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「ここが...王都か...」
行儀よく大量の馬車が並ぶ入り口を抜け、話に聞く首都であるリ・エスティーゼの街へと入った。
中は、街の外周を大きな城壁で囲っており、とても大きい。
しかし不思議なことに、道には人通りが全くなく、エ・ランテルの時とは違い、露店も一切見当たらない。
「どういうことだ...」
「どうされました。モモンガ様。」
と、隣を歩くナーベに聞かれる。
「いや、あまりにも物静かだと思ってな。」
地方の都市に比べて首都があまりにも物静かなのは明らかにおかしい。
「特に何もないと思いますが...」
改めて周りを見渡しても、貿易商の馬車以外何も見当たらない。
「モモン様。あちらに、人の気配が...」
「なに...」
と、ナーベの示した方向に顔を向けると、そこには多くの人が集まっている場所があった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そこは墓地であり、通常では考えられないほどの人混みがあった。
大勢の人がたむろし、時には涙を流していたりさまざまな反応がうかがえる。
「これは...」
と、困惑から周りを見渡していると、迷っているように思われたのか、
「大丈夫か、そこの御仁。」
と、声をかけられる。
そちらには、一人の屈強な戦士がいた。
見るからにこの世界の人間では、かなり強いと思われる。
「ああ、問題ない。今日初めてこの街に来たのだが...何があるのだ?」
と、モモンガは、困惑が収まらず、素で返答する。
「ああ、初めてきたのか。今日は、前王の五回忌だよ。」
「五回忌?前王はそこまで民に慕われていたのか。」
と、周りを見渡す。
相も変わらず、墓地の周りは、多くの人がたむろしており、おまけには墓に添えるであろう花や、軽い軽食が取れるであろうなどの露店までもが出ており軽くお祭り騒ぎのようなことになっている。
「そこまではわからぬが、私個人は少なからず慕っていたぞ。」
と、謙遜しているのか戦士は肩をすくめる。
なるほど、亡くなって五年たってもこんなにも大勢の人に慕われているとはとても良い王だったのだろう。
「あとは、その当時はやり病が流行っていてな。当時亡くなった人の五回忌でもあるんだ。」
「なるほど...」
モモンガは、頷く。
すると、屈強な男と同様な、装備に赤に金色のふちが入った警備の兵が耳打ちをする。
「戦士長、ラナー様と、ミラー様がいらっしゃりました。」
「了解した。打ち合わせた通りの配置で警備しろ。」
「了解しました。」
「あと...そこの御仁は、今日、初めてこの街にいらした方だ。私の代わりに話を聞いてやってくれ。」
「了解しました。」
という普段なら喧噪でかき消えるであろうほど小声で話された声は、モモンガの耳に確実に届いていた。
「お、っと失礼。私は、これから王族の警備がある故、失礼させてもらう。」
「ああ、すまない。助かった。」
と、感謝を述べる。
モモンが自身、初めて来た街であるので情報が得られ非常に感謝していた。
「いや、こちらこそ済まない。残りのことは、こちらの近衛に聞いてくれ。あと...そうだ、機会があれば金の方の王城の門をたたいてくれ。貴殿ほどの屈強な戦士であればいつでも歓迎しているぞ。」
と、言うなり、去っていった。
モモンガは、それを目で追いながら、
「あのお方は?」
「ああ、金の王国の戦士長の、ガゼフ・ストロノーフ様ですね。」
と、近くの近衛兵が答える。
この近衛兵は、先ほどの戦士長に比べれば劣っているが、この世界基準である程度の強さであることが分かる。
「金の王国?」
と、聞き返す。
確か、エ・ランテルにいたときに聞いた話だと、王国は二つに分かれているんだったか...
「ああ、そこからか。王国は3,4年前から二つに分かれているんだ。そのことは知っているか?」
エ・ランテルの街の露店のおばさんに確かに聞いた覚えがある。
「ああ。」
「その二つの国の内の一つが、ラナー様が支配する金の国。そして、向こう見えるか。」
と、近衛兵は指をさす。
そこには、王城を中心に街を分けるような巨大な壁があった。
「あの壁の向こう側にあるのが、ミラー様が支配する白銀の国だ。」
「なるほど……」
リエスティーゼの時の話と合わせて考えるに、
王位継承権をめぐってラナー皇女とミラー皇女が二つの国に分けて争っているってことか……
「しかし……王位継承権をめぐって王女二人が競い合うのも珍しいな。」
基本的には男が王になりそうなものなのだが……
「ああ、そのことか。その当時はやり病が流行っていてな。王女二人を除いて、王位継承権を持っている王子や、前王までぽっくり逝っちまったんだ。」
「モモンさ…ん。あちらに、」
と、ナーベラルが、指をさす。
そちらの方向へ視線を向けると、二台の馬車が停まっており中から二人の少女が出てきていた。
その背後には、それぞれの国の戦士長であろうか、先ほど話した屈強な戦士と、青髪で、黒目の青年が護衛を行っている。
少女たちは双子であるのか、二人ともよく似た整った顔をしており、プレアデスたちに負けず劣らずの容姿をしている。
唯一、異なっているのは髪の色だ。
片方は、陽で輝く金色の髪をしており、もう片方は陽で白銀へと輝く髪を持っている。
「お、あちらがさっき話していた、ラナー様とミラー様だ。黄金の輝きを持っているのがラナー様で、白銀の輝きを持っているのがミラー様だ。」
と、説明してくれる。
墓場に来た人々はそちらの方に視線を向け、拍手をしている。
2人の登場に歓声を上げる周りの民衆に、白銀の王女は手を振ったりしているが、一方の黄金の王女は下へうつむいたまま、人が避け、真ん中のぽっかりと空いた道を歩いていく。
先の方向へ視線を向けると、そこには、一つ豪奢な墓があった。
「あれが…先王の墓か」
周りは、花で豪奢に飾りつけされている。
近くにはほかの王子たちの墓であろうか、バルブロ、ザナックなどの名が書かれた、ひとまわり小さな墓も立ち並んでいる。
騒いでいた人々がいつの間にか静まり返り、固唾を飲んで見守る中、2人の皇女は二人の護衛を連れ、それぞれの墓の前で手を合わせ祈りをささげている。
一通り回った後、二人は前王の墓の前に揃って立った。
「皆さま、今回集まりくださってありがとうございます。」
「私たち、王族含め多くの人々が流行病により亡くなってしまう悲劇から早くも5年が過ぎました。」
と、演説を始めた。
白銀の王女は泣きそうになっている黄金の王女の肩を支えながら話を続ける。
「当時は、多くの貴族や人々が亡くなり混乱のさなかにありましたが、そこから五年でようやく立ち直ることができました。」
「それも、毎日を懸命に生きていらっしゃる皆様方のおかげです。」
「そのことは感謝、してもしきれません」
「しかし今、私たちは先王の遺言によって、どちらが本当の王にふさわしいのか決めるために競う仲ではありますが、決して憎み争い合う仲ではありません。」
「困ったときには国が違えど手を取り合い、亡き先王に顔向けできるような国にしましょう」
などと、演説をしている。
気が付くと、周りの人々は、涙ながらに拍手を送り、黄金の王女は泣き崩れ白銀の王女はそれを支えていた。
横を見ると、近衛兵や市民たちもこちらへ視線を送ることなく涙ながらに拍手を送っていた。
周りを見るに、人々から相当慕われているように見える。
「すごいな...」
私は、あっけにとられつつもその様子を見ていた。
ランポッサ3世 「じゃあな」
バルブロ王子 「俺たちは」
ザナック王子 「先に逝く」
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