「うーん、まだログインの感覚に慣れないなぁ……」
まだ視界がチカチカする。
頭を抱えながら周りを見渡す。
町の入口で卍エクスカイザー卍と誰かが話込んでいる。
あの人は誰だろうか……?
「おー、oリナo来たか!」
「貴方がoリナoさんね、こんにちわ。」
その女性は、にこやかに笑いかけてきた。
そのまま彼女は狐の尾を振りながらニコニコしている。
ポップアップで名前を確認する……
”ユキ エレメンタラー LV100”
「か、カンストプレイヤー……」
あまりの驚きに声がそのまま口から出てしまった。
「な、すげぇだろ?」
得意げに言っているが、彼は何も関係ないような……
ユキはロングの金髪を掻き上げると、私の方に近づいてきた。
「貴方、可愛い顔してるわね。」
「え、えっ? それは、そういうメイキングをしたからで!」
そう答えると、彼女は私の耳元に近づいて――
「現実がって事よ。」
そのつぶやきに、背筋がゾクっとした。
「それ、どういう意味です?」
「冗談よ♪ それより、貴方達初心者でしょ?
暇だから少し手伝ってあげようと思ってね。」
なんだろう、あからさまに怪しい。
「悪い話じゃねぇだろ? 色々話も聞けるしな。」
卍エクスカイザー卍は既に着いて行く気満々であった。
どうやら、私に拒否権はなさそうだ。
「――分かりました。 お願いしますねユキさん。」
『はぁ……はぁ……』
まさか、こんな事になるとは――
「次はこのNPCね、アイテムはこれ。」
まるで流れ作業のように次々とメインクエを消化させられる。
クエアイテムは大量に余っているようで、にこやかな笑顔でアイテムを渡してくるユキさん。
私達はその流れ作業だけで既に疲れてしまった。
――ゲーム内で疲れるという概念があるかは疑問なのだが。
「はいはいお疲れさま! ここまで進めば、やっとIDに行けるわね。」
「あいでぃーってなんだ?」
どうやら、卍エクスカイザー卍の知識にはIDは存在しないようだ。
「えっと、IDっていうのはInstance Dungeonの略だよ。
つまり、PTメンバーだけで挑むダンジョンね。」
「何それ! 面白そう!」
私達二人のやりとりを見て、ユキさんはうんうんと笑いながら頷いている。
「このゲームの醍醐味は、IDとPVPだからね!」
「PVPって言うのはプレイヤー同士の対戦だよ。」
彼が聞いてくるであろう疑問に先に答えてあげた。
それを聞いて滾ってきたのか、謎の奇声をあげている。
「すみませんユキさん、このゲームのIDってレベル制限とかは無いんですか?」
「んとね、ID毎に入場のレベル制限が付いてて、再入場の制限とかは無いわね。」
そうなると、ユキさんが同行するのは無理だろう。
出来ればアドバイスが欲しかったが……
「これを持っていって。」
そう言って、現実で言うスマホを渡してきた。
というか、何故スマホがある……
「あの、これは……?」
「それ激レアアイテムでねぇ、2台のスマホ同士で映像付きの通信が出来るのよ。」
人類が滅亡した世界なら、こういうアイテムが発掘されてって事もありえるのか。
恐るべし、エレウシスオンライン。
「IDが無事クリアしたら返してもらうからね♪ さて、アイテムや装備の準備をしてIDに向かいましょ!」