”選定の塔21階”
”制限レベルなし”
次のフロアを見て、マザーの悪趣味さを再認識した。
目の前に広がる光景は――
「青空教室のギルドルームか……」
広さの規模は違えど、明らかに参考にしているのは間違いない。
今度はここを登っていけというのか。
木造の廊下が真っすぐに奥まで続いている。
どうやら敵の気配はなさそうだ。
私は慎重にルナプスを前に進ませる。
廊下の先が見えず、無限に続くのではと錯覚するほどだ。
しかし、必ずどこかに次の階へ行く何かがあるはずだ。
――
―
しばらく歩き続けると、横に階段が現れた。
これを登ればいいのだろうか?
罠の可能性も考慮して、ゆっくりと階段を登る……
”選定の塔22階”
”制限レベルなし”
どうやら問題なく次の階に来れたようだ。
今度は迷路のように入り組んだ廊下が待ち受けていた。
「ほんと嫌がらせしか出来ないのかね。」
私はぼやきながらも前に進み始めた。
”選定の塔25階”
”制限レベルなし”
「何これ、体育館?」
何度か階段を登って辿り着いたのは体育館だった。
バスケットボールのゴールが左右に設置されてあり、目の前には幕と壇上。
学生の頃に見慣れた風景だ。
しかし、それを邪魔するようにわらわらとモンスターが現れる。
”パペットLV50”
人形達は、お遊戯でも始めたかのように私を取り囲んで回りだす。
みな不気味に笑いながらこちらを見ている。
”ウフフ、アハハ!”
数体がこちらにめがけて飛び掛かってくる。
なんとか紙一重で躱すが、この移動を制限されている状態で長くは続かない。
「”ハイクイックショット””バーストショット”」
なんとか穴を開けようと攻撃するが、すぐに新たなパペットが補充されて抜け出せない。
圧倒的な物量にすこしずつHPが削られていく――
「”エクスヒール”」
回復魔法によって傷が癒されていく。
まて、一体誰が……?
「情けないですわね、何を遊んでいますの!」
そこには懐かしい二人がいたのだ。
「遅くなってすまない、oリナo無事か?」
「ディリスタさん! vアルマ姫v!」
「”ウォークライ””セイントウォール”」
ディリスタさんに反応してパペット達の流れが変わる。
この位置なら……!
「”ハイクイックショット”」
一気に複数体のパペットを撃破する。
今なら増援の流れも止まっている。
「二人共、右の階段に!」
ディリスタさんの指示通り階段を登り、体育館の2階へと逃げ込む。
パペット達はこれ以上追ってくる様子はない。
「二人共どうして……?」
「そんな事、と……友達を助けるために決まっていますわよ!」
「君が塔に向かったのを見かけてね、追ってきたわけさ。」
二人が来てくれたのは嬉しくもあり、頼もしい。
でも、でもだ――
「嬉しいけど、この塔は危険なのよ……」
「それは君だって同じだろう?」
「でも――」
パチン!
右の頬に痛みが走る。
vアルマ姫vに頬を叩かれたと気づくまで多少の時間がかかった。
「うだうだ言ってないで行きますわよ。」
「……」
言われなくても覚悟は出来ている、そういう事なのだろう。
二人も滅びを待つよりも戦う事を選んだのだ。
ならばこれ以上私が止める理由はない。
「そういえば、ここに来るまでに他のプレイヤーには会った?」
「いや、誰にも会っていないな。 入ってすぐこのフロアだったからね。」
入ってすぐに? という事は順に登ってきていないという事だろうか?
それもマザーがやった事なのだろうが、一体どういう意図なのだろうか……
”選定の塔30階”
”制限レベルなし”
「この階にはボスがいるはずだから気を付けて。」
二人に警戒を促す。
一体次はどんなボスが待っているのか……
最後のフロアは教室か。
――教壇の所に誰か立っている。
「遅かったな。」
一番会いたくなかった相手だ。
卍エクスカイザー卍……
彼が本物か偽物か、それは分からない。
状況から考えてもう彼は――
「卍エクスカイザー卍、君も来ていたのか。」
「待って!」
迂闊に近づこうとしたディリスタさんを静止する。
その刹那――彼の切っ先がディリスタさんをかすめた。
「そこの下僕は何してるわけ!」
「おそらく彼は――」
彼はニヤリと笑いこちらを見る。
「オレが本物じゃないってなんで言い切れる?」
「それは……」
「前のバックアップ体と同じだろう、前も倒せたから今回も大丈夫。」
まるで心を読んでいるかのような指摘だ。
そう、前に深淵の森で対峙した。
何故彼はそれを知っているのか……
「ならさ、オレが本物だったらどうするわけ?」
「……」
「二人は先に行くんだ。」
そう言ってディリスタさんは前にでた。
「おそらくこれは、僕の仕事だ。」
そう言って卍エクスカイザー卍と対峙する。
彼は何か覚悟を決めたような表情だ。
「優しいギルマス様だなぁ。」
卍エクスカイザー卍も武器を構える。
まさに一触即発の状態だ。
「……いくわよ。」
「ちょっと! 二人を置いていくわけ!?」
私は文句を言い続けるvアルマ姫vの腕を引いて階段に向かう。
きっとディリスタさんなら……
そう信じて先に進むのだ。
―――
――
―
”選定の塔31階”
”制限レベル??”
今度のエリアは洞窟か。
スケルトンが徘徊し、洞窟内は淡い光に包まれている。
ここは煌きの洞窟というわけか。
「綺麗……」
「うん、私もそう思う。」
もし塔の内部が私の足取りを真似ているのなら、ゴールはおそらく近い。
振り向いてはいられない、皆戦っているのだ。
今は追いついてくると信じるしかない。
「先に進んで道を作っておくわよ。」
少しでもvアルマ姫vの不安を取り除こうと言葉を紡ぐ。
どちらかと言えば、自分に言い聞かせているのかもしれない。
「そ、そうね、きっと追いついてきますわよね。」
私は手持ちのアイテムを再度確認し、武器を握り直す。
多分ここのボスは――
ルナプスも感じているのか、いつもよりも表情が険しく見える。
まず、次のフロアへの階段を探そう。