無駄飯喰らい   作:甘栗@

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やってた案件が大詰めだったもので、推敲の時間すらまともに取れない状態でした。つらい。
ある程度落ち着いたので、更新です。
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家系のラーメンが好きです。


オキテヤブリ④

 

 

 

 

 

 君子危うきに近寄らず、という言葉がある。

 

 

 要はわざわざ自分から危険な目に合いに行かない方がいいよね、と。辞書を引けば大体こんな具合の意味が書いてあったりするのだけど、字面だけ見ればなるほどと納得させられる。

 わざわざ戦わないし、危険なことに関わらない、というかその必要がない。身を慎んでいる君子はそうして慎重に行動をしているそうで、カイルもぜひとも見習いたいものだと思う。

 

 しかし、それはメリットもデメリットも説明がなされなかった場合に限ったものだ。

 仮になくとも、気持ち次第で厄介事に首を突っ込むことはあるし――エムリットの一件なんかがいい例だったりする――天秤がメリットに振れれば、危険を顧みず行動することだってままあるだろう。ハイリスクハイリターンというやつだ。

 虎穴に入らずんば虎子を得ず、なんて言い方もしていたっけ、なんて。

 

「自分は、そうだな。どっちだろう」

「そんな考え込まなくても。単なる雑談ですから」

「そう言われると余計に考えこんじゃう......その時々で変わるんですよね」

「ええ、私もですよ」

 

 そんなことを考えていたのは、駅員風の男――ノボリから、カイル君はどっちのタイプなんですか、なんて尋ねられたからだった。

 

 昼寝後のだらだらと過ごしている時間、である。

 なんとなしに始めた雑談のトピック、要するに安定志向か冒険志向かということを尋ねられているわけなのだけど、正直考えるまでもなくカイルは後者だった。できることなら何事も穏便に済ませたいと常々思っている。

 

「多分、自分は安定志向だと思いますよ」

「ほう」

 

 その心は、と言外に尋ねられたので。カイルは膝の上で眠るエーフィを撫でながら続きを語る。

 

「あくまで自分自身はそうなだけで、仕事は別なんです。何でも屋をしてる関係上、まあ色んな仕事が舞い込んでくるから。危険なものもありますけど、依頼された以上はやるしかないですよね」

 

 一度語れば、後は驚くほど自然に言葉になった。

 そして、自分自身で腑に落ちる。そうだよな、なんて思ったりもする。

 

 カイルは間違いなく安定志向の人間だと言えるだろう。

 ただ、あくまで気持ちとしてはそうなだけで、実情としては異なるのが近況だったりする。

 なにせ、大体は気が付けば厄介事の渦に巻き込まれているわけで。今だってそんな経緯でこの『やぶれたせかい』にやってきていた。

 

「なるほど。断る選択肢は、ないのでしょうか」

「ないですね、こいつらも食わせないといけないし」

 

 示すように膝上の毛玉を優しくつつけば、もふんと心地よい低反発が帰ってくる。

 ノボリは、確かめるように小さく頷いていた。

 

「......やっぱり、似ていますね」

「?」

 

 どことなく懐かしそうな微笑。

 思い起こすように、噛みしめるようにしながら、彼はそんなことを呟いていて。

 そういえばエムリットも、初対面の時にはそんな顔をしていたような気がする。

 

(あいつも、大丈夫かな)

 

 思いを馳せるがしかし、現状助けに行くこともできやしない。どころか客観的に見れば、カイルが助けてもらう側である気さえする。

 故に今できるのは、無事を祈るくらいなもので。

 そんな心の内を察したのか、ノボリはこれ以上会話を広げようとはしなかった。

 

 カイルもまた、マーズさんも大丈夫かなぁ、なんて考えつつぼんやりと空を眺めていて。

 膝上で丸くなる毛玉はといえば、のんきに体を薄く上下させていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 三つ目の柱を抜けた先。

 

 

