あの事件から3日が立った。
あれ以来シャルロットはINして来ていない。
「ディリスタさん、少し話が……」
「あぁ……」
私はどうして気になっていた。
彼がどうなったのかを。
今は皆外に出払っている。
二人でギルドルームの中に入る。
誰もいない校舎は、何か寂しい雰囲気が漂っている。
「分かってると思いますけど……」
「あぁ。シャルロットの事だろう?」
聞くまでも無く、ディリスタさんが返す。
私はゴクリと唾を飲み込んだ。
「彼は、今入院中だ。」
「え……?」
「――おそらく見てもらった方が早い。」
見てもらった方がいいとはどういう?
彼が入院したという事は、ひとまず生きてる事は間違いない。
だが……
「明日ユキと二人で見舞いに行って来てくれ。」
「えっ、ちょ……」
「――宜しく頼む。」
そう言ってディリスタさんはギルドルームから退出してしまった。
一人だけ、寂しい校舎に取り残された……
「一体何が……」
僕と優さんは、二人でとある病院に来ていた。
もちろん、昨日言っていたシャルロットの見舞いのためだ。
「優さん、ほんとに僕が付いて行く意味あるんです? それに……」
「必要なのよ~? それに彼は貴方に気づく事はないわよ。」
どういう意味だろうか?
二人でエレベータに乗り込む。
優さんは1階のボタンを3回押してから10階のボタンを2回押した。
「なにやってるんです?」
「気にしないのー。」
ガクン! っとひと揺れすると、エレベーターは下の階へ進む。
該当の階を示すランプは、壊れたかのように点滅している。
これが、まともじゃない状況なのは見るに明らかだった。
僕が焦っている僕の様子に気づいたのか、唇に人差し指を当てて”静かに”のジェスチャーをしてきた。
そうは言われても、状況が分からない現状に落ち着けるわけがない。
いつ止まるかわからないエレベーターに閉じ込められた不安でいっぱいだ。
ガコン!
解放の時は唐突に訪れた。
エレベーターの扉が開く……
「なに、これ……」
そこはまるで、映画に出てきそうな研究所のような風景だった。
優さんは無言で歩き出す。
僕は慌てて後ろをついていく。
少し歩くと、頑丈そうな鉄の扉が現れた。
優さんが横の端末に触れると、重い音を立てて扉が開く。
「こっちよ。」
そのまま後ろに続く。
背後で扉が閉まる音がした。
辺りを見渡すと、両サイドガラス張りの通路になっている。
ちょっとした興味で窓ガラスの向こうを覗く。
人、人、人。
そこら中のベットに人が眠っている。
よく分からない装置に繋がれ、ぴくりとも動く気配はない。
「彼らはまだ生きてるのよ。」
「優さん?」
「さあ、こっちの部屋よ。」
そう言うと、先ほど覗いた窓とは逆方向の窓ガラス側にあるドアを開く。
こちらにもベットが並んでいる。
「彼がそうよ。」
部屋の右端から二番目のベットを指さす。
僕はゴクリと唾を飲み込んだ。
静かに歩いて歩み寄る。
そこに横たわっているのは少年だった。
おそらく小学5年くらいだろうか?
彼もまた、死んだように眠っている。
「ニュースでもやってたでしょ、意識不明者が出てるって。」
「あ……」
そういえば見たような気がする。
「彼らは皆、エレウシスオンラインをプレイ中にこうなったのよ。」
「な……」
声が出なかった。
それってつまりゲームのせいで。
「何故ゲームを停止しないかって思ってるでしょ?」
私は黙って頷いた。
「止められないのよ、町のシステムと直結してるからね。」
「町のシステム?」
「そう、全ての電化製品を管理するメインコンピューターと。」
「そんなの初耳ですよ!」
聞いたこともない話だ。
たかがゲームと管理コンピューターが一緒だって?
「その莫大な処理をを担うには必要だったのよ、それに一時的にサービスを止めようとしても受け付けなかった。」
「受け付けない?」
「何かがおかしいのよ。運営側から操作不能になっているのよ。」
「そんなバカな話!」
ありえない話に声に力が入る。
なら何故プレイしないように告知しないのか、何もなかったようにプレイしているのか!
「逆に聞くわ、何故貴方はニュースで意識不明者が出ているのにプレイをやめなかったの?」
「あ……」
でも、あの時はニュースを流すように見てたから。
そのまえにゲームが原因なんて言っていたか?
「おそらく原因はメインコンピューターの方、潜在的に何か脳にバグを作ってる。」
「……」
「私達の記憶や感覚を一部書き換えているのよ。 ”マザー”がね……」
あまりにも恐ろしい事実だった。
その言葉を聞いて目の前が真っ暗になったような気がした。
「大丈夫、その恐怖心も明日には消えるわ。」
そういえば、優さんはここに来た時、どんな顔をしていた?
この事実を知っていて、何故、笑っていた?
それはちょっと怪我をした友達を見舞いに行くような気軽さだ。
「なんで、その事を僕に。」
「貴方にも協力して欲しいの、この世界を取り戻すために。」
そう、彼女は僕に言い放った。