多分これだけでもわかると思うんですが、最悪お話の最後まで読んでいただければわかる……はず!
まだ、自分の“大好き”をどう具体的な形にすればいいか、どう表現すればいいか、全くわかっていなかった小学生の頃。
あなたが書いた作品たちに出会った。
衝撃的だった。
こんなにも他人の目に見える形に落とし込んで“大好き”を伝えられると知ったから。
口では表せないほどの感謝もした。
とても分かりやすいお手本、道の一つを示してもらえたみたいに感じたから。
救われもした。
勉強、習い事、家族……私にはどうしようもないことで
――そして、それら全てを与えてくれた“あなた”を、“あなた”だと知らずに好きになった。
でも、“あなた”が“あなた”だとわかった今、もう私はこの“大好き”を抑えることができません!
今度は私があなたに。
“大好き”を全力で伝えますから、覚悟してくださいね!
◇■◇■ ■◇■◇ ◇■◇■ ■◇■◇
「またお兄ちゃんと一緒に登校できるようになって嬉しいなぁ!」
通学路を3人並んで歩く。
侑はそれだけで、朝からとても嬉しそうだ。
「うん。侑ちゃんずっと言ってたもんね。『早く中学生になってお兄ちゃんと学校行きたい!』って」
歩夢ちゃんは苦笑しながらも、やはり楽しそうに会話に応じている。
後輩となったそんな二人の制服姿を見て、俺も感慨深い想いが込み上げてきた。
「そっか。俺もまた二人と同じ学校に通えて嬉しいよ」
素直な気持ちを口にする。
侑も歩夢ちゃんも。
同じ気持ちなのか、はにかみながら頷いてくれた。
「……でも、良かったのか? 虹ヶ咲に行く選択もあっただろう。
俺は単に近場というだけで中学を決めたが。
二人には自分のやりたいようにしてほしい。
だから、もし俺のせいで選択肢を狭めたということであれば、凄く申し訳ない。
「もちろん! 虹ヶ咲もいいところだってのは聞いたことあるけど。高校からでも遅くないし」
「だね。虹ヶ咲に行くってなると通学も下校もバスになっちゃうし。中学は今のところでいいかな」
そっか。
俺に気を使って、という感じでもなさそうだ。
二人が二人なりに、ちゃんと考えて出した結論ならもうそこは言うまい。
「――それより! お兄ちゃんの方こそ。そろそろ考えないとダメなこと、あるでしょ!」
ビシッと人差し指を立て、顔を近づけてくる侑。
はて、何のことでしょう?
全く思い当たる節がなく、侑の勢いに押され少し後退る。
「高校だよ! 虹ヶ咲の高等部に行くにしろ、他の高校にするにしろ。バスか電車、使うことになるかもしれないんだから」
侑の言い方は単に進路のこと、つまり俺の将来を漠然と心配しているというニュアンスとは違う気がした。
「あぁ~。電車・バス通学ってなると“
さっきまで楽しそうに会話していた歩夢ちゃんの表情が、スッと曇る。
……多分、歩夢ちゃんが今言ったのは“痴漢”じゃなく“痴姦”の方だろう。
あべこべ世界では男性よりも女性の方が多い。
だから必然的に、女性が男性に対して性的ないたずらをする“痴姦”の方がよく取り上げられる。
「……でも、俺相手に変ないたずらしてくる人なんているかな? そんなことまで含めて進路考える必要ある?」
俺としては至極まっとうな意見を述べたつもりだった。
だが、侑はまるで別世界の言葉でも耳にしたとでもいうように、驚きの表情を浮かべる。
「えぇぇ~!? お兄ちゃん、それ本気で言ってるの!?」
歩夢ちゃんも侑に加勢。
両手を胸の前で握りしめ、うんうんと力強く頷く。
「そうだよ! 翔君は今みたいに警戒心とっても薄いから、痴姦さんにとっては絶好の標的になっちゃうよ?」
痴姦を“さん付け”で呼ぶ当たり、歩夢ちゃんの人柄の良さが窺える。
歩夢ちゃん、小さい頃から見てるけど、本当可愛らしい良い子に育ったねぇ。
「あぁ~。これ、お兄ちゃん真に受けてない顔だ」
