”選定の塔11階”
”制限レベルなし”
扉の向こうに広がっていた光景は……
「遺跡か……」
瓦礫の山、壊れたエレベーター、草木の生えた自販機。
どこかで見た事のあるフィールド。
正直マザーからの嫌がらせのように感じる。
”XRPPP!”
これまた見覚えのある、ガードロボットが徘徊している。
キングゴブリンの次は遺跡のガードロボット……まさかね?
私は、うまくロボット達を避けながら進む。
おそらくここにもポータルがあるはずだ。
そして同じ流れならば、20Fでボスが待っているはずだ。
見た限り、先ほどまでのフロアに比べてそこまで広くないようだ。
相変わらずポータルを探すヒントは無く、闇雲に探す事になりそうだが……
「いや、まさか――」
私は壁伝いにルナプスを進ませる。
そこには古ぼけたエレベーターがある。
他とは違い、これだけは動きそうだ。
だが罠という可能性もある。
これを使うか、使わないか……
「……」
私は黙ってエレベーターに乗り込んだ。
たとえ罠だろうと、私はすぐにでも最上階に向かわなければならない。
マザーを倒さなければならないのだ。
それが私の、償いだから。
エレベーターの表示階は、1から10階までとなっていた。
私はそっと、エレベーターの10階のボタンを押した。
”選定の塔20階”
”制限レベルなし”
エレベーターから出ると、研究室のようなフロアに出る。
ここも見覚えがあるような……
”ウーン! ウーン!”
フロアに響くサイレンの音で思い出した。
確かここには……
”ガァァl”
カプセルを突き破ってギガオークが這い出てくる。
こいつもベリカ遺跡で戦ったボスだ。
動き自体は遅く、火力が高いタイプ。
ただ、追加された動きもあるかもしれない。
”ハイジョカイシ!”
ギガオークが両腕を滅茶苦茶に振り回しながらこちらに近づいてくる。
あれをまともに食らえば、無事ではすまないだろう。
考えるんだ、何か打開策を……
こいつはHPが半分を切った時に1度だけ高火力の範囲攻撃をしてくる。
遠距離職である私なら容易にレンジ外に逃げられる。
「”スタントラップ””ハイクイックショット”」
とりあえずHPを半分まで削ってみるしかないか。
その後にどんな行動をするかだ。
割れたカプセル以外、このフロアには巨大な遮蔽物はない。
そこそこの広さはあるが、机や機器等が移動の阻害をしている。
ルナプスなら多少強引に動く事も出来るが、速度が落ちるのは逃れられない。
それならば移動阻害系スキルが有効的に戦いを運べるだろう。
だからこそ一時的に動きを止めるスタントラップ、相手の移動速度を下げるピンポイントシュートを使うべきだ。
「”ピンポイントシュート”」
私は逃げ撃ちを続けならが地道にギガオークのHPを削っていく。
このまま攻め続ければ、とりあえず半分は――
”モードチェンジ!”
やはりそう上手くはいかないか……!
急にギガオークの動きが機敏になる。
この行動パターンはレベル80のアトムオークの技だぞ!
ここにいるギガオークが使ってくる技ではない。
「”バーストショット”」
本来の距離程吹き飛ばせないが、多少動きを抑え込む。
かなりきついがこのままなんとか半分以下に出来るはずだ!
