とある外星人と禁書目録【シン・ウルトラマン×とある魔術の禁書目録】 作:ジョニー一等陸佐
あと、本作ではシン・ウルトラマンやとあるシリーズの他に、初代ウルトラマンのネタ(具体的には人物や設定、エピソードなど)も登場させていく予定です。
そのうちジラースやジャミラのエピソードも登場させたい…
それでは、どうぞ。
日本、東京西部、学園都市。
その行政機関が集中・存在するとある学区に「防災庁学園都市出張所」と呼ばれるビルがある。文字通り日本政府の行政機関である防災庁、その学園都市における支部である。
日本政府の、とは言ったがその運用には一部学園都市も関わっている。そもそも禍威獣への対策・対応を担うこの行政機関はその設立の経緯からして日本政府と学園都市の共同によるものであり、両者は禍威獣への対策に共同して当たっている。それ故学園都市学区内にその支部が存在するのは当然といえば当然だった。
そして防災庁の専従組織である禍威獣特設対策室専従班、通称「禍特対」のメンバーは現在、霞が関の本庁を離れ学園都市出張所にいた。理由は学園都市側との協議や情報交換といった業務のためである。
出張所ビルの一室では専従班班長の田村が向かいの机に座る男に書類を渡していた。
「新しい分析官はどうだ、田村」
書類を手にし男が田村に口を開く。彼の名前は宗像龍彦。禍特対室長であり、政府や各省庁、学園都市との折衝を担う人物でもある。彼の言う新しい分析官とは無論、公安調査庁から出向した浅見弘子のことだ。
「優秀です。正確かつ早い」
「確かに早いな。もう報告書を書き上げるとは」
宗像の手に握られている報告書は浅見による、先日透明禍威獣ネロンガとの戦いのさなかに突如として現れた銀色の巨人に関するものだ。
「思い切りもいい」
苦笑しながらページをめくる宗像。
報告書の中には銀色の巨人、その目的や来訪方法、飛来原理、光波熱戦の原理などいくつかの項目が振り分けられていたがそのほとんどすべてに「不明」とだけ書かれている。一見すると手抜きに見えるが、しかし実際のところ現状ではそうとしか言えないのだ。その容姿や身長、足跡の陥没から割り出した体重以外にはあの銀色の巨人について何も分かっていない。あの姿が着衣か裸なのかすらも分からないのだ。
ページをめくる宗像の手が止まる。視線の先には
【ウルトラマン(仮称)、正体不明】
とあった。
「ウルトラ…?」
「あの巨人の名前です、仮称ですが。浅見が出向前にいた公安調査庁で最重要機密を意味する符丁から名付けたそうです。防災大臣はなぜかレッドマンと命名したがっていましたが…」
「なるほど、ぴったりの名前だろうな。能力の意味でも、機密という意味でも…」
一通り報告書に目を通した宗像は改めて田村に向き直る。
「知っての通り、今回の一件は特に重要だ。何しろ、これまでの禍威獣と違ってその禍威獣を倒して立ち去ったんだからな。諸外国は禍威獣による被害と対策を日本に押し付けたがっているが、一方でその情報には注視している。特にこのウルトラマンの一件には諸外国から情報を提供するよう圧力が掛かっているそうだ」
書類を机に置く宗像。
「正直なところ学園都市の協力も得にくい状況だ。何しろ元からして閉鎖性と独立性の高い機関だからな」
「この防災庁と禍特対が共同で設立された際も、学園都市側はしぶしぶ協力した、と聞いています」
「そうだ。逆に言えば協力せざるを得ないほど、禍威獣による被害が学園都市側でも看過できるものではなかったということなんだろうが…とにかく、事は特に機密且つ重要だ。君たちだけが頼りになる」
「全力を尽くします」
宗像と田村が会話をする中、隣の一室では浅見達がパソコンに向き合い。書類の制作にあたっていた。内容はアメリカに提出する銀色の巨人――ウルトラマンに関する報告である。
「はぁ…なんで政府や学園都市だけじゃなくてアメリカへの報告書も書かなきゃなんないのよ…情報収集ぐらい属国に頼らず自分の足でやれって話よ」
「自分で手間を掛けたくないってことよ。室長も言ってたでしょ、諸外国は武器だけ売りつけておいて、禍威獣の被害と対策は日本に押し付けたがってるって。でも暑くて虫だらけの山の中でパソコンと向かい合うよりはマシでしょ」
