私は領地であるエ・レエブルの屋敷にて今日の執務をおわらせていた。
ラナー女王になって以降必要になった兵士について。
そして、新たに出来上がった大学についての資料整理などなど。
昔の暗躍していたよりも、実りがある現状に非常に満足しつつも、私は過去のことを思い出していた。
当時、あの王女いや、姫君であった二人は一時期の問題行動が原因で、牢へと入れられ悪魔祓いを受けたという話を伺ってはいた。
実際、悪魔というものがいるのかどうかはわからないが、それ以降当時問題であった、怪文章を国王に提出することや、人ならざる不気味な笑い方はなりを潜めたということは見て感じてはいた。
今だからこそ言えることではあるが、ちょうどそのころ私の第一子が生まれ、私のうちでも考え方が変わったころでもあった。
ちょうどそのようなとき、私は姫君二人に声をかけられたことを今でも覚えている。
「ねえ、こっち来て。」
その当時は、年は10であろうか、かわいらしく笑いながら腰の裾を引っ張られて王室の一室に連れ込まれた。
私は、遊びに付き合ってほしいのだろうと思いある程度付き会おうと思いついていった。
しかし、その先で待ち受けていたのは全く想像だにしなかったことだった。
「ねぇ、レエブン公。手伝ってくれないかしら。」
と唐突に切り出し始められる。
そこには、先ほど二人の姫君の、のほほんとした笑っている顔などが一切なく遊び盛りの10の年をした少女が決して見せるような顔ではないことがうかがえる。
そこには、カリスマと、言うべきものであろうかがあった。
「あなたが、最近王国の崩壊を防ぐために様々なことをしているのは知っているわ。」
「今までのように、王位簒奪するつもりはなくて、ただ単純に食い止めようとしている。現に、この案なんて」
と、一枚の書類が出される。
それは、数十枚のうちの一枚の政策であり、特に貴族派閥や王族派閥などすべてを加味したうえで、王国を崩壊を阻止する第一歩として提出した一枚だ。
「いい政策だと思うわよ。まさか貴族にまともな人間がいるなんて思わなかったけど。」
「そうね。そのまさかよね。」
と、二人で笑い合う。
その笑顔は、先ほど見せた、花が咲くような笑顔ではなく...まるで化け物のような笑い顔だ。
その圧倒的な展開の速さに追いつけずにいると、
「ねえ、ミラーなんで、こんなことをしたと思う?」
「それはねえ、多分この子じゃないかしら。」
と、一枚の絵画を取り出す。
そこには、一度も外に出したことがない我が子そっくりな赤子が書かれている。
そのような、わけのわからない状況と、自らの子が人質に取られかけている状態に、普段つけている貴族の仮面が外れる。
「な...」
「あ、反応した。うんうんそうだよね!やっぱり正しかったじゃん。」
「ミラーも人間の心が理解できるように、なってきたわね。」
と、化け物の二人は笑い合う。
「な、何が知りたいのですか?」
と、聞く。
すでに、私の弱点が握られている状態にたじろぐ。
「いいや、そうおびえないで、レエブン公。今回はあなたを仲間に誘おうと思ってね。」
「そーそー。自分の子のためにも王国の平和を望んでいるんでしょ。崩壊ではなく。」
と、再度花が咲いたような笑顔を向ける。
私は、この少女が恐ろしいとしか思えない。ある意味、ナイフを突きつけたうえで仲間になろうといっているのだから。
「な、何をしてほしいのですか…」
従わなければならない状態に、話を伺う。
「そうなの、そこまで言ってくれるのね。じゃあ、使えそうな貴族教えてくれない?」
「うんうん。」
と、言ったものだ。
当時は、この二人の姫君が恐ろしくて、ただ単に、まともな貴族をすべて挙げ、その日は悪い夢としてそのことを忘れようとしたのだが...その後ことが大きく動いたのは数か月後だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その時は、唐突だった。
「は、王が崩御なされた...」
王都とは異なり、ある程度発達したエ・レエブルの街を眼下に朝一番で、王都から早馬で伝えられたのは、現国王であるランポッサ三世がなくなられたという情報だった。
当時は、かなり慌てたものだ。
今の王子の中で、王位継承権一位は、当時17歳のバルブロ王子だ。
あの王子は、基本的に周りのことを顧みず自分のことしか考えない最も貴族たちから操りやすい、馬鹿だ。
当時は、かなり絶望したものだ。あの王が死んだ時点で、ほぼ詰みだ。
少なからず、国王一族は数十年後にはどこかの貴族になり変われるだろう。
現状ではどうしようもないので、何とかするためにも、片道四日かかる王都へと向かった。
その道すがら伝えられたのは、
「バルブロ王子が、亡くなられた...」
「はい、はやり病のようでして...」
当時、眠っていると急死するという、はやり病が流行っていた。
前王がそうであったようにバルブロ王子もなくなった。
王都に向かう道すがら、そのような情報を多く聞いた。
その後、ザナック王子がなくなり。
最終的には王位継承権が残ったのはあの姫君二人だけだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「よ、ようやくついた...」