 繋がっていたのは、やはり今までとは異なる構造の部屋だった。

 泉、である。『おくりのどうくつ』を囲んでいた赤黒いものではなく、澄んだ空を思わせるスカイブルーの水が湧き出る泉が部屋に広がっている。

 もはや見慣れてすらいる石版は、例の如く部屋の――泉の中心近くにて小島のように顔を覗かせており。ご丁寧にそこへ至るための石畳まで整備されているようだった。

 

「これはまた、随分とひどい状態だこと」

 

 相も変わらず所々が崩れていたリ苔むしていたり。

 それでも全体ではないし何より、幸い文章そのものも長くはないため解読自体には問題がなかった。

 曰く、

 

 ここは……

 いのち かがやく もの

 いのち うしなった もの

 ふたつの せかいが まじる ばしょ

 

「さて、どういう意味だ。これ」

 

 書かれていること自体はわかる。強いて問題があるとすれば、ここでカイルが何をすべきなのかがわからないことだろうか。

 何故かこの部屋には骸骨達もわかないので、休憩も兼ねて座り込みつつ考えることにした。

 

 字面通りに受け取れば、ここはあの世とこの世の境目ということになるだろう。

 そんな場所があるなんてにわかに信じがたいけれど、良くも悪くもその考えを裏切ってくるのが『やぶれたせかい』だということも、カイルはこの短い期間でよく理解している。

 

「……」

 

 ただ、ふたつのせかい。

 この場合ではカイルの側があの世であろうことは、正直信じがたかった。だって生きているし。とはいえ少しだけ心配になったので手首で脈を取れば、いつもより少しだけ早い脈拍が事実を淡々と主張していた。

 

「クチ?」

「フィン」

 

 思考を整理していると、クチートとエーフィが不思議そうな表情でカイルのことを見上げていて。

 

「ちょっと失礼」

 

 右手と左手で二体をそれぞれ持ち上げ、順にカイルの耳に腹部を押し当てた。

 温かくて、良い匂いがして、それでいて規則的な鼓動。

 

「うん、生きてる」

「そりゃあそうでしょう」

 

 背筋を、つうと撫でられるような。

 

「―――――ッ、!?」

 

 そんな悪寒がひた走った刹那。

 カイルがバックステップで距離を取るとともに、クチートが声の聞こえた方向へと大顎で噛みついて。ガチリと歯がぶつかる音が響き、大顎が虚空だけを捉えたことを知らせた。

 即座にエーフィが"ねんりき"を弾けさせることで周辺の霧を払うが晴れた視界に人影は映らなかった。

 ただ、声だけがどこからともなく聞こえてくる。

 

「良い反応ですが、いきなり攻撃してくるというのは感心しませんね」

「そう言うなよ。あんただっていきなり話しかけてきたんだから」

「失敬。来客は随分久しかったもので」

 

 声自体はどこか飄々とした、恐らくは若い男のもののように思える。

 敵意はないものの会話の意思はあり、けれど姿を現さない彼の様子は若干。というかかなり不気味に感じるけれど、視界に映らずとも、それを発する何者かがこの石室内にはいるわけで。何故か指向性が伴っていないため場所は不明だが、相手が動きけばエーフィの結界がその反応をキャッチするだろう。

 

「申し遅れました。私、ウォロといいます。以前は行商人なんかをやっていたりしましたね」

「......カイル。こっちはクチートとエーフィ」

 

 過去形なことが気に留まったけれど、冷静に考えなくともこの世界じゃ行商人なんてできやしない。第一そんな揚げ足取りをしたところで何にもならないため、カイルは留まった思考をオーバースローで放り投げた。

 警戒心は解かず寧ろ強めながら、会話に興じる。

 

「自分から名乗るわりには姿も場所もくらましてる。随分と用心深いんだな?」

「そんなこともありませんよ。開けっぴろげです」

 

 少しばかり眉を潜める。あんまり聞かない表現だな、なんて思ったから。

 

「戦う意志はないですし、別にとって食おうなんてつもりもないですよ? その証拠に姿は晒してたんですが、そこの可愛い子たちに振り払われてしまいましてね」

 