「”ハイアーマーブレイクショット””ハイパワーブレイクショット”」
HPバーが半分を切った時点でギガオークが動きを止めた。
両腕を大きく振り上げ、思いっきり地面に叩き――
――そのはずだったが、ギガオークにもこの出来事は予測不能だったらしい。
凄まじい轟音と共に天井が崩れる。
ギガオークはその下敷きとなり消滅したのだ。
しかし問題は、瓦礫と共に落ちてきた物体だ。
”ピーッ、ガガッ”
この戦車は……間違いなくあの時と同じやつだ。
ベリカ遺跡に現れ、シャルロットが犠牲になったあの戦車だ。
「もうなんでもありね!」
今回はあの時のように逃げるわけにはいかない。
倒すしかないんだ。
「”ハイアーマーブレイクショット””ハイパワーブレイクショット””ハイダスター”」
スキルを一気に3つ叩き込む。
戦車はこちらに主砲を向けて攻撃態勢に入る。
確かこいつの攻撃方法は――
主砲の発射と共にミサイルの雨が降り注ぐ。
主砲は回避するが、数発のミサイルの爆風を受けてしまう。
すぐに赤ポーションを飲んで攻撃に切り替える。
「”ハイクイックショット”」
敵のHPはまだ8割以上残っている。
このままではジリ貧だ……
「無駄だって分からないかなぁ?」
「え?」
聞き覚えのある声が聞こえた。
あろうことか、声の主は戦車の中から現れたのだ。
「久しぶりですね、oリナoさん。」
「シャルロット……?」
その人物は、シャルロットだった。
戦車の上に立つシャルロットは笑っている。
そもそも本当にシャルロットなのか?
「どうして――って顔してますね? 知りたいですか?」
「……」
私は無言で武器を構える。
その様子を見て、彼は怯えるでもなく笑い続けている。
「ははっ、流石ですよ。 また僕を殺すんですね!」
「恨みを返しに化けて出たわけ?」
「どうでしょうね? ただ一つハッキリしている事があります。」
「何かしら?」
「僕を殺さなければ先に進めないって事です。」
なんだ、簡単な事じゃないか。
私は迷いなく矢を射る。
「え……?」
その矢は見事にシャルの脳天に直撃した。
彼はそのまま戦車から滑り落ちる。
「”ハイクイックショット”」
私は地面に倒れた彼に、そのまま追い打ちをかける。
複数の矢が彼を無残にも撃ち抜いていく。
「な――んで……」
「私はね、アイツを殺せるんだったらどんな事だってやるのよ。」
絶望に彩られた瞳が色を無くしていく。
彼は再び死人へと戻ったのだ。
”ちょっと味気ないんじゃない?”
マザーの声がフロアに響く。
”元お仲間でしょ? もっと葛藤とかあってもいいんじゃない?”
「そんな感情は持ち合わせてない。」
”ふーん、まるで正義の味方みたいね。”
「それこそありえないわ、私はただ――アナタを殺したいだけよ。」
”つまらないわねぇ~、まぁネタばらしするわね”
操縦者を失った戦車は、動く気配は無い。
この階はこれでクリアという事なのだろう。
しかし、無駄話が終わるまで次の階への扉は開いてくれないようだ。
”前の卍エクスカイザー卍とそのシャルはバックアップ体って呼んでるものなのよ。
つまり本人ではないって事ね。 どう? 安心した?”
「悪趣味。」
その答えが予想通りだったのか、満足げな笑い声が聞こえる。
”更に言うとね、道中のモンスターも見た目を偽装したバックアップ体なのよね。
つまりは、貴女はここまで来るのに何人もの人間を殺してるわけね。”
「所詮バックアップなんでしょ? そんなの何人殺しても一緒じゃない。」
”このバックアップ体達はね、みんな本体が既に霊基崩壊してしまった者なのよ。
復活出来る可能性を摘み取ったのは貴女で、私ではないわ。”
彼女はこう言いたいのだろう、手を下したのは私だと。
この世界の終焉を導き、更には生き残りすら殺すのかと。
あぁ、本当にくだらない……
だって、私は先程答えを言ったばかりなのだ、AIというものはバカなのか?
「何度も言わせないで。」
”あら?”
「私はただ――アナタを殺したいだけよ。 他に何人死のうが関係ない。」
そうだ、私の目的はただそれだけだ。
生きる意味等、他には無くなった。
この手を血に染めようとも、今の私には何も感じないのだ。
”――なら早くここまで来なさい。”
フロアの真ん中にポータルが出現する。
どうやらこれで次の階に行けるようだ。
私は無言で近づき、ポータルを起動させた。