四日かかる道すがらを、三日で走破し、王都についたころには...普段の王都とは全く異なった様子だった。
いつもであれば、人気はないことは確かではあるが今日は、まったくといいほど人気がなかった。
「だ、大丈夫でしょうか...」
その行ないような光景に、私が雇った元アダマンタイトの冒険者もかなり慌てている。
その様子を見るに冒険者目線でも街がかなり異様な光景であるのだろう。
「さすがにわからない...何が起こっているんだ...」
ここ数日のうちに、多くの王族が死んだ。
そのことにも、かなり
王城へと近づくとそこには、それに反して大勢の平民が鎌や鍬、どこから手に入れたのか剣を掲げている。王城の正門は無残にも破壊されている。
そのような異様な状況に混乱していると、王城から飛び出ている普段使われていない演説の台から二人の姫君が手を振って話している。
人々は、それに呼応するように歓声や雄たけびを上げている。
そのような状態に困惑を覚えていると、
「お、商人か?」
「あ、ああ」
と、言ったように周りにいる平民に声をかけられる。
あまりにも、あり得ない状況に困惑しつつ、うわべで返事を返す。
「へ、へ。そうかい。あんたも運がいいよ。今日こそがいわば記念日みたいなもんなんだから。」
「な、何があったのだ...」
「俺たちが悪いやつら全員を倒したんだ。」
「は?」
と、状況が呑み込めないでいる。前を見ると、二人の女王が笑って、手を振っており全員に向かい入れられるかのように市民たちはそれに呼応して歓声を返している。
その笑顔はまるで、花が咲いているかのような笑顔で...と、同時に先日見せた化け物のような笑みを含んでいるかのようにも感じる。
「なんだか、おら、頭悪いから詳しいことが分かんねえけど、みんなそう言っているから間違いないはずないんだ。」
「そーそー。これで、俺たちが切り詰めて生活している生活から解放されるみたいなんだ。」
「みんなが、あの王女なら俺ら生活も楽になるって言ってるべから間違いないべ。」
「な、なるほど...」
と、半分困惑しつつ生返事を返す。
レエブン公は、頭を回転させる。
王城が無残に破壊されていること。そして...市民たちの証言...
まさかあり得ないとは思うが...貴族達の殺しにしたのか?いや、それはあり得ない。少なからず混乱下にあるが、王国の近衛兵は必ずいたはずだ。
しかし...この状況は...
正直、推測や又聞きの話しか出てこないので早いところ、王城へと入って、状況を確認したいところではあるがこの状態で入れば、目立ってしまい一人すら護衛がいない状態で、最悪殺される。
レエブン公の天才的な頭脳は数秒の間に、ここまで回った。
と、同時に自分が綱渡りの状況にあることも再認識させられた。
幸い今は、急いできたおかげで服が汚れており周りの人々に、商人と勘違いされているからよいが、護衛もない今、自分が貴族ということがばれれば、袋叩きに会うだろう。
私は、身の安全のためにもひとまず宿へと逃げ込んだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
後日分かったこととしては...
・平民が、今の生活に不満を感じ、貴族どもを皆殺しにするために王城へ乗り込んだこと。
・当時の近衛兵の大半は、なぜか非番か行方不明になっており、平民たちの侵入を許してしまったこと。
・そして、最大の疑問は...
「レエブン公。大丈夫でしたか?」
「あ、ああ。」
と、仲の良い貴族に声をかけられる。
この貴族は、あまり薄暗いうわさがなく、王国の貴族の中では、比較的まともな部類の貴族だ。
私があの王女二人にあげた、ましな貴族といわれるものが全員生き残っており、逆に使えないまたは、王国の繁栄の上で邪魔な大勢の貴族は殺されるか、大怪我をおって身動きすら取れない状態にあることだ。
六大貴族も同様に無事であったのは、私と老齢の貴族であるウロヴァーナ辺境伯のみであった。
貴族派、筆頭の貴族である、屈強な男であったボウロロープ公は、大きな手傷を負い、リットン伯も手傷負った。
王国派は特にひどく、ブルムラシュー侯と、ペスペア侯は両者とも平民の反乱によってひどい手傷負って亡くなった。
「大丈夫ですかな?非常に顔色が悪いような気がしますが...まあ、あんなことがあった後です。」
「あ、ああかなり街でいろいろな動きがあってな。」
と、返す。本当にいろいろなことがあった。
あの後、一度町へ帰ると、もとよりきれいな街であったが数日の間、暴力事件が多発した。
近衛兵が問いただすとすべてがすべて黒粉中毒者であり、販売する人がいなくなったせいで脱離症状を起こして暴力事件を起こしたそうだ。
と、同時にスラム地区が圧倒的に小さくなったようにも感じた。
元々次代の子供のために、十年ほどかけて改善していこうとしていた町の政策を、たったの一か月で何らかが原因で改善してしまった。
「おっと、いらしたようですぞ。」
と、声をかけられる。そこに目をやると、二人の王女がいた。
そこにいるのが、さも当たり前だというかのように壇上に存在するのは、この前垣間見た二人のカリスマというべきものであろうか。