 指をさされた気がしてクチートたちを見れば、二体もまた困惑が色濃く浮かぶ瞳でカイルを見上げていた。いやいやそんなはずないんだけど、とでも言いたげな表情である。

 実際、二体の行動は確かに実体を捉えてはいなかったはずだ。霧払いのために使った"ねんりき"は言わずもがな、"かみつく"だって手ごたえはなかった。そうでなければ歯と歯がぶつかる音なんて聞こえはしない。

 

「何だったら、今も目の前にいますよ」

 

 思考をよそに語る声が、嫌に響く。

 視界にも人影は無い。どころか晴れていた霧が再びもうもうと立ち込め始めているところで。嘘つけいないじゃないか、なんて文句が口をついて出そうになった、その時だった。

 立ち込める霧の中に、人間の輪郭が覗いていた。

 

「は、」

 

 けれど生身の身体ではなく、言うなれば霧が何となく人の姿を浮かび上がらせているような形。

 例えるならば、石像や石膏像のような。要するにどことなく無機質な印象を与える姿である。

 

「幽霊とか信じてないんだけどな」

「失礼な。そんな低俗なものじゃないですよ。怨みや未練なんてありませんとも」

 

 カラカラと笑いながら、やらねばならないことはあるんですがねぇ、と付け加えられて。いやそれが未練じゃないか、なんて。そんな教科書通りのツッコミをするのは若干癪なので、飲み込んでおくことにした。

 そんな最中、ウォロは一拍置いてからこう呟いて。

 

「あなたは、やり残したことが沢山ありそうですがね」

 

 カイルの胸が、強く早鐘を打った。

 

「......どうしてそう思う」

 

 感情を押し殺した声で、そう切り返す。

 マーズとマークへのフォロー然り、置き去りのエムリットやアグノム然り。実際やり残したことなんて挙げ始めたらキリがない。ウォロの話に乗っかるのは簡単だけれど、それはそのまま会話のペースや主導権を引き渡したも同然である。

 だからカイルは、否定も肯定もしない。思考も表には出さぬよう真顔の仮面を張り付けながら、相手の意図を探ることにした。

 

「勘ですね」

 

 殴っていいかこいつ。

 

「はは、冗談です――と言いたいところではありますけど、これで意外と本気ですよ。ただあてずっぽうなそれではなく、半分は想定、もう半分は確信といったところですかね」

 

 水得た魚よろしく流暢に語るウォロの声は、どことなく得意げであり。

 視線で続きを促せば、彼はもちろんといった様子で話してくれた。

 

「そもそも『やぶれたせかい』にやってきている時点で、何かしら訳ありの人間でしょう。それだけではなく、湖の光景を見ても怯まず洞窟へ潜ってくる。骸骨に追いかけられても、ゴールがどこなのかわからなくとも、この最深部へと辿り着いている」

「へえ、それで」

「ただの一般人がそうするには、少々メリットとデメリットが釣り合っていないように思えまして。何かしらあると考えるのが自然ですよね」

 

 そりゃそうである。カイルだって何もなければ早急に切り上げていただろうし、と。

 こちらがたっぷり思考を咀嚼する暇を与え、頷くのを確認してからウォロは続きを語る。

 ところで、という枕詞だった。

 

「商人という生き物が、何故儲けられるかわかりますか?」

 

 そりゃまあ、

 

「相手の欲しいものを提供するから、だろ?」

「まあそうです。ただ本質はそこではなく、もっと根本的なところなんですよ」

「というと」

「先を見通すことです。よく見て、よく考え、予測を立て、行動に移すこと。つまり腕のいい商人というのは、先回りが上手いんですね」

 

 正直、一理あると思った。納得させられた。

 需要に応えた商品を売るにしても、まずはそれを取り揃える必要がある。顧客に売るのだからそれよりも早く、また同じことを考える同業他社よりも早くに正確な仕入れを済ませる必要があるのだ。

 希少価値の高いものや大多数が欲しがる情報ならば、尚更。

 

「そういうわけで、私は既に先回りを済ませています」

 