「うぅぅ……本当だね。翔君、あの顔は信じてないね」
交通事故も、犯罪被害もそう。
自分に実害が及ぶまでは“まさか、自分が”って思考になるもんですよお二人さん。
前世での“痴漢”概念を知ってる俺としては余計、ね。
そうして時々二人にジト目で見られながらも、3人での通学を楽しむのだった。
― ― ― ―
「侑ちゃん。テストお疲れ様」
「うん、歩夢もね。……って言っても、私は平均点よりちょっと上程度だったけど」
別の日の下校時間。
タイミングが合ったので、3人で帰ることにした。
「まあ試験の成績なんてあんまり気にしないでいいと思う。それ以外に大事なことって一杯あるから。それを学べればいいんじゃないか?」
これまたいつかのように、至極まっとうなことを言ったはずだった。
だが侑は、いつもの愛情ある視線とは違い、やはりジトッとした目で俺を見てくる。
「うわぁ~。歩夢、聞いた? 自慢だ、勉強できる人の無自覚自慢だ!」
「あ、あはは。翔君、2年生の中で1位だもんね」
本当に自慢でもなんでもないんすよ。
中学生2回目だからね、それくらいはできて当然なんだって。
「そういえば歩夢も今回のテスト、成績上位者だったよね!? うぅっ、裏切りだ! お兄ちゃんも歩夢も私を置いて遠い所へ行っちゃったんだ、よよよ……」
棒読みで泣き真似をする侑に、歩夢ちゃんとともに苦笑する。
侑がふざけて言っていることくらい、言葉にせずとも分かるからだ。
「“よよよ”って……。でも、侑ちゃん。そうは言いつつなんだか嬉しそうじゃない? フフッ。そりゃ翔君、自慢のお兄さんだもんね?」
「うぐっ!? そ、それは……その、うん。はい、おっしゃる通りです」
歩夢ちゃんの確信をもった追及に、侑はすぐに抵抗を諦める。
そして照れをふんだんに含んだ、消え入りそうな白旗宣言で、この話題は一応の解決を得たのだった。
……うちの妹が可愛すぎる!
「――あ、あぁ~!! ところで歩夢、お兄ちゃん! 二人は塾とか部活とかってどうなの?」
羞恥に耐えかねたとでもいうような、侑の明らかな話題転換。
丁度塾らしき建物から出て来た少女を指さし、話のとっかかりにする。
黒髪をおさげにした眼鏡の女の子。
いかにも真面目で勉強熱心そうだ。
しょうがないと苦笑しつつ、歩夢ちゃんとそれに乗っかることに。
「私は、一番身近に凄く成績が良くて、凄く分かりやすく教えてくれる先生がいるから」
そうして歩夢ちゃんはまるで全幅の信頼を置いているといわんばかりに、穏やかな笑みを浮かべて俺を見てくる。
……いや、中学レベルなら、そりゃ教科書読めば教えるくらいできますぜお嬢さん。
「それに部活って、もう人間関係が出来ちゃってるでしょう? だから、今からはどっちもないかな」
「ふむ……1年生の歩夢ちゃんでその答えなら、2年生の俺なんて入る余地ないだろう」
だがこの回答に、侑は完全には納得していない様子だった。
「えっ? でも男子のマネージャーならどの部活も喉から手が出るほど欲しがってるでしょう? お兄ちゃん、人気あるし」
「うん。1年生の子の間でも翔君、かなり有名だよ? マネージャーでも入って欲しいって部は多いんじゃないかな」
あぁ~。
まあウチの学校に限らず、どの学校でも男子は女子に比べて少ないからな。
前世でいう野球部の女子マネ的な感じだろう。
人気とか有名とかは、まあ身内の
「でも、今はいいかな。自分の時間とか、何より二人との時間を大事にしたいし」
「…………」
「…………」
せっかく自分の気持ちを偽らず言葉にしたのに。
二人からは沈黙という冷たい反応が返ってきた。
うぅぅ……寂しい。
「……お兄ちゃん、すぐ相手の方が照れちゃうようなこと言うよね」
「ね、私もドキドキしちゃった。……でも、侑ちゃんもそういうところあるよ?」
君たち、半分くらい聞こえてるよ?
