Another line   作:空野 流星

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ラストバトル

 

 

「”メテオ”」

 

 

 

早い……!

 

明らかに本来の詠唱速度の倍は早い。

 

 

メテオの弾速自体は少し遅めのため、急いで効果範囲内から離れて弓を放つ。

 

 

 

「”ピンポイントシュート”」

 

 

「”プロテクトゾーン”」

 

 

 

攻撃に合わせて魔法障壁を張られ、ほぼダメージを与えられない。

 

 

 

「驚いた? これがワイズマンのユニークスキル”高速詠唱”よ。」

 

 

「流石に、それずるくない?」

 

 

 

相手との距離を一定に保ち、次のスキルを放つ。

 

 

 

「”ハイマジックブレイクショット””ハイクイックショット”」

 

 

「”トールハンマー”」

 

 

 

デバフ攻撃だけを避けて再び魔法で攻撃してくる。

 

トールハンマーの射程は一直線型だ、急げばなんとか……!

 

 

再びギリギリで回避する。

 

 

 

「無駄に逃げ足は速いわね。」

 

 

「”ハイダスター”」

 

 

 

再度の攻撃も避けられる。

 

全く、逃げ足が速いのはそちらも同じだろうと突っ込みたい。

 

このままMPを消費させれば、いずれは魔法を撃てなくなるはずだ。

 

 

 

「もしかして、私のMP切れを狙ってるのかしら?」

 

 

 

まるで心の中を読んだかのようなセリフだった。

 

ドクン、っと大きく心臓が脈打つ。

 

 

 

「悪いけど、私のMPは無限なのよ。 信じないっていうならこのまま続けてくれてもいいのよ?」

 

 

「……」

 

 

 

MP切れを狙うのも無理か……

 

 

 

 

「でも、さっきからユキさんの能力ばかり使うのね。」

 

 

「……」

 

 

 

マザーが押し黙る。

 

 

 

「それとも全知全能の管理者様が、何もできないのかしら?」

 

 

「黙りなさい。」

 

 

 

マザーが怒りを露わにする。

 

 

 

「使わないだけと気づきなさい。 こうすれば――ほら?」

 

 

「――っ!」

 

 

 

身体が動かない!?

 

力を入れるが、ぴくりとも動かない。

 

意識だけははっきりしていて、まるで金縛りのようだ。

 

 

 

「分かるかしら、こんな事して勝っても面白くないでしょ?

 

 このまま貴女の手足を切り落として嬲り殺す事も出来るのよ。」

 

 

「……流石にそれは御免被りたいわね。」

 

 

 

見えない力による体の拘束が解かれる。

 

まともにやりあえば、最初から勝ち目は無かったのかもしれない。

 

しかし、逆に何故簡単に勝てる方法があるのに使わないのだろうか?

 

そこに付け込むスキがあるのかもしれない。

 

 

 

「でも、何故そうしないのかしら?」

 

 

「決着前に問答でもしたいの?」

 

 

「どうかしら――ね! ”ピンポイントシュート”」

 

 

 

よし、当たった!

 

これで相手の機動性は多少奪えたはずだ。

 

 

 

「”ハイマジックブレイクショット””ハイダスター”」

 

 

 

1射目は避けられるが、2射目はヒットする。

 

これで確実にダメージは与えられる!

 

 

 

「”ブラックホール”」

 

 

 

ほぼ詠唱無しの上位魔法が襲ってくる。

 

とっさに回避するが、HPの半分を持っていかれてしまう。

 

あの詠唱速度、まだ早くなるのか!

 

 

 

 

一気に赤ポーションを飲み干して攻撃を再開する。

 

 

 

「”ピンポイントシュート””バーストショット”」

 

 

 

今度は2射共にヒットする。

 

よし、この調子で攻撃を重ねていけば――

 

 

 

「”ヴェールヒーリング”」

 

 

 

そうか、そうだった……

 

ワイズマンというクラスは魔法と回復が扱える。

 

いくら削ってもこれじゃあ無駄じゃないか!

 

 

もし倒せるとしたら、1撃でHPを吹き飛ばせる程の威力が必要だ。

 

火力職ではないビーストマスターにそんなスキルなんて――

 

 

 

「これで仕切り直しね。」

 

 

 

マザーはそう言って微笑んでくる。

 

私は一呼吸置いて睨んで返答する。

 

 

アレを使うには、少しだけ時間が必要だ。

 

実戦での使用経験は無いが、知識だけはある。

 

そう、3秒だけ相手の動きを止めなければならない。

 

そうすれば――勝てる!