それぐらい様になっている様子で、ほかの貴族が口をはさむ暇もなく二人の女王は話し始める。
曰く、王族が私たち以外死んでしまったから私たちが国を取り仕切る。
曰く、六大貴族であったが、ブルムラシュー侯と、ペスペア侯が家族含め全員死んでしまったので、六大貴族は廃止し、四大貴族にすると。
曰く、ある程度復興したのであれば前王の遺言にしたがい国を二つに分けて争うと。
などなど、様々なことを伝えられ、彼女たちは去っていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「なぜ、このようなことを。」
とある一室、二人の女王を呼び止めとある一室にて話す機会を得た私は女王たちにに問いただす。
そんなことは今や王女となった二人に失礼であるとはわかっていたが、それ以上に疑問が上がる。
「このようなことを?とは何のことかしらねえラナー?」
「そうね、抽象的過ぎて分からないわね。」
と、花が咲いたように笑う。
しかし、それが仮面であるとわかっている今、この女王が恐ろしくてならない。
「先日のことです、私が名を上げたもの以外きれいに平民に全員殺されるか、回復するのに数年かかる重傷を負わされました。逆にそれ以外の人は一切怪我なんかありません。何かやりましたよね」
と、言うと先ほどの笑顔はどこへやったのか、化け物のように笑い始める。
そのような様子に恐ろしさから一歩引いてしまうが、ここで聞かなければ聞く機会がなくなってしまうと感じた私はぐっとこらえる。
「ねえ、どうしようかしら姉さま?」
「いいんじゃないかしら?教えてしまって。」
「そうよ、私たちが起こしたのよ。はやり病も、平民の反乱も全部全部。」
と、言われる。
平民たちの反乱に関してはわかっていたが、はやり病に関しては全く予想外であった。
「そうよね。そんな顔になるよね。」
「そこまで明かしちゃうの。」
「いいじゃない。こんなに滑稽な姿が見られたのだから。」
と、呆然とした顔になっていたのだろうか、二人は私の顔を指して笑う。
「そうよね。国王も王子たちも邪魔なんだもん。理解のない馬鹿と貴族の口車に乗る馬鹿と食べ物好きの馬鹿しか、いないもの。生かしていても得にもならないし私たちが王位を取るうえで邪魔じゃない?」
と、さも当たり前というかのように親殺しや兄弟殺しを言う。
そこには、罪の呵責などというものは一切なく、ただただ邪魔だったから殺したといっている現状にめまいがしてくる。しかしここで質疑をやめるわけにはいかない。
「では、ペスペア侯や、ブルムラシュー侯を一族含め全員殺したのは?」
ペスペア侯は、全員はやり病で、亡くなり、ブルムラシュー侯は、平民の反乱で当主がなくなり、残りの一族郎党ははやり病で亡くなった。
今の話より、この王女たちが殺したことは確定である。
「それはねえ、ペスペア侯は王位継承のレールに乗り邪魔だからよ。私たちの亡き姉君が結婚さえしなければ死ぬことはなかったのに滑稽よね。」
「ブルムラシュー侯は、金にしか興味がない無能はいらないからよ。後々、必ず復興資金が必要となるからその時のために王族がブルムラシュー侯の鉱山を抑えたかったというものがあるよね。」
と、さも当然であるかのように殺した話をする。
私自身が、そのような現状に間違っているのかと自分自身を問いただすほどに、異様な空気が流れている。
「そうなの...ですか。」
そして、それ以上に、人を殺すということに一切のためらいがないことにこの王女たちが王位を握って本当に良かったのか?という疑問も生まれてくる。
「あ、そうだラナーせっかくだし褒美をとらせましょうか」
「そうね。ねえ、レエブン侯、何か欲しいものはあるかしら。今私たちは、作戦が成功して非常に気分がいいの。欲しいものがあれば何でも言って。」
と、言う言葉を述べられたことは覚えている。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そして今、窓の外を見ると、5年前に比べ比べ物にならないほど発展した街。そして新たに金の王国で初となる大学が目に入る。
街には、人々の笑顔であふれており、貿易が中心産業となっている金の王国らしく、5年前とは比べ物にならないほどの馬車が行きかっている。
そのことからも、彼女たちにつき従ってきたのは間違えではなかったのであろう。
五年前、排除に苦労するであろう黒粉が排除され、同時に八本指がいなくなった今、圧倒的な進歩を遂げている。
しかし、同時に頭の中によぎってしまうのだ。彼女たちのあの恐ろしい人ならざる笑顔が。
「大旦那様、お食事のお時間です。」
と、言うメイドの声が聞こえる。
「ああ、今すぐ行く」
と、返す。
彼女たちはいったい何を望み、そして何のために王国を支配するのか。
無論、王国は彼女たちに支配されて良き国となった。しかし同時に思うのだ。本当に彼女たちのような、人を人とも思わない冷徹なものが王国という手綱を握ってよかったのかと...
そのような疑念を胸に私は最愛なる妻と子が待つ食堂へと向かった。
気が向いたらもしかしたら投稿します。
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