「二人共お疲れ、ルシェドの町に着いたぞ。」
スライムを撃破して暫く歩くと、目的地のルシェドの町に辿り着いた。
「エルシャの町よりでけぇ……」
「この町が最初の拠点のようなものだからな。」
「なるほど……」
「とりあえずは各々でアイテムの補充、装備を購入をしといてくれ、町の入口で待ってる。」
そう言ってディリスタさんは町の中に歩いていった。
「俺もちょっと武器新調してくるわ!」
卍エクスカイザー卍は元気に駆けて行った。
私がバッグの中身を確認する。
ポーションのストックがだいぶ減っているし、新しい町だし武器や防具も新調したい。
案内板で位置を確認する――まずは道具屋に向かおう。
そう決めて私も町の中に向かって歩き出す。
町の中はNPCやプレイヤーで活気にあふれた様子だ。
ちらりとレベルを確認するが、自分達のような低レベルプレイヤーは見当たらない。
やはり、新規プレイヤーは少ないのだろうか?
無意識に人混みを避けるように裏路地に入る。
こっちの方が早いだろうと、そのまま歩を進める。
建物の影になって、真昼でもやや暗い路地。
先程の活気も遠くなり、静寂が世界を支配する。
何故か、この方が私は落ち着いていた。
目の前に太陽の光が漏れだしている、恐らく出口だろう。
光を目指して、一歩、また一歩と進む。
目の錯覚か、なかなか辿りつかない光の先に、まるで世界が停止したかのような……
「え……?」
本当に錯覚なのか?
歩き続けているはずなのに、いつまでも辿りつけない。
「もしかして、バグ?」
こういう時は運営に連絡を……
慌ててヘルプメッセージをポップアップ表示させるが、開かない。
ダメだ、1回落ちて入り直そう。
”ログアウト”
しかし何も起こらない。
何かが変だ。
一度大きく深呼吸をする。
落ち着いて辺りを見回してみる――
よく見ると、光が差している出口とは別に、細い横道があった。
他に手もない、そう思いその横道に入る。
道は狭く、人一人がギリギリ通れる幅だ。
私はその道を慎重に進んでいく。
今の状況下、他に何が起こっても不思議ではない、用心する事は大事だ。
あまりの静けさに、自分の鼓動がよく聞こえる。
そのリアルさに、今現実世界にいるのではと思えてくる。
汗が頬を伝う。
目を凝らすと光が差し込んでいる。
やっと出口だろうか?
そのまま歩いていくと、今度は確実に光に近づいている。
一歩、また一歩、確実に光は大きくなっていく。
良かった、やっと……
緊張感から解放させるという安堵で気が楽になっていくのが分かる。
「……」
しかし、それほど甘くはなかった。
目の前に広がる風景に言葉が出ない。
そこに広がっていたのは……
――現実の風景だった。
ふと思い出したのは、この前の出来事だ。
現実とゲームが曖昧な状態。
ユキさんに見せてもらったアレだ。
”これはね、今開発中のシステムなのよ。”
確かそんな事を言っていたような気がする。
という事は、何かしらのバグでこのテスト空間に来てしまったという事だろうか?
このままここにいてもしょうがない。
とりあえず歩き出す事にする。
風景は現実そのままだ。
相違があるとすれば人がいない。
後は路上を走る車やバイクも見当たらない。
その辺は未制作なのだろうか?
そもそも、未実装フィールドなわけだが。
高く立ち並ぶコンクリートジャングルを歩く私は、かなり異質な存在だろうと思う。
日差しは出ているが、ビルに隠れてあまり暑さを感じない。
ゲーム内とは違うコンクリートを踏む感触は現実を彷彿させる。
そもそも、私なんでこんな事になってるんだろ?
そう考えて足を止める。
「まさか、一生このままじゃないよね?」
ふと、そんな言葉が口から零れた。
その時、一瞬遠くに人影が見えた。
私は咄嗟にその影を追った。
ここを出るための糸口になるかもしれない!
そう思い必死に駆ける。
角を右に曲がり、路地を左に曲がり……
走っても影には追い付けない。
ゲームの中のはずが、息が切れて足が重くなる。
ここは現実じゃない、ゲームの中だ。
疲れるという概念があるわけがない。
その考えとは裏腹に、何故か汗が額を伝う。
両足も痛みを訴えている。
これは現実なのだろうか?
その時、影は急に動きを止めた。
「はぁ……はぁ……」
息も絶え絶えに、ようやく追いつく。
まるでフルマラソンを終えた後のようだ。
「oリナo」
「え……?」
人影が私の名を呼び振り向く。
その顔は――
「こ○○現○○○ないわ。」
ぐにゃりと視界が歪む。
これもどこかで見たような気がする。
それよりも気が遠くなっ……
「お○○み、○○夢○○て○○さい。」
そのまま私の意識は途切れた。