ジト目で見るか、聞こえないように話すかどっちかにしてください。
そうしてお互いに遠慮ないやり取りを交わしながら、何でもない下校時間も楽しんで過ごすのだった。
― ― ― ―
「さてっと――」
家に帰って一人、自室でノートパソコンを開く。
小学生の時に買ってもらったもので、今でも大事に愛用している。
慣れた手つきで、とあるサイトへとログイン。
そこで、もう随分と前に受け取ったメッセージを、今日もまた開いて見てしまう。
【差出人:運営】
●件名:依頼者様からのお取次ぎについて
●本文
依頼者様から ハイブルーム 様へとお取次ぎを依頼されました。
以下、お預かりした文面を記載いたします。
――――
ハイブルーム様。
△△社の編集をしております〇〇です。
今回、ハイブルーム様が本小説投稿サイトにて連載されている作品について、書籍化を依頼したく、連絡させていただきました。
つきましては…………
――――
「……ふふっ」
今までも、何度も見返していた。
それでも、また読み返す度に喜びが内から込み上げてくる。
異世界ファンタジーを内容とした、王道の冒険ものだ。
地球を舞台としたファンタジーや恋愛ものも書いているが、やはり異世界ものは根強い人気がある。
「でも、よくこの世界にアジャストできたよな……自分で自分を褒めてあげたい」
ただし、ここは貞操観念が逆転したあべこべ世界。
つまり前世で読み、そして夢中になった物語そのままは全く通用しない。
そこをよく自分の頭の中で整理し、自分なりに表現し、よく作品へと昇華できたと思う。
転生したことで得たリード。
それを、自分の存在をあまり公に認知されず、かつ上手いこと活用できる方法はないか。
そう考えた結果出たのが、ネット上でのWEB小説だった。
これなら年齢関係なく始められるし、誰かに“高咲翔”の存在を認識されずともできるから。
「――あっ、活動報告にメッセージが来てる……」
メッセージをくれた相手のユーザー名を見て、思わず頬が緩む。
――――
●スカーレットストーム
書籍化、おめでとうございます!
ハイブルーム先生ならいつかなさるとずっと思っていたので、本当に我がことのように嬉しいです!
予約はもちろん、発売されたら保存用・愛読用・布教用・奉納用で絶対に買いますね!
――――
「うぅぅ、スカーレットストームさん、こっちこそ嬉しい。……でも、フフッ。奉納用ってなんだ」
スカーレットストームさんは、いわば古参のファンといった人だ。
俺がこのサイトで執筆を始めた最初期から俺の作品を読んで、そして殆ど毎話で熱い感想をくれる。
きっとリアルでも凄く熱い人に違いない。
「……そんなこと考えてたら、スカーレットストームさんの感想、読み返したくなってきたな。どれどれ――」
――――
●スカーレットストーム
先生の作品、最新話まで一気に読ませてもらいました!
もう、ずっと引き込まれて、寝る時間を忘れるぐらいに面白い作品でした!
主人公がカッコよくて、強くて、面白くて、理想の女の子で……本当、最高です!
ヒーローの男の子たちも皆それぞれ個性があって、読んでてニヤニヤが止まりませんでした!
――――
未だ書籍化の気配なんて欠片もない時から、スカーレットストームさんは俺のことを“先生”と呼んでくれている。
凄くこちらをリスペクトしてくれているんだと、とても嬉しかったのを今でも覚えている。
「――でも、未だに“ヒーロー”は違和感あるなぁ」
前世の価値観に変換するなら、男主人公の仲間となる“ヒロインの女の子たち”という意味だ。
しかしこのあべこべ世界では、主な読者層はやはり女性なため、女性主体の物語とする必要がある。
で、その主人公の仲間の異性だから、必然“ヒーロー”という言葉が使われるのだ。
――――
●スカーレットストーム
今度は現代ファンタジーものですか!
やっぱりとても面白いですね……。
個人的には主人公の相棒役が、透明化の変身スーツを異能としているところがグッときました!
先生の作品、本当にどれも大好きです!
私が、他の誰かが。
具体的な形に、言葉に出来なかった“大好き”をここまで表現してくださって。
ただただ感謝しかありません!
――――
「スカーレットストームさん、熱いなぁ……」
今度、担当の編集者さんとリアルで会うことになっているが。
いつか、スカーレットストームさんとも実際に会うことができればいいな……。
前話でご質問いただいたんですが、小学生編は大体高学年を想定しています。
補足として、翔君と侑ちゃん・歩夢ちゃん・愛ちゃんは1歳違いなので
翔君:6年の場合→侑ちゃん・歩夢ちゃん・愛ちゃん:5年
翔君:5年の場合→侑ちゃん・歩夢ちゃん・愛ちゃん:4年
くらいで考えていただければ。
中学が虹ヶ咲じゃないのは、2期の1話、ランジュちゃんに抱き着かれる(案件)前の会話での推測ですね。
さて、それはそうと……。
スカーレットストームさんって一体誰なんだー!?(棒読み)