子のお風呂を覗いてしまった場面で、歩夢ちゃんがふと視線を上げた。

 

 

 そして、戻ってきた俺とバッチリと目が合う。

 

 

「わっ、あっ、いや、しょっ、翔君!? あのこ、これはその、違くて!」

 

 

 歩夢ちゃんはバタッと本を閉じ、慌てて言い訳を始める。

 

    

 その後、歩夢ちゃんの苦しい言い訳を、侑と二人で聞くことになったのだった。

 

 ……ちなみに侑はどっちかというと、歩夢ちゃん擁護派だったが。

 (ブルータス)、お前もか。

 

 

 ― ― ― ―

 

 

「あっちぃ~……」

 

 

 夏休みの、また別の日。

 外はやはり夏にふさわしい日差しの照り付けとなっていた。

 

 額に浮かんだ汗を拭いながら、昼食をどうするかに考えを巡らせる。

 

 

「予算は一人頭1000円で計3000円。小学生の昼食代にしては大金だなぁ……」

 

 

 俺、侑、そして歩夢ちゃんの分。

 歩夢ちゃんの昼ご飯も任されているのは、歩夢ちゃんのご両親にも信頼されてる証なのかな。

 

 両方共働き家庭なため、常に昼食を用意するのが負担だということは理解できる。

 時々お金を渡して後は俺たちの自由裁量というのは、こちらとしても歓迎だ。

 

 

「何を買おうか……せっかくだから美味しいもの食べさせてあげたいしなぁ」   

 

 

 今も宿題の計算ドリルを頑張っている二人に、少しでもご褒美的なごはんになればと思う。

 なので、適当に近場のスーパーでお惣菜やお弁当を買って済ませるというのは無しだ。

 

 

 そうして暑さと格闘しながら、しばらく自転車を走らせる。

 

 

 

「……ん? あれは――」

 

 

 とある店の前。

 年頃の近い女の子が一人、お店の制服のような恰好で立っていた。

 

 

「いらっしゃい! お昼のセールやってまーす! お持ち帰りもできますよー!」

 

 

 可愛らしい金髪の少女が、元気よく道行く人に呼び掛けていた。

 店の看板には『もんじゃ みやした』と書いてある。

  

 

「愛ちゃん。今日もお家のお手伝いかい?」

 

「おばあちゃんこんにちは! あはは、夏休みだからってお父さんがお店手伝えって。アタシ、もっと遊びたいのに~」

    

 

 顔見知りらしいおばあさんと楽し気に会話している。

 どうやらあの子の家が、そのままお店をやっているようだ。

 

 つまり推測になるが、あの子は“みやしたあい”ちゃんというのだろう。

 

 

 香ばしいソースの香り。

 焼けた生地の上で踊る鰹節。

 生地に彩りを与える青のりやマヨネーズ。

 

 それらを想像するだけで、唾液がジュワっと出てくる。

 

 この暑さでもそれは変わらず。

 気が付けば自転車から降りて、彼女に近づいていた。

 

 

「――あの。お好み焼きのお持ち帰りって、できますか?」

 

 

 おばあさんが離れていったタイミングで、少女に話しかけた。

 

 

「……えっ?」

 

 

 だが振り向いた少女は、俺の顔を見るなり固まってしまう。

 

 数秒、沈黙。

 

 そして再起動すると、慌てた様子でしゃべりだした。

 

 

「あっ! えっと、あの、うん! お好み焼きももんじゃ焼きもお好みでどうぞ! ――って、違う違う! 質問、えっと、なんだっけ!?」

 

 

 見てわかるくらいにテンパってる。

 そのことが恥ずかしいのか、あるいはこの暑さのせいか。

 

 彼女の顔はカァーっと赤くなっていた。

 ……可愛いな。

 

 

「お昼にお好み焼きをお持ち帰りしたいんだけど。3人分って、できますかね?」

 

「お、お好み焼きね! うん、大丈夫!」

 

 

 自転車を言われた場所に止め、先導についていく。

 店内は中々活気があり、既に半分以上の席がお客さんで埋まっていた。

 

 

「お父さん、お好み焼き3つ。お持ち帰りですぐ、できる!?」

   

「はぁ? お客さんか? 順番に作ってるんだからすぐってのは……」

 

 

 そこで、おそらく彼女の父であろう人の視線が俺に向いた。

 目が合い、小さく会釈する。

 

 

「ははぁ~ん……」

 

 

 ニヤッと笑ったお父さん。

 手を動かしたまま、その顔で彼女に向き直る。

 

 

「な、何? アタシ、ちゃんとお店のお手伝い、してるだけだけど?」

 

「フフッ。い~や。なぁ~んにも。……言った通り、順番だからすぐってのは難しい。――だから、愛。お前が連れて来たお客さんなら、できるまでお前が相手してあげなさい」

 

 

 よくはわからんが、どうやら料理ができるまで俺の話し相手になって来いということらしい。

 待つこと自体はそもそも想定内だから、俺としては別に問題ない。

 ……あの親父さんのニヤニヤが何を意味しているのかはわからんけどね。

 

 

「運動・スポーツばっかりの愛が、とうとう男に興味を持ちだしたかぁ~」

 

「っ~! お、お父さん、うるさい!」

 

 

 その後も2,3、親子で軽いやり取りをした後。

 少女が少し不機嫌そうにしながら俺の元に。

 

 

「もう! お父さんは本当……――あっ! その、お好み焼き。できるだけ早く作ってくれるって!」

 

「そっか。ありがとう。……君、凄いね」

 

 

 素直に感謝の言葉を述べたら、また彼女はボーっとした表情に。

 顔もまた赤みが戻ってしまったように感じ、大丈夫かと少し心配になる。

 

 

「いや、あの、大丈夫? えっと、あんまり年変わらないだろうに、お店の手伝いして。偉いなぁ、凄いなぁって思ったんだけど……」  

 

「……はぅっ!? えっと、うん! こっちこそありがとう! ――って、あっ、いや、違っ! 別に服とか見てないから!」

 

 

 服? 

 何の話だ。

 

 暑さで頭がやられたのかと本格的に心配しながら、時々かみ合わない会話をして時間を潰したのだった。

 




これで主人公の小学生編は終了ですね。
次、中学生に入ります。

書き方をこうと決めて書き始めたわけではありませんが、この調子だと侑ちゃんと歩夢ちゃんは前提として。
他に、大体1話に一人ずつ、原作キャラとの絡みを入れる感じになりそうです。

確定ではなく、私の気分次第でもちろん変動はありえますのでご参考までに。
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