「学園都市は学園都市で外国や僕らにも情報を開示したがらなかったり、非協力的ですからね。いったい何のために共同で防災庁を設立したのやら」
浅見の愚痴にパソコンを操作しながら船縁と滝が答える。そして作戦立案担当の神永もそれに答える…ことはなかった。当の神永今この部屋にいないからだ。本来神永がいるであろう浅見の向かいの机には誰も座っておらず、テトラポットの置物とマグカップがあるだけである。
例によって彼は現在単独行動に出ているのだった。メンバーの一員であり、浅見のバディなんだから一言ぐらいは声をかけてくれもいいのに。
つい先日着任した時には、なんだか融通が利かななそうな印象を抱き、バディとしての意味や意義を説いたはずだったが、早速何も言わずに単独行動とは。
「あいつバディの意味分かってるのかしら…」
そういって浅見はため息をついた。
村松敏夫は学園都市第七学区に暮らすコーヒーとパイプ煙草を愛する壮年の男である。
同時に喫茶店「アミーゴ」を営む店主でもある。「アミーゴ」は懐かしい落ち着いた雰囲気と、学生にも手頃な価格、そして店主の一流のコーヒーを淹れる腕前から同学区では人気のある喫茶店であり、学生たちの憩いの場であった。村松自身もその人柄から「キャップ」「おやっさん」の愛称で親しまれていた。
時間はそろそろ夕方に入るころ、夏休みに入ったとはいえカフェでゆっくりくつろぐには少し早い。店内に客の姿はなく、村松はカウンターでパイプを咥え新聞を広げてくつろいでいた。
と、その時カランコロンと店のドアに取り付けている鈴の音が響き、来客を告げる。
村松が新聞とパイプを置きドアの方に視線を移すとそこには整った顔立ちの、落ち着いた雰囲気のスーツ姿の男が立っていた。襟には流星を模ったバッジ、腕には「SSSP」と印刷された腕章が巻いてある。
男の顔を見て村松の顔がほころんだ。
「神永!久しぶりじゃないか」
来客は禍特対のメンバーの一人、神永新二その人だった。名前も呼ばれた神永もわずかに口元を上げ頭を下げる。
「キャップ、お久しぶりです」
そのやり取りから二人が親しい関係であることが分かる。
それもそのはず、神永にとって村松は禍特対に加わる前、彼の古巣である公安に所属していた時のかつての上司だったからだ。
かつての上司と部下とはいっても、二人が公安に所属していた頃、彼らが一体何をしていたのか?神永が公安から禍特対に所属し活動する一方、村松がなぜ公安を辞し現在喫茶店の店主として暮らしているのか?
こういった彼らの詳しい事情、過去については後々語ることにしよう。
とにかく神永と村松は元公安でありかつての上司と部下であった、ということだけは言っておく。
村松は神永をカウンターに案内し、淹れ立てのコーヒーを差し出す。
「禍特対で働いていることは聞いていたが、まさかこんな形で会うとはな。本当に久しぶりだな」
「キャップも元気そうで何よりです。学園都市で喫茶店を営んでいるというのは本当だったんですね」
「おいおい、キャップはよしてくれ。もう公安じゃないしあのチームの存在も昔のことだ。イデやアラシ、フジくんも元気にやってるのかね」
「みんな変わりなくやっています」
「そうか。それはそれとして、今日はどんな用事で学園都市に来たんだ?君のことだ、ただコーヒーを飲みにこの喫茶店に来たわけじゃないだろう」
「学園都市側との協議と報告のためです。それと…」
神永はコーヒーを一口すすり、表情を真剣なものにする。と言っても普段の様子からして無口無表情なので分かりにくいが。
その様子に村松もほころばせていた顔を引き締めた。
「大事な用事のようだな」
「実はキャップに相談というか、聞きたいことがあって来ました。キャップは透明禍威獣ネロンガのことは覚えておいでですね?」
パイプ煙草をくゆらせながら村松が頷く。
「うん、先日現れてこの学区を暴れまわったあの禍威獣だな。よく覚えているよ。…その禍威獣を空から飛来してきた謎の巨人が倒したらしいということもな」
「ご存じでしたか」
