いつものように学校に登校する。
まるで昨日の出来事が嘘かのように気分は落ち着いていた。
つまらない授業を聞き流しながら窓の外を見ると、裸になった木々が寂しそうに見えた。
アレは夢で、今日にもシャルロットがINしてくるのではとも思えてしまう。
これも優さんが言っていた操作されたという事なのか?
あんなにもINしたくないという感情で溢れていたのに……
この感覚は、ドラマを見ているような……
そう、第三者として見ている気分だ。
感情も理解できるのに、自分とは無縁というか別世界に感じる感覚だ。
”貴方にも協力して欲しいの、この世界を取り戻すために。”
優さんの昨日の言葉を思い出す。
―――
――
―
「協力って、何を?」
「エレウシスオンラインの開発途上エリアからメインコンピューター、通称”マザー”にアタックをかけるのよ。」
まるで簡単なように語っているが、それは不可能ではないのか?
”マザー”には多くの防壁が張られていると聞く。
もちろん、物理的な警備も万全のはずだ。
「本来ならありえない話だけどねぇ、何故か”マザー”側から道が開いてるの。」
「本当にありえない話ですね……」
「開く周期は不明だから出たとこ勝負なんだけどねぇ……」
「それで、私にどうしろと?」
優さんは横の端末を操作して画面を表示する。
素人には全くもって分からない。
「この数値が示しているのは、貴方に2度”マザー”側から干渉があったって事。」
「え?」
「これが貴方に協力して欲しい理由、何か質問はある?」
「……」
その時の私には答えられなかった。
自分の考えが及ばない世界で、こうまで巻き込まれていたなんて。
―――
――
―
昼休みになり、勇にいつも通り昼食を献上する。
僕は自分の席に戻り、適当に買ったコッペパンに齧りついた。
今日のコッペパンは若干パサパサで美味しくない。
苺牛乳で無理矢理喉に流し込む。
「おい。」
耳障りな声が聞こえる。
案の定勇が呼んでいる。
「なんでしょうか?」
嫌味を込めて答えると、不機嫌そうにこっちに近寄ってきた。
「お前よう……」
「……」
あぁ、これはまずったかな。
僕は殴られる事を覚悟した。
――
しかし、いつまで立っても衝撃は襲ってこなかった。
「お前の好きなもん、なんだよ。」
「は?」
「手下を労ってやるって言ってんだよ! 昼飯奢ってやる。」
はは、何か悪い夢でも見てるのだろうか?
―――
――
―
外で食事を済ませて、家へ帰宅した。
鞄をソファーに放り投げ、そのままベッドに横になる。
なんでご飯なんか奢ってくれたんだろ。
あまりの摩訶不思議な行動に、頭の中がハテナだらけだ。
あぁ、やばい……
なんだか眠くなってきた――
このまま微睡みに身を委ねたくなる。
しかし、ゲームしないと……
ゲーム?
何のゲームだっけ?
――
そうだ、今日もエレウシスオンラインをやらないと。
皆がきっと待ってる。
僕だけの唯一の居場所。
でもこの世界は……
分かってはいる、でもやめられない。
結局分かり切った事だったのだ。
恐らく優さんも分かっている。
唯一の居場所であるこの世界を守るためなら、必ず協力してくれるだろうと。
難しく考える必要はなかったのではないか?
自分も同じ目に合うのではという恐怖心は一ミリも残っていなかった。
重い身体を起こしてVRヘッドを被る。
”ログイン”
視界が真っ白になる。
みんなが待っているあの世界へ……
ログインしてフレンド欄を確認する。
「みんなギルドルームに集まって何してるんだろ。」
何故か、皆現在地がギルドルームになっていた。
気になって自然と足がポータルに向かう。
ポータル端末からギルドルームを選択する。
一瞬視界が歪み、いつもの風景へと切り替わる。
そのまま校舎の中へと入る。
教室まで来るが、誰一人としてすれ違う者がいない。
まさか何かあったのでは?
もう一度ログイン欄を確認してみるが、やはり現在地はココになっている。
「流石に悪い冗談はやめてよね。」
不安が口から零れる。
周りを見渡すが返事はない……
近くにあった机の椅子に座る。
頭の中に孤独という文字が遮る。
違う、みんなが私を裏切るわけがない。
なら例の件に巻き込まれた?
そんなわけ……
『誕生日おめでとう!』
突然だった。
「えっ……?」
目の前に、急に皆が現れたのだ。
もしかして、ハイド?
ハイドは、PT以外のプレイヤーから一定時間姿を消すことが出来るスキルだ。
というか誕生日……?
「主役が惚けていては始まりませんわ!」
「まったくだな!」
ユキさんが遠くで、こちらにVサインをしている。
そういえば前に、リア情報調べたとか言ってたような……
それを悪用したわけね。
まぁそれでも……
「ケーキも用意してあるぞ。」
ディリスタさんがケーキを持って現れた。
こういうのを、幸せって言うんだろうなぁ……
こんな時間が、ずっと続けばいいのに――