Another line   作:空野 流星

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ラストフロア

 

 

”選定の塔41階”

 

”制限レベル$%”

 

 

 

やはりラストフロアはここか。

 

 

つい最近見た風景。

 

マザーのサーバーが設置されている研究所だ。

 

 

 

「この遺跡、まだ生きてるんだ。」

 

 

「まぁ、電源が生きてないと困るからね。」

 

 

「この遺跡……私知ってるかも。」

 

 

 

知っていたが正解だ。

 

私達はみんなマザーに記憶改変されている。

 

本来ならばこの施設で電子化した事も覚えているはずなのだ。

 

しかし、そこに疑問を持ち始めているという事は、vアルマ姫vも超越者として目覚めようとしているのかもしれない。

 

 

 

「どうかしらね。」

 

 

 

今はとりあえずはぐらかしておく。

 

いつかは知る事でも。多分今はその時じゃない。

 

 

私は奥へと歩みを進める。

 

多分最上階は、サーバールームだ。

 

 

 

「行きましょう、最上階に。」

 

 

 

そう言うと、vアルマ姫vは頷いて後ろをついてくる。

 

おそらく次の階へ進む方法は、特定の扉を通る事だろう。

 

あの時と同じなら迷う事はない。

 

 

 

 

”ジェネラルコーポレーションへようこそ! 施設をご案内しますね。”

 

 

 

急に立体ホログラムが現れ、案内アナウンスを始める。

 

これも何かの仕掛けなのだろうか?

 

 

私とvアルマ姫vは互いに顔を見合わせる。

 

しかし、案内先と進路が同じ以上進む事に変わりはない。

 

 

 

”こちらの研究棟では、人間の魂を電子化し霊基へと変換する研究が行われています”

 

 

 

周りに敵の気配はない。 だが、罠の可能性だって十分にありえる。

 

わざわざ案内させる意図はなんだ?

 

 

 

”この滅びゆく世界での唯一の人類救済の研究に、研究者一同は切磋琢磨の日々なのです。

 

 当然、来るべき日までには皆様にご提供できる予定でございます。”

 

 

 

当時の風景なのか、通路の左右の壁に研究風景の映像が流れている。

 

私達二人は警戒しつつも案内についていく。

 

 

 

”選定の塔42階”

 

”制限レベル!&”

 

 

 

扉を潜ると階層が変わる。

 

やはり階段ではなくフロアを移動するだけで階層が変化するようだ。

 

 

 

”では、人類復活のプロセスを説明しますね。 お座りください。”

 

 

 

パイプイスが用意され、座る事を促される。

 

話を聞かないと次には進め無さそうだ。

 

 

私が黙って座ると、vアルマ姫vもそれに続いた。

 

 

 

”皆様にはまず、電子化のためこの専用カプセルに入って頂きます。”

 

 

 

このカプセルは――知っている。

 

かつて私達が眠りについたものだ。

 

そして少し前、現実世界で目覚めた場所でもある。

 

 

 

”その後、皆様の魂を霊基にコンバート致します。 作業が完了次第、当社の専用サーバーに転送されるのです。”

 

 

 

専用サーバー……つまりマザーの管理する世界。

 

今いるこの場所だ。

 

 

 

”ちなみに、肉体の方は肉体再生時の材料になるため霊基の転送後に専用の薬品で溶かします。”

 

 

 

肉体が溶かされる映像がリアルタイムで流される。

 

正直これは、直視したくない映像だ……

 

 

 

「おぇっ……」

 

 

 

vアルマ姫vがえずく。

 

当然だ、いくら成長しても彼女はまだ小学生なのだ。

 

 

 

「じゃぁ、私は、こんな……」

 

 

「vアルマ姫v?」

 

 

 

――何か様子がおかしい。

 

 

 

 

「しっかりして!」

 

 

「……私達、アレに入ったんだよね?」

 

 

 

vアルマ姫vの問い、つまりあのカプセルに入ったのかという意味だ。

 

 

 

「――そうよ。」

 

 

 

正直に答えるしかなかった。

 

おそらく、彼女の中でもう答えは出ているのだ。

 

 

 

「なら、私は本当に私なの?」

 

 

「え?」

 

 

 

自分が自分かだって?