 思えば、やけにゆっくり話していたような気がする。

 視線、息遣い、癖、その他ありとあらゆる行動を見逃さないよう気を配りながら、じっくりと値踏みをするようにウォロは語っていた。

 しかしそんなことカイルには知る由もなかった。表にこそ出してはいなかったけれど、現状に対しそれなりに焦りを感じていた自覚はあった。

 だから期待した。仕草に現れた。思わず、生唾を飲み込んだ。

 ウォロはそれを見逃さなかった。

 

「おくりのどうくつを抜け現実世界へ脱出するための方法、私は知っていますよ」

 

 次いで呟く声が、言葉が、残響を残す。 

 

 ……3ほんの はしらを ぬけて……

 ……に ……をささげる……

 ……が 30を こえるまえに……

 

 ウォロが語ったのは、そんな文言であり。

 

「さて、見覚えか聞き覚えはありますかね」

「......まあ、一応」

 

 対してカイルが考えるのは、"間違えている"だった。

 ただ、全てではない。的はずれなそれではなかった。アキ○イターのような言い方になってしまうけれど、部分的にそう、なんて言い方が一番近しいのかもしれない。

 カイルの知識では、途中の文章は『……に ……をささげる……』ではなく、『まどろむ ……の もとへ……』だったはずだ。

 

 文章を見たのは、洞窟の最初の部屋で一度だけ。しかも骸骨たちに追い立てられていたためじっくりとは確認できなかったけれど、それは確かに覚えていた。

 それを指摘すれば、なんだそんなことですかとウォロは笑う。

 

「あの案内板は、進む先を示すために使われるものです。あなたが見たものはギラティナへと導くための文章であり、私が伝えたものは現実世界へと導くための文章ですよ」

「ささげるってことは、向こうに行くためには何かを用意しないといけないわけか」

「ええ。世の中、ただより高いものなんてありませんから」

「それは理解してる。とはいえ、大したものなんて用意できないんだけどな」

 

 輪郭だけ見えているため、確かではない。

 ただ、不気味に、口端が吊り上がったような。

 

「いえ、いえ、そこまで大したものなんて必要はありませんよ」

「今の俺でも用意できるものってわけかい」

「うーむ、なんといいますかね。あなたに限ったものではないというか、生きとし生ける者たち皆が備えているというか」

 

 会話は本質を語っているようでそうではなく、あくまで確信には触れない。

 どうにも要領を得ない、と。そう考えていたところで、ウォロの方から新たな提案があった。

 曰く、

 

「ところで、石板があるでしょう。その裏側へと回ってもらえないでしょうか」

「別に構わないけど、何かあるのか?」

 

 問いかけつつ石板の裏側へと回れば、そこにはグルグルと回る渦が見えた。

 サイズ感は消して小さくはない。ざっくり言うなら大人一人分といったところで、カイル程度ならすっぽりと収まってしまいそうなそれである。

 決してその流れは速くない。どころかのんびりと、ゆるりとしたそれだ。けれどグルグルと回るそれを見ていると、不思議と目が回りそうな心地になった。

 

 ぐるぐる、ぐるぐる。

 

 ぐるぐる、ぐるぐる、と。

 

「――ぁれ、」

 

 

 目が、回る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 虎穴に入らずんば虎子を得ず、という言葉がある。

 

 

 要は、危険を冒さなければ成功は得られないのだということを表すことわざだ。

 ここでいう危険は虎の穴へ潜ることを、成功は虎の子供のことをそれぞれ示しているそうな。けれど虎の子供を、そう簡単に捕まえることができるだろうか、と。

 そうノボリが考えるのは、少しばかり意地悪が過ぎるだろうか。あまり良い想像ではないけれど、寧ろ返り討ちにあって子供の貴重なたんぱく源へとされてしまいそうな気さえする。

 故にこそ、ノボリは虎穴へと潜る性格ではないのだけど。

 

「くっ、カイル君、!」

 

 あくまでそういう性格というだけで、必要に駆られればその限りではない、という話だ。

 既に大量発生しており、大挙して洞窟の奥へと押し寄せている骸骨たちを蹴散らしながら、ノボリは何故かそんなことを考えていた。

 