 

 

 

「”ハイダスター””ハイアーマーブレイクショット””ハイクイックショット”」

 

 

 

全部は避けれないはずだ。

 

1射目のハイダスターを避け、2射目のハイアーマーブレイクショットは直撃する。

 

3射目は先程のハイダスターの効果が発動して行動キャンセルが発動し回避出来ずにヒットする。

 

 

 

「”コキュートス””セイントジャッジ”」

 

 

 

上位魔法の二連撃!

 

私はあえて回避せずにその場に留まる。

 

アイテムバックから取り出した物を地面へと投げつける。

 

 

このアイテム、精霊の加護は発動すると一時的に魔法ダメージを軽減してくれるものだ。

 

相手は私が必ず回避してくると読んでいるはずだ。

 

そのスキを突いて更に攻撃を重ねる!

 

 

 

「”ハイマジックブレイクショット””ピンポイントシュート”」

 

 

「何っ!」

 

 

 

流石のマザーも驚いている様子だ。

 

 

 

 

ただ、その驚きは大きなスキとなってくれる。

 

 

 

「っ……”ヴェールヒーリング”」

 

 

「このタイミングを待ってた。」

 

 

 

そう、急いで回復に切り替える事は分かっていた。

 

だからこそ必要な時間は確保出来るのだ。

 

 

私は矢を引いた右手に力を入れる。

 

多分これが最後のチャンス、そして決着になる。

 

 

 

「貴様っ!」

 

 

「”ステラ”」

 

 

 

渾身の力を込めた矢を放つ。

 

ビーストマスターが最後に習得する最強スキル――ステラ。

 

 

本来はデバフがメインだが、このステラだけは違う。

 

発動の遅さ、自らにダメージというデメリットはあれど、その威力は前衛火力職のそれを軽く超える。

 

いわゆるロマンスキルというものだ。

 

だがこの状況を打破する火力としては充分だった。

 

 

放たれた矢は吸い込まれるようにマザーへ目掛けて飛んでいく。

 

慌てて障壁を展開しようとするが無駄である。

 

あらゆる防御を貫通するこの矢は止める事は出来ないのだ。

 

 

 

矢が接触したと同時に大きな爆発が起きる。

 

それと同時に私は地面に膝をついた。

 

 

流石に、これで決まったはずだ。

 

ステラの火力ならば、プレイヤー相手に即死レベルだ。

 

マザーといえど、先ほどの戦いでのHPの減り方を見ると通常と変わりはない。

 

 

 

「勝った……」

 

 

 

そう、私は勝ったのだ。

 

遂にあのマザーを倒したのだ!

 

 

 

「――流石ね。」

 

 

「そんな……」

 

 

 

世の中、そんなに甘くないわね……

 

煙の中からボロボロになったマザーが現れたのだ。

 

 

 

「AI人格二つ分が綺麗に消し飛んだわ……元々そう作られていたものね。」

 

 

 

流石のマザーの無傷とまではいかなかったようだ。

 

しかし、こちらは既に満身創痍で為す術がない。

 

 

 

「これでも……ダメなんて……」

 

 

「どうやら、これで決着のようね。」

 

 

 

 

まだ、ここで終わるわけには……

 

ここまで来た意味が無くなってしまう!

 

 

 

「さあ眠りなさい。 今度は目覚める事の無い永い眠りにね――”アイシングピアス”」

 

 

 

マザーの放った魔法がゆっくりとこちらに飛んでくる。

 

一瞬のはずの時が最大まで引き伸ばされているように感じるほど長い。

 

今までの思い出が走馬灯のように流れていく。

 

 

でも、それももう終わりだ。

 

私はマザーに勝てなかった。

 

ユキさんが用意してくれたステラでもダメだった。

 

 

私、精一杯やったよね?

 

やれる事はやれたよね?

 

 

アイツ、褒めてくれるかな……?

 

 

アイツの顔が――

 

 

 

アイシングピアスが、私を襲う前に掻き消される。

 

振り下ろされた大剣が魔法を打ち消したのだ。

 

 

 

「わりぃ、遅くなった。」

 

 

「ぁ……」

 

 

 

それは絶対ありえない事だ。

 

だって、アイツは、アイツはもう!

 

 

そうだ、死んだはずなんだ。

 

だからここに来るわけがないんだ。

 

じゃあ、目の前にいるのは?

 

 

 

「なんだよ、幽霊でも見たみたいな顔しやがってよ。」

 

 

「嘘っ、そんな――貴方が!」

 

 

 

そうだ、この世界でもその前でも、ずっと一緒にいてくれた――

 

 

 

「助けに来たぜ、綾香!」

 

 

 

間違いなく、その姿は卍エクスカイザー卍――いや、高瀬明だった。

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