 

そんなの……

 

 

 

「電子化って本当に成功してるの? 私達はそう思い込まされてるだけじゃないの!?」

 

 

「そんなの分からない…… でも、一つだけはっきりしてる事がある。」

 

 

 

そうだ、自分が本物か偽物か、そんな事は判断しようがない。

 

でも、でもだ――

 

 

 

「私達は、今を生きてるのよ。 過去がどうこうよりも、生き残るために戦うしかないの。」

 

 

「……」

 

 

「それに、こうやって苦しむ姿を見てマザーは喜んでるはずよ。」

 

 

 

そうだ、こうやって精神的に追い詰めてその姿を嘲笑う。

 

人間を真似ているにしてもお粗末なAIだ。

 

 

 

「そもそも、作られたAIにこんな感情なんて無いでしょ? 確証は無いけど、きっと私達は本物よ。」

 

 

「うん、ありがとう……」

 

 

 

涙を拭い立ち上がるvアルマ姫vの手を取る。

 

その手を引いて次の扉を開く。

 

 

 

”選定の塔43階”

 

”制限レベル&!”

 

 

 

見覚えのある長い廊下だ。

 

邪魔な案内もいないようだし、さっさと先に進もう。

 

 

 

 

”選定の塔4#階”

 

”制限レベル%=”

 

 

 

ついに階層表記までおかしくなり始めていた。

 

扉を潜った回数的に、多分49階だ。

 

 

 

「ここまで敵がいないと怪しい感じね。」

 

 

「そろそろ最上階……?」

 

 

「おそらくね。」

 

 

 

目の前にある扉、これを開けばマザーのサーバールームのはずだ。

 

私は一呼吸置いて――扉を開いた。

 

 

 

”選定の塔最上階”

 

”制限レベル??”

 

 

 

目の前に広がる広大な空間。

 

そして黄金色のプール――間違いなくマザーのサーバールームだ。

 

以前と違うのは、中央にマザーの中核のカプセルが既に姿を現している事だ。

 

そして、そのカプセルの前にソイツはいた。

 

 

 

「やっと来たわね。」

 

 

 

見慣れた姿と声……

 

ユキさんと瓜二つのソイツは、笑顔で私達を出迎えた。

 

 

 

「マザー! 来てやったわよ!」

 

 

「こっちは待ちくたびれたわ、少し遅すぎない?」

 

 

 

わざとらしい欠伸をしてこちらを挑発してくる。

 

私はすぐに飛び掛かりたい怒りを抑え込み、呼吸を整える。

 

ここで感情的になったら、そこに付け込んでくる。

 

 

 

「それは悪かったわね。」

 

 

「見てみなさい、貴女が遅いから大変な事になってるわよ?」

 

 

 

目の前にカメラの映像らしきものが映し出される。

 

そこには――

 

 

 

「みんな!」

 

 

「そんな、なんで!」

 

 

 

ドレイクさんやディリスタさんが倒れていた。

 

既にHPは0になっているのに、町に送還される様子はない。

 

 

 

「この塔で倒れた者は、町で復活する事無く滅びの時を待つだけになるのよ。

 

 貴女がトロトロしてるうちに皆やられちゃったみたいね。」

 

 

 

落ち着け、これもマザーの挑発だ。

 

それこそ偽の映像の可能性だってある。

 

皆がそう簡単に負けるはずがない!

 

 

私がここで負けたら人類は終わりなんだ、集中しろ!

 

 

 

 

「それと、ここに招待してない娘がいるわね。」

 

 

 

そう言うとマザーは右手をかざして詠唱を始める。

 

まずい、多分狙いはvアルマ姫vだ!

 

 

 

「”プロテクトゾーン”」

 

 

 

vアルマ姫vは慌てて防御魔法を唱える。

 

 

 

「”ブラックホール”」

 

 

 

放たれた魔法は魔法障壁ごと彼女を飲み込む。

 

その威力は明らかに本来のブラックホールとはかけ離れている。

 

 

 

「vアルマ姫v!」

 

 

「少しやり過ぎたかしら?」

 

 

 

一撃、たった一撃でHPを0にしたというのか……?

 

その場に倒れ込んだvアルマ姫vのHPが0になっているのだ。

 

 

 

「これで回復魔法なんて、興が削がれる手段は無くなったわね。」

 

 

「……」

 

 

 

これがマザーの力なのか、もしくは取り込んだユキさんの力なのかは分からない。

 

ただあまりにも、圧倒的すぎる。

 

 

 

「これくらいで戦意喪失しないでね? まだ始まってすらいないのよ。」

 

 

「――分かってるわよ。」

 

 

 

当たらなければいいとか、そんな単純な話じゃないのは分かっている。

 

それでも私は、戦わなければならない。

 

 

震える手を抑え、弱気な自分を頭を振って振り払う。

 

vアルマ姫vが戦えないなら、手持ちの回復アイテムが最後の頼みの綱だ。

 

 

 

「いいわ、その目を待ってたのよ。」

 

 

「今からしっかり――殺してやる。」

 

 

 

私の殺意に興奮しているのか、頬を赤らめ吐息を漏らす。

 

 

 

「じゃあ、始めましょうか。」

 

 

 

マザーはリボンを解き投げ捨てる。

 

 

これから、最後の戦いが始まる。

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