「ジャモッ」

「ライオーー!」

 

 背後から迫る骸骨たちは、モンジャラが伸ばした"つるのムチ"で足を引っかけて転ばせる。

 結果倒れこんだ一陣に、後ろから追加で転んだ二陣が覆いかぶさる。更に三陣も同様に――といった具合で後ろ側が詰まったことを確認し、前を見ればグライオンが両手の"クラブハンマー"で前方の骸骨たちを蹴散らしているところだった。

 飛び散る骨の破片には目もくれず、ノボリたちは洞窟の奥まで潜っていく。

 

 前回見た石室の数字は『1 5』。運が悪ければ柱の部屋を一度も通過できないまま30を超えることもあるため、ペースとしては上々。

 目的地までは手持ち二体にぶっ通しで戦ってもらうこととなるため、可能な限り短い通過数で最深部へと辿り着きたかったので丁度よかった。

 

 通常であれば休息をとりつつ徐々に下っていくところだけど、今回は急を要するためそうはしない。

 本当にカイルが。あの少年が洞窟の最深部まで到達してしまったのだとすれば、そこには『ヤツ』がいるはずで。

 

「『2 19』、次!」

 

 過去の過ちにより姿を晦ましたあの男は、業によりこの世界を抜け出せなくなっていた。

 業により抜け出せなくなったあの男は、けれど野望を捨てられなかった。

 野望を捨てられなかったあの男は、業に、世界に、逆らおうとして。

 

「『3 23』。......モンジャラ、グライオン、行きますよ」

 

 この洞窟の最深部で、あの男は命を捧げた。

 仮説も実験もできなかった。いくらでも余暇があったって、材料や非検体がこの世界には存在しなかったから。しかし案内板に記載されている案内だけは確かなそれだと信じて、文字通りに必要なものを捧げた。

 言うなれば、ナカミを。けれどそれは大きな間違いだった。以来洞窟の仕様により生きることも死ぬこともできないまま、彼はその場に留まり続けている。

 

「はっ、カイル君!!」

 

 最深部に入ってすぐ見えたのは、カイルが渦に飲み込まれそうになっているところだった。

 

「モンジャラ!」

「モジャー!!」

 

 即座に伸ばされた"つるのムチ"で、モンジャラがその身体を思い切り引き寄せる。

 次いで部屋に飛び込んだグライオンと共に周囲を注意深く見回せば、あの男の――ウォロの輪郭が模された霧が渦の近くに覗いている。

 カイルは意識を失っているようだけれど、命には別条はなさそうだった。しばらく休んでいれば自然と目を覚ますだろう。こちらは、心配ない。

 

 だから、次を考えることにした。

 目の前に佇む男のことは、よく知っている。以前に死んでいたはずであることも、ノボリはよく知っている。

 

「......お久しぶりですね、ウォロ」

「いつもいつも、あなた方は私の邪魔をする」

 

 恨めしい感情が前面に押し出された声音でもって、吐き捨てるようにウォロが言う。

 こちらもまた、敵意を込めた目で睨み返す。

 

「まだ、諦めてはいなかったんですね」

「当然」

 

 恨み、怒り、情熱、嫉妬、大儀。

 ウォロの内に宿るそれらが、正直よくわかってしまう。目標地点が圧倒的に違うだけで、行っていることの本質は結局のところ変わりはしない。

 脳裏には今もまた色あせないバトルサブウェイの景色が過った。目の前の男もまた、同じなのだ。ノボリが未だ帰る場所を見失っていない様に、ウォロもまた目標を見失ってはいないのだ。

 

「あなたには悪いですけど、彼は連れて帰りますよ」

「それは残念。穏便に終わらせられたかったんですがねぇ」

 

 視界が、思惑が、交差している中、会話はとかく短く簡潔だった。

 

 

 だって、それ以上は必要がなかったから。

 

 

 




恐らく、一週間前後で出せるかと思います。
よろしくお願いします。
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