「学園都市や政府は情報統制を敷いていたが、何分市街地でのことだからな…写真画像もわずかに出回っているし目撃者も少なからずいる。正直言ってそこかしらで噂になっている。昨日なんか頭に花をのっけた女子中学生二人がその巨人の噂をしていたよ」
「その巨人のことなのですが」
神永は村松に、ネロンガが撃破され巨人――ウルトラマンが飛び去った後のことを話した。
突然の出来事や対応に対策本部がてんやわんやになる中、避難所である学校に逃げ遅れた小学生を抱き抱えて現れたツンツン頭の少年。
その少年は巨人が飛来・衝突した地点のかなり近くにいたが、にもかかわらず少年自身は全くの無傷であり、様子も無表情でひどく落ち着いていた。
巨人の飛来・衝突。その付近で衝突の衝撃に巻き込まれたであろう少年。
にも拘わらず全くの無傷だったこと。
その時の混乱した状況にあまりにも不釣り合いな、無表情でひどく落ち着いた様子。
上条当麻と名乗るその少年に神永が抱いた不信感、違和感。
神永の話を一通り聞き村松はパイプを口から外す。
煙草の煙とにおいがあたりに漂い換気扇に吸い込まれていく。
「つまり君はその上条当麻という少年が巨人について何か知っているか、関りがあるのではないかと睨んでいるわけだな」
「はい。それで彼に会って聞き込みをしようと思ったのですが…」
上条が普通の人間であればすぐに探し出して会うことができただろう。だがここは高度な科学技術を有し、超能力開発を行う学園都市である。もとより独立性・閉鎖性の高い学園都市は外部との交流や情報の流出をひどく嫌い、制限する傾向があり、機密の保持には厳しい。都市の周囲が分厚く高い壁で覆われているのを見ればそれは一目瞭然であり、超能力開発を受ける学生たちへの扱いからもそれは見て取れる。外部に超能力開発に関する情報を漏らさないためにも、貴重なサンプルになり得るDNA情報を渡さぬためにも血の一滴、髪の毛一本まで管理するような徹底ぶりだ。仮に学生が死亡した際、灰になるまで徹底的に遺体を火葬してから親元に返すところなどからそれが伺える。
これほど情報管理に厳しいのだから、学園都市に頼み込んだところで仮にしがないただの少年のものでも、その身元の情報について教えてくれないだろうし、少なくとも容易には調べられないだろう。
というかもとからして学園都市側が禍特対に対してあまり協力的でないのだ。
「上条当麻という名前と、この第七学区に暮らす高校生だということは分かっています。第七学区で学生を相手に喫茶店を開いているキャップなら、何か知っているのではないかと思って」
「なるほど、普段からこの学区に暮らす学生によく接している人間なら…と思って私のところに来たわけだな」
「はい」
「その君の言う、上条当麻という少年だがね…彼のことはよく知っているよ」
「本当ですか」
神永の言葉に村松は頷く。
「うん、たまにこの店に来るし、ここじゃちょっとした有名人みたいなもんだからな。おまけにあのツンツン頭、印象に残らんわけがない」
村松はパイプ煙草を咥え、上条のことを思い出す。
「普段からついていないのか、不幸だ、不幸だとしょっちゅう呟いていてな…それでいてお人好しなのか、困ってる人間やトラブルによく手を差し伸べていたらしい。たまに相談に乗ることもあったな…もっとも、最近はあまり彼のことを見かけんが」
何か知っているのではないかと思い村松のもとを訪れたが、まさか早速当たりとは。世界というのは案外狭いもののようだ。
神永が口を開く。
「それで、彼はどの辺りに?」
「うん、詳しいことはよく知らんが確か直ぐ近くの学生寮に住んでたな。高校もこの付近のとある高校に通ってる。ちょっと待ってくれ」
村松は紙製のコースターに彼で住んでいるであろう学生寮の住所を書くと神永に渡した。
「多分、この辺りだ。探せばいるかもしれん」
「分かりました。ありがとうございます、キャップ」
神永はコーヒーを一気にすすると、料金を丁度きっちり、カウンターテーブルに置き店を後にしようとした。
「ああ代金はいい、私からの奢りだ。久しぶりだからな」
「いえ、あくまで自分は客ですから」
「律儀だな。とにかく、成果があるのを祈っとるよ。また何かあったら来てくれ。これでも元公安だ、伝手はないこともないし、相談ぐらいには乗れる」
「ありがとうございます」
「そうそうそれとな」
神永が店のドアを開けたところで村松が思い出したように声をかけた。
「単独行動もほどほどにな。仲間を信頼して協力し合うのも重要だ。新しいバディとうまくやるんだぞ」
「…善処します」
神永が苦笑したように見えたのは気のせいだろうか。彼が立ち去ると店内は再び村松以外に人がいなくなり、静かな雰囲気が漂う。
「まったく、あいつは何も変わらんな。昔のままだ」
村松は微笑むと再びパイプを咥え新聞にゆったりと目を通し始めた。
「この辺りか…」
喫茶店を後にし、神永は教えられた学生寮がある付近の路地を歩いていた。
時間は夕方になり、空はオレンジ色のグラデーション模様になっている。
時間帯を考えればそろそろ帰宅する学生たちがやってくるはずだ。そしてその中に上条はいるはず。あの特徴的なツンツン頭だ、探すのは容易だろう。
それにしてもあの少年は、上条はウルトラマンと関係があるのだろうか。
それとも自分が勝手に違和感を抱いただけだろうか。
しかしあの時上条が衝突地点の付近にいたことは事実である。少なくとも有力な目撃情報は聞き出せるかもしれない…
そんなことを考えながら路地を歩いていると、不意に前方の少し離れたところにドラム缶のようなものが群がっているのが見えた。
いや、正確には自動清掃ロボだ。文字通り町の清掃を自動で行う、このハイテク都市ではよく目にする存在。それが向こうで群がって時折ぶつかり合っている。
同時に、神永の鼻腔にほんの僅かな鉄錆のような匂いが突き刺さった。神永はその匂いに覚えがあった。
…血だ。
なぜこの街中、学生寮の路地で血の匂いが?いや、気のせいか?
急に胸騒ぎと警戒感を覚える。
気付けば神永の歩みは早くなっていた。周囲を警戒しながら群がるロボットのもとへ向かう。
「…!」
ロボットが群がっているものを目にして神永は自分の感じたものが気のせいではないことを知った。
まず目に入ったのは、白い布地。そしてその白い布地と周囲を染める赤いもの――血。
人が、倒れていた。それも大量に出血している人間が倒れていた。
そしてそれを清掃ロボットはごみと認識して、群がっていたのだ。
「君、大丈夫か!」
出血した人間が倒れているというあまりに突然の、非日常的な光景に神永は驚愕した。どの一方で、その行動は冷静だった。
清掃ロボを手で払いのけ、その場に屈み倒れている人間を観察する。顔を見る。倒れているのは幼いが、人形のような綺麗な顔立ちをした白人の少女だった。しかしその相貌は出血によってさらに白くなり、とても生気を感じない。白い布地と思ったものは修道服のようでそれを身にまとっている。修道女だろうか。うつぶせに倒れ、出血しているのは背中からで、そこには鋭利な刃物で切られたような大きな切り傷があった。
首に手を当てる。微かにまだ脈があった。
まだ間に合うかもしれない。
「いったい何が…誰がこんなことを」
スマホを取り出そうとしながら、神永は呟いた。
次の瞬間、神永は後ろに気配を感じた。
握ろうとしたものを素早く、スマホからグロック拳銃に持ち替える。
「うん?僕たち魔術師だけど?」
神永が拳銃を握って振り返ったのと、若い男の声が響いたのは同時だった。
振り返った先には2メートル近くの高身長に、黒い服に身を包んだ赤い長髪の、神父のような恰好をした男が立っていた。
村松敏夫:
初代ウルトラマンに登場する、科学特捜隊極東支部の隊長。ムラマツの名で登場。冷静な判断力や決断力を持った、部下を見守る良き隊長であり、部下からも「キャップ」と慕われている。本作においては神永のかつての上司という独自設定の下登場させることにしました。
ちなみに初代ウルトラマン、その作中においては砲丸投げのノリで怪獣に石を投げつけて倒したり、宇宙人を投げ飛ばすなどかなりの怪力を見せています。
中の人は初代仮面ライダーで主人公の理解者役を演じました。「おやっさん」の愛称や喫茶店の名称はそこから来ています。