「すみません、ちょっと休憩しません?」
「あら、もう疲れたの?」
あれから二人でレベル上げに来たのだが、スパルタってものじゃなかった。
まさかレベル24で、60台の狩場に連れてこられるとは……
このゲームでは、敵のレベル+-20の範囲内にパーティの平均レベルが当てはまれば適正経験値が入る。
ユキさんが100、私が24なので適正となる。
本来ならPT人数によってボーナスもあるのだが、ユキさん一人で片づけてしまうので問題はなし。
しかし、私はそうもいかない――なぜなら。
「うわぁ、またきた!」
ウルフがこちらに飛び掛かってくる。
「”ファイヤウォール”」
ユキさんの魔法で、ウルフが灰となる。
私は額の汗の拭った。
なぜなら、敵が強すぎて私が即死してしまうのだ。
たった1撃で!
「仕方ないわね、向こうの街道まで行って休みましょうか。」
「お願いします……」
常に死と隣り合わせ、気を張りすぎて疲労感がやばい……
当然の如く、街道まで行く最中も襲ってくる。
酷い時は、わざと倒さないで怖がる私を見て楽しむ始末。
ユキさん、やはりドSなのだろうか……?
「やっとついた……」
街道沿いの大き目の石に腰かける。
この周辺は敵も少なく、比較的安全だ。
ふと、遠くを見ると3PT程ぞろぞろと動いている。
あれはなんだろうか?
「あら、こんな場所で珍しいわね。」
「なんですかあれ?」
そう聞くとユキさんは私に双眼鏡を渡した。
「右の3PTは見えるわね? そのまま左の方を見てみて。」
「あ、こっちには2PTいますね。」
「こんな狩場でギルド戦ねぇ。」
ギルド戦、情報だけでは知っている。
ギルド同士の戦争、大規模から小規模までその時の状況で様々だ。
宣告から10分後に開始され、参加者が全滅した方が負けとなる。
宣告を一度すると、1週間は使用不可能だったかな?
しかし、こんな場所でギルド戦とは少々不思議だ。
ユキさんも恐らく同じ事を考えているだろう。
「oリナoちゃんはどう思う?」
「そんなこと言われても、分かりませんよ。」
ギルド戦のメリットと言えば、勝利側は専用のポイントが付与される事。
そのポイントで様々な特殊な武具が交換出来る事。
他には何かあったかな……
「相手に恐怖を植え付ける事。」
「え?」
「圧倒する事によって強さを誇示し、絶対者として君臨する。」
「……」
「その頂点なのよ、あのギルドは。」
双眼鏡で右の3PTをもう一度確認する。
シールダー100レベル、エレメンタラー100レベル、皆カンスト者ばかりだ。
彼らのギルド名を確認する――
「紺碧の猟団……」
先に動いたのは”風のささやき”というギルドの方だった。
数で不利な以上、各個撃破しかないと踏んだのだろう。
先行している”紺碧の猟団”の1PTを2PTで挟み撃ちに攻めようとしていた。
本来なら”紺碧の猟団”側はやられてしまうのだろう。
しかし、彼らは違った。
先頭に立っている、大柄な女性に向かって矢が放たれる。
彼女は携えた大剣を一振りする……
その剣圧だけですべての矢が地に落ちる。
あれって、アリなのだろうか?
女性が何かを叫ぶと、大きく飛び上がって切りかかる。
草むらで次の矢を準備していた男は、急に現れた大女に驚く。
それも一瞬、振り上げた大剣で袈裟斬りにする。
女性はニヤリと笑うと、次の相手に駆けて行く。
それは不利な状況というよりは、蹂躙しているようにしか見えない。
やがて、勝てないと思ったのか”風のささやき”達は逃げるように走り始めた。
女性はそれを満足げに見やると、仲間達に何か指示をしている。
「いやぁ、一方的ね。」
「本当ですね、勝負になってないというか……」
これが最強のギルドの強さなのだろうか。
「うわぁぁ!」
悲鳴のような声が近くで聞こえる。
双眼鏡を外すと、先ほどの生き残りの男がこちらに走ってきている。
「ちょっと、どうするんです?」
「さあ?」
そんなやりとりをしている間も、男はこっちに近づいてくる。
「てめぇら邪魔だ! ブチ殺すぞ!」
これはよろしくない雰囲気のような……
私は急いで弓を構える。
「”ピンポイントシュート”」
足に向けて矢を放つ。
このスキルは相手の足に攻撃する事で、移動速度低下状態する事ができる。
突然の攻撃に驚いたようだったが、すぐにこちらを睨んでくる。
巻き込まれる形になったが、私もやられたくはない。
「”パワーショット”」
一見、普段と何も変わらないように見える。
だがこのスキルは……
「ぐぉぉ!」
矢を受けた男は大きく後ろに飛んでいく。
この矢は高火力かつ、相手を転倒する効果があるのだ。
男の飛んで行った先には、一人の優男のエルフが立っていた。
所属は紺碧の猟団だ。
エルフは眼鏡の真ん中を一本指で上げると、右腕を構えた。
「”エクスプロージョン”」
地獄の業火に焼かれ、先ほどの男が灰になる。
なんという火力だろうか、あれが炎系最上位魔法……
事を終えた男は、表情を変えずにこちらに近づいてくる。
「久しぶりね、アメリ△(さん)」
そうユキさんが話しかけると、こくんと男は頷いた。
「巻き込んだみたいで悪かったねぇ。」
奥から先程遠くで見た、大柄な女性が歩み寄ってくる。
どうやら様子を見に来たらしい。
「ドレイク、こんな所でギルド戦なんてどうしたのよ?」
「何さ、狩場荒らしにお仕置きしたまでさ。」
そう言ってドレイクと呼ばれた女性は豪快に笑っている。
「巻き込まれたこっちとしては迷惑ね。」
「悪いね、しかし……」
ドレイクさんが急にこちらを見てくる。
まるで値踏みするかのような視線にぞわっと寒気がした。
「どこでこんな拾い物してきたんだい?」
「あぁ、その子? 期待のエースよ。」
「なんの話ですか?」
いまいち話が呑み込めずに困っていると、その様子を見たドレイクさんがまた豪快に笑った。
「あっはっは! これは大物かもしれないね!」
「うんうん。」
「それにさっきの動きも悪くない、えっと――oリナoか、その名前覚えとくよ。」
そう言うと、アメリ△を引き連れて撤収して行った。
「良かったわねoリナo。」
「いまいち、ついていけないです。」
なんだか無駄に疲れた……
今度こそ休憩を――
そう思って腰かけようとすると、ユキさんに腕を掴まれた。
顔を上げてみると、笑顔のユキさんがこちらを見ている。
「さあ、休憩もこのくらいにして再開しましょうか!」
「ちょっと待って? まだ休憩してないからね?」
そのままズルズルと引きずられていく。
「おちつこ? まだ休憩してないよ?」
「観察してる間は休めたでしょ?」
ユキさんは放す気はなさそうだ・
「かんべんしてぇ~!」
私の悲痛な叫びが響くだけであった……