私とユキヤさんは、会場準備という名目で校舎の外で待たされていた。
そういえば、レベル差もあってユキヤさんとはほぼ交流が無かったなとふと思う。
こんなにメンバーの少ないギルドでもこういう事もあるものだ。
「しかし驚きだ、まさかレベルが追いつかれるとはね。」
「その分大変でしたけどね。」
そう言って誤魔化す。
パワーレベリングしましたなんて、純粋に楽しんでいる人には言えない。
「俺もこの身に宿る力を解放せねばならんが、急いでは逆に邪心に支配されてしまうかもしれないからな。」
「は、はぁ。」
どうやら彼の設定らしき事を語り始める。
そういえばシャルロットが言ってたっけか……
邪神の力が封じられてるだかなんだか――
まぁ名前が”ユキヤ@邪神”ってくらいですし。
彼は尾をピンと立てたまま、熱く語り続けている。
意外と最後に話せて良かったのかもしれない。
「でだ、お前からは相反する聖なる力を感じる。 俺の力を抑えるのに有効打となる可能性があるのだ。」
「そうなんですか?」
「あぁ、だからこそ是非――」
フレンド申請が飛んでくる。
私はそのまま申請許可した。
もしかしたら、何かしら彼に頼る事もあるかもしれない。
「よろしくお願いしますね。」
「こちらこそだ!」
そんなやりとりをしていると、校舎の中からディリスタさんが出てきた。
「二人共、中に入ってきてくれ。」
「分かりました。」
どうやらついに卒業式は始まるようだ。
校舎の体育館に暗幕が張られ、雰囲気はまさに卒業式だ。
ディリスタさんが壇上の上に立ち、皆はパイプ椅子に座っている。
しかし、ここには2人足りない。
1人は入院中のシャルロット。
そしてもう一人は……
昨日の彼の鬼の形相を思い出す。
やはり来てくれないのだろうか……
「卒業証書、ユキヤ@邪神。」
「はい。」
壇上に上がり一礼をする。
流石に卒業証書は無いので、雑貨屋で売っている勲章を授与する。
「これからもこの世界を楽しみつつ頑張るんだぞ。」
「ありがとうございました!」
勲章を胸につけて壇上から降りる。
「卒業証書、oリナo。」
「はい。」
立ち上がり、一呼吸置いてから壇上に向けて歩きだす。
ここに来てから色々あったなぁ。
楽しい事も嫌な事もいっぱいあった。
それでもあの頃の私は、本気で遊んでいた。
それが今ではどうだろう?
階段を上り壇上に上がる。
現実を知って、一人冷めている。
いつの間にか巻き込まれて、もう遊びとしては楽しめない。
それでも、シャルロット達を助けられるのは私だけ。
だから私は、ここの卒業して戦いに身を投じる。
「わりぃ、遅れた!」
突然扉を開け放って現れたのは卍エクスカイザー卍だった。
彼の表情は昨日とは違い、いつもの彼に戻っていた。
「遅刻だぞ、廊下にでも立っとくか?」
「流石にそれは勘弁してくださいよ。」
そう言いながら笑顔で椅子に座る。
ちらっと彼のレベルを確認する――
”レベル42”
どうやらあの後もレベル上げを続けていたようだ。
それでも来てくれたのは嬉しい。
「よし、気を取り直して――卒業証書、oリナo。」
両手で勲章を受け取る。
「どうしても辛くなったら、いつでも僕を頼っていいからな。」
「え?」
「ユキの奴も何も教えてくれないが、何かあるんだろ?」
私は何も言えなかった。
ただ沈黙で肯定する事しか出来ない。
「僕も皆も君の仲間だ。 ここを卒業してもそれだけは忘れないでくれ。」
「はい……」
受け取った勲章を胸につけて壇上を降りる。
いつもみんなの事を考えてくれるディリスタさん。
あんまり話は出来なかったけど、サブマスとして頑張っていたユキヤさん。
最初は同類かと思ったけど、意外と可愛いかったvアルマ姫v。
そしてここにはいないけど、一緒に遊んでくれたシャルロット。
最後に彼の顔を見る。
彼との付き合いが一番長い。
この世界へ初めて訪れた日に出会った――
私の新しい希望になってくれた。
皆、本当にありがとう……
だからこそ、ごめんなさい。
でも私は、みんなに笑顔でいてもらいたいから。
だから――
「すぐに俺も追いついてやるからな!」
「待ってるよ。」
だから、今は皆に嘘をつかせて。
この思い出を綺麗